弱点こそが、あなたの強みの源になる


「自分の強みが何かを考えましょう」というと、このようにおっしゃる方が少なくありません。

「自分の強み?弱点ならいくつも思いつきますが…、強みはなかなか思いつきませんね」

実際には見方を変えると、弱点は強みの源になるのです。

 

たとえば私は、今はマーケティングの専門家として見られています。しかしマーケティングをちゃんと学んだのは、36歳になってからでした。その前までは、製品開発や営業で、悪戦苦闘・七転八倒の繰り返しでした。

「こういう商品を作れば売れるはず」→売れない
「お客様をどんどん訪問して売り込もう」→売れない

36歳でマーケティング職になり、マーケティング戦略を体系的に学ぶ機会がありました。そこで目からウロコが何枚も落ちました。

「なるほど、だから売れなかったのか!」

それまでいくら頑張っても売れなかった理由が、ハラに落ちてよくわかったのです。その後、学んだマーケティング理論をもとに、事業戦略を立てていくようになりました。

この経験が、「マーケティングを知らない人に、わかりやすくマーケティング理論を伝える」という今の私の強みの源になっています。マーケティング理論を知らずに現場で悪戦苦闘していたこそ、マーケティングを知らない人の立場がわかるからです。

 

このように、自分の弱点を活かして強みの源にしたケースは、世の中には少なくありません。

 

中日で219勝して名球会入りした大投手・山本昌は、入団当初は球速130Km/h程度でコントロールもなく、まったく期待されていない選手でした。その後、中日が業務提携していたドジャースのキャンプに参加した時も低い評価。「野球をやめてトラックの運転手になったら?」と言われたりしました。

ある日、米国キャンプの練習で見た大リーグの大投手・バレンズエラのスクリューボールに衝撃を受け、遊びで投げてみたところ驚くほど曲がり、これが決め球になりました。

山本昌のスクリューボールが大きく曲がった理由は、股関節や膝関節が外に割れているという独特の骨格のおかげで、ボールが上手く抜けたためでした。実は中日のトレーナーたちは全員、「山本昌の骨格では、野球選手として大成しないだろう」との意見でした。

山本昌も弱点と思われていたものが、強みになったのですね。

 

個人のケースを紹介してきましたが、これはビジネスでも同じです。

米国では、ウォルマートは地域の小売店に恐れられています。ウォルマートは人口1万人以下の地域に出店し、圧倒的な低価格と品揃えでその地域のお客さんをゴッソリと奪っていくからです。

ウォルマート出店が決まった地域に、小さな模型屋がありました。品揃えと価格競争力で圧倒するウォルマートと正面から戦っても勝てません。

あるコンサルタントが、その模型屋にこうアドバイスしましたた。

「これは大きなチャンスだ。ウォルマートで買える商品は一つも置かなければいい」

この模型屋は、熱狂的なマニアやコレクター向けの商品を揃えるようになりました。彼らはどうしても欲しい商品があると価格は二の次。この店はウォルマートが出店してから逆に繁盛しました。

これも「品揃えと価格ではかなわない」という弱みが、強みに転じた例です。

 

「自分の弱点」と思っていることは、実は「他にはない自分の資質」であることが多いのです。だからこそ、それを活かすことで、他の人には真似できない強みになりうるのです。

 

ご自身の弱みを今一度見直してみることは、意外と自分の強みのヒントを見つける早道なのかもしれません。

 

 

 

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