それは「日本特有の問題」ではなく「アナタの組織の問題」です


色々な方々から、こういうご相談をよくいただきます。

「これって、日本特有の問題ですよね」

たとえば「なかなか意見を言えない、言わない」「情報や不祥事の隠蔽」「新しいことに挑戦しない」。これらをすべて「日本特有の問題」で一括り。言外に(だからどうしようもないんですよ…)というニュアンスを匂わします。

東京電力・福島第一原発事故でも、黒川清委員長は事故報告書にこんな言葉を残しています。

「根本原因は日本文化に深く染みついた慣習──盲目的服従、権威に異を唱えないこと、『計画を何がなんでも実行しようとする姿勢』、集団主義、閉鎖性──のなかにある」

私は、これらはすべて真の原因から目を背けて、見たくないモノを見ようとしていない、「単なる言い訳」だと思います。

真の原因から目を背けている間は、問題は解決できません。

2018年刊行の著書”The Fearless Organization” (邦訳『恐れのない組織』英治出版)で「心理的安全性」という概念を提唱した組織心理学者のエイミー・エドモンドソンは、福島第一原発の事故報告書についてこう述べています。

「黒川が挙げた『深く染みついた慣習』は、いずれも日本文化に限ったものではない。それは、心理的安全性のレベルが低い文化に特有の慣習だ」

(エドモンドソンが提唱する「心理的安全性」については、東洋経済オンラインに寄稿した記事に詳しく書きましたのでご興味ある方はご一読下さい)

確かに中根千枝著『タテ社会の人間関係』や山岸俊男著『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』にあるように、日本文化は特有の性格を持っています。しかしそれは様々な性格を持つ人間がいるのと同じであり、単なる「性格の特徴」でしかありません。

日本文化特有の性格を活かして好業績を上げ続ける企業もあります。トヨタはその筆頭でしょう。

トヨタは生産現場で問題があれば一作業員でも製造ラインを止める権限を与えられています。ボトムアップで社員の力を引き出し、積極的に失敗と改善策を見つけるトヨタ生産方式(TPS)も、かつて「日本型経営」と呼ばれていました。そしてこのTPSは、古いGM工場 + 元GM米国社員で構成されたGMとの合弁工場NUMMIでも見事に稼働して、生産性を大きくアップしました。いまやTPSは中国、東南アジア、欧州の工場でも現地社員により実践されています。日本型経営と言われたTPSは、世界的に普遍性があったのです。

「これは日本特有の問題だ」という単なる言い訳が、現在の日本企業の閉塞状態を生んでいるのです。

あまり精神論の話はしたくないのですが、この問題の本質は「やる気」の問題です。

日本特有の問題はありません。
その組織(=企業)に特有の問題があるだけなのです。

   

■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちらへ。

Twitterでも情報発信しています。