「イノベーションのジレンマ」は製造業だけでなくあらゆる業界でのテーマである–米国小売業のケース


絶賛された企業でも、破綻します。その一つの理由が「イノベーションのジレンマ」。

イノベーションを起こした企業が、目の前の顧客のことばかり真剣に考え続けているうちに現状維持に陥り、次のイノベーションを起こした企業に破れ、そのうち破綻してしまうジレンマをあらわした言葉です。

私は講演で、1950年代に全盛期を迎えていた真空管ラジオが、トランジスタという新技術を使い急成長したトランジスタラジオに置き換えられた例を挙げて「イノベーションのジレンマ」を説明しています。

 

一方で講演後のご意見やアンケートの中で、「自分の業界は製造業でないので、参考にならなかった」というご指摘をいただくこともあります。

実はイノベーションのジレンマは、製造業に限らずあらゆる業界で起こることです。その本質が、「新しい技術を活用したイノベーターが、現在の覇者に勝ってしまう」ということだからです。

先日の日本販売士協会様の講演では、米国小売業でこの150年間起こったケースを例に、イノベーションのジレンマをご紹介しました。

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図の補足説明です。

・1800年代後半に生まれた鉄道技術で、全米を網羅する輸送能力が大きく向上しました。そこでシカゴのマーシャルフィールドのように、駅の拠点に百貨店が生まれました。

・1900年代前半、自動車が全米に普及しました。そこで自動車を持った消費者の利便性を考えて、大きな駐車場を用意したシアーズのようなGMS(総合スーパー)が生まれ、成長しました。

・1980年代から90年代になると、SCM(サプライチェーンマネジメント)技術が大きく進化しました。そこで人口5万人程度の市に出店し、各店に対して配送センターから最適化したサプライチェーンで商品を発送することで、コストを徹底的に下げて、EDLP(エブリーディ・ロー・プライス)戦略を実現したルマートに代表されるディスカウントストアが急成長しました。

・2000年代、インターネット技術を活用し、おなじみのアマゾンのようなネットショップが急成長を続けています。

このように、一つの理論を理解することで、様々な業界に展開できるのですね。

 

講演では、お客様の状況、課題やニーズに併せて、なるべくハラ落ちするように講演内容をカスタマイズしてお話しするようにしています。