市場縮小やコモディティ化は、大きなチャンスである


企業の方々とお話ししていると、このようにおっしゃる方が実に多いことを実感します。

「ウチの市場は縮小しているんですよ」
「ウチの商品はコモディティ化しているし」
「だから、ダメなんですよね…」

確かに市場がグングンと成長し、強力な自社商品が放っておいても飛ぶように売れる状況であれば、こんな悩みは簡単に解決できそうですが、そんな状況は、どんなに待っていても起こりません。

実は、市場が縮小したりコモディティ化している状況は、見方を変えれば、大きなチャンスでもあります。

 

躍進する市場も、強力な自社商品も、かつては先人たちが苦労しながら作ってきたものです。

 

たとえば、現在ビール業界首位のアサヒビールは、かつてビール業界で最下位転落直前。しかし1980年代、あのスーパードライが登場。

スーパードライの当時の責任者・松井康雄さんは、三ツ矢サイダーのマーケティングで成功した後、左遷先でスーパードライのマーケティング戦略を策定、そしてトップに直訴して本社マーケティング部・部長に抜擢され、スーパードライを成功させました。

1980年代の当時、ビール業界の常識は「消費者はビールの味がわからないし、飲み分けられない」でした。しかし実際には、消費者はビールの味を飲み分けている、という市場調査がありました。

そこで松井さんは、ターゲット顧客を明確に絞り、顧客が潜在的に望んでいた辛口ビールを開発、市場への浸透状況にあわせてターゲット顧客をシフトしつつメッセージを繰り出していきました。松井さんは、その時の様子を著書「たかがビール されどビール アサヒスーパードライ、18年目の真実」にまとめておられます。本書はまさに生きたマーケティング戦略の教科書です。

その後、スーパードライはアサヒビールを業界トップに押し上げる大ヒット商品となりました。

 

同様に、中川政七商店・社長の中川政七さんは、最近出版した著書「日本の工芸を元気にする」でこのように述べています。

・伝統工芸品の市場規模は、1983年は5400億円。2014年は1000億円。1/5に縮小している
・一方で、観光土産の市場規模は3兆6千億円で30年前から変わらない
・30年前は、食品・非食品の比率はほぼ半々だった。現在は食品が8に対し非食品は2
・3兆6千億円の半分を昔のように非食品に戻せば、それだけで1兆8千億円の市場規模
・そのうち何割かを工芸品で占めれば、工芸品の市場規模は、一気に拡大する

そして実際に、小売店「中川政七商店」を展開したり、工芸業者へのコンサルティングを行うなど、様々な取り組みを行い、成長しています。これは戦略思考です。

 

拙著「そうだ、星を売ろう」でも、宿泊客が減少する温泉郷・昼神温泉が、新たに「星を売る」という挑戦を行う様子を描いています。2016年はこの「日本一の星空ナイトツアー」に11万人が訪れ、昼神温泉の旅館・ホテルの収益力も大きく向上しました。

 

「市場縮小している。だから、ダメだ」
「商品がコモディティ化している。だから、ダメだ」

これは、主体性がある考え方とは言えません。

厳しい言い方になりますが、市場縮小・コモディティ化しているのは、その業界で長い間、新たな価値を生み出すことを怠ってきたからです。

しかし市場全体が「新たな価値が生み出されていない」ことは、見方を変えれば「ライバルも価値を創り出していない」ということです。

だからこそ市場縮小・コモディティ化は、自分たちが新たな価値を生み出し、市場で成長する大きなチャンスでもあるのです。

 

こんな状況こそ、マーケティング戦略思考でチャンスを切り拓くべきなのです。

 

 

 

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