爆買い需要を貪欲に刈り取り続ける、中国資本から学べること


大阪

お客様への講演や研修で、大阪によく行きます。今月大阪に出張した時、心斎橋商店街を歩いてみました。歩く人たちの半分が海外観光客。とても賑わっています。その海外観光客の多くが中国人。ドラッグストアや昔ながらの大阪の店で買い物をしています。いわゆる「爆買い」ですね。

数年前、海外観光客が少なかった頃は、商店街も人が少なかったそうです。

数年前までの風景から一変した大阪を歩きながら、気がつきました。

 

心斎橋商店街に店を構える「ラオックス」も、中国人観光客で賑わっています。東京・銀座や秋葉原などでもよく見かける風景です。

家電量販店の雄として一時は全国に100店舗展開していたラオックスは、量販店間の競争に敗れて業績が悪化し直営店を数店舗に縮小。2009年には中国の大手家電量販店チェーンである蘇寧電器の傘下になりました。今は中国出身の羅怡文さんがトップになり、免税店チェーンとして全国展開しています。爆買需要の成長に沿うように、売上と営業利益はこのように爆発的に成長しています。(ラオックス業績ハイライトより)

ラオックス売上・営業利益

日本国内に生まれた中国の爆買い需用を、中国資本により、中国人トップが陣頭指揮を執って、刈り取っているのですね。

 

心斎橋・ラオックスに吸い込まれていく中国人観光客を見ながら、思い出したのが、大阪出張に来る新幹線車中で読んだ雑誌「Wedge」の記事「訪日外国人を囲い込む 中国民泊」です。

 

「民泊」とは、旅行者が一般人の民家に対価を払って宿泊すること。インターネットで、ホストとゲストを仲介するAirbnb(エアビーアンドビー)が有名です。日本では旅館業法などの規制で、民泊は条件が限定されています。そこで2015年から規制緩和の検討が始まっていますが、既存のホテル・旅行業界の利害もあり、なかなか進展していないのが実情です。

しかしこの記事では、中国に本社を置く民泊業者が、日本を含む世界中でサービスを展開していることを紹介しています。

中国人観光客増加により、日本国内には膨大な宿泊需要が生まれています。実際、私が宿泊するホテルでも、朝食バイキングでは中国の方がとても多いことに改めて気づかされます。その中国人観光客の膨大な宿泊需要を、中国資本の民泊業者が刈り取っているのです。

 

中国人が日本国内で民泊を展開するというと、たとえば「タワーマンションの隣りの部屋が民泊で使われて住環境が悪くなる」というイメージを持つ方もいるかもしれません。 この点について、この記事ではある中国人事業家の言葉が書かれています。

「…その点、民泊目的で投資する中国人は、マンション丸ごと買い取るケースが多いので強いのです…」(「Wedge」2016年4月号 p.19より引用)

確かにマンションが丸ごと民泊に使われるのであれば、苦情は激減します。苦情対応はない方がよいわけで、合理的な考え方ですね。

 

しかし日本ではまだ民泊は規制緩和中。その点はどうなのでしょうか?本記事では、中国系民泊仲介事業者最大手「自在客」トップを務める張志杰CEOのインタビューも掲載されています。

−−現行の日本の法律では、特区等を除いて民泊は禁止されている。

張 中国では既に政府が民泊を許可しており、世界各国で合法化の流れがある。それに比べると、日本はやや法規制が遅れている印象がある。

−−現在、厚労省や観光庁が中心となって、民泊のルールづくりを進めているが、誘いがあればこの会議に参加する気はあるか?

張 呼ばれることがあれば、喜んで参加したい

−−これまでのトラブル事例は?

張 トラブルはほとんどない。事前に「土足厳禁」「ゴミ分別」などのルールをゲストに周知していることが功を奏しているのだと思う。

−−今後の目標を。

張 既に日本では、1万2000室を提供しており、2万6000室を提供しているAirbnbを上回りたいと考えている。……日本へ多くの観光客を呼び込む役割を担っていきたい。

(以上、「Wedge」2016年4月号 p.20より引用)

 

この民泊需要でも、日本の行政で「民泊をいかに規制緩和するか?」を議論している最中に、中国資本がリスクをとってビジネス展開を先行しています。

 

ビジネスで大切なのは、いかに商機をライバルに先んじて掴むか、ということ。

言い換えれば、いかに市場のニーズをサキドリするか。

タイミング勝負です。

ですから、あえてリスクをとることが必要になります。

 

先の記事でも、日本で民泊を展開しているある若い中国人事業者はこう語っています。

「いろいろ心配されているのはわかるのですが…民泊を提供しているわれわれのような業者の感覚は、一般の方が抱くものとは少し違っているようです。というのも、われわれは”事故”や”トラブル”をあまり恐れていないからです。民泊を求める市場のニーズも観光客が増えるという見通しも、その潜在的パワーに比べたら、民泊に吹いている逆風など、あまりにも小さな障害だと言わざるをえないからです。現在の日本の法律では、民泊事業はグレーだと知っていますが、実態として多くの人が利用していますし、この流れを止めることはできないでしょう」(「Wedge」2016年4月号 p.17より引用)

 

大阪出張を通して、「日本国内に生まれている中国人の爆買い需要に対して、内向き思考でなかなかリスクを取れない日本人をよそに、利にさとい中国資本家達はリスクを取ってしたたかに刈り取り続けている。ここから私たち日本人が学べることは、実はとても多いのではないか?」と実感した次第です。