そもそも、なぜ「モノつくり」から「コトつくり」?


私の家の近所に、中川政七商店があります。一見すると工芸品というモノを売っていますが、ビジョンがあります。

「日本の工芸を元気ににして、工芸大国日本をつくる」

このビジョンのもとで、コトつくりによる物語を売っています。そして日本の様々な工芸メーカーも支援しています。

たとえば、中川政七商店がコンサルティングしている、新潟県三条市のある包丁メーカーの例です。

三条市は刃物の産地です。しかし「この包丁は、よく切れますよ!」と言って売るのは、モノつくり発想です。

この包丁メーカーは、900種類もの包丁を作っていましたが、パン切り包丁がありませんでした。
一方で家庭では、普通のパンを切る際に普通の包丁が使われています。

そこでこの包丁メーカーは「職人がつくるパンくずが出ないパン切り包丁」を作りました。下記は中川政七商店のサイトからの引用です。

「波刃ではない、」パン切り庖丁です。パンの切り口がなめらかでパンくずがほとんど出ません。柔らかいパンはつぶさずにすんなり、皮が硬いパンも、先端部の波刃できっかけをつくることでスッと切れます。刃が落ちる感じに切れ、思わず何枚も切りたくなる切れ味です!断面がボソボソとしないため、バターやジャムも塗りやすく、サンドイッチのパンの耳落としも手を添える程度で切り落とせます。

まさに、「物語で語られるコトつくり」。つい欲しくなってしまいます。

こういうコトつくり、挑戦していくのは実に楽しいことですね。

 

さて、「モノつくりから、コトつくりへ」という言葉を、よく見かけるようになりました。モノだけでは消費者が買わなくなったため、と言われていますが、なぜ「モノつくりから、コトつくり」なのでしょうか?

社会が変わってきたからです。図にするとこうなります。

 

成長期は、世の中がどんどん豊かになっていきます。
「より多く、もっと豊かに」というニーズが溢れ、需要が拡大しています。一方で供給は追いつきません。
必要なのは生産力と販売力の強化により、需要を満たすこと。「モノつくり」が重要なのです。
「この包丁は、よく切れますよ!」で、売れるのです。

かつての高度成長期の日本、2010年頃までの中国、そして現在のアジア新興国は、この状況です。

成熟期は、世の中が既に豊かになった時代です。
「より多く、もっと豊かに」というニーズは一通り満たさ、供給力はむしろ需要を上回っています。
必要なのは、新たなニーズを創り出し、「お客様が買う理由」を創り出すことです。「コトつくり」が重要なのです。
「この包丁は、よく切れますよ!」ではなく、「職人がつくるパンくずが出ないパン切り包丁」が売れるのです。

現代の日本はこの状況です。

 

こんな状況なので、昔ながらのモノつくりから変わっていない企業は、伸び悩んでいます。

成長している企業は、中川政七商店のように、価値創造・顧客開発に真剣に取り組んでいる企業なのです。

 

 

 

 

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