Zoom朝活永井塾 第42回「マーケティングの基本 レビットとコトラーのマーケティング論」を行いました

8月5日は、第42回の朝活・永井塾でした。今回もZoomでした。全国からのご参加をいただき、有り難うございます。

テーマは「マーケティングの基本 レビットとコトラーのマーケティング論」でした。

レビットは60年前に書いた「マーケティング近視眼」という論文で世界的に有名な人です。マーケティングの基本中の基本ですが、60年経った今でもこれが出来ていない企業が実に多いのが現実です。また「マーケティングの父」と賞されるコトラーも基本を教えてくれます。

そこで今回の朝活永井塾では、下記をテキストにして、この二人の考え方をご紹介し、最後に豊富なデータを基に「コトラーは間違っている」と言っているバイロン・シャープの考え方の触りを紹介しました。

「T.レビット マーケティング論」(セオドア・レビット著)
「コトラー、アームストロング、恩藏のマーケティング原理」(フィリップ・コトラー、ゲイリー・アームストロング、恩藏直人著)

ご参加下さった皆様、有り難うございました。

【プレゼン部分】

【質疑応答部分(プライバシー保護のため永井以外はお顔をボカしています)】

またリアルタイムに参加できなかった方々には動画配信をお送りしました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は9月2日(水)。
テーマは「コトラーは間違っている? バイロン・シャープのブランド論」です。
今回、最後にお話ししたコトラーへの反論について深掘りしていきます。

 

キリン vs.アサヒの戦いから見えてくること

1970年代まで、キリンビールは国内市場60%を支配する圧倒的トップシェアでした。
1987年、当時ビール業界3位だったアサヒビールは「スーパードライ」を発売。大ヒット商品になり、キリンを猛追しました。

成長が続くスーパードライは、「生ビール=鮮度」「スーパードライは生ビール売上No.1」を訴求。
1990年、キリンはビール市場のシェアは50%を割りました。
キリンも「一番搾り生ビール」を出してヒットしていましたが、スーパードライほどの勢いはありません。

1996年、キリンは主力製品・ラガービールの生化を決断します。理由は次の二つだといわれています。

・市場では熱処理した「苦みコク」よりも、生の「すっきりキレ」は評価されていた
・王者キリンとしては、スーパードライの「生売上No.1」は断固阻止したかった

しかしラガービールの生化に、消費者は激怒しました。

「俺のラガーに何してくれた!」
「もう二度と飲まない!」

一説によるとこの時、アサヒビールの樋口社長は「キリンが自分の土俵でラガーを熱処理ビールのまま押し続けられていたら、攻めあぐねていた。しかし同じ土俵に乗って来た。スーパードライをトップブランドに押し上げる千載一遇のチャンスだ」と言って、社内を鼓舞したそうです。

2年後の1998年、アサヒビールのシェア40%に対しキリンは38%。キリンはトップの座を譲りました。

実はあのコカコーラも、キリンと同じミスをしています。
コカコーラはコーラ市場で圧倒的トップシェアでした。
しかし1980年代に、ペプシが「ペプシチャレンジ」で猛追してきました。
消費者に目隠しで2種類のコーラを飲ませて美味しい方を選ばせると、それがペプシだった…というTV CMキャンペーンです。
実際に目隠しテストで消費者が飲むと、ペプシの方が高評価でした。

危機感を感じたコカコーラは、消費者調査を重ねて新しい味を研究・開発。ニューコークを発売します。
しかしコークファンは「オレのコークに何をする!」と猛反発。不買運動が起こってしまいました。

コカコーラが素晴らしかったのは、半年後に誤りを率直に認めたこと。ニューコークを撤回、オリジナルのコークを「クラシックコーク」という名前で発売しました。これでコークファンが一気に戻り、コカコーラは業績を拡大しました。

この話は、商品のポジショニングについてとても大切なことを教えてくれます。

商品のポジショニングは消費者の脳内にあります。
商品のポジショニングの所有者は、消費者です。
企業は所有者ではないのです。

キリン・ラガービールの愛好者にとってラガービールは、熱処理ビール。
コークのファンにとってコークの味は、あのコークの味なのです。

 

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自宅のすぐそばなのに素通りしていた絶品イタリアン

最近、お気に入りの店ができました。
とても美味しいイタリアンの店です。
テイクアウトも可能で、週に3回ほどはここのランチです。

実はこの店、10年ほど前から我が家から歩いて1分の場所にあったのですが、素通りしていました。

お気に入りになったきっかけは、1ヶ月程前に店の前を通り過ぎた際に、テイクアウトのパンフレットが店外にあるのを妻が見つけたこと。「良さそうじゃない?」と思って数日後に注文したら、実は本格派イタリアンでした。

この店は立地が良くないようで数年前まではあまりお客さんは入っておらず、「この店、続くのかな」と思っていました。相変わらずホームページもありません。でも最近は店内は混んでいて商売繁盛のようです。調べてみたら某有名人もよく利用しているようです。

また家から歩いて2分ほどの場所にあるフレンチがテイクアウトしているのも見つけました。週1−2回はここの料理で夕食です。ここも美味しい店です。ただこの店はパンフレットもないし、ホームページもありません。見つけたきっかけはフェイスブックでした。

どちらもコロナで在宅ワークが続かなければ、食べようとは思わなかった店です。

考えてみると、視点を変えればこれは大きなチャンスだと思います。
人々が電車で移動しなくなり、物理的な行動半径が小さくなり、近所によく出歩くようになりました。
これは消費者は近所にお金を落とすということ。ご近所のビジネスチャンスは拡大しています。

パンフレットや看板といったアナログ手段や、SNSやホームページなどのデジタル手段でご近所にアピールすれば、意外なチャンスが手に入るかも知れません。

 

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コロナ禍で上の人間が保守的になり、意見が通らない

講演で「コロナ禍の今こそイノベーションの最大のチャンス」という話をしました。
すると、こんなご質問をいただきました。

「うちの会社でも、最近になって新しい動きが色々な部署で始まっています。
ただ上の人ほど保守的な考えになっているようで、真正面から意見をぶつけても通りません。
そんな保守的な人間を説得する良い方法はあるのでしょうか?」

現場の担当者からすると悩ましいことですよね。

まず「上の人」が保守的なのは、過去の成功体験で「これが正しい」と信じ込んでいるからです。

一般的に言えば、その成功体験が有効ならば「保守的に考え、下の人の過去を否定する考えを却下すること」は、実は組織を守る上で合理的な行動です。問題は成功体験の賞味期限が既に切れているのに、考え方を変えられない「上の人」が多いことです。

「上の人」が、成功体験の賞味期限切れしているのに考えを変えない理由は、ただ一つです。
人間が成功体験を忘れられないからです。
こんな状況で、「下の人間」が真っ向から意見をぶつけて「その成功体験は間違ってます」と言うとどうなるか?
よくて無視、最悪逆ギレで、討ち死にです。

対処法があります。
事実をもって、「上の人」が「自分の成功体験は見直さないとヤバそうだ」と思わせることです。

たとえば「営業の商談の基本はやっぱり対面だ。Zoomを使ってきたけどさ。対面に切り替えるぞ」という上司のヤマダ営業部長がいたら、「ヤマダ部長、A社スズキ部長が部長に是非会いたいとおっしゃています。スズキ部長が『是非Zoomで』とおっしゃるので、私がすべて準備します」と言って同席していただく。そしてお客様のスズキ部長が「いやぁ、オンライン商談って話がテキパキ進むし、短時間で済むし、こちらも大助かりですよ」と言っているのを、その場で上司のヤマダ部長に聴いていただく。

このようにお客様の現場に連れて行き、「上の人」の常識がお客様の常識とかけ離れていることを実体験させるのは、有効な方法です。

あるいはテレワークを定着させようとしているのに、「上の人」が「やはり会社員はオフィスで働くのが基本でしょ」というのであれば、テレワークで仕事の生産性が上がった人の声をまとめたり、テレワークを実体験した人達の生の声を聴ける座談会を開催して「上の人」をゲストに招くのも、いいやり方です。

また「上の人」は『自分は常に大きな視点でモノゴトを見て判断している』と思っています。そこで社員全員に「2ヶ月間テレワークをした結果のアンケート調査」を行い、集計結果を見せる方法も有効です。今や大人数のアンケートでもGoogle Formsなどを使えば集計は実に簡単です。

「上の人」と同じ高さ視点で「上の人」が何を考えているかを想定し、事実をもって説得することです。

「上の人」もそれなりに仕事ができるから上にいるわけで、事実に納得すれば意外と成功体験は上書きでき、保守的な「上の人」でも説得できる可能性が高くなります。

くれぐれも「分からないヤツは論破してやる」とは思わないことです。相手もお立場がありますので。

コロナ禍の今こそイノベーションの最大のチャンスです。
一方で会社は組織で動いていますので、上の人を味方に出来るかどうかが、チャンスをモノにできるかどうかの分かれ目です。

ご健闘をお祈りしております。

 

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経験からの学びは、実は意外とアテにならない?

毎日餌をもらう七面鳥は「人間って、親切だなぁ。毎日餌をくれる」と思っています。
しかし生後1000日経った感謝祭の前日、七面鳥は首を切られて焼き鳥になります。

これは哲学者バートランド・ラッセルの作と言われている寓話です。
今日までの出来事で、ある程度は未来を予測できます。
しかし予測の正確さは、実際には思っているよりもやや少ないのです。
そして、そのちょっとした違いは、意外と大きな違いになるのです。

最近、想定外な出来事が増えてきました。
大きなところでは、コロナ禍はまさに想定外です。福島第一原発事故も想定外でした。
皆さんも仕事やプライベートで様々な想定外を経験されているのではないでしょうか?

私たちも過去の経験や学びから、論理的に結論を導き出そうとします。
この方法を「帰納法」といいます。
統計学も、帰納法による思考方法です。
しかし帰納法には問題があります。
過去の経験に基づいた分析は、意外とアテにならないことも多いのです。

たとえば1980年代に「過去数十年間、土地の値段が上がり続けた。土地を買っておけば間違いなく値上がりする」と考えて土地を買い込む人が沢山いました。そして彼らの多くはバブル崩壊で破綻してしまいました。

過去の経験から学ぶことは、とても大事なことです。実際に第二次世界大戦で米国は、常に過去の戦いから帰納的に学び続けて柔軟に戦略や戦術を進化させることで、硬直した戦略や戦術を変えられなかった日本軍を追い込みました。
しかし一方で、世の中には私たちが知らないこともとても多いのです。

過去の経験が全てではないことを知っておくこと、常に謙虚に自分の過去の経験を見つめることも、大切なのです。

 

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Zoom朝活永井塾 第41回「アル・ライズのポジショニング戦略、ブランド論、広告/PR論」を行いました

7月8日は、第41回の朝活・永井塾でした。今回もZoomでした。全国からのご参加をいただき、有り難うございます。

テーマは「アル・ライズのポジショニング戦略、ブランド論、広告/PR論」でした。

「ポジショニング」はマーケティングの基本概念の1つです。
1969年にアル・ライズとジャック・トラウトが提唱しました。
彼らは、ポジショニングとは「消費者の脳内に、商品を位置づけること」であるとシンプルに定義しました。

アル・ライズはその後、このポジショニングの考え方をブランディングやマーケティングコミュニケーションに発展させました。
アル・ライズのシンプルな考え方はマーケティングの本質を捉えています。

そこで今回の朝活永井塾では、下記をテキストにして、アル・ライズのポジショニング戦略を出発点に、ブランディング、さらにマーケティングコミュニケーションについて考えていきました。

「ポジショニング戦略[新版]」アル・ライズ、ジャック・トラウト著
「ブランディング 22の法則」アル・ライズ、ローラ・ライズ著
「ブランドは広告で作れない 広告vsPR」アル・ライズ&ローラ・ライズ著

今回もプレゼンの後、活発な質疑応答ができ、充実した会になりました。有り難うございました。

【プレゼン部分】

【質疑応答部分(プライバシー保護のため永井以外はお顔をボカしています)】

 

またリアルタイムに参加できなかった方々には動画配信をお送りしました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は8月5日(水)。
テーマは「マーケティングの基本:レビットとコトラーのマーケティング論」
マーケティングの基本に立ち返り考えていきたいと思います。

40年前にトフラーが予言していたコロナ後の世界

コロナで在宅ワークを続ける中で、今後どのようになるかを識者の方々が語っています。

実はその指摘の多くは、40年前にこの本で語られています。

「第三の波」(アルビン・トフラー著、1980年出版)

トフラーは未来学者です。本書はインターネットが本格的に普及する15年も前に出版された本です。当時私は大学生。貪るように読みました。40年ぶりに読み直すと、本書はその後の私のキャリアにとても大きな影響を与えていたことを実感します。

在宅ワークの未来については、第16章「エレクトロニクス住宅(コテージ)」で描かれています。

–(以下、本書 p.264-269より引用)—

やがて何百万もの人たちが、オフィスや工場へ通勤せず、家庭で過すーと予言すれば、直ちに激しい反論を受けるはずである。…(しかし)あらゆる社会的、経済的な要因が、労働の場所を移動する方向に集中している。

ある工場の技術部長は「技術者も含めて、10〜25%の仕事は、現在の技術でも家庭内でやれる」と言う。

HP社の生産部長も同じような予想をしている。「1000人が現場で生産に従事しているが、そのうち250人は技術系の仕事を家庭でしようと思えばできる。コンピュータ・ターミナルの設備さえ完成すれば、ホワイトカラーの研究開発部門の半数から3/4までの社員も家庭で仕事ができるようになる」

ある製薬会社の副社長によれば、問題は「何人が家庭で仕事ができるか」ではなく、「何人がオフィスまたは工場で仕事をしなければならないか」だそうである。「通信設備さえ整えば、優に75%の従業員は家庭で仕事ができる」という。

言語処理装置、ファクシミリ、コンピュータ操作台、テレビ会議装置などを設備した仕事場が低いコストで住宅内に置けるようになれば、家庭における労働の可能性は猛烈な勢いで広がるだろう。

—(以上、引用)—

先進企業の取り組みを紹介しながら、40年前に在宅ワークの方向性を正確に見極めています。
一方でトフラーは在宅ワークの姿や課題を描いていますが、それは現代の私たちが経験している姿そのものです。

—(以下、本書p.269-271より引用)—

だが、第二の波の工場やオフィスから仕事を第三の波の家庭へ移す作業を見くびってはない。従業員の勤労意欲や管理の問題、法人組織や社会組織の再編成の問題などの解決には時間がかかり、苦痛も伴うだろう。…だが「エレクトロニクス住宅」の方向へ、強い力が集中的に働いているのは事実である。

技術先進諸国は、現在、交通の危機に直面している。大衆交通機関は麻痺寸前の状態にあり、道路やハイウェーは渋滞が続き、駐車場は少なく、空気汚染は深刻化している。ストライキや故障は日常茶飯事となり、運賃は急騰している通勤費用の急上昇は、個々の労働者によって負担される。

遠距離通信装置を設置し、それを操作するための経費が、いつ通勤関係経費を下回るようになるか、重要なポイントである。交通費がうなぎのぼりなのに反し、遠距離通信に要する経費は驚くほど低下している。両者の価格の曲線は、どこかで交わるはずである。

—-(以上、引用)—

まさに日本の都市圏も満員電車での通勤が大きな問題。一方でいまやネット接続費は通勤費と比べると無視できるほど下がっています。現実には在宅ワークにすんなり切り替えた業界と、なかなか切り替えられない業界がありますが、確かに方向性は「在宅ワーク」に向かっています。

—(以下、本書p.272-273より引用)—

仕事を家庭に、または中間的手段として地域の職業センターに移すことにより、不動産にかかる莫大な費用を著しく軽減できる。本社や製造工場が小さければ不動産獲得費用は減り、冷暖房、照明、保安、管理維持の諸経費も少なくてすむ。

仕事を移し、通勤が減れば、汚染が減少する。空気清浄化のための経費が少なくて済む。

一日の勤務時間が短縮されると、それに対する通勤時間の比率は大きくなる。8時間勤務するのに1時間がかりの通勤を嫌う社員は、勤務時間が短縮されるとなおいっそう通勤時間を負担に思う。勤務時間に対する通勤時間の比率が高くなれば、往復にかかる労力はそれだけ不合理で無駄で馬鹿げて見える。通勤への不満が高まるにつれて、雇用者側は集中化された職場で働く従業員に間接的に報償を増額しなければならない。

—-(以上、引用)—

コロナ禍で在宅ワークがいかに楽かを知った私たちが感じていることでもあります。

—(以下、本書p.274より引用)—

米国やヨーロッパのように核家族からの脱皮が進んでいるところでは、家族を再び一体化しようとする要求が高まっている。歴史を通じて家族を一致団結させていた要因の一つは、仕事を共にすることだった点を記憶しておきたい。今日でも、夫婦が同じ職場で協力している場合は、離婚率が低いのではないかと思われる。

—-(以上、引用)—

四六時中家族と一緒にいることで、このことを実感した方は多いのではないでしょうか?

—(以下、本書p.276-277より引用)—

エレクトロニクス・ターミナルと備品を購入し所有した個人は、古い意味での従業員ではなく、「生産手段」の所有量が増大したのだから、事実上独立した事業家になる。家庭作業グループが小さな会社をつくって相互サービスの契約を結んだり、機械を共有する協同組合を結成するようになるかもしれない。さまざまな新しい関係や組織形態が生じる可能性がある。

家庭で仕事をすることによって家族や隣人との感情関係は深まるSF小説のような電子スクリーンが他人との間に介入する人間関係しかない世界ではなく、一つは真に人間的な関係、もう一つはエレクトロニクス傾注の間接的関係という、それぞれ異なった規則や役割を持つ2種類の人間関係が併存する世界になると思われる。

—-(以上、引用)—

前半に書かれているように、実際に独立事業家が増えてきているように実感しています。またコロナ前もメールのやり取りだけで実際に会わずに仕事が進むことは少なくありませんでした。今後はZoomなどのやり取りだけで仕事が進むことも確実に増えるでしょう。

—(以下、本書p.277より引用)—

もちろん、全労働者が家で働けるわけではないし、働こうともしないだろう。…回答不能な問題や苦悩がある一方で、新たな可能性もある。第三の波の生産方式への飛躍によって、過去から持ち越されたきわめて処理困難な問題が片づくかもしれない。…製造とホワイトカラーの両部門の生産方式が飛躍し、「エレクトロニクス住宅」の実現に到達できれば、いま人々が議論したり戦ったり、時にはそのために生命をかけている問題の多くは、時代遅れになり、論議の条件は一変するだろう。

今日労働力とされるものの10〜20%が、今後20-30年にわたってエレクトロニクス住宅に移行するなら、想像も及ばない歴史的転換が起こるだろう。

…このような歴史的大転換自体、われわれが新しい文明の縁に来ているという主張を裏付けるだろう。しかし、われわれは同時に、家族のきずな、友情、学校、企業を含む社会生活全般を変革しようとしている。技術体系、情報体系と並んで、第三の波の社会体系の創造が始まるのである。

—(以上、引用)—

いま、この転換が大規模に起きつつあります。

いずれも1980年に書かれた内容です。改めてトフラーの慧眼には驚かされます。

 

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電話で営業支援サービスを売り込む会社

弊社には、営業の電話が頻繁にかかってきます。
この日も、営業の電話がかかってきました。

「御社の営業をご支援します。私どもに新規顧客開拓のお手伝いをさせてください」

普段は営業の電話は「申し訳ありませんが興味ありません」とお伝えして電話を置くのですが、この日はちょうど仕事が一息ついていたタイミングで、少し余裕がありました。前々からこのような営業の電話には興味があったので、勇気を出して尋ねてみました。

「あの、ちょっといいでしょうか?質問があるのですが…」
「はい?」
「御社では、普段はこんなスタイルで営業なさってるのでしょうか?」

お相手の方は(想像もしなかった)という様子でこうおっしゃいました。

「え?…いいえ。弊社では別に営業部隊がいます。(笑)」
「具体的にどのような営業スタイルをなさっているのでしょうか?」
「ええと。他部門のことですし、こちらではわかりかねます」

(悪いことを聞いてしまったなぁ)と思って、営業支援には興味がないことをお伝えして、電話を置きました。

この会社、とても営業効率が悪いと思います。
そもそもアポもなくいきなり営業の電話をしてくる時点で、完全にNGなわけですが…。

いわゆる「ローラー作戦」という営業スタイルです。
電話先がどんな会社で、相手がどんな人かもわからずに、片っ端からのべつ幕なしに電話しています。
この営業スタイルは、既に数十年以上も前に賞味期限が切れています。
この営業をさせられている担当の方(新入社員らしい女性の方でした)も、可哀想です。

ある程度確率した成功パターンを武器に持たせるだけで成約確率は数〜数十倍にアップします。成功すればご本人も達成感を感じて、次の成長に繋がります。にも関わらず、成功率が極めて低い営業スタイルに膨大な手間と労力をかけているのです。非常にもったいないことです。これは会社の経営の問題です。

営業支援が売り物の会社であれば、まず取り組むべきは自社が普段から行っている営業をレベルアップさせることです。今の時代、少しだけでもその手のセールスの方法論を書いた本を読めば、正しい営業スタイルの方法はすぐに学べます。そして成果をあげ、確立した方法論を外販すれば、大きな成果が上がります。

もし外注先の会社が電話をしていたとしても同じ事です。成功確率が低いことは変わりません。外注先なり、外注元が方法論を確立すべきです。

もしあなたが新入社員で入社早々こんな営業をさせられていたら、早めに会社に見切りを付けて新しい会社に移った方が、自分のキャリア上いいと思います。
恐らくそのようなことをさせる会社の文化は簡単には変わらないでしょうし、成長することもないでしょう。

 

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コロナ禍を成長に転じる経営者と、低迷する経営者

新型コロナで、新しいビジネスの種が生まれています。
今までのしがらみも吹き飛びました。

こんな状況で、部下にこんなことを言うマネージャーもいるのではないでしょうか?

「この状況でどうするか、何か考えてみてくれ」

これはちょっと残念なマネージャーです。
本当はこう言って欲しいところです。

「私が責任を取る。何かやってみようよ」

必要なのは、マネジメントではありません。
こんな時こそ、問われるのはリーダーシップです。

決まった目標があり、その目標達成のためにきめ細かく管理するのがマネジメントです。でも今は、アフターコロナはどんな世の中になるか、何をすべきかがよく見えない状況です。

こんな状況で必要なのはきめ細かく管理するマネジメントよりも、何を目指すか明確にするリーダーシップです。しかしリーダーと言えども何をすべきかはわかりません。だからこそ「あえて現場を知る部下に任せる」という方針を明確にするリーダーシップが求められます。

部下を信じ、とにかく仕事を任せ、上司として腹をくくり、責任を引き受けるべきなのです。

経営者も同じです。多くの経営者はこんなことを考えているのではないでしょうか?

「社内に起業家を育てたい。社員の成長を、会社の成長に繋げたい。そして目玉事業を育てたい」

ここまでの問題意識は素晴らしいと思います。問題はその次です。

「社内クラウドファンディングとかは、どうだろう?」
「でも、どうやって評価すればいい?」
「そもそも、誰に何をアサインすればいいのだろう?」

これでは何も新しいモノは生まれません。「全社一丸!」「標準化し、管理する」というマネジメント発想と、イノベーションは水と油だからです。

イノベーションは、異質なモノの組合せです。多様性から生まれ、創発します。そもそも管理不能なのです。では、どうするか?

私は多くの企業様で、組織横断型の全社研修を行ってきて、実感していることがあります。

研修を通じて、社内の多様性に気がつく人は実に多いのです。

「他事業部がこんなことをしていたなんて知らなかった」
「社内協業が必要だと痛感した」
「会社が成長する種が社内に沢山あることが分かった」

実は社内には、隠れた「宝の山」があります。
しかし組織のサイロ化で、隠れた宝の山は眠ったままになっています。

この組織のサイロを崩せるのは、経営者だけです。

有志メンバーを募って組織横断型のイノベーションチームを作りすべて任せるのも、1つの方法です。社内の多様性を活かし、サイロを崩して社員に任せて「イノベーションを促す仕組みづくり」に徹するべきなのです。

このアフターコロナを、今まで停滞していたイノベーションを活性化するチャンスに転じたいものです。

 

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商談のオンライン化は、論客型セールスへのシフトを加速する

先週、ある企業様で法人セールスの研修を行いました。現場のB2Bセールスで尽力しているリーダーの方々が多く参加されました。
研修に先立ちオンデマンド講義で、下記のような話をお伝えしました。

—(ここから)–
B2B営業の世界では顧客の課題を理解して解決策を提供する「ソリューション営業」が主流でした。

このソリューション営業は限界に突き当たっています。顧客の課題は様々。課題把握には時間も手間もかかるし、それに付き合う顧客にとっても、負担です。

私は前職で人材育成部長の時、このソリューション営業から提案を受けたことがあります。1時間の打ち合わせが2回。その後、3回目の商談での提案はイマイチ。商談はそこで打ち切りました。

顧客も「ソリューション疲れ」を感じており、手間がかかるのに売れないのです。
ではどうすればいいか?

新時代のセールスバイブルと呼ばれる「チャレンジャー・セールス・モデル」の著者マシュー・ディクソンとブレント・アダムソンは、全世界6千人の法人セールスを調査して5タイプに分類しました。

■論客型…論議を怖れず顧客に自己主張する
■一匹狼型…自信家で我が道を行く
■勤勉型…誰よりも多く電話し顧客訪問する
■受動的問題解決型…要望には必ず対応する
■関係構築型…顧客のためなら必死に働く

著者らはそれぞれのセールス業績も調べました。

最も業績が悪いのが「関係構築型」。
突出して好業績なのが「論客型」でした。

現代のB2Bセールスでは複雑な問題解決が必須です。顧客の行動を変える必要があります。論客型は顧客に「こうすべき」といういい意味でのプレッシャーを与え行動変化を促します。関係構築型は変化を生み出せません。だからなかなか売れないのです。
—(ここまで)–

その上で研修当日は参加者とZOOMで議論しました。
すると、こんな意見をいただきました。

「コロナのおかげで、論客型になる必要をさらに強く感じます。最近は商談もZOOMが多いのですが、お客様も忙しいので、関係構築型だと商談のアポすら取れません。具体的に議論ができ、解決策提示ができる論客型でないとお時間をいただけません。逆に論客型ならばZOOMのおかげで1時間の商談が20分で済むし移動も不要なので、商談の生産性はもの凄くアップします」

これは私も実感しています。私もお客様との商談では必ず課題を伺って提案をするようにしているのですが、大抵は20分で打ち合わせは終了します。

コロナ禍で日本のセールススタイルも良い方向へ変革していきそうです。

 

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この2〜3ヶ月間で、デジタルシフトは2〜3年分進んだが…

新型コロナでデジタル・シフトが一気に進んだことは、私たちが実感していることだと思います。

私の場合、昨年オンライン会議での打ち合わせは限定したお客様のみで、1年間で数回程度。
今年3月以降は、全ての打ち合わせが一気にオンラインに変わりました。

米マイクロソフトの4月29日決算発表で、サティア・ナデラCEOは「2年分のデジタル変革が2カ月で起きた」と述べています。
実際にMicrosoft Teamsの利用者は5カ月前と比べて4倍に増えました。

オンライン会議だけではありません。
新型コロナで生まれた新需要の多くは、デジタルが関わっています。在宅ワーカーのための健康管理ツール、急に忙しくなった食料品店のための自動発注システム、医療施設のための業務向け清掃ロボット、休業が続くライブハウスや居酒屋、レストランのためのクラウドファンディング、小売をサポートするライブコマースなど、ウーバーイーツや出前館などなど。

様々な分野でデジタルシフトが一気に進みました。
これは技術が進化したためではありません。技術は前からありました。

変わったのは、私たちの危機意識と行動です。
これまで多くの企業でデジタルシフトをしようとすると、「確かに効率はよくなるかもしれないが、現実には○○○だから、今はできない」というもっともらしい言い訳で、先送りされてきました。

新型コロナでそんな言い訳が全て吹っ飛びました。
要は私たちは「やろうと思えば出来るじゃん」と気がついたのです。

デジタル・シフトで自宅から様々なことができるようになって、効率が上がり楽になったことを実感した人も多いのではないでしょうか?

しかし問題はこの後です。
「でもやっぱり昔のやり方の方がいい」といって元に戻そうとする動きが出てきます。

しかし日本は既に、世界全体で見てかなりのデジタル後進国です。
「全国民の名寄せ」という基本的なことすら、出来ていません。
だから給付金も、膨大な人海戦術に頼らざるを得ません。
そして「諸外国と比べて支援に時間がかかりすぎる」と政府に文句をいう人が、マイナンバー制度に大反対していたりします。
デジタル後進国を生み出しているのは、実は変わろうとしない私たちなのかもしれません。

たかがデジタルと思いがちですが、今や私たちの生活にも関わっており、国の競争力も左右しているのです。

明治維新、第二次世界大戦終戦と、日本は常に外圧で変わってきた歴史があります。
新型コロナを期に本当に日本が変われるかは、これから数ヶ月にかかっていると思います。

 

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Zoom朝活永井塾 第40回「サブスクとカスタマーサクセス」を行いました

昨日6月3日は、第40回の朝活・永井塾。今回はZoomで行いました。
全国から大勢のご参加をいただきました。有り難うございます。

テーマは「サブスクとカスタマー・サクセス」でした。

サブスクリプション(サブスク)とは、顧客が継続購入してもらえる長期的な関係を作るビジネスモデルのことです。サブスク自体は雑誌定期購読のように昔からありますが、現代のサブスクはデジタルで届けられ、その過程で生まれる膨大なデータを使い顧客毎にサービスを最適化する点が、大きな違いです。このためサブスクはソフトウェアの世界から、エンタメ業界、交通業界、製造業など、あらゆる世界に拡がっています。

サブスクは売上が安定し不況に強いため、多くの企業がサブスク化に挑戦を始めています。
一方で既存事業をサブスク化するには、一時的な利益低下などの大きな壁もあります。

またサブスクでは「売って終わり」という従来の販売モデルが一変します。
新規顧客獲得の一方、既存顧客を大切にして顧客単価を上げ、長く繋ぎ止めることが必要になります。
そこで生まれたのが、既存顧客の成功を最大限に支援し、顧客解約(チャーン)を防止するカスタマーサクセスという仕事です。

そこで今回は下記をテキストに使いながら、サブスクとカスタマーサクセスについて学んでいきました。

「カスタマーサクセス」 ニック・メータほか著
「サブスクリプション」 ティエン・ツォ著

今回はこんな感じでZoomで行いました。3ヶ月ぶりに朝活永井塾で活発な質疑応答ができ、充実した会になりました。有り難うございました。

【プレゼン部分】

【質疑応答部分】

 

今回もリアルタイムに参加できなかった方々には動画配信をお送りしました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は7月8日(水)。
テーマは「アル・ライズのポジショニング戦略、広告論、ブランド論」
7月と8月もZoomで行います。楽しみです。

もはや消費者はコントロールできないという実験

マーケターがよく使う手法に「おとり効果」があります。
こんな実験があります。

被験者を2グループにわけて、Aグループにはカメラ2台(2万円と3万円)から1台を、Bグループは1台(5万円)を追加しカメラ3台から1台を選ぶ実験をしました。結果、Bグループの方が3万円のカメラに人気が集まりました。5万円のカメラがおとりになり、3万円のカメラに誘導した結果です。

この手法は実際の店舗でよく使われてきました。

しかしいまの消費者は、カメラを購入する際に大抵はスマホでチェックします。
この方法はいまでも有効なのでしょうか?
実際に実験した人がいます。

ある研究者は、オンラインショッピングと同じように様々な価格情報や消費者レビューを見せた上で、同様の実験をしました。するとおとり効果は跡形もなく消え去ってしまいました。考えてみれば当たり前ですよね。
(ちなみにこれはイタマール・サイモンソンとエマニュエル・ローゼンの著書「ウソはバレる」で紹介されていた実験です)

現代の消費者は、マーケターが思うように簡単に操られません。
消費者の脳が進化したからではありません。
テクノロジーが進化したためです。

私たちマーケターは、「消費者はもはやコントロールできない」という事実を受け入れた上で、マーケティングを考えるべきなのです。

 

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顧客目線が難しい理由

顧客目線に立つのは、本当に難しいですね。

顧客目線で徹底的に考え抜き顧客インタビューを何度も行って商品や広告メッセージを創り上げ、「これだけ考え抜いたから絶対大丈夫」と思ったのに、顧客がまったく反応しない、ということは実によくあります。

「刺さる広告」(レックス・ブリッグス&グレッグ・スチュアート著)を読んでいて、その理由を端的に述べている一文に出会いました。

マーケターは家族や恋人と過ごすよりも自分のブランドと過ごす時間のほうが長い。だが、消費者がそのブランドについて考えるのは、一度に数秒に過ぎない。

少し補足します。

私たちは顧客の様々な調査情報を元に顧客のことを考えて、商品をデザインし、時間をかけて考え抜きます。社内外の人達にも声をかけて大勢で考え、完璧なメッセージを創り上げます。膨大な時間をかけるわけですね。

しかし顧客はほとんど時間をかけません。

自分が顧客の立場なる、よくわかるのではないでしょうか?

たとえば店頭にある商品は、ほとんど素通り。
あるいは新聞広告は、チラッと「あ、広告ね」と思うだけで、目は記事を追うだけ。
大金をかけたテレビCMも、録画の早送りでスキップされたりします。

私たちが膨大な時間を投下し顧客目線を意識して考えた商品や広告メッセージも、顧客から見たら膨大な他情報の中に埋もれたごく一部です。

私たちが時間をかければかけるほど、顧客と同じ白紙の状態で見ることが出来なくなるという皮肉なパラドックスが起こっているのです。
私たちのレンズは、「自社目線」で大きく歪んでいます。

だからこそ様々な手段を駆使して客観的に消費者の脳内を理解し、検証することがとても大事なのです。

 

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朝活・永井塾 第39回「サービス・イノベーション 〜 製造業のサービス化」を動画配信しました

先週5月13日は、第39回の朝活・永井塾。テーマは「サービス・イノベーション 〜 製造業のサービス化」でした。

今回も動画配信でお送りしました。

多くのものづくり企業は「製品だけではあっという間にコモディティ化してしまう。もう限界だ」と考えています。しかし製造業はサービス化により大きく成長できます。

たとえばGEは、ジェットエンジンの稼働状況の監視サービスが大きなビジネスになっています。
コンピュータメーカーだったIBMは、今やソフトウェアとサービスが売上の8割以上を占めます。
iPhoneもスマホとアプリが一体化しています。

これらはサービス・イノベーションの成果です。
では、サービス・イノベーションとはいかに起こるのでしょうか?

そこで今回は下記をテキストに使いながら、サービス・イノベーションについて学んでいきました。

サービス・イノベーションの理論と方法 近藤隆雄著

今回もこんな感じの動画を配信しました。皆様からメールでいただいた御質問には別途お答えいたしました。有り難うございました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は6月3日(水)。テーマは「サブスクとカスタマーサクセス」。
久々のリアルタイム朝活で、Zoomで行います。詳しくはメルマガでご案内しています。
有り難いことに、全国からお申し込みをいただいてます。楽しみです。

製造コスト50ドルで1000ドル節約する商品。日米欧の経営者の値付けは?

世界的な価格戦略の第一人者であるヘルマン・サイモンとハーバード・ビジネススクールのロバート・J・ドーラン教授は、名著「価格戦略論」の最終章で、日本企業の経営者とのこんな経験を紹介しています。

1980年代後半、ハーバード・ビジネススクールで行った経営者向けセミナーの参加者に「製造コスト50ドルで顧客に1000ドルの節約を実現する製品に、いくらの価格を設定するか」という課題を与えました。

欧州経営者は600ドル、米国経営者は500ドルと答えました。
しかし日本の経営者の答えは、100ドル。

日本の経営者はその理由をこう言いました。

「我々は高い顧客付加価値の実現は我慢し、その代わりに市場の占有を目指している」

30年以上前の出来事で、日本企業が抜群のコスト競争力を持っていた頃の話です。

今やコスト競争力はアジア諸国の方が優れていることが多いのですが、「高い顧客付加価値は我慢して、市場占有を狙う」という考え方は日本流商売の遺伝子に深く刻み込まれているようにも感じます。

日本流商売の源流を遡ると、江戸時代後期、享保時代に活躍した石田梅岩の思想に辿り着きます。

梅岩は「経費を3割節約し利益を1割減にせよ。常に奉仕を心がけ、欲を出すな」と説きました。この思想は日本にとって大きな財産でした。日本は庶民の間にこの考えが拡がった状態で明治維新を迎えて殖産興業を実現し、さらに戦後の荒廃の中から高度経済成長を成し遂げました。

この30年間、日本は高付加価値へのシフトが求められています。
多くの日本企業にとって、高付加価値戦略は初の挑戦です。
しかし日本企業は製品性能に頼りすぎ、感情的便益を無視し、強いブランドを創れていません。

そんな中でも、日本企業の中には、シマノ、マキタのように隠れた高付加価値を築き上げた企業もあります。

今後日本企業が高付加価値戦略を実現するには、これまで疎かにしがちだったブランド戦略と価格戦略の基本を改めて学んだ上で、一見矛盾する梅岩の思想との正反合を図り、日々の仕事で実践すべきなのではないかと思います。

 

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New York Timesは10年かけてサブスク・シフトした


一時期、こう言われていました。

「新聞業界は死ぬ。オンラインニュースは無料だ。現代人はコンテンツにお金を払わない」

現実には、2019年に日経電子版の購読数は2019年に70万人を超えました。
かく言う私も、数年前から日経は電子版で読んでいます。紙の新聞は嵩張るので配達は止めました。

考えてみれば「オンラインは無料、紙は有料」というのは変ですよね。

また無料オンラインニュースは広告で稼ぎますが、「広告にうんざり」という人が多いのも現実。

もともと新聞は、紙の時代から売上の過半が広告でした。
しかし広告はどうしても景気に左右されます。

5月上旬、私は日経夕刊を見てショックを受けました。
広告の数が激減しているのです。この日、広告は合計6件。1ヶ月前(4月上旬)の夕刊では、合計14件でした。
コロナ禍で広告の仕事は真っ先に削られているのが現実です。

ここで参考になるのが、New York Timesの挑戦です。
2007年、New York Timesも広告売上の激減に直面。そこでサブスクリプション(サブスク)モデルへの変革を進めてきました。
図はNew York Timesの過去の決算発表を元に集計した結果です。先日5月6日発表の2019年度決算も反映しています。

この12年間で、不安定な広告売上比率は59%から29%に半減する一方で、サブスク売上比率が33%から60%に増加しています。

サブスク・シフトは収益は安定します。New York Timesでは、年初に年間売上の6割を確保した状態でスタートできます。
ビジネスモデル上は、New York Timesは新聞社というよりも、収益が安定しているSaaS企業と言えるのかも知れません。

一方でサブスク・シフトには時間がかかります。
またサブスク・シフトで一番悩ましいのは、売り切りから定額制に変わることで、売上が一時的に落ちることです。

このように考えると、コロナ禍で需要が蒸発している今はサブスク・シフトに挑戦する絶好の好機なのかもしれません。

(なお、次回6月3日の朝活永井塾は、このサブスクのテーマを掘り下げます。今回はZoomで開催します)

 

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成功の90%は、適切な場所とタイミングに依存する

まさに「ガラガラポンッ」という音が聞こえんばかりに、世の中が急速に変化しています。
マーケターはどうすべきなのでしょうか?

セオドア・レビットは「マーケティングの針路」と名付けられたハーバード・ビジネス・レビュー2001年11月号のインタビューで、次のように語っています。

—(以下、引用)—

「変化と対応こそ生存する唯一の方法」なのです。
「何をすべきか」の答えは、マネージャーの頭の中や社内に存在するのではなく、外部環境によって決まるのです。
ウディ・アレンは「成功の90%は適切な場所とタイミングに依存する」と言っています。
…いつも注意深く気を配り、常に起こっていることに俊敏に対応せよ、ということです。

—(以上、引用)

このレビットの言葉は、まさにいまの私たちに対する言葉だと思います。

まず、周りを見渡してみる。
そしていまこの時に、私たちそれぞれの現場で、この大きな変化に対して、自分の力で何ができるのか?
見て聞いて観察した上で、考え、実行してみる。
そして成功は、場所とタイミングが決めるのです。

物事が短い間に急速に変化しているいまこの現在に、様々な成功のチャンスがある筈です。

 

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人と人との直接の関わりが貴重な世の中に変わっていく

新型コロナで、人と人の接触がすっかり少なくなりました。
この状況は続きそうです。

こんな中、2007年に出版された「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」を再読中です。

改めて思ったのは、人と人との関わりの大切さ。
スタバは広告を出しません。広告を出すお金があれば、店舗で顧客がより心地よく過ごせることに投資したり、無料のテイスティングサービスで新商品を知ってもらうことに投資します。店舗での顧客と従業員のふれあいが何よりも大切だ、と考えているからです。

いま、「ソーシャルディスタンス」で人との接触を避けることが最優先になっています。こんな時こそ、人同士の直接の関わりが、貴重な価値を獲得しつつあるように思います。

人同士の関わりやリアルの体験はデジタルでは代替できない、ということが、この世界的な自粛ムードで多くの人たちが実体験しています。

コロナ禍が一段落した後は、人同士が直接関わり合ったり、リアルな体験の価値が以前よりもずっと高くなる世の中に変わっていくようになるのではないでしょうか?

 

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2020-04-28 | カテゴリー : 社会 | 投稿者 : takahisanagaicom

今この瞬間に生まれている無数の新規事業の種を掴む方法

新型コロナの影響で、多くのビジネスが止まっています。しかしこんな中でも、新たな需要が次々と生まれています。

ごく一例ですが、在宅勤務が急増したことで、遠隔会議サービス、自宅の仕事環境のグレードアップ、運動不足解消のためのジョギングや筋トレ、といった需要が急拡大しています。

この需要の周辺で、たとえばリモートでエクササイズをレッスンしたり、Zoomを活用した営業の方法をコンサルティングしたり、といった新規事業の種も生まれています。

急速に成長し、まだ誰も勝者がいない新規事業は、実に大きなビジネスチャンスです。
新型コロナのために、いまこの新規事業の種が様々な分野で無数に生まれつつあります。
では、いかにこれらの新規事業の種を掴めば良いのでしょうか?

一つの方法は、他の誰も手に付けていない新規事業を立ち上げること。
しかしこれは、率直に申し上げて至難の業です。

ここで現代のマーケティングに最も大きな影響を与えたセオドア・レビットが1966年に書いた論文「模倣戦略の優位性」で紹介した「かじりかけのリンゴ戦術」が参考になります。要約すると、

成功するには最初にリンゴをかじる必要はない。
果汁がたっぷりある二口目か三口目で十分。
ただし果汁が涸れた10口目ではダメ

ということです。

ただレビットがこの考え方を提唱したのは、54年前でした。
当時は3口目を食べるまで1年くらいは余裕がありました。
現代ではこれがかなり短くなっています。1〜2ヶ月の遅れが致命傷です。
最近の実感では、新型コロナでこれがさらに短くなっている印象を受けます。
2週間前のニュースを見返すと、かなり大昔の話のように思えます。

新規事業の種が次々と生まれつつある今、遅くても2週間程度で3口目のリンゴを探し、実際にかじってみることが必要なのではないかと思います。

「コロナが収まってから、じっくり新規事業を考えよう」としても、リンゴは10〜20口目で芯も残っていないかも知れません。

 

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今こそ読みたい、伊藤雅俊著「商いの道」

新型コロナのために、経営者や現場のビジネスパーソンの皆様はとても厳しい時期におられるとお察しします。
こんな時こそ読みたい1冊があります。

「商いの道 経営の原点を考える」 伊藤雅俊著

いまや売上6兆円を超えるセブン&アイ・ホールディングスの母体となったイトーヨーカ堂を設立した伊藤雅俊さんが、商いの知恵を書き綴った本です。

伊藤さんはイトーヨーカ堂の前身となる母と兄が営んでいた羊華堂という洋品店に入ったのは、終戦直後、21歳の時。羊華堂はその年の東京大空襲で店が灰燼に帰していました。伊藤さんの母にとって店がなくなるのは日露戦争・関東大震災に続き3度目の体験だったそうです。しかし母は真っ先に立ち上がり、北千住の中華ソバ屋の軒先から再出発しました。

母は常に、
「お客さんは来ないもの」
「取引したくてもお取引先は簡単に応じてくれないもの」
「銀行は貸していただけないもの」、
そのようなないない尽くしから商いは出発する、と言っていました。

店を3度もなくす中、心の底からの実感だったのでしょう。

口癖は「商売とは、お客さまを大事にすること、そして信用を大事にすること、それに尽きる」

そんな伊藤さんは、時代の怖さを肌で知っていました。昭和11年(1934年)の日本は、大衆消費社会。米国GEの家電製品も売られていたよい時代でした。しかし翌年の盧溝橋事件を契機に、わずか数年後に第二次世界大戦に巻き込まれ、日本中は空襲で焼け野原になりました。伊藤さんが学んだのは「誰もそんなことを考えていない時の怖さ」。全てが当たり前に続くということはない、ということです。

ほんの3ヶ月前のことを思い返すと、この伊藤さんの言葉は改めて深く身に染みます。

商人(=ビジネスパーソン)にとって利益よりも大切なものが「信用」。誠実さを忘れ「少しくらい」「今回だけ」と言い訳する癖が付くと、積み重なっていずれ信用を失います。商人は常に信用の積み重ねを実践すべきなのです。

伊藤さんが知る激動の大正・昭和の時代を生き抜いた102歳の老銀行家は、「現金ほど大事なものはない」と言い切っていました。誠実な商いのためには、現金で仕入れ、現金で売り、現金で決済する現金主義が必要になります。現金は酸素や水と同じで、現金を確保しないと企業は死んでしまいます。これも今、私たちが実感していることではないでしょうか?

イトーヨーカ堂は大きく成長してきましたが、伊藤さんは伝統を頑なに守り、時流に流されない老舗的な商いも素晴らしいと考えていました。そんな利点と美点も自分の会社に取り入れられないかと考え、伊藤さんが辿り着いた結論は「成長を考えるな、生存を考えよ」
成長だけ考えると人は貪欲になり、いつの間にか膨張・肥大化し、他を蹴落とそうとし、不正を働きます。「長い目で見れば、むしろいかに生き抜くかを考えるべき」と伊藤さんは言います。

生存を考える商いならば基本に忠実になりお客さまに喜ばれ大きな信頼が得られます。無理せずに周囲の状況を見極め、一歩ずつ歩む生き残り商法の方が安全です。

本書では他にも様々な箴言が数多く書かれています。
ビジネスが大きな曲がり角を迎えている今こそ、じっくり読みたい1冊です。

 

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朝活・永井塾 第38回「サービス・ドミナント・ロジック」を動画配信しました

4月8日は、第38回の朝活・永井塾。テーマは「全てのビジネスはサービスである  〜 サービス・ドミナント・ロジックの世界」でした。

新型肺炎の影響を考えて、今回も動画配信でお送りしました。

私たちは「企業が価値を生み、顧客に提供すべき」と考えがちですが、最近「この考え方は間違い」といわれ始めています。
これはモノに支配された考え方(グッズ・ドミナント・ロジック、GDロジック)です。
弊害の最たるものが、顧客を考えなくなること。米国の鉄道会社は、自社事業を輸送事業でなく鉄道事業と考え、衰退しました。モノ発想で考え続けた結果です。

モノづくり企業が「顧客志向への変革」と言い始めているのは、GDロジックは「顧客視点で価値を生む」という発想がないためです。
そこで2004年にラッシュらが論文で提唱したのが「全てのビジネスはサービスの交換である」と考えるサービス・ドミナント・ロジック(SDロジック)です。最新マーケティング理論の多くは、少なからずこのSDロジックの影響を受けています。
SDロジックは「モノづくりに励んでいるのに何故売れないのだろう?」という悩みから抜け出すヒントを与えてくれます。

そこで今回は下記をテキストに使い、SDロジックの考え方を学んでいきました。

サービス・ドミナント・ロジックの発想と応用 (R.F.ラッシュ著)

今回もこんな感じの動画を配信しました。皆様からメールでいただいた御質問には別途お答えいたしました。有り難うございました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は5月13日(水)。テーマは「サービス・イノベーション 〜 製造業のサービス化」。次回もネット配信で行います。

 

詳しくはメルマガでご案内していますので、参加希望の方はメルマガにご登録いただければ幸いです。ご参加をお待ちしております。

 

こんな時こそ、夜9時にはスマホとPCを止めよう

最近、夜なかなか寝付けないことが増えました。ちょっと動悸もします。
そこで習慣を一つだけ変えたら、とても改善しました。それは、

「9時を過ぎたら、スマホとPCを使わないこと」

寝る直前までパソコン画面を見て、寝室にもスマホを持ち込んで布団の中で見たり、寝ている最中にスマホでメールが届くと気になって見たりしていました。
これだとなかなかリラックスできませんよね。

人間には日中に活性化する緊張モードの交感神経と、夜間に活性化するリラックスモードの副交感神経があって、どちらかが活性化するとどちらかが休む仕組みになっているそうです。
寝る直前までスマホやパソコンを見ることで、本来は休むべき交感神経がずっと活性化したままになり、副交感神経の出番がなかなかやってこない、という状態になっていたようです。

パソコンやスマホを見続けている私を見るに見かねた妻が「9時以降は、使うのを止めてみたら?」とアドバイスしてくれて、実際にやってみたら効果がてきめん。
夜はグッスリ眠れるようになり、動悸もほとんどしなくなりました。

一つだけ工夫したのは、目覚まし時計を買ったこと。
スマホのアラーム機能を目覚ましに使っていたのですが、スマホを枕元に置くとメールなどの着信が気になります。そこで寝室にスマホを持ち込まないために、目覚まし時計でアラームをかけることにしました。

最近は新型コロナのニュースも多く、ついつい気になってしまいます。
これでは交感神経が休まるタイミングがありません。
これが続くと自律神経が消耗してしまいますし、それが体力や抵抗力低下に繋がり、感染リスクも高まりかねません。

新型コロナとの戦いも長期戦になりそうです。
こんな時こそじっくり休んで、体力を維持したいものです。

 

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新型コロナ後の新世界

自粛が続いています。なかなか終わりが見えません。

しかしこの状況も、いつかは治まります。
そして治まった時には、社会構造が変わっている可能性があります。
私たちはそれをどのように見るべきなのでしょうか?

マーケティング視点で考えると、ポイントは一つです。

どんな需要が減り、どんな需要が増えるか。

ここでのキーワードが、恐らく「デジタル化」です。

今回の危機について、「サプライチェーンや人の動きの停止」といったように、過去の危機と性質の違いが色々と言われています。
社会環境面を考えてみると、9.11(2001年)、リーマンショック(2008年)、3.11(2011年)の危機と大きく異なるのは、「デジタル化が極めて深く浸透している点」だと思います。

いまやスマホは誰でも持っています。SNSは広く普及、動画は当たり前。ネット取引の配送網も完備しています。
この数年間で、デジタル環境は急速に整ってきました。
新型コロナを契機に、デジタル化が一気に加速していきます。

私の身近でいくつか考えてみました。

たとえば、オフィス業務。
従来オフィスで行っていた作業のうち、かなりの部分は在宅勤務でカバーできることを実体験しているビジネスマンは多いと思います。Zoomなどを使えば数人の会議は簡単ですし、数十人の会議もこなせます。「都心のフィス需要が足りない」と言われてきましたが、デジタル化可能な分のオフィス需要はネットに移行する可能性があります。

たとえば、外食産業。
カフェやレストランのような外食業は、今回の新型コロナで壊滅的な影響を受けています。
一方で新型コロナの前から、客席ゼロで宅配専門の「ゴーストレストラン」が急成長していました。
今後、宅配サービス活用で新たな需要を確保しようとする外食業が増えていくでしょう。
実は先日、近所の高級フレンチレストランも、テイクアウトサービスを始めました。
この20年間成長してきた中食需要拡大と同じ効果が、半年から1年で起こる可能性もあるかもしれません。

たとえば、大規模イベント。
多くの会社が、数百人から数千人を集めて商品展示会やセミナーを行ってきましたが、一斉にオンライン開催に切り換えています。
リアルな商品を触る体験はオンラインでは再現できませんが、情報を伝えるだけならば、かなりの部分はオンラインでも代替可能です。しかも開催コストは減り、開催は容易になっていきます。
今後、リアルな大規模イベントの需要は減ってネットにシフトしていく一方、開催が容易になることでオンラインを含めた全体需要は増加し、イベントマネジメントの需要も増える可能性があります。

身近な例と言うことで考えてみました。

いま現在、自分が見えているビジネスの景色の中で、どんな需要が減り、どんな需要が増えているのか?
その変化が、人々の意識をどのように変えるのか?
そして感染が終息したと仮定した場合、その需要はどうなるのか?

これを考えていけば、「新型コロナ後の世界」で自分たちのビジネスがどうなるかが見えてくるのではないでしょうか?

 

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「100日後に死ぬワニ」は「みんなのブランド」になり、そして批判された

(写真は楽天の100ワニコレクションより)

Twitterで連載さた4コマ漫画「100日後に死ぬワニ」が大人気になり、そして炎上しました。

ワニの何げない日常を描いた4コマ漫画ですが、連載第1回目のコマ下の欄外にはこんな文字が。

「死ぬまで99日」

これが毎日カウントダウンしていきます。大人気になり、3月20日に最終回を迎え、ワニは死んでしまいました。
作者のきくちゆうきさんのフォロワー数はなんと220万人に。多くの人が「泣いた」「感動した」「ありがとう」とコメントしました。

しかし最終回が終わると、「書籍化決定、映画化決定、グッズ・イベント」などが矢継ぎ早に発表され、楽天でも「100ワニコレクション」のショップが開店しました。

すると今度は批判が集まりました。
「広告代理店が関わっていたのではないか?」「全部仕組んでいたのではないか?」と言われ、Twitterのトレンドに「電通案件」というタグもランクイン。ただし実際には電通は関わっていないそうですが。

ここまで批判が拡がったのは、「100日後に死ぬワニ」が、ブランドとしてあまりにも成功してしまったからだと思います。

成功したブランドは企業の手を離れます。

やや古い話ですが有名な事例もあります。1985年、ペプシがシェア争いで急追してきたため、コカ・コーラは従来のコークを一新した「ニューコーク」を発売しました。すると消費者は猛反発。不買運動まで起こりました。結果、ニューコークは3ヶ月で市場から撤収することになりました。

米国ではコカ・コーラは「幸せの象徴」です。米国の消費者は深い愛着を感じていました。ニューコークへの変更は、一方的に「幸せの象徴」を取り上げられる裏切りを意味していたのです。

成功してしまうと、企業の都合でブランドをコントロールできなくなってしまうということです。
しかも現代では消費者の反応はSNSで一気に拡がり、コントロール不能になります。
企業ができるのは、自社の行動をブランドのミッションに一致させることだけです。

「100日後に死ぬワニ」は「100日後、どうなるんだろう?」という読者を惹きつけ、最後に多くの人に感動を与え、大成功したブランドに育ちました。

最も集中が集まるこのタイミングで販促をかけるのは、一見するとマーケティングの王道に思えます。

しかし大きく成功してしまい既に自分の手を離れているブランドの場合、これは悪手になることがあります。その行動が、消費者の心の中にあるブランドと一致したものなのか、一手間かけて考える必要があるのです。

あからさまにグッズの告知をせずに、感動の余韻が収まったタイミングを見計らって、追悼イベント→ショップ開店、という流れで告知するようにすれば、ここまで批判されることはなかったかもしれません。

 

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最終回の夜学永井塾・第11回「現代のよい会社とは何か?」を動画配信で行いました

昨日は最終回となる第11回の夜学・永井塾

最近のトップの不祥事を見ると、カリスマリーダーに頼るのも問題がありそうですね。
経営学者ジム・コリンズが、長期低迷後大きく飛躍し繁栄した米国企業11社を調査したところ、カリスマリーダーが飛躍のきっかけになった企業はゼロでした。
むしろ就任時に「彼で大丈夫か?」と心配されるほど謙虚でおとなしいトップが飛躍を実現していました。彼らは「よい企業」を作っていたのです。

また米国のよい企業と日本企業のよい企業には、共通している点もあれば、異なる点もあります。

さらに欧米では「本当のよい企業とは何だろう?」という問題意識があり、CSVやSDGsなどの考え方も生まれています。

そこで最終回の夜学・永井塾では「企業経営論 現代のよい会社とは何か?」というテーマで、下記をテキストに学んでいきました。

「エクセレントカンパニー」(トム・ピータース/ロバート・ウォーターマン著)
「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」(ジム・コリンズ著)
「ビジョナリー・カンパニー2 – 飛躍の法則」(ジム・コリンズ著)
「the four – GAFA」(スコット・ギャロウェイ著)
「日本の優秀企業研究」(新原 浩朗著)

今回は最終回なので会場で行いたかったのですが、コロナウィルスの影響を考えて、動画配信でお送りしました。

11回の夜学・永井塾にお付き合いをいただき、有り難うございました。
朝活・永井塾は続けていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 

青臭く考え、泥臭く仕事をしよう

マイケル・ポーターが2011年に提唱したCSV (Creating Shared Value: 共有価値の創造)という考え方があります。

企業の活動が、地球環境破壊や社会問題(貧困層搾取)など大きな問題を生み出しています。そこで社会課題の解決と企業としての経済的価値の両立を図ろうという考え方が、CSVです。

CSVの流れを受け、2015年国連サミットでSDGs (Sustainable Development Goal: 持続可能な達成目標)が採択されました。「貧困をなくす」「飢餓をゼロにする」「ジェンダー平等を実現」「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」といった17の目標に対して、169のターゲット・244の指標が決められ、2030年達成を目指すものです。

アメリカ先住民の格言に「地球は先祖からの相続品ではなく、子供たちからの借り物である」という考え方があります。
CSVもSDGsもこの考え方を具体化したものです。

一方で、日本ではCSVやSDGsに対する典型的な反応があります。

■一つは「日本では昔から近江商人の『売り手よし、買い手よし、世間よし』という『三方よし』の考え方がある。別に新しい考え方じゃない」

これはCSVやSDGsへの理解不足から来る誤解です。
100年以上前からある「三方よし」の考え方は素晴らしいものですが、世界はさらに進化しています。

まず問われているのは、自社だけでなく、調達先を含むエコシステム全体です。調達先で弱き立場の人を搾取することも問題になります。
そして「世間よし」は現代だけでなく、未来も含みます。

加えて、具体的なコミットメントが求められています。
たとえばマイクロソフトは「カーボン・ネガティブ」を宣言し、1975年の創業以来マイクロソフトが排出したCO2を2050年までに全て回収するとしています。

もはや「三方よし」だけでは、かなりの周回遅れが否めません。

もう一つの典型的な反応は「欧米ではきれい事をいっているけど、金儲けの下心があるんでしょ?」

これもやや甘い見方かもしれません。
底流に流れているのは「社会課題をビジネスにして収益化しよう」という、欧米流のしたたかな問題意識です。

CSVを提唱したマイケル・ポーターは、日本企業に対して日経ビジネス2020年1月9日号の取材で、このように述べています。

「第2次世界大戦後の日本企業の活動は、CSVの典型だ。当時の日本企業は国を再建するためにビジネスを展開していた。しかし現代の日本企業は、新エネルギーやリサイクルには取り組み始めキャッチアップしているCSVの初期段階である。もっと多くの日本のビジネスパーソンがCSVに目を向けるべきだ」

ポーターが指摘しているように、戦後の日本企業の創業者たちは「事業を通じて世に貢献したい」という強い思いがあり、戦略的な考え方をしてました。しかしこの姿勢は、バブル期を通じて日本企業から失われてしまいました。

今から60年以上前の1958年、セオドア・レビットはこう述べていました。

突き詰めていくと、企業の責任は二つだけに絞られる。
誠実さや善意を忘れないなど日頃の礼節を守ることと、利益を追求することである。

私たち日本人は、色々なことを知りすぎて、大人になりすぎているのではないでしょうか?
もっと青臭く考え、泥臭く目の前の仕事に取り組んでみてもいいのではないかな、と思います。

 

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この状況が1年続く前提で、今こそ変革を実行せよ

安倍首相が「新型肺炎拡大を防ぐには、この1〜2週間が極めて重要」と会見して小中学校は休校、様々なイベントが中止・延期、企業は急遽在宅勤務に切り換えるなど、厳しい状況が続いています。

安倍首相の2月28日の会見から、10日間が過ぎました。その後、中国の新規感染者数減少というよいニュースもある一方で、国内では自粛モードが続き株価下落、イタリア・イラン・韓国・米国で感染拡大、ついに昨日は安倍首相が「歴史的緊急事態」に指定すると表明するなど、終息の気配は見えません。

多くの人は「本当に3月でこの状況が終息するのか?」と薄々感じ始めているのではないでしょうか?

大前研一さんも、YouTubeのBBTビジネスチャンネルで、こうおっしゃっています。

「日本政府は『自粛しろ』というが、『今から自粛しなくてもいい』とは言わないし、言えない。
 三宅島も3日間の噴火があった時に島民を避難させたが、3年間帰れなかった

意思決定する立場にある多くの方は「どうすればいいのか?」とお考えなのではないかと思います。

 

いま必要なことは、最悪な状況を想定した上で、ポジティブに行動することだと思います。

まず最悪の状況の想定。

今の状況は3月一杯でなく、あえて「来年の年明けまで1年間続く」と想定してみます。(しつこいようですが、あくまで最悪の状況の想定です)

そして、そう考えた上で、どのようにすべきか、です。

セオドア・レビット著「マーケティング論」に、1974年にレビットが執筆した「原材料の不足を逆手に取ったマーケティング」という論文が掲載されています。当時は第1次オイルショックで様々な原材料の供給が切迫する、という危機でした。やや長いですが、引用します。

–(以下、引用)—

すべての買い手が品不足に悩まされ、その状態が長く続くだろうと予想した場合には、メーカーにとっては積年の課題を解決する格好のチャンスだといえる。製品ラインを整理する、利益率の高い製品の販売に注力する、製品や原材料を刷新する、新規顧客を開拓する、といった取り組みをすべき時が訪れたのだ。

…最盛期を過ぎた製品を「安楽死」させようとすれば、根強い反発が避けられない。成長の原動力として企業に貢献した製品ラインを冷酷に見捨てるのは、いったいどういう神経か、というわけだ。そのうえ営業部門も、「お客様はこの製品の存続を望んでいる」などと強く反対する。

…このような時こそ「かつての主力製品」を打ち切るまたとないチャンスである。「原材料が手に入らない」といった説明を、顧客は理解してくれる。

…昔ながらの流儀が通用しなくなると、変革はいとも容易に進む。慢性的な品不足とインフレは、そのような機会をももたらす。…古いやり方が通用しなくなり、ある種の空白が生じたような場合には、新しい発想を取り入れる理想的な環境が整ったといえる。

…好業績の陰で温存されていた、コストのかさむオペレーションや業務手順の数力を、この機に取り除いてしまおう。

…人間の営みには潮時というものがある。うまく満ち潮に乗れば、素晴らしい結果が得られるだろう。

–(以上、引用)—

当時のレビットの洞察は、今の私たちに大きなヒントを与えてくれます。

多くの日本企業は「変革をする」と言ってきました。
しかし様々な抵抗に遭ってなかなか変革を実行できませんでした。

今回の新型肺炎を前向きに捉えれば、今後を見据えて大きな変革を断行する絶好のチャンスです。ちょっと考えただけでも、今までなかなか出来なかったこと色々なことができます。

・働き方改革を一気に進めて、無駄な業務を洗い出して徹底的に削減し、無駄な会議や打合せも全廃する
・在宅勤務に全面的に移行し、仕事とプライベートの両立を図っていく
・まったく新しい管理方法を試行・導入する
・ネットに移行できる業務を全てネットに移行することにより、利便性向上とコスト削減を一気に進める
・日頃は仕事が忙しくスキルアップの時間が取れない社員に、スキル向上の機会を提供する

様々なビジネス活動を停止せざるを得ない今こそ、変革を実行する最高のチャンスではないでしょうか?

 

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2020-03-10 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

朝活・永井塾 第37回「顧客体験を見える化する」を動画配信しました

昨日3月4日は、第37回の朝活・永井塾。テーマは「顧客体験を見える化する」でした。

新型肺炎の影響を考えて、今回は動画配信のみにしました。

商品やサービスの酷いトラブルを経験をしたという方、多いのではないでしょうか?
しかし企業側は、そんな状況を全く知らないことも多いのです。これは自社に置き換えると、とても怖いことです。

企業の収益は、顧客体験によって大きく左右されます。
必要なことは、顧客を見える化し、顧客に不快な思いをさせず、常に顧客から学び続けることです。

そこで今回は下記をテキストに使い、いかに顧客を見える化し顧客満足を高めるかを考えていきました。

「顧客体験の教科書」(ジョン・グッドマン著)
「マッピングエクスペリエンス」(ジェームズ・カールバック著)
「真実の瞬間」(ヤン カールソン著)
「サービス・イノベーションの理論と方法」(近藤隆雄著)
「ラブロック&ウィルツのサービス・マーケティング」(クリストファー・ラブロック著)

永井塾ではいつも申し込まれた皆様に動画配信をしています。
今回もこんな感じの動画(1時間)を配信しました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は4月8日(水)。テーマは「全てのビジネスはサービスである 〜 サービス・ドミナント・ロジックの世界」です。

詳しくはメルマガでご案内していますので、参加希望の方はメルマガにご登録いただければ幸いです。ご参加をお待ちしております。

 

「MBA 50冊」の使い方

「MBA必読書50冊を1冊にまとめてみた」(以下、MBA50冊)を出版したのが昨年4月でした。
とても有り難いことに好評で、累計8万部を超えました。

本書を読んだ方からのご意見も多くいただきました。
そこで改めて、本書の使い方についてまとめてみたいと思います。

あなたは本を1冊読んだ後、頭にどの程度残っているでしょうか?
米国国立訓練研究所の調査によれば、読書の学習定着率は1割程度だそうです。意外と少ないですね。
MBA50冊は、そのエッセンスの部分を噛み砕き、コンパクトに紹介することを狙った1冊です。

ただこのMBA50冊といえども「1割ルール」からは逃れられません。50冊のエッセンスを選び抜いていますが、エッセンスの塊を読んで頭に残るのも、やはり多くても特に印象が強い1割。当たり前のことですが、やはり原書を読むのが一番学びになります。

一方で読書は「時間の投資」でもあります。最近「本が読まれなくなった」と言われるのは、多くの人が読書時間の投資対効果を厳しく見るようになったためではないかと思います。

この読書時間の投資対効果を上げる近道は、自分にとって役立つ本に出会うこと。素晴らしい本との出会いは、人生を変えるレベルの影響力があります。

MBA50冊で紹介した本はいずれも私自身にとっても「人生の1冊」となった本ばかりです。
たとえ1冊読んで1割しか残っていなくても、10冊読めばその10倍。50冊読めば50倍です。

ぜひあなたにとっての「人生の1冊」を探すためにも、ご活用いただければと思います。

 

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「顧客価値の式」で、競争力あるサービスを作り込む

現代のビジネスの7割以上は、サービスビジネスです。
サービスビジネスでは、より高い顧客価値を生み出した会社が勝ちます。
サービス化が進むモノづくり企業も例外ではありません。

では、具体的にどうすればいいのでしょうか?

明治大学大学院で教授を務められた近藤隆雄先生のご著書「サービス・イノベーションの理論と方法」を読んでいたら「顧客価値の式」がありました。

顧客価値=(結果品質+過程品質)/(料金+入手コスト)

この式は、実に理解しやすく実践的です。

たとえば身近なところで、私が主催する勉強会「永井塾」ではこうなります。

■結果品質→そのサービスがもたらす結果の品質。たとえば永井塾に参加すると、現場の仕事で役立つ経営戦略を学べます。

■過程品質→サービス提供過程の品質。たとえば永井塾は申込みはWeb、都心の教室で学ぶことができ、お問い合わせには出来る限り迅速に対応しています。

■料金→サービスの金銭的費用。永井塾の場合、朝活3000円/夜学5000円です。

■入手コスト→サービス入手のために必要な料金以外のコスト。朝活は、早起きして交通費をかけて参加する必要があります。

 

顧客価値を高めるには、分子(結果品質と過程品質)を大きくするか、分母(料金と入手コスト)を小さくすることです。たとえば永井塾の例では…

■結果品質を高めるには→勉強会の内容をより業務に即した内容にすること。たとえば夜学では、最初に参加される方々が仕事で抱えておられるお悩みをお伺いし、ホワイトボードに書いた上で講義を行い、最後にお悩みがどのように解決できるかを一緒に考えていきます。

■過程品質を高めるには→サービス提供過程の快適性を向上させること。たとえば資料や動画をWeb配信し、遠方で参加できない方や復習したい方が学べるようにしています。

■料金は→慎重な対応が必要です。料金は品質の代表指標です。要は、高品質でも安価なサービスは安物に見えてしまいます。

■入手コストを下げるには→手間を減らすこと。たとえばやむを得ない理由で当日欠席しても、後日動画で学ぶことができます。

実際には永井塾では参加者の顧客価値を高めるために、毎回参加者にアンケートを取っています。朝活と夜学で累計50回近く実施していますが、常にいただいたご意見をもとに様々な改善を図っています。第1回と比べると今や完全に別物です。

 

このようにサービスの顧客価値の構造を考え、それぞれの要素で何をすればいいかを考えれば、やるべきことは見えてきます。そして顧客からのリアルな学びをもとに、常に改善し続けることが必要なのです。

 

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夜学永井塾・第10回「リーダーシップ、変革、企業文化」を行いました

昨晩は第10回の夜学・永井塾

企業経営で、変革・リーダーシップ・企業文化は密接に結びついています。そこで今回は下記がテーマでした。
・組織はどのように変革されるのか?
・リーダーシップと企業文化は、どのように関わっていくのか?

下記をテキストに、学んでいきました。

「企業変革力」(ジョン・P・コッター著)
「企業文化 生き残りの指針」(エドガー・H・シャイン著)
「巨像も踊る」(ルイス・V・ガースナー著)
「スターバックス再生物語」(ハワード・シュルツ著)

永井塾ではライブ中継は行っていませんが、会場参加できない方も申し込みをすれば期間限定で後日Web視聴ができます。
会場のライブ参加は少人数で行いました。

今回も冒頭で皆様が抱えるリーダーシップに関する課題を伺いながら、リーダーシップ、変革、組織文化について学びました。

夜学・永井塾も、あと1回です。
最終回となる次回は3月18日(水)、テーマは「よい会社とは何か?」です。

参加希望の方は、こちらからどうぞ→ https://night-nagaijuku-11.peatix.com/

 

2020-02-20 | カテゴリー : night-nagaijuku | 投稿者 : takahisanagaicom

石田三成、三杯のお茶

以前、ある温泉旅館に泊まった時のこと。

旅の疲れもあって早く温泉に入りたかったのですが、仲居さんが何度も部屋に出入りして、お茶を出してくれたり宿泊の説明をしてくれます。恐らくこれがこの旅館流の「おもてなし」なのだと思いますが、「早くして欲しい」というのも野暮なので言い出せず、察して欲しいなぁと思ったりします。

京都で200年続く老舗旅館「柊屋」で60年間も仲居を務められた田口八重さんは、ご著書「おこしやす」で次のように書いておられます。

—(以下、引用)—

お客さまはおひとりおひとり、お顔立ちが違うように、お気持ちだって違うのです。それぞれに合ったおもてなしをしなければいけません。お仕着せのサービスでは喜んでくださらないということです。お目にかかった瞬間に、お客様の気持ちを察して、こうしてほしいと望む対応をしていくのです。
これが私がおもてなしをしてきた人生で、体験から掴んだモットーなのです。

—(以上、引用)—

 

また、石田三成がある小寺の小坊主だった時のこと。

鷹狩りをしていた秀吉がその小寺に立ち寄り、お茶を所望しました。

三成は、まず冷たいお茶を持ってきました。
一気に飲み干した秀吉が二杯目を求めると、三成は生暖かいお茶を出しました。
二杯目も飲み歩々してそしてもう一度求めると、熱いお茶を出しました。

三成は汗をかいた秀吉の状態を考え対応したのです。
三成の気配りに感心した秀吉は、三成を召し抱えることにしました。

 

田口八重さんと三成の逸話は、「本来のおもてなし」とは、相手の状況を踏まえた対応であることを教えてくれます。
しきたり通りの対応は「本来のおもてなし」の対極にあります。

そもそも今やものづくり企業と言えども、サービスなしでは成り立ちません。マーケティングの巨人と言われたセオドア・レビットも、こう述べていました。

「サービス業というものは存在しない。サービスの要素がほかの業界と比べて多いか少ないかの違いであり、すべての業界でサービスが行われている」

御社のサービスは、お客様へ「本来のおもてなし」を提供しているでしょうか?

 

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大手メーカーの研究開発者が顧客に会おうとしない理由

大手メーカー様の研究開発部門から、講演のご依頼をよくいただきます。
お悩みは驚くほど共通しています。

「社員を顧客視点の考え方に変えるにはどうすればいいんでしょうか?」

どこもバブル絶頂期までは、世界で輝いていた大企業。しかしその後伸び悩み苦しんでいる点も共通しています。

デザイン思考やDXなどの新しい方法論の取り込みには貪欲。全社で大きな投資をしています。でも低迷から抜け出せないのです。

講演の事前打ち合わせを重ね、講演当日に参加者と話し合い、さらにその後のフォローで感じる点も、共通しています。

お客様に会う機会があるエンジニアがほとんどいないのです。
研究開発拠点のオフィスで仕事をする日々を続けているのです。

「顧客視点に変えるには、まずお客様に会うことですよ」と、手を変え品を変え、様々な事例を紹介しながらお伝えします。

参加者からは「確かにそうだよね」と同意はいただけます。でも行動がほとんど変わりません。

最近サービスマーケティングを学んでいるのですが、理由が少し分かってきました。
「価値はどこで生まれるのか?」という根っ子の認識が、どうも違うようなのです。

大手メーカーは、「ものづくり」の大きな成功体験があります。
ものづくりでは、技術的な種から強い製品を生み出します。
「自社テクノロジーを製品に結集し、この価値をお客様に提供しよう」と考えるのです。
このようにものづくりの成功体験がある企業は、研究開発部門で価値が生まれるのが常識でした。

しかし今や就業者の7割以上がサービス産業(第3次産業)。メーカーもサービス化が進んでいます。

スティーブ・ジョブスがアップルに戻ってきた2000年頃のこと。ジョブズはこう言ったそうです。

「我々はユニークなマーケティングとイノベーティブな製品の二つで勝ってきた。21世紀はもう一つの柱が必要だ。それがカスタマーサービスだ」

そして世界中にアップルストアを作りました。

私がMacのトラブルで困った時のこと。AppleCare+という有料サービスに入っていたので、サイトでサポートを依頼すると、数秒後にアップルストアのスタッフから折り返し電話があり、親切丁寧に電話で問題解決をサポートしてくれました。最高で完璧なサービスでした。

このように「サービス化」はあらゆるビジネスで進んでいます。
iPhoneはアプリというサービスなしで使う人はいません。
GEもジェットエンジンの稼働状況を常に監視するサービスを提供しています。

そしてサービスで価値が生まれるのは「顧客との接点」です。

ここまでの話をまとめると、

①ものづくり全盛期は、研究開発部門で価値が生まれるのが常識だった。
②しかしあらゆるビジネスでサービス化が進み、「顧客との接点」で価値が生まれるのが常識になった。

いまや「研究開発部門で価値が生まれる」という過去の常識を変えないと、「顧客との接点で価値が生まれる」という現代の状況には対応できないのです。

しかし「研究開発部門で価値が生まれる」という過去の成功体験から抜け出せないのが、大手メーカーの研究開発者が陥っているジレンマなのです。

 

では、どうするか?

研究開発棟に閉じこもって考えていても、何も生まれません。
まずはオフィスから一歩外に出る。

顧客に会ってみる。観察してみる。話してみる。
そして、顧客の悩みを理解してみる。
その上で、自分たちが何ができるかを考える。

「価値共創」という言葉があります。
価値とは、顧客とともに創るものです。
顧客に会わずして、価値共創ができるわけがありません。

まずはオフィスを出でよ。
そしてお客様から学べ。

すべては、そこから始まるのだと思います。

 

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朝活・永井塾 第36回「超実践マーケットイン企画術・実戦編」を行いました

2月5日は第36回の朝活・永井塾。テーマは「超実践マーケットイン企画術・実戦編」でした。

現代のビジネスパーソンに求められるのは、「言われた通りに仕事をすること」ではなく「自分で何をすべきかを考え、仕事をすること」。
そこで必要なのが、企画力です。

しかし企画の作り方について教わったことがある方は、意外と少ないのではないでしょうか?
企画はアイデアを出すだけでは企画になりません。
企画で必要なのは、マーケットインで考えることです。

そこで今回は、永井がIBMで実際に取り組んだ二つの事例(マーケティング戦略事例と人材育成事例)を挙げながら、どのように企画を進めるかを具体的に紹介していきました。

今回の様子です。早朝からご参加いただき、有り難うございます。最近はネット参加の方も増えてきました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は3月5日(水)。テーマは「顧客体験を見える化し、作り込む」です。最近話題になっているCXやカスタマージャーニーの考え方を掘り下げていきます。

詳しくはメルマガでご案内していますので、参加希望の方はメルマガにご登録いただければ幸いです。ご参加をお待ちしております。

 

自ら学ばない日本人、アジア太平洋地域で最下位の衝撃

パーソル総合研究所が、アジア太平洋地域14の国・地域で就業意識をインターネット調査した結果を発表しています。→リンク

注目が「社外の学習・自己啓発」。
「とくに何も行っていない」で、日本が14ヶ国でダントツワースト1位です。

14ヶ国平均 13.3%
14位 ベトナム 2%
13位 インドネシア 2.3%
12位 タイ 5.7%
11位 中国 6.3%
10位 フィリピン 6.4%

6位 台湾 13.0%
5位 香港 18.3%
4位 シンガポール 18.3%
3位 オーストラリア 21.5%
2位 ニュージーランド 22.1%
1位 日本 46.3%

ううむ。
これはヤバイです。
確かに、ベトナム、インドネシア、タイ、中国、フィリピンの人たちは、頑張って自ら学んでいるという印象を受けます。

それにしても、日本がこれほど低いとは。

頑張って学ぶ人は、成長する。
学ぼうとしない人は、成長しない。
当たり前のことですよね。

ビジネスパーソンが楽しく学びたくなるように、本を書いていますが、まだまだ力不足です。

私も本を書いたり新しい研修をご提供するために、日々学んでいます。
新しく学ぶたびに「知らないことばかりだ」と自分の無知を再確認します。
自ら学ばない限り、衰退するだけです。

一方で、学びには「新しいことを知る」という楽しさもあります。
少しでもこの楽しさを伝えられたらと思います。

「やるべきことはまだ多い」と、改めて実感した調査でした。

 

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力はある。あとはやるかどうか?

講演や研修を終え参加者の様子を見ると、二通りの人たちがいることに気がつきます。

A:納得し行動を変える人たち
B:理由を探し、変ろうとしない人たち

講演や研修の目的は「行動を変えること」なので、全員がAになるように常にフィードバックをいただき改善を図っていますが、Bタイプはいるものです。

AとBの比率は会社によって大きく変わります。

小さな会社は、ほとんどの方が行動を変えるAタイプ。

なかなか動かないBタイプは、不思議なことに就職ランキングの上位で社員1万人以上の大企業に多いのです。

Bタイプに共通するのは先が見えてしまうこと。

「あのケースでこれやってもうまくいくかなぁ」
「こんな提案したら怒られそうだなぁ」
「いい話だけど、理想論だよね」
「自分が動かなくても大勢に影響ないし」
「やっぱりやめとこう」

色々と考えてしまい、行動に繋がらないのです。

小さな会社はそんな余裕はありません。自分一人の働きで会社は変わります。ですので行動せざるを得ません。

 

日本が停滞を続けているのは、大企業を中心にBタイプが多くなったからではないでしょうか?

これは二つの要因があります。

一つは「危機感」。

「社外の人と会う機会がない」という大企業の人、多いですね。「大企業」という組織は、魔法瓶のように外界の変化を遮断します。世界は激変しているのに、社内は心地よいぬるま湯のまま。危機感を持てないのです。そして魔法瓶はいつか壊れます。

2つ目は、失敗を恐れ新しいことができないこと。

絶対に失敗しない方法があります。
新しいことを何もしないことです。しかし確実に組織は衰退します。

新しい挑戦で成功するには、80点主義で新しいことを次々とやること。
沢山の苗を植えて、間引くイメージです。

そもそも一会社員が少々失敗しても、大企業はまず潰れません。せいぜい出世が1年遅れる程度。新しい挑戦で成功すれば、充分に元は取り返せます。

 

出来ない理由を探したり他人を頼るのは、そろそろ止めましょう。

「力不足じゃないか?」というのは杞憂です。
日本の多くのビジネスパーソンは既に力はあります。
要は「やるかどうか」。

「社外の人と会う機会がない」というであれば、自分で会う機会を作ればいいだけのこと。

「○○○だからできない」と考えず、「これをやるために○○○しよう」と考えを変えることです。

そして失敗を認め、失敗から学ぶスタイルに変える。
組織も、失敗から学ぶことを許容する組織に変える。

自分を変えるのは、自分だけです。
会社を変えるのも、自分たちだけです。

私たちは、変える力は既にあります。

目の前の課題を見つけ、挑戦しましょう。
成長の種は、そこにあるのではないでしょうか?

 

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成功するから幸せなのでない。幸せだから成功する


先週水曜日の夜学・永井塾は「人はなぜ動くのか?」

一見、マーケティングとは関係なさそうなテーマですが、経営戦略も組織のマネジメントも必ず人が絡みます。人に対する洞察は大切です。

今回の夜学永井塾では、下記の本をテキストにしました。

「人を伸ばす力」(エドワード・L・デシ著)
「選択の科学」(シーナ・アイエンガー著)
「フロー体験入門」(M・チクセントミハイ著)
「GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代」(アダム・グラント著)

この4冊の著者に共通することがあります。彼らは「ポジティブ心理学」の研究者なのです。

ポジティブ心理学とは、人間の幸せについて研究する心理学のこと。

かつての心理学は、心の病を治療することを目的に発展しました。
第一次/第二次世界大戦で、数多くの人たちが心に傷を受けました。
そこで政府の財政支援の下、病理の学問として心理学が発展しました。

一方でかつての心理学は、「どうすればもっと幸福になれるか」という研究はあまり行ってきませんでした。

そこで個人や社会を繁栄させ、より充実した幸福な人生を送るためにはどうすればよいかという視点で、ポジティブ心理学が発展しました。自己実現を重視したかのマズローは、実は「ポジティブ心理学」という言葉を初めて使用した心理学者でした。

欧州でのポジティブ心理学の第一人者イローナ・ボニウェルは、著書「ポジティブ心理学が1冊でわかる本」で、このように述べています。

–(以下、引用)–

特にポジティブ心理学でコペルニクス的大発見だと思われるのは、「成功するから幸せになるのではない。幸せだから成功するのだ」というものです。

私たちは、「いい学校に入ったら幸せになれる」「出世して給料があがれば幸せになれる」「いい人と結婚すれば幸せになれる」と、いつも幸せを先送りしてきました。しかし、ポジティブ心理学は、今、ここで幸せになれる、そして、その幸せがさらなる幸運を連れてくるということを、データで証明してくれています。

–(以上、引用)–

確かにいつも幸せそうにしている人は運に恵まれますます成功する一方で、いつも悪口や愚痴を言う人を見ていると、どうも運に見放されがちのように感じます。

日本にも古くから、「笑う門には福来たる」という言葉があります。

楽観的に考え、いま現在の環境に深く感謝して、日々を過ごしていきたいものです。

 

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夜学永井塾・第9回「人はなぜ動くのか」を行いました

昨日は第9回の夜学・永井塾。テーマは「人はなぜ動くのか」でした。

経営戦略も組織のマネジメントも必ず人が絡むので、人がなぜ動くかを理解することは大切です。

ビジネスでは「報酬がやる気を高める」が常識です。この動機付けが「外発的動機付け」です。

一方で自ら学び成長したいという動機付けを「内発的動機付け」と呼びます。

心理学者デシは、やる気などの内発的動機付けは、外発的動機付けで低下し、さらに競争などでも弱まることを実験で明らかにしました。この仕組みを理解しないと、組織が停滞してしまいます。

そこで今回は下記のテキストにして、人はなぜ動くのか、どうすれば幸せに働くことができるのかを考えていきました。

「人を伸ばす力」(エドワード・L・デシ著)
「選択の科学」(シーナ・アイエンガー著)
「フロー体験入門」(M・チクセントミハイ著)
「GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代」(アダム・グラント著)
「ティール組織」(フレデリック・ラルー著)

今回も参加された皆様が抱える人にまつわる様々な課題を伺いながら、組織経営を成功させるためのポイントを学びました。

夜学・永井塾も、残り2回となりました。
次回は2月19日(水)、テーマは「リーダーシップ/変革/企業文化」です。

参加希望の方は、こちらからどうぞ→ https://night-nagaijuku-10.peatix.com/

 

原因探しよりも、対応策

大きな問題が発生しました。
こんな時のセオリーは、「根本原因を特定し、原因を除去せよ」です。
しかしいくら調べても、原因が特定できません。

たとえば体調が悪くなって倒れてしまいました。
なんとか体調は戻りましたが、色々と検査をしても原因がわからない、というようなケースです。

こんな時、どうすればいいのでしょうか?

2020年1月3日の日本経済新聞『こころの健康学 原因より「手立て探し」を』で、認知行動療法研修開発センター 大野裕さんがこのように書いています。

—(以下、引用)–

…「原因探し」ではなく「手立て探し」をするように意識するとよい。私たちはよくないことが起きたとき、「なんであんなことをしたのだろう」「どうしてこうしなかったのだろう」と考えて、原因探しを始める。原因がわかれば解決策が見つかるのではないかと考えてのことだが、原因がわからないことも多い…

(中略)

現実によくないことが起きているのだとすれば、原因を考えても、その事実は変わらない。これからどうすればよいのかという手立て探しをする方がずっと大事だ。そのように考えていると、考えは自然に前向きになって、いろいろな工夫ができるようになる。

–(以上、引用)—

たとえば「体調が悪くて倒れたけど、原因がわからない」という場合は、

・普段から体調が悪くなる状況を避ける→仕事でムリしない、など
・体調が悪くなったら、すぐ休む

といった対応策を取れば、かなりの確率で再発を防ぐことができます。

現実には、問題が起こっても、根本原因が見つからないケースは意外と多いもの。

こんな時は、根本原因がわからなくても、「手立て探し」、つまり対応策を考えて、解決を図るようにしたいですね。

 

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