一人一人が仮説検証する組織に変革し、成長するジャパネット


今月の日経「私の履歴書」はジャパネットたかた創業者・高田明さん。
大評判ですね。私も毎朝楽しみです。

いまジャパネットの経営を担っているのは、2015年1月就任した高田旭人社長。創業者・高田明さんのカリスマ経営から、全員で仮説検証を徹底する経営に大きく舵を切り、成長を続けています。

4月の新刊「売れる仕組みをどうつくるか トルネード式仮説検証」では、髙田旭人社長への取材内容を紹介しています。4月の朝活勉強会「永井塾」でもお話ししました。

その永井塾で、こんなご質問をいただきました。

先代がカリスマ経営者だと、どうしても先代のやり方を継ごうとしがちと思います。旭人社長が仮説検証を重んじるようになったきっかけは何でしょうか?

創業者の高田明社長は、天才的経営者。社員は明社長の言うとおりに動いていたそうです。 旭人さんは証券会社に勤めた後、そんなジャパネットに入社しました。

旭人さんは入社前から「なぜジャパネットは急成長しているのか?」と興味を持っていました。

社長室長として明社長の傍らで意志決定に接し、色々考えると、「なるほど、これは合理的に考えている。ロジカルだな」と感じることが多かったそうです。

ただ明社長は意志決定は速かったのですが、意志決定の理由を説明しませんでした。そこで旭人さんは10年間、社員に明社長の意志決定の背景を「通訳」する役割をしていました。

2015年に旭人さんが二代目社長に就任した時、こう考えました。

「先代社長と同じスタイルでは持続性ある経営ができない。社員全員が、自分で仮説検証を実践する組織に変えていこう」

それまで常に明社長に判断を求めていたのを、社員自ら考えるように変えるのでなかなか大変ですが、時間をかけて取り組んでおられます。

たとえば、かつては明社長が「Aで行く」といえば、それに従うやり方に慣れていました。今でも旭人社長に「ABCどれがいいですか?」と聞く社員が多いのですが、徐々に「私はAで行きます。理由はこうです」という社員が増えてきています。

たとえば最近ジャパネットが始めた「クルーズ旅行販売」のアイデアは、幹部社員から出ました。

日本一周クルーズでは、横浜港を出港、翌日に富山に着いて夜8時まで観光。翌朝には金沢に着いて観光。これが10日間続きます。船内の食事は食べ放題。そして、ジャパネットのお客様は年齢が高めで、旅行ではゆったりしたいはず。一方でクルーズ人口はまだ10万人であまり知られていません。

「これは行ける。ジャパネットでこの良さを伝えたら、売れる」と仮説を立てて、実際に売り始めたらすぐ完売。船を一隻丸ごと買い上げて拡大販売したらまたすぐ完売。このため第一種旅行免許も取りました。

一方で、先代社長が反対していたプロジェクトを始めているケースもあります。 たとえば明社長は「商品修理はメーカーに任せればいい。ウチの仕事ではない」という方針でした。 しかし旭人社長は、ジャパネットで修理業務をすることにしました。結果、ジャパネット社員も販売する商品のことがよくわかるようになり、メーカーに商品改良の意見を言えるようになりました。

先代の明社長の意志決定スタイルを全員に広げながらも、今の最新状況に併せて、意志決定の内容は変えているのです。

 

取材では髙田旭人社長とは初対面でしたが、不思議なほど意気投合しました。髙田社長が目指す方向と、「トルネード式仮説検証」で提唱している方向が同じだからなのかもしれません。

 

 

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