なぜ悩みに悩んで買った商品なのに、広告が気になるのか?


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私のライフワークは写真です。学生時代から約30年余り、色々なカメラやレンズに散財してきました。

気になるカメラやレンズが発売されると買うべきかどうかを色々と調べて、悩みに悩んだ末に、やっと買うわけです。しかし不思議なことがあります。買った後なのにも関わらずそのカメラの広告やメディア記事が目に入ると、じっくり読んでしまうのです。

たとえば新車を買ったりして、同じような経験をされている方は、多いのではないでしょうか?

車と女性

他にも、時計とか、ゴルフクラブとか、ファッションなどでも、同じようなことが起こったりします。

悩みに悩んで買った商品なのに、買った後もつい色々な情報に見入ってしまうのは、考えてみると不思議ですよね。

 

マーケティングの世界では(より正確に言うと社会心理学の世界ですが)、これを説明する理論があります。

これは「認知的不協和の解消」をしようとしている行為なのです。

「認知的…???」なにやら難しそうな名前ですが、簡単に言うとどういうことなのでしょうか?

 

多くの人は「常に一貫性ある自分でありたい」と思っています。商品を買った後も、「これだけ高い買い物をしたんだ。自分は正しい判断をしたんだ」と思っています。しかし実は一方で、「本当に正しい買い物をしたのだろうか?」という密かな不安も抱えているのです。

たとえば、こんな心当たりはありませんでしょうか?
「このゴルフクラブ、飛距離が出るって聞いて買ったんだけど、本当なのか?」
「この車、走りがいいって評判で買ったんだけど、実はもっといい車があったんじゃないかな?」

実は私も「このカメラ、買ったはいいけど、すぐ後にもっといいカメラが出るかもしれないなぁ」とか、「プロ用なんだから、すぐに壊れる…なんてことはないよね」と密かに思っていたりします。

このように人は、ある程度の高額商品を買った後は、この相矛盾する状態に陥っていることがよくあります。これが「認知的不協和を抱えた状態」です。

そこでこの「認知的不協和」を解消するために、消費者は買った後も「自分は正しい買い物をした」という情報を集めようとするのです。だからつい買った商品の広告やメディア記事に目が行ってしまうのですね。

 

つまり商品を購入した消費者に、「この商品を選んだ自分は正しかった!」と思っていただくことは、マーケティング戦略の上でも、とても重要なことなのです。

商品を購入してくれたお客さんは、新たにお客さんになってもらうための費用(新規顧客獲得コスト)をかけることなく、今後も継続して自社商品を買ってくれる可能性が高い、とてもいいお客さんでもあります。私も実際にその後、「このカメラ、買って正解だった」と思ったので、その後は新しいカメラメーカーの軽量なカメラボディやレンズがいつの間にか増えていきました。

広告や宣伝、広報などのメディア記事は、新たなお客さんを獲得するためだけではなく、既存のお客さんも意識することが必要なのです。その積み重ねが、ブランドを育てていくのです。

 

一方で、もし「自分は正しい買い物をした」と思いたがっているお客さんが、「この買い物をして失敗だった」と思うと、「認知的不協和」を解消するために「それでは、この商品は二度と買わない」という行動をすることになります。

こうして良いお客さんが去って行くのです。

 

ご縁があって購入してくださったお客さんには、失望させずに、「買って正解だった」と思っていただけるようにしたいですね。