家電量販店と書店を合体させたら、素敵な店になった


「家電量販店」と「書店」というと、どんなイメージを持たれるでしょうか?

「ギラギラ、ピカピカ。派手な音楽を鳴らし、明るい店内に家電やパソコンがズラッとあって、元気いい店員がいる」

とか、

「本は好きなんだけど…。どの書店も同じ本しか置いていないよね」

といった感想を持っておられる方は多いと思います。

「家電量販店も書店も、価格勝負で厳しい業界だよね」という印象をお持ちの方も多いでしょう。

 

先日、広島に出張した際に、この家電量販店と書店を組み合わせた店がありました。素晴らしい店でした。

店の名前で、ピンと来る方も多いかも知れません。

「Edion 蔦屋家電」

「家電量販店はギラギラ、ピカピカ。派手な音楽」「書店はどこも同じ」というイメージとはまったく違う異質の空間でした。

ゆったりとした店内。
やや暗めで落ち着く照明。
静かな空間。
心地よい空気感。
こだわりぬいた品のよい商品セレクション。

店内には、色々な店が入っています。基本は書店と家電ですが、文具、アウトドア用品、こだわりグッズ、靴の修理コーナー、さらに高級食材店もあります。カフェもスタバ以外に数店舗入っていました。

店内を見ているだけで楽しめますし、どこか癒やされる感じがします。

お客さんも、ソファーでくつろいだり、ゆっくり商品を見ていたりして、みなゆったりと過ごしています。

私は出張した日の夜にこの店を見つけ、翌日の午前中に2時間ほど時間が空いたので、この店内で過ごしました。気がつくと色々なものを買ったり、カフェで注文したり、ランチを食べて、意外とお金を使っていました。

実は昨日も、近所にある蔦屋家電で時間を過ごしました。ゆっくり本を見たり、目利きが選んだ商品を見ているのは楽しいものです。

ちなみに蔦屋家電を展開しているTSUYATAは、低迷する書店市場で紀伊國屋書店を抜き、いまや書店売上は日本一で成長を続けています。2016年の書店売上げは、TSUTAYAが1位で1308億円(対前年比+5%)。2位の紀伊國屋1060億円(-2.5%)です。

 

蔦屋家電が実践しているのが、まさに「モノ消費から、コト消費」です。

蔦屋家電が売っている本は、他の書店でも売っている本です。実は本は文化そのものです。「書店に行くと、なぜかワクワクする」と感じる人が多いのも、書店には新しい発見が必ずあるからです。

しかし昔の書店は、本という「モノ」を売っていればよかったのですが、いまは書店以外にもアマゾン・電子書籍といった利便性が高い代替手段があります。いまや消費者にとって、書店は「本に出会える唯一の場」ではなくなったのです。

蔦屋家電は、その「ワクワクする文化との出会いの場」を、家電などの様々な商品と組み合わせて、空間演出することで、ステージアップしているのです。

まずお客さんがそこで心地よく過ごしていただく空間を作る。
そして、その空間に長時間滞在していただく。
過ごした時間の長さに比例して、お客様はお金を使う。

スターバックスが成長したのも、スタバ店舗を家庭・職場とは異なる”3rd Place” (第3の空間)と定義したからです。

蔦屋家電が目指しているのも、同じ方向性なのです。

 

 

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