客がほとんど来ない寂れた薬局が、なぜ儲かる?


先日、健康診断をした病院で、「念のため」と薬をいただいた時のこと。

病院で処方箋をいただき、地図を頼りにその薬局に向かいました。

道を歩いていたら、その薬局の看板がありましたが、そこは普通のマンション。指示通りマンション1階のロビーを通過すると、そこはなんとマンションの庭。その庭に薬局の入口がありました。

普通なら数名いる薬剤師も、ここは初老の男性1人だけ。店に入るとラジオが流れています。

この薬局は、普通の調剤薬局と比べると面積は1/5程度。とても狭い店内です。
普通の薬局には栄養ドリンクだけで10種類以上あったりしますが、ここは湿布が一種類、栄養ドリンクも見当たらず、置いている薬も数えるほど。
普通の薬局で壁一面にある広告もありません。
薬局によくあるIT機器もありません。

とても寂れています。
普通の調剤薬局なら薬剤師数名が忙しそうに働いているものですが、この薬局で一人だけいる薬剤師はノンビリとラジオを聴いているし、失礼ながら、商売のやる気がほとんど感じられません。
この薬局、儲かっているのでしょうか?

 

しかし近所の方に話しを伺って、驚きました。この薬局は、既に20年くらい営業しており、店の様子も最初の頃からほとんど変わっていないそうです。

「なんで続いているんだろう」

そこで考えました。

「この薬局、もしかしたら、意外と儲かっているのではないだろうか?」

 

まずこの薬局には一見客は来ません。入りにくい感じからすると、むしろ排除しているようにすら感じます。

実は私は、病院で処方箋をいただいた時に、「この薬はこちらの薬局しかありませんから」と言われてこの薬局にやってきました。

つまりこの薬局は、近所の病院で処方箋を出された患者さんだけを相手にしていて、その病院で必要な薬だけを用意しています。種類は絞られますし、量も限られるので、薬の在庫は最低限で間に合います。一見の一般消費者を排除しているので、湿布も最低限の1種類だけ。来店した時点で買う薬が決まっているので、店内の広告も不要です。

意外なことに、この薬局では薬がすぐに出てきます。一般の調剤薬局では薬が出てくるまで待たされることが多いことを考えると、大きな違いです。この薬局では、限られた薬剤の在庫情報は、恐らくこの初老の薬剤師さんの頭の中にすべて入っているのでしょう。だからすぐに用意できるし、待たせません。

つまりこの薬局は、一般消費者は完全に切り捨てた上で、近くの病院の患者さんだけを固定客として掴まえているのです。

仮にこの薬局と一般の調剤薬局のコストが面積比に比例していると考えると、この薬局のコストは通常の調剤薬局の1/5程度。

だからこの規模で経営できるのです。

 

もしこの薬局が一般消費者を切り捨てずに、対応しようとすると、どうなるでしょうか?

まず薬剤の品揃えを増やす必要があります。そのためには店舗を大きくし、薬剤師も増員する必要があります。

薬剤師を増やすには、薬剤師のスキルレベルは様々なので、まず薬剤の在庫情報をITで管理して、薬剤の効能もわかるようにして、病院の指示書に従って調剤し、ITで薬の情報を検索して精算できるようにする必要もあるでしょう。

在庫費用、店の賃料、人件費、IT化投資、あらゆる費用が大幅アップです。この費用に見合った売上が必要です。

売上拡大を目指してお客さんを一般消費者に広げた途端に、経営は変わり、普通の薬局と競争しなければならなくなります。

 

ノンビリとラジオを聴いているこの寂れた薬局の初老の薬剤師は、実はかなりしたたかな戦略家なのではないかと思いました。

 

 

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