ダメモトで始め、いつの間にか成功する中国人から学べ

中国は「低コストの世界の工場」から抜け出し、ドローンやシェアライド、さらにキャッシュレス社会といった新しいビジネスを生み出し、経済は成長しています。一方で、日本は今ひとつ元気がありません。

私はIBM在職中、中国の人たちと仕事をすることも多かったのですが、「彼らのビジネススタイルからは、学ぶべき点が多い」と実感しています。

たとえば1998年のこと。
当時の中国IBMは、日本I BMや韓国IBMよりもずっと小さい売上でした。
私はIBMアジアパシフィックで、ある製品のマーケティング担当でした。
中国IBMで事業責任者だった中国人女性の口癖は、「中国ビジネスを成長させたかったら、投資!投資!投資よ!」

常に投資を求めてきました。荒唐無稽なプロジェクトも多く、失敗も繰り返していましたが、彼女は失敗しても堂々としています。アジアパシフィック全体会議でも、こう言い切ります。

「私たちの実行はまったく問題ない。原因は〇〇〇だ。だから次は、□□□をして欲しい」

そして彼女の中国事業は、次第に成長してきました。

ちなみに彼女はIBM社歴20年でしたが、その後、「IBMは大きいわね。意志決定が遅すぎ!嫌になったわ」と言って退職し、香港にあるベンチャー企業の社長になりました。

 

一般的に中国人は、日本人が当惑するほど個人のエゴが強いのですが、裏返せば、「私はこれをやりたい」という考えが明確でシンプルだということ。 そしてダメモトですぐに実行します。

日本人の私から見ると、「危ないなぁ」「これはダメでしょ」と思うことでも挑戦し、ダメとわかると即原因を特定し、即修正します。前言撤回は日常茶飯事。やり方もどんどん変えるし、ハシゴを外されることも少なくありません。しかし当初の「これやりたい」という強い意志は決してブレません。そしていつの間にかうまくいきます。

彼らはダメモトで始め、試行錯誤を執拗に繰り返し、いつの間にか成功させるのです。

 

2016年、上海を中心に中国各地で始まったシェアライドも、瞬く間に1億台も普及し、1年後の2017年には市民の足となって大成功しています。その裏には膨大な失敗があります。しかし数多くの失敗から率直に学び続けて、ビジネスを急拡大させているのです。

 

中国のやり方をすべて真似する必要はありません。日本人には日本人ならではの良さもあります。
一方で、現代はもの凄いスピードで動いています。日本人が好きな根回しや計画に時間をかけすぎていては、縮小するばかり。だからこそ、「やりたいこと」を明確に持って、ダメモトで挑戦して学ぶ彼らのやり方からは、学ぶべき点が多いと思います。

 

 

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なぜシン・ゴジラは、シンガポールで酷評されるのか?

スクリーンショット 2016-09-06 午前9.15.13

シン・ゴジラが大ヒットしています。何回も見に行かれる人も多いようです。
かく言う私も、2回行きました。

 

個人的によかったのは、ゴジラ映画でお約束だった怪獣同士の戦いがなかったこと。

まさに「現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)」というキャッチフレーズそのもので、現在の日本が、ゴジラという大災害に遭遇した際に、どのように対応するのかがリアルに描かれていました。

 

海外での反応が気になるところですが、現時点では、絶賛する人もいる一方で、イマイチという人も多いようです。

「面白かったけど日本語が分からないと厳しいかも?」日本のゴジラ最新作『シン・ゴジラ』に対する海外の反応【ネタバレあり】

 

米国とカナダで10月から限定公開が決まりましたが、先に公開が始まったシンガポールでは、こんな反応です。

【悲報】『シン・ゴジラ』シンガポールで酷評「会議ばっかりでつまらない」「CGは玩具で演技は下手」

シンガポールでもシン・ゴジラ公開。しかし観客の反応はいまいち。私もがっかり。

『シン・ゴジラ』海外で酷評!!「会議ばかりで退屈」「なぜ2人逃げ遅れただけで攻撃中止?」と感性が違いすぎて楽しめない模様

 

日本人が「ああ、たしかに日本政府なら2人逃げ遅れただけで攻撃中止するだろうなぁ」と共感する場面も、シンガポールの人からすると、「逃げ遅れた人が二人いるくらいです攻撃中止とかありえない!」となるようです。

なぜこうなるのかは、ハイコンテクスト・コミュニケーションローコンテクスト・コミュニケーションの違いを考えると、わかります。

 

たとえば私が会社員だった頃、社内の会議に参加した社外の人から、「何を話しているかさっぱりわからない」と言われたことがあります。同じような経験をされた方も多いのではないでしょうか?

会社の社内コミュニケーションでは、会社独自の用語や省略語が使われていたり、会社独自の文化を前提に話し合いが進みます。「あうん」の呼吸や「察すること」を前提としたコミュニケーションなのです。これが、暗黙知を共有しているハイコンテクスト・コミュニケーションです。

 

ローコンテクスト・コミュニケーションは、暗黙知を共有していない人同士のコミュニケーションです。

暗黙知を共有していないので、「あうん」の呼吸や「察すること」がまったく通用しません。だからシンプルなロジックと、わかりやすさが求められます。

 

先の2人が逃げ遅れた状況で日本政府が攻撃中止する場面に当てはめると、日本人の場合はハイコンテクスト・コミュニケーションが成立し、

・ああ、確か「命は地球よりも重い」って言っていた政治家もいたなぁ
・自衛隊に反対する人もいるから、自衛隊の攻撃で民間人が巻き添えになったら、自衛隊の存続問題になるよなぁ
・事故で民間人が死ぬのと、人為的に民間人を巻き添えにするは違うと、マスコミも叩くだろうし
・ここで首相が「攻撃中止」っていうのも、かなりリアルに描かれているよなぁ

というように、深く共感するわけです。

このように日本人ならば誰でも「ああ、確かに。あるある」と共感するような徹底したハイコンテキスト・コミュニケーションにこだわって作ったことも、日本でのシン・ゴジラ大ヒットの大きな要因なのかもしれません。実際に制作チームは霞ヶ関に「もしゴジラが現れたらどのように対応するか?」と取材を重ねています。

 

しかし海外では、日本のこのような状況を知らない人がほとんどです。つまりローコンテクスト・コミュニケーションなので、

・はぁ?2人逃げ遅れただけで攻撃中止?だってもう数百人か数千人死んでいるんだろう?被害を拡大するだけじゃん。あり得ない

となるわけですね。

 

ハイコンテクストとローコンテクストを、「お客さんの期待」と「コンテンツ」の2つの軸で整理すると、こんな感じになります。

シン・ゴジラのグローバル展開

ローコンテクストの「わかりやすくて誰にでも楽しめるコンテンツ」を、世界中のローコンテクストを期待するお客さんに提供し、世界中でヒットさせるのが、ハリウッド映画です。かつての「七人の侍」もここに入ります。

ハイコンテクストなコンテンツはハイコンテクストを期待するお客さんに大きく受けます。だから地域限定でヒットします。

ハイコンテクストなコンテンツをローコンテクストを期待するお客さんに提供すると、シンガポールでのシン・ゴジラ上映のように「ワケがわからない」となります。

ローコンテクストなコンテンツをハイコンテクストを期待するお客さんに提供すると、物足りなく感じます。

 

一方で、ハイコンテクストな内容でも、受け取る側がそこに深い意味を感じられるようになると、受け容れられることもあります。

ハリウッド映画でも最近のバットマンのように、シンプルな勧善懲悪ストーリーではなく、主人公が「本当に自分は善なのだろうか?」と悩む作品も、大ヒットするようになりました。30年前に最新作バットマンを公開しても、あれほどヒットはしなかったでしょう。主に米国で、受ける側が理解するハイコンテクストのレベルが上がってきたのかも知れません。

日本のカワイイ文化も、まさにそうなりつつあるように感じます。

シンガポールは世界の中でもローコンテクスト・コミュニケーションがかなり進んでいる地域なので、他地域では状況は異なる可能性もあります。ただそれは、日本文化がどの程度理解され、共感を得られるか次第なのかもしれません。

 

個人的には、10月の北米・カナダ限定公開で、多くの人たちがシン・ゴジラの世界観に共感するようになればと願っています。

 

 

 

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爆買い需要を貪欲に刈り取り続ける、中国資本から学べること

大阪

お客様への講演や研修で、大阪によく行きます。今月大阪に出張した時、心斎橋商店街を歩いてみました。歩く人たちの半分が海外観光客。とても賑わっています。その海外観光客の多くが中国人。ドラッグストアや昔ながらの大阪の店で買い物をしています。いわゆる「爆買い」ですね。

数年前、海外観光客が少なかった頃は、商店街も人が少なかったそうです。

数年前までの風景から一変した大阪を歩きながら、気がつきました。

 

心斎橋商店街に店を構える「ラオックス」も、中国人観光客で賑わっています。東京・銀座や秋葉原などでもよく見かける風景です。

家電量販店の雄として一時は全国に100店舗展開していたラオックスは、量販店間の競争に敗れて業績が悪化し直営店を数店舗に縮小。2009年には中国の大手家電量販店チェーンである蘇寧電器の傘下になりました。今は中国出身の羅怡文さんがトップになり、免税店チェーンとして全国展開しています。爆買需要の成長に沿うように、売上と営業利益はこのように爆発的に成長しています。(ラオックス業績ハイライトより)

ラオックス売上・営業利益

日本国内に生まれた中国の爆買い需用を、中国資本により、中国人トップが陣頭指揮を執って、刈り取っているのですね。

 

心斎橋・ラオックスに吸い込まれていく中国人観光客を見ながら、思い出したのが、大阪出張に来る新幹線車中で読んだ雑誌「Wedge」の記事「訪日外国人を囲い込む 中国民泊」です。

 

「民泊」とは、旅行者が一般人の民家に対価を払って宿泊すること。インターネットで、ホストとゲストを仲介するAirbnb(エアビーアンドビー)が有名です。日本では旅館業法などの規制で、民泊は条件が限定されています。そこで2015年から規制緩和の検討が始まっていますが、既存のホテル・旅行業界の利害もあり、なかなか進展していないのが実情です。

しかしこの記事では、中国に本社を置く民泊業者が、日本を含む世界中でサービスを展開していることを紹介しています。

中国人観光客増加により、日本国内には膨大な宿泊需要が生まれています。実際、私が宿泊するホテルでも、朝食バイキングでは中国の方がとても多いことに改めて気づかされます。その中国人観光客の膨大な宿泊需要を、中国資本の民泊業者が刈り取っているのです。

 

中国人が日本国内で民泊を展開するというと、たとえば「タワーマンションの隣りの部屋が民泊で使われて住環境が悪くなる」というイメージを持つ方もいるかもしれません。 この点について、この記事ではある中国人事業家の言葉が書かれています。

「…その点、民泊目的で投資する中国人は、マンション丸ごと買い取るケースが多いので強いのです…」(「Wedge」2016年4月号 p.19より引用)

確かにマンションが丸ごと民泊に使われるのであれば、苦情は激減します。苦情対応はない方がよいわけで、合理的な考え方ですね。

 

しかし日本ではまだ民泊は規制緩和中。その点はどうなのでしょうか?本記事では、中国系民泊仲介事業者最大手「自在客」トップを務める張志杰CEOのインタビューも掲載されています。

−−現行の日本の法律では、特区等を除いて民泊は禁止されている。

張 中国では既に政府が民泊を許可しており、世界各国で合法化の流れがある。それに比べると、日本はやや法規制が遅れている印象がある。

−−現在、厚労省や観光庁が中心となって、民泊のルールづくりを進めているが、誘いがあればこの会議に参加する気はあるか?

張 呼ばれることがあれば、喜んで参加したい

−−これまでのトラブル事例は?

張 トラブルはほとんどない。事前に「土足厳禁」「ゴミ分別」などのルールをゲストに周知していることが功を奏しているのだと思う。

−−今後の目標を。

張 既に日本では、1万2000室を提供しており、2万6000室を提供しているAirbnbを上回りたいと考えている。……日本へ多くの観光客を呼び込む役割を担っていきたい。

(以上、「Wedge」2016年4月号 p.20より引用)

 

この民泊需要でも、日本の行政で「民泊をいかに規制緩和するか?」を議論している最中に、中国資本がリスクをとってビジネス展開を先行しています。

 

ビジネスで大切なのは、いかに商機をライバルに先んじて掴むか、ということ。

言い換えれば、いかに市場のニーズをサキドリするか。

タイミング勝負です。

ですから、あえてリスクをとることが必要になります。

 

先の記事でも、日本で民泊を展開しているある若い中国人事業者はこう語っています。

「いろいろ心配されているのはわかるのですが…民泊を提供しているわれわれのような業者の感覚は、一般の方が抱くものとは少し違っているようです。というのも、われわれは”事故”や”トラブル”をあまり恐れていないからです。民泊を求める市場のニーズも観光客が増えるという見通しも、その潜在的パワーに比べたら、民泊に吹いている逆風など、あまりにも小さな障害だと言わざるをえないからです。現在の日本の法律では、民泊事業はグレーだと知っていますが、実態として多くの人が利用していますし、この流れを止めることはできないでしょう」(「Wedge」2016年4月号 p.17より引用)

 

大阪出張を通して、「日本国内に生まれている中国人の爆買い需要に対して、内向き思考でなかなかリスクを取れない日本人をよそに、利にさとい中国資本家達はリスクを取ってしたたかに刈り取り続けている。ここから私たち日本人が学べることは、実はとても多いのではないか?」と実感した次第です。

 

 

なぜ私の戦略は「ゴミだ」と言われ、目の前で破かれたのか?

ゴミ箱

「永井さん、あなたが作ったこの戦略はね。ゴミだ」

米国人上司はそう言って、私の説明資料を、私の目の前で破りました。

そしてこのように付け加えました。

「あなたの問題は、『自分の戦略』にこだわって、考え過ぎることだ。戦略は米国本社がちゃんと考えている。今あなたが行うべきは、本社の戦略を忠実に実行することだ。あなたが時間をかけて作ったこの戦略はまったく意味がないね」

いきなり資料を破られて「ムッとしなかった」と言えばウソになります。「本社の戦略だけ考えればいい」もやや誇張し過ぎでしょう。しかし一方で、彼の言っていることにも一理ありました。

この時、私はある業務の新任責任者を拝命し、自分なりに戦略を考えていました。しかし米国本社側の戦略をキチンと理解し、整合性を取る優先順位は落としていたのです。

実際には本社戦略に沿って、社内の各部署で多くの人たちが仕事をしています。本社戦略に沿えばそれらの成果を活用できます。しかし独自の戦略で進めば、これらの知見は活かせません。

本社戦略を表面的に聞くと「いや、自分の状況は違う」と思いがちです。しかし基本的な考え方や方向性をキチンと理解すれば、意外と共通点も多いものなのです。

 

彼の言うことに素直に従ってみることにしました。

ちゃんと見てみると、本社戦略がよく整理されていて、自分の戦略で採り入れるべき点も多いことがわかりました。一方で様々な事情で適用できない部分もあります。

そこで本社戦略で採用すべきものは採用し、独自に考えるべき点は直し、戦略を練り直しました。

本社戦略に沿った部分、独自に変えた部分、そのようにした理由が明確になりました。この構造をわかりやすくキチンと説明できるようになったことで、本社側のサポートも得られ、仕事の成果に繋がりました。

さらに本社は、私が独自に変えた部分に興味を持ちました。実は彼らも各部門の現実を知りたがっていたのです。私が独自に変えた部分の一部は、その後、本社戦略に反映されて全社に展開されました。

 

ある程度規模が小さい企業でも同じです。

企業様で現場を預かるマネージャーとお話ししていると、本社方針を理解不十分なまま、目の前の仕事を進めている場面によく出会います。

しかし組織の中では、1人で仕事は進められません。マネージャーの場合だったらなおさらのこと、複数の組織との協業が必須です。だからこそ、組織の中で方針を立てる場合は、常に全社戦略との整合性を考える必要があるのです。

 

私の戦略が「ゴミ」と言われた理由。
それは、全社的な整合性がない、独自の戦略を立ててしまったからなのです。

彼はなかなかそれを認めようとしない私に、ショック療法として目の前で破ってくれたのです。

 

 

海外事業へのアプローチ方法が、個別案件ベースになっている

Best Internet Concept of global business

日経ビジネス2015.5.25号の特集は「Japan Rushing 世界の企業は日本を目指す」です。

この特集の冒頭で、様々な外資系企業が日本市場に参入している様子を描いています。

■テスラ・モーターズ:日本に急速充電できる設備を展開
■米国IBMとアップル:日本郵政と組み、iPadを活用した新事業を展開

たとえば、IBM・アップル・日本郵政の協業では、IBM ジニ・ロメッティCEO、アップル ティム・クックCEO、日本郵政 西室泰三社長3者そろい踏みで記者会見に臨みました。以前なら考えられない構図です。私もかつてIBMに勤めていましたので、グローバル3社のCEOが絡むイベントの準備に、関係者の皆様のご苦労は大変だったと想像します。

 

気がついたのは、多くの外資系企業で、個別案件ベースで、海外にある本社が投資判断をしているのが共通点であること。

かつては、まず日本法人を作り、個別案件開拓は日本法人に任せる、というスタイルが主流でした。

インターネット普及などで、遠い地域間のコミュニケーションコストが下がり、さらに様々なモノの流れもますます自由化されている中で、世界各国の個別案件に対して本社主導で進められるようになってきた、ということですね。

海外事業へのアプローチも、以前と比べて大きく変わってきています。

外資系企業のよさ、日本企業のよさ、両者の共通点

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ある取材で、外資系企業と日本企業のマーケティング思考の違いについてインタビューを受ける機会があり、色々と考えることになりました。(「外資系企業」の定義は、ここでは「海外に本社があり、日本でビジネスをしている会社」とします)

考えてみて改めてわかったのは、「外資系には外資系の良さがあり、日本企業には日本企業の良さがあり、大切なのは共通」という当たり前のこと。

 

日本に進出してくる外資系企業の多くは、本社レベルでしっかりとした戦略があります。

そして多くの外資系日本法人が悩むのは、日本市場へのローカライゼーション。この部分で日本法人と本社がお互いにコミュニケーションが円滑にでき、日本市場に合わせた展開ができた企業は成功しています。

その典型的な成功例は、1975年に日本IBM社長 に就任した椎名武雄社長時代の日本IBMでしょう。「セルIBMイン・ジャパン、セル・ジャパン・インIBM」というスローガンを掲げ、IBMの良さを日本市場に売り込むと共に、日本事業のプレゼンスをIBM全社に売り込み、ときに喧嘩のような状態になりながらも説得し、本社を動かしました。

現代では、日本の白物家電市場で元気ないわゆる黒船家電(ダイソン、アイロボット、エレクトロラックス)なども成功例ではないでしょうか?日本市場の顧客が「是非買いたい」と思う商品を展開し、グローバル展開を見据えて商品を磨き上げています。

 

一方で日本企業が得意なのは、顧客が買う理由を愚直に追求し続ける点。

セブンのあくなき仮説検証の追求は有名ですし、セブンカフェ、セブンゴールド・セブンプレミアムはその成果です。

中小企業では、徹底的にユーザー視点で考え続け、業務用ミラーでシェアNo.1のコミーのような企業もあります。

 

とは言え、現代では外資系企業と一括りにはできなくなりました。かつては外資系企業≒米国企業+いくつかの欧州企業でしたが、今や外資系企業は様々な国を本拠地にしており、価値観も多様です。またイーロン・マスクが率いるテスラやXスペースは、技術開発において日本企業が得意だったあくなき愚直な仮説検証を繰り返しています。

 

しかしいずれにしても、外資系企業・日本企業、いずれのケースでも、

「顧客の課題」+「技術の強み」→「解決策」(=製品)

を徹底的に追求している企業が、成功しているのは共通です。

結局大切なことは、どこでも同じなのだと思います。

「経営者の年収は、上限2000万円でいい」という話

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日本でも、10億円を超える高額年収を得る経営者が現れていますが、これに対して2015年3月9日の日経ビジネス「異説異論 億単位の高額報酬は無意味 経営者が保身に走るだけ」で、城南信用金庫の 吉原毅理事長が次のように述べておられます。

—(以下、引用)—

……こうした高額報酬は、経営者の意欲を高めることにはつながらない。それどころか逆効果だと私は思う。なぜか。人間は大金を目の前にすると保身に走るものだからだ。そもそも「お金で経営者は動く、人は動く」というその発想自体が大間違いと言える。

……米国を中心に何が起きたか。多くの経営者が巨額の報酬に目がくらみ、長期的な視点を捨て、目先の経営に走るようになった。不正な経営、不正な経理も多発した。揚げ句の果てに起きたのがリーマンショックだ。

 だから経営者、役員の報酬は低くていい。「大企業の経営者こそ収入制限を設けるべき。それは一般社員の給与よりも低いぐらいでもいい」と声を大にして言いたい。規模や業種など企業ごとに状況が異なるため一概に言うのは難しいが、あえて制限ラインの金額を言うなら年収2000万円くらいだろう。

 私自身、理事長に就任後、自らの報酬を大幅に減額、支店長の給与水準以下にした。ほかの役員報酬も順次、減額した。つまり役員になっても報酬は増えない。報酬だけ考えたら支店長のままの方がいい状況を作った。

—(以下、引用)—

「積極果敢な経営をしていない」と言うと、高額を得ている多くの経営者は「そんなことはない」と真っ向から反論するでしょう。

しかし吉原理事長のポイントは、「短期的視点は『積極果敢』ではない。長期的視点の思い切った経営判断こそ重要。長期的視点よりも短期的視点を優先し、目先の経営にこだわることが問題だ」ということです。

短期的視点にこだわることがむしろ保身に繋がる、ということですね。

 

城南信用金庫の吉原理事長は思い切った経営をなさる方と聞いていましたが、自らの給与を大幅に減額したというのは、このコラムで初めて知りました。

では、結果はどうなのでしょうか?

—(以下、引用)—

 そうすれば「会社を変えたい。もっと大きなチャレンジがしたい」というお金が目的ではない、高い志を持った人だけが役員になろうとするからだ。

……私自身の経験から、高額報酬がなくなれば経営者はかえって自由になれると実感している。思い切った経営判断をしても失うものはない。仮に失敗して役員失格となっても、一般社員として出直せばいい。給与面ではダメージがないから腹をくくれるのだ。

—(以下、引用)—

自らの痛みを伴いながら実際に実行なさっているところに、凄みを感じます。

 

1980年代に私が社会人になった頃、日本企業の新入社員と社長の年収差は、欧米企業と比べてかなり低いと言われていました。正確な数字は記憶していませんが、大企業でも10倍以内だったように思います。

当時、日本企業の強みは、短期的な利益追求に走らず長期的に考え、人材をじっくり育成して定着させているところにある、と言われていました。

その後30年かけて、日本企業は徐々に欧米型経営(というより米国型経営)を取り入れてきました。よい面も確かにありましたが、悪い面もあったように思います。

 

日本史教科書にも載っている西暦600年頃の遣隋使・遣唐使のように、古来より日本は海外からの文化や習慣を様々な形で取り込み、自分のモノにしてきました。日本に取り入れる過程で試行錯誤もあったのでしょう。

米国型経営の取り込みも、今後見直されていく方向にあるのかもしれません。

 

 

議論には、2種類ある。混同すると火傷する

「和を以て貴し」を是とする日本人にとって、議論は苦手です。

しかし一方で、ビジネスの世界では議論の重要性が高まっています。

そこで企業でも、議論の技法を身につけるべくディベートに取り組むケースも増えています。

 

 

たしかにディベートは、ロジックを学ぶ上で有益な方法です。

しかし実際には、議論はディベートだけではありません。

 

週刊東洋経済2015年1月17日号の記事「知の技法 出世の作法 信頼できる評論家が池上彰である理由 弁証法的な思考に長け 対話で真理を見いだす」で、佐藤優さんがこの日本人が苦手だと言われている議論の方法論として、2種類上げられておられます。

参考になるので、紹介します。

 

一つはディベート。企業ではディベート研修なども注目されていますが、本来ディベートとは「言葉の決闘」であり、二者のどちらの論者が優勢であるかを、ルールに基づいて判断するものです。

佐藤さんは「そこには、開かれた心で新たな真理を見いだしていこうという気構えはない」と書いておられます。

社内の議論を活性化しようとしてディベートのスキル向上を図るケースがよくあります。論理的思考と多角的なモノの見方を身につける上で、確かにディベートは有効です。またなかなか議論しようとしない組織では、ディベートはショック療法として有効かもしれません。

しかし日々の業務でディベートが過度に使われるようになると、ともすると単に議論の勝ち負けだけに終始するようになり新たな価値創造ができず、逆効果になる可能性もあります。

 

もう一つが、弁証法的対話。佐藤優さんが「池上彰さんが身につけている」としている手法がこちら。対話を通じて真理を見いだす方法です。具体的には、

・Aという意見を偏見なく聞き届ける。

・そしてその矛盾点や疑問点などを検証し、相手に質問し、回答を得る。

・そのようにして正しい真理に迫っていく。

という議論の手法です。

 

一昨年まで外資系企業に30年間勤務していて、海外の人たちから、日本人に対して感じている不満の一つとしてよく聞いていたのが、日本人が「弁証法的対話」が行えないことです。

「ダメなものはダメ」「日本は違う」「わけがわかっていない外人に対して、意見を通してやる」という考えを持って議論に臨むのは、どちらかというとディベート的手法。かつて日本人が海外の人との議論に臨む際には、「いざ、外人と一騎打ち」というこのパターンが少なくなかったように思います。

一方で、「こう考えてはみたものの、他にもっとよい解決策があるかもしれない。一緒に考えよう」という態度で議論し、よりよい解決策を探っていくのが、弁証法的対話です。

 

私の実感では、弁証法的な議論ができる人は意外と少ないように感じています。(また公平性を期して補足すると、海外の人たちの中にも、弁証法対話ができない人もいます)

 

典型的なのが、国会の答弁。弁証法的議論はほとんどありません。ディベート的手法の「言葉の決闘」で相手を打ち負かそうとしたり、あるいは揚げ足取りをしているのを、国民は望んでいない筈です。

国民の税金を使って国会議員同士が議論しているのですから、弁証法的手法で党派を乗り越えて、相手の良い点は取り込み、疑問点は正し、よりよい解決策を見いだしていく。

こんな姿勢を見せるような党は、より国民の支持も得られるのではないでしょうか?

 

そして、私たちの日々のビジネスでも、弁証法的対話は大切になってきていると思います。

議論のバリエーションとして、ディベートだけではなく弁証法的対話も身につけると、思考が半歩深まっていきます。

 

麻生川静男著『本当に残酷な中国史 大著「資治通鑑」を読み解く』ー中国ビジネスに関わる人は、ご一読をお勧めします

前職の日本IBMに勤務していた頃は、中国の人たちと一緒に仕事をする機会を多くいただきました。

深い教養を感じさせる方が多い一方で、日本人の私からするとなかなか理解できない割り切りのよさや交渉の駆け引き、相手と自分の力関係を巧みに読み取り態度を変えるしたたかさに、「とても真似できないなぁ」と感じることが多くありました。

また一方で、大紀元のような中国政府とは独立している海外の中国メディアでは、中国共産党が日本国内で報道されない様々な蛮行を行っていることも報道されています。

自分の中では、一見両極端なこれらのことは、なかなか理解できませんでした。

 

このことについて、櫻井よしこさんが週刊東洋経済2014/11/08号のコラム「オピニオン縦横無尽 深い教養と残虐さを持つ中国人 対中外交で押さえるべき基本」で、次のように書いておられます。

—(以下、引用)—

……このように素晴らしい教養人を育んだ中国には、同時に幾千万の国民を死に追いやった毛沢東のような非道の人物が少なくない。習近平体制下で進行中の数々の蛮行、徹底した言論と情報の統制、表現の自由の規制、不条理な反日など、前述の深い教養がいかにして同じ漢民族の中に存在するのか、私には理解しにくかった。

 しかし『本当に残酷な中国史 大著「資治通鑑」を読み解く』(麻生川静男、角川SSC新書)で多くの疑問が氷解した。資治通鑑は紀元前500年から紀元後1000年の約1500年の中国の歴史を、北宋の学者であり政治家だった司馬光がまとめたものだ。…

—(以上、引用)—

 

早速、『本当に残酷な中国史 大著「資治通鑑」を読み解く』(麻生川静男、角川SSC新書)を読んで、櫻井さんが「多くの疑問が氷解した」と書いておられるのと同じことを感じました。

 

本書の冒頭、著者の麻生川さんは、資治通鑑の重要さについて次のように書いておられます。

–(以下、引用)—

■私たちにとって、資治通鑑を読むというのは…(中略)…、中国の隠された政治力学を読み取るという目的がふさわしい。中国の政治や社会は表面だけをみて、近代民主主義的な価値観から判断しても正しく理解できない。中国の政治や社会を動かしている根本理念は彼らの伝統的な価値観であるのだ。

■中国の本質を知ろうと思えば、悪の面だけ見たのでは一面的すぎる。中国には善(徳・仁・義)の実現をめざし、命がけの行動を起こした人が数多く存在する。その人たちの信念の強さやしぶとさは、ある面では日本人を遥かに凌駕する。言い換えれば、日本人は善悪のレンジが狭いのに対し、中国人はとんでもない極悪人から、ウルトラ善人まで、善悪のレンジが極めて広い。中国の悪だけでなく善のパターンが、それも極端な場合も含め、全て網羅されている資治通鑑という長編ドキュメンタリーはこの意味でも中国社会の実相を知るのに非常に有益な書であるのだ。

—(以上、引用)—

本書では多くの衝撃的な記述があります。

一例を挙げると、人が人を食うケースがしばしば書かれています。そのパターンは大きく分けて5種類。①美味・珍味として食べる。  ②罰として罪人の身内を殺して食べさせる。  ③薬として食べる。  ④憎い相手を食って鬱憤をはらす。  ⑤飢饉のとき、人を食べる。

人肉を家畜の肉同様の扱いをしているケースもあります。

 

また一方で、ビジネス面では次のような記述もあります。

—(以下、引用)—

■平和な時代にこつこつと富をためていざというときに備える、というような堅実思考は中国人には希薄だ。資治通鑑を通観してみると中国はどんなに荒廃していても、30年間、大きな天災がなく平和が続くと例外なく殷富(リッチ)になっている。そうすると、これまた判で押したように決まって贅沢モードに突入していく。…(中略)….つまり、現在の中国に蔓延している贅沢は何も鄧小平が始めた「社会主義的市場経済」下の改革開放運動の結果でなく、単に昔からの伝統に忠実に従っているにすぎないのだ。「資治通鑑を読まずして中国は語れない、そして、中国人を理解することも不可能である」というのはこういったことを指す。

■中国では法律や常識は身を守る役にたたない。各人が状況を把握し、理屈は二の次として、とにかく自分で判断し、行動することが求められる。

■現在、中国には数多くの日本企業が進出しているが頻発するトラブルに苦労していると聞く。その原因を考えるに、日本流の誠心誠意が中国人にも分かってもらえるはずと楽観的に考えている節が見える。トラブルの多くは日本人には思いもつかないような中国人の策略にある。その意味で予備的にでも中国人の策略を一通りは知っておく必要があ

■策略のパターン:  ①互いの妬みや怨みを利用する  ②高位者を利用して報復する  ③味方をも欺く  ④おだてて自滅を待つ  ⑤表では友好を装い、裏では陥れる策を練る  ⑥奸計で無実の人を陥れる  ⑦面子を守るためには、不正・不義も断行する  ⑧権道──義を貫くためには汚い手段も辞さない。

—(以上、引用)—

 

当ブログでは割愛しますが、こんな中でも自分の命を顧みずに徳を重んじた人たちの話も出てきます。

 

とは言え、グローバル化が進んでこれまでの中国のやり方は国際社会で通用しなくなりつつあります。今後、中国はどうなっていくのでしょうか?

そのことを考える上で、ライフネット生命CEOの出口治明さんが、著書『仕事に効く教養としての「世界史」』で、書いておられることがヒントになりそうです。

—(以下、引用)—

少し大胆なことを言えば、中国という国は、少なくともこれまでの歴史のうえでは、じつはあまり対外的には侵略的ではないのです。朝鮮やベトナムなど、地続きのところに対しては、始皇帝の時代から自分たちの庭だと思っていますから、かなり無遠慮です。しかし中国の本来的な強さは、むしろ侵略者を全部飲み込んでしまうところにある。飲み込んで自分の腸の中で吸収してしまう強さなので、……これまた、中国史のおもしろいところです。

—(以上、引用)—

 

このように、これまで中国は、周りの文化を飲み込んでいった歴史があります。

このような歴史を踏まえると、これから数十年から数百年間のレンジで考えると、中国はグローバル社会と積極的に関わりながらも、そのエッセンスを次第に呑み込み、さらに洗練化され、強くなっていく、ということも考えられます。

 

中国ビジネスに関わる立場にある方が歴史の視点で中国を理解する上で、本書はとても役立つと思います。


世界経営者会議(13) 本日の日本経済新聞で紹介いただきました

本日2014/11/28の日本経済新聞で、世界経営者会議二日目の様子が特集されています。

この特集で、日本経済新聞編集委員の田中陽さんが「顧客と歩む姿勢、成長の軸」というまとめ記事を書いておられます。

この中で、私の名前を紹介いただいています。

—(以下、引用)—

欧米の有力企業が東南アジア諸国連合(ASEAN)シフトを本格化していることも明確になった。受講者の一人でビジネス書の著作が多い永井孝尚氏は「BASFのように研究開発拠点をアジアに設けるのは、より顧客に近づいて仮説検証を繰り返すもので象徴的だ」と語る。

—(以上、引用)—

 

前職の勤務先である日本IBMも、研究開発拠点を神奈川県大和市に置いていましたが、お客様プロジェクトに開発者や研究者が入ることが多くなったことに伴い、東京豊洲に研究開発拠点を移転しました。

皆様の身近なところでも、このような動きは意外と多いのではないかと思います。

 

昨年・今年と、2日間の世界経営者会議に参加して感じるのは、ここが最新の経営に接することができる最高の場だということ。

加えて、当ブログで12回に渡ってそのまとめを文章化したことで、より学びを深めることができました。

来年も参加したいと思います。

 

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議(5)2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO 「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

世界経営者会議(7)2日目: SMインベストメント テレシタ・シー・コソン副会長 平均年齢23才と若いフィリピンは、なぜ急成長しお金を持っているのか?

世界経営者会議(8)2日目:タイ石油公社(PTT) パイリン・チョーチョーターウォン社長兼CEO タイはバイオハブになる

世界経営者会議(9)2日目:サンミゲル ラモン副会長、社長兼COO ASEAN統合は、アジアの新たな発展の契機になる

世界経営者会議(10) 再び1日目:欧米製造業の対応 ーなぜ彼らはアジアにR&D拠点を移すのか?

世界経営者会議(11) 再び1日目:アミトコ ニクラス・ゼンストローム 共同創業者件CEO

世界経営者会議(12) 再び2日目:ティファニー・アンド・カンパニー マイケル・コワルスキー 会長兼CEO 「不易と流行」…守るべき歴史と、変えるべきもの。

 

世界経営者会議(12) 再び2日目:ティファニー・アンド・カンパニー マイケル・コワルスキー 会長兼CEO 「不易と流行」…守るべき歴史と、変えるべきもの。

世界経営者会議レポートの続きです。

二日目に、ティファニー・アンド・カンパニー マイケル・コワルスキー 会長兼CEOが登壇しました。創業177年という、米国では異例なほど長く経営されている老舗のトップが話す内容は、参考になるところも多いお話しでした。

 

【講演より】

自分は15年間CEOを務めた。間もなくCEOは後継者に譲る。

ティファニーのコアバリューは、5つである。

①まず、デザイン。情熱を盛ってデザインに注力する

②クラフトマンシップ。職人技だ。

③最上級の材料を使っていること。

④サービス。お客様は生涯に渡るお付き合いになる。そこで専門家がサービスを提供する。

⑤責任ある行動。社会からの信頼

これらを踏まえて、我々の戦略は、

①長期的価値にフォーカスすること。公開企業だが、あくまで長期の経営健全性のために投資する。

②妥協することなく成長する。つまり、性急な成長は目指さない。必ずコアバリューに合っているかを照らし合わせ、着実な成長を図る。

③特化した製品ラインを維持する。製品を特化することで、価値を磨き続ける。

④垂直統合したサプライチェーン。製品は全て自分たちで作る。

⑤自前店舗の展開

製品中心の企業であるが、常に顧客の価値(人生の節目の記念、など)にフォーカスし続けている。

 

実はティファニーは、10年前はグローバル企業ではなかった。売上の80%は米国と日本から稼いでいた。そこでグローバル化にあたって、戦略の進化を図った。

①まず、各地域への進出。

②グローバルマネジメントチームを創設。

③製品の品揃えの見直し。

④新興市場においてブランド知識を育成する。

⑤ブランディングをよりわかりやすくする。日本や米国のブランディング方法だと新興国にはわかりにくかった。

これまでのティファニーのコアバリュー、ビジネスモデルは有効である。今後も着実に進化させていく。

 

【質疑応答】

(「資本市場といかにつきあってきたのか」という質問に対して)
株主に長期的ビジネスを伝え続け、理解してもらえた。そういった人たちが株主になっていたということだ。

(「歴史を守るために変えなければならなかったもの。逆に守らなければならなかったものは、どんなものか?また事業継承のプログラムはあるのか?」という質問に対して)
当社は、経営陣刷新の真っ最中だ。5年間をかけて私の後継者に移行している。

基本的なティファニーの強みは変わらない。重要なのは進化だ。誰もが177年の歴史が持つ資産を理解するということだ。

一方で、新興市場から学べたのはマーケティングのメッセージをシンプルかつ明確にしなければならない、ということ。歴史に甘んじてはいけないのだ。

(「今後の消費社会をどう見ているか?」という質問に対して)
もっと経験を重視するようになっていくと見ている。たとえば結婚式を祝う際に、それをいかに人生の重要な一部とするか、だ。製品そのモノだけではなく、顧客はどのように製品が作られているのか、物語を気にするようになっている。顧客とは、作り方や考え方を共有する方向にある。

 

【所感】

マンハッタンの5番街にあるティファニーのお店は日本人にも人気ですし、日本にも多くの店がありますが、ティファニーが10年前までグローバル企業ではなかったというのは、意外でした。

しかし一方で、

■「コアバリュー→基本戦略→グローバル化戦略」、とステップを踏んで構造的に戦略を立てる考え方

■製品中心の企業ではあるものの、常に顧客の価値にフォーカスしていること

これらはまさに「不易と流行」の方法論でもあります。

同じくグローバル化を進める日本企業にとっても参考になるのではないかと思いました。

 

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議(5)2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO 「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

世界経営者会議(7)2日目: SMインベストメント テレシタ・シー・コソン副会長 平均年齢23才と若いフィリピンは、なぜ急成長しお金を持っているのか?

世界経営者会議(8)2日目:タイ石油公社(PTT) パイリン・チョーチョーターウォン社長兼CEO タイはバイオハブになる

世界経営者会議(9)2日目:サンミゲル ラモン副会長、社長兼COO ASEAN統合は、アジアの新たな発展の契機になる

世界経営者会議(10) 再び1日目:欧米製造業の対応 ーなぜ彼らはアジアにR&D拠点を移すのか?

世界経営者会議(11) 再び1日目:アミトコ ニクラス・ゼンストローム 共同創業者件CEO

世界経営者会議(12) 再び2日目:ティファニー・アンド・カンパニー マイケル・コワルスキー 会長兼CEO 「不易と流行」…守るべき歴史と、変えるべきもの。

 

世界経営者会議(11) 再び1日目:アミトコ ニクラス・ゼンストローム 共同創業者件CEO

世界経営者会議のレポートの続きです。

今回登壇した経営者19名の中には、テクノロジーベンチャーキャピタルの経営者もいました。

アミトコ共同創業者兼CEOのニクラス・ゼンストロームさんは、かつてスカイプを創業した方です。

ニクラスさんの話から、よく語られることが多いシリコンバレー視点とはまた別の視点で、テクノロジーベンチャーの今の姿を知ることが出来ました。

 

■アミトコ ニクラス・ゼンストローム 共同創業者件CEO

なぜアミトコを作ったか?

スカイプはシリコンバレーの外で成功した、当時として非常に数少ないテクノロジーベンチャーになった。

実は2002年、スカイプの資金調達をしようとしたが、誰も資金提供してくれなかった。自分はスウェーデン人で、スカイプは欧州生まれだ。シリコンバレーの外では、このような会社に投資する仕組みは、当時なかったのだ。

この経験により、英国でテクノロジーベンチャーキャピタルのアミトコを創業した。シリコンバレーの外で、財務的インフラを提供するためだ。

現在、10億ドル以上の企業価値があるネット企業の6割以上がシリコンバレーから生まれている。たとえばストックホルムで生まれたSpotify(音楽ストリーミング配信サービス)のように、欧州でも新しい会社が続々生まれている。東京でも同様だ。

 

(日本のベンチャーをどう見ているか、という質問に対して)

昔から日本のモバイルを注目していた。多くの技術が日本にある。かつて日本の起業家は国内市場だけを見ていたが、最近になってグローバルも見るようになった。

日本のSmartNewsにも投資をした。パイオニアだと思う。既にニュースの世界でNo.1だし、海外にも出て行こうとしている。創業者が技術にフォーカスしているし、シンプルなユーザー体験を提供している。多くのスタートアップで、若い有能な人たちが増えるといいと思う。

 

(新しい技術のトレンドはどうか、という質問に対して)

人がその技術自体に気がつかなくなっていく方向にある。(気がつくととても使い勝手がよくなっていて、その裏で最新技術を活用している、というイメージ)

色々な技術の組合せて、モノゴトを単純化していくようになっていく。ソフトウェアだけでなく、ビッグデータやクラウドがある。オンライン・オフラインの境目がなくなる。そしてものすごく効率が上がっていく。

 

【所感】

シリコンバレーのようなインフラも、わずか10年間でグローバル化しつつあります。

日本では渋谷を「ビットバレー」と呼び、ベンチャー企業とベンチャーキャピタルが次々と生まれた時期がありました。同じタイミングで同じことが欧州でも起こっていたのです。

一時期、”The World is Flat”という本が流行りました。実体経済では必ずしもフラット化しておらずむしろ民族主義などの問題が起こっています。しかしテクノロジーベンチャーの世界では、世界のフラット化は急速に進んでいると感じました。

 

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議(5)2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO 「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

世界経営者会議(7)2日目: SMインベストメント テレシタ・シー・コソン副会長 平均年齢23才と若いフィリピンは、なぜ急成長しお金を持っているのか?

世界経営者会議(8)2日目:タイ石油公社(PTT) パイリン・チョーチョーターウォン社長兼CEO タイはバイオハブになる

世界経営者会議(9)2日目:サンミゲル ラモン副会長、社長兼COO ASEAN統合は、アジアの新たな発展の契機になる

世界経営者会議(10) 再び1日目:欧米製造業の対応 ーなぜ彼らはアジアにR&D拠点を移すのか?

世界経営者会議(11) 再び1日目:アミトコ ニクラス・ゼンストローム 共同創業者件CEO

 

世界経営者会議(10) 再び1日目:欧米製造業の対応 ーなぜ彼らはアジアにR&D拠点を移すのか?

世界経営者会議のレポートの続きです。

ここ数回、アジアの経営者の声を紹介してきました。ここで欧米の製造業トップの講演をご紹介したいと思います。

 

■BASF マルティン・ブルーダーミュラー副会長

2050年、世界の人口は90億人になる。リソース・環境・気候、食品と栄養、生活の質が重要になる。これらを解決する上で、化学はイネーブラー(enabler)だ。

BASFはサステイナブルな未来のために化学を作っていく。それが新しい企業戦略、”We create chemistry”だ。

R&D 18億ユーロ(2600億円)のうち、1/3は気候変動、エネルギー開発に投資していく。

市場規模と成長率を見ると、アメリカ地域が1900億ユーロ(28兆円)で年+6%。欧州中東アフリカ地域が2000億ユーロ(29兆円)で年+6%。アジア地域が2400億ユーロ(35兆円)で 年+9%。

つまりグローバルでは、アジアが最大市場で、かつ最も成長が速い。

そこで1/4のR&D支出をアジア に振り向け、アジアでイノベーションを推進し、世界に広げる戦略だ。

パートナーシップも重要だ。その際には、どのように関係性を管理するかが課題だ。

社内でも、別事業のR&D担当者同士が話し合うことで新しいアイデアが生まれている。R&Dだけでなく、SCMや生産も同様だ。

頭脳をつなげていくことが大事だ。一緒になることで効率性もスピードも高まる。全ての社員が、「我々はBASFという一つの会社である」という考えを持つことが大切だ。

 

■シュナイダーエレクトリック ジャンパスカル・トリコワ会長兼CEO

当社は25年前は電力管理を中心とした事業だった。

今や売上250億ユーロ(3.6兆円)。内訳はビルディング関連 102億ユーロ、インフラ関連 57億ユーロ、インダストリー関連 59億ユーロ、IT関連 34億ユーロだ。

R&Dに売上の4-5%を投資している。43%は新興国だ。さらに45%の人材がアジアにいる。

そこで本社をパリから香港に移した。当社では全世界45拠点に、11,000名のR&Dエンジニアがいる。顧客がいる現場近くに配置している。

パートナーシップも重要である。日本は生産性が高く、東芝、富士電機、TEPCOなどともパートナーシップを拡大している。

パートナーシップでは色々なものを組み合わせるので、複雑性との戦いになる。だから規格はオープンスタンダードでなければならない。標準化が必要だ。

大切なのは、小さい段階で失敗すること。その際、相手を信用できるかどうか。要は人である。人に尽きる。

 

■マイクロン・テクノロジー マーク・ダーカン CEO

マイクロンはメモリー半導体専業だ。

今、ムーアの法則が鈍化している。これまでデータセンターのデータが中心だった。今はモビリティとクラウドが普及しIoT (Internet of Things、モノのインターネット)のデータが急拡大している。

こんな時代の課題に、1社で全てに対応するのは難しい。だからパートナーシップが必須となった。

研究者たちのパートナーシップを拡大している。 パートナーシップのためには、Win-win(双方にとってのメリット)が何なのかをキチンと定義することが必要だ。真のWin-Winであれば競争ではない。これが真の差別化要因になっていて、持続できるかどうかがカギだ。

 

【所感】

欧米の製造業トップ3名の講演と対談でした。

共通して、R&D拠点としてアジアを重視していることが印象的でした。

現代では、多くの企業は顧客の近くにR&D拠点を置いています。その一つの理由は、R&Dの段階で顧客に「課題」を検証する必要性が、かつてよりもはるかに高まったからではないかと思います。

20−30年前は、門外不出の研究を本国で行うことが多く、R&D拠点も本国に置いていました。現代に比べてプッシュ型のアプローチ、つまり製品主導でも売れていましたし、顧客の課題が多様化していなかったから、というのが背景です。

しかし今は、この方法で製品開発を進めると、多様化・細分化・激変する顧客の課題を間違ったまま開発してしまい、製品を出してもまったく売れないということが起こってしまいます。

だから顧客の近くで、顧客に課題と解決策を検証しながら、製品開発を進めることが必要なのです。

このように考えると、欧米製造業各社が世界で一番成長しているアジア地域にR&D拠点を設置し始めているのは、ある意味必然なのでしょう。

 

昨年の世界経営者会議では、たとえば「欧米企業の多くは、いかにアジアの成長に対処するか苦慮している」という欧州・ヘンケルCEOの発言のように、アジアの成長への対応に悩む欧米企業トップの声が聞かれました。

一方で今年は、欧米企業はアジアの成長に対して、積極的に自社を変革してでも腰を据えて対応しようとする姿勢が印象的でした。

 

この世界経営者会議のレポート、登壇された19名の経営者のうち、まだ6名残っているので、もう少し続けます。

  

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議(5)2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO 「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

世界経営者会議(7)2日目: SMインベストメント テレシタ・シー・コソン副会長 平均年齢23才と若いフィリピンは、なぜ急成長しお金を持っているのか?

世界経営者会議(8)2日目:タイ石油公社(PTT) パイリン・チョーチョーターウォン社長兼CEO タイはバイオハブになる

世界経営者会議(9)2日目:サンミゲル ラモン副会長、社長兼COO ASEAN統合は、アジアの新たな発展の契機になる

世界経営者会議(10) 再び1日目:欧米製造業の対応 ーなぜ彼らはアジアにR&D拠点を移すのか?

 

世界経営者会議(9)2日目:サンミゲル ラモン副会長、社長兼COO ASEAN統合は、アジアの新たな発展の契機になる

世界経営者会議レポートの続きです。

サンミゲルはビール会社として有名ですが、多角化を積極的に推進され、今やフィリピンのインフラを担う大企業になっています。

2002年から社長兼COOを務められているラモン副会長が登壇されました。

【講演より】 

フィリピンは何十年かぶりに回復しつつある。そこで急成長するアジア市場で成功するための秘訣をお話ししたい。

フィリピンはGDP 7%成長で推移している。ビジネスが堅調なのにはいくつか理由がある。

まず、健全な財政運営がされている点。そして安定した輸出セクター。消費者支出も堅調だ。海外で働きフィリピン人の送金も増額している。この結果、格付会社からフィリピンは「投資適格」のランク付けをもらっている。

平均年齢23才という若い国民が1億人いる。この国へは日本企業も進出している。2012年からメトロ地域にユニクロも12店舗展開している。ラーメンの一風堂も進出している。

フィリピン政府は50以上のプロジェクトを進めており、サンミゲルは様々なプロジェクトに参画している。

サンミゲルは過去6年間、多様性に富んだ企業にすべく多角化を進めてきた。社会的インフラプロジェクトに投資してきている。その結果、サンミゲルの総資産額は270億ドル、売上は170億ドルになっている。

日本が技術や資金を提供してくれることで、フィリピンはより成長できる。ではどうすれば成功できるか?5つのポイントをお話ししたい。

1つ目は、正しい情報を得ることだ。不慣れな地域では様々なリスクが隠れている。信頼できるプロフェッショナルを雇うことだ。

2つ目は、適切なパートナーを選ぶこと。

3つ目は、信頼関係を築くために時間も含めた投資を怠らないこと。

4つ目は、挑戦すること。プレミアムブランド戦略は、このような新興国では機能しない。製品の価値と価格競争力を両立させることが必要になる。

5つ目は、想定されたリスクを取ることだ。

優勢な立場に立つためのチャンスを見極め、常にイノベーティブであることが必要だ。時間が経てば必ずよいものが出てくる。新しいものを作ることを恐れてはいけない。

そしてチームワークと対話が必要だ。効率の良い「対話戦略」と、事前計画を持つことが必要だ。

 
【質疑応答より】

(「中間所得者層が急拡大したこの10-20年で何が変わったか?」という質問に対して)
海外労働者からの送金は年間250億ドル、アウトソーシングは年間200億ドルの規模だ。これらのお金がフィリピンに入ってきており、国内で再投資され、ビジネスがさらに増えている。フィリピンは若いのでこれからもアジアの他の国よりも高成長が期待できる。政府は緊急なインフラプロジェクトをしてくれないと困る。フィリピンには莫大なチャンスがあるからだ。このチャンスを逃してはならない。

(「チャンスは多いが、課題は何か」という質問に対して)
マルコス時代に戒厳令があったこともあり、1980年代から色々な問題があって、フィリピンは遅れている。たとえばセメント消費量は1人当たり150Kgだ。他国は1000Kgなので少ない。だから不動産はまだまだ成長できる。多くの外国人がフィリピンに来ないのは、拉致や誘拐を恐れているかも知れないが、今はそんなことはない。

(「AEC (ASEAN経済共同体)が2015年末から始まると言われているが、これはうまくいくと思うか?」)
ASEAN統合は間違いなく実現される。フィリピンではリスクはあまりないと思う。消費者にとっては価格がより安くなり、入手しやすくなる。フィリピンにとってよいことであり、フィリピンの強みになる。

(「この5年、10年の中国の役割を聞きたい。特に中国が提唱しているAIIB(アジアインフラ投資銀行)についてどう思うか?」という質問に対して)
→中国は全ての近隣諸国に友好的であるとともに、全ての国と協力して、問題から遠ざかるべきだ。

 

【所感】

SMインベストメントのテレシタ・シー・コソン副会長もフィリピンの企業でした。今回の世界経営者会議に登壇された19名のうち、フィリピンからは2名の経営者が参加されています。それだけフィリピンの成長が著しいということでしょう。

実は対談は、記者と、ラモン副会長、SMインベストメントのコソン副会長、PTTのパイリンCEOの4名で行われました。

ASEAN統合や、中国の話題、AIIBの話に対する3名の反応を見ていると、アジアではさらに大きな躍動が始まっていることを実感します。

新聞記事でも経営者の講演や対談の様子を読むことができますが、やはりライブで見て得られるものは大きいですね。

 

2015年の世界経営者会議は、2015/11/10(火)と11/11(水)の予定です。ここでしか学べないことも多いので、また参加したいと思っています。

 

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議(5)2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO 「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

世界経営者会議(7)2日目: SMインベストメント テレシタ・シー・コソン副会長 平均年齢23才と若いフィリピンは、なぜ急成長しお金を持っているのか?

世界経営者会議(8)2日目:タイ石油公社(PTT) パイリン・チョーチョーターウォン社長兼CEO タイはバイオハブになる

世界経営者会議(9)2日目:サンミゲル ラモン副会長、社長兼COO ASEAN統合は、アジアの新たな発展の契機になる

世界経営者会議(8)2日目:タイ石油公社(PTT) パイリン・チョーチョーターウォン社長兼CEO タイはバイオハブになる

世界経営者会議レポートの続きです。

タイ石油公社(PTT) 社長兼CEOのパイリンさんは、東京工業大学に留学され、修士と博士を取得された方でもあり、「東京は第二の故郷」とおっしゃっています。

 

【講演より】

PTTはグローバルFortune 84位にランクされる国営石油公社だ。積極的に多角化を進めている。そこで世界で何が起こっているか、その中でPTTの戦略が何かをお話ししたい。

世界では経済的・社会的な変革が起こっている。

高齢化が進展し2050年には65才以上の人口が3倍になる。グローバル化も進んでいるし、気候変動・資源減少の問題もある。一方で人々は、ICTの発達でソーシャルネットワークによりいつでもどこでも常に繋がるようになり、仕事とプライベートの境界が失われつつある。つまりノンストップでビジネスが進んでいる。

ビル・ゲイツが1999年に著書で「全てがリアルタイムに繋がり、ネットワーク化していく」と述べている状況が、まさに生まれている。

私は2014/4/21にシスコCEOのジョン・チェンバレンの招きでシスコ・リーダーシップ・カウンシルに参加した。その際、チェンバレンCEOは「企業は常に環境変化についていくことが必要だ。全ての企業がテクノロジー・カンパニーになっていく」と述べている。

常にイノベーションを生み出し続ける企業が生き残るということだ。だから私も、PTTをそういう会社になるように主導している。

では、イノベーションの観点でどうあるべきなのか?

社会は「サプライ・プッシュ」から「デマンド・プル」に変っている。供給が需要を生んでいたのは昔の話だ。新しい技術に基づいた新しいニーズが、革新的な製品を作る。最終的には消費者ニーズそのものが市場を作り出し、イノベーションがより速い速度で進んでいる。

では未来のマーケティングはどうあるべきなのか?

フィリップ・コトラーは「マーケティング3.0」で、「価値観と人間のスピリットが大切になる」と言っている。さらに我々は環境への影響が大きい生活をしている。持続可能性(サステナビリティ)がビジネスの場でも重要になっている。

 
では世界では何が起こっているのか?

2014/11/2に開催されたIPCC (気候変動に関する政府間パネル)は、「2050年までに再生可能エネルギー比率を現在の30%から80%に増やさなければいけない。さもないと、21世紀終わりには気温が5度上がる」と提言している。

また2014/9/23のClimate Summit 2014では、世界のリーダーたちが「世界の温度上昇を2度に抑える」と合意している。

エネルギーの供給サイド、需要サイドでも取り組みが始まっている、

まず供給サイド。世界最大の石油ガス会社であるサウジアラムコのCEOは2014/10/1に、CO2回収実証プロジェクトを始めるとともに、研究開発費を5倍に増やして排出削減を図ることを表明している。

一方の需要サイドでは、イケアも2014/9/23に、2020年まで販売する家具製品を100%再生可能にすると表明している。

 

このような状況で、PTTの戦略をお話ししたい。

まず「Bio-material (生物材料)時代が始まった」ということだ。

PTTは公営石油会社だが、資源ベースから知識をベースにした企業に変革していく。

既にPTTはバイオプラスティックスでは世界のリーダーだ。さらにタイを「バイオ・ハブ」とするために、エコな工業団地を建設するとともに、バイオハブのバリューチェーンを構築していく。2020年には売上の2%をグリーン関連製品から生み出す目標だ。

 

【質疑応答より】

(「中間所得者層が急拡大したこの10-20年で何が変わったか?」という質問に対して)
タイは日本に似ている。出生率は低く、高齢化が進み始めている。こういった経済的プレッシャーから、共働きがほとんどだ。色々なサービスが生まれている。たとえばガソリンスタンドがコミュニティセンターになっている。夫婦が待ち合わせをして、買い物をしたりおしゃべりをしたりして帰る。ライフスタイルがどんどん変わってきている。コンピュータも24時間x365日運用であり、アジア大陸全体を網羅している。X世代、Y世代が増えるに従って、こういうインフラも増えていく。デパートに行かなくなりガソリンスタンドに行くようになっているので、消費者に対応できるようにするため、たとえばPTTのガソリンスタンドではコーヒーも売っている。このような個人主義的な消費者に対応できるようにしている。

(「チャンスは多いが、課題は何か」という質問に対して)
タイは資金はあるが、ASEAN全体では資金が足りない。いかにして資金を調達するかが課題である。またタイは人的資本が不足している。失業率はマイナスになっているので、近隣諸国から移民を取り込んでいる。自由な労働力の流れが、ASEANの経済に追い風になっている。

(「AEC (ASEAN経済共同体)が2015年末から始まると言われているが、これはうまくいくと思うか?」という質問に対して)
PTTは色々な国で既に数百億ドルもの投資を行ってきた。AECが実現すれば、その投資を拡大していきたいし、ASEANを再活性化できる。6億人の人口を抱えるASEANは中国やインドとも繋がっている。中国やインドとビジネスをしたい人たちにもASEANに来て欲しい。
ASEAN統合はタイにとっても強みになるし、フィリピンと補完関係にある。まだまだ投資が必要だ。ASEAN諸国が我々の投資先になっていく。共同体には期待が高い。政府は、ASEANの他国は、ライバルではなくパートナーなのだ、というように考えを変えなければならない。

(「この5年、10年の中国の役割を聞きたい。特に中国が提唱しているAIIB(アジアインフラ投資銀行)についてどう思うか?」という質問に対して)
→AIIBは、最も歓迎する中国からのメッセージだ。インフラ投資を拡大するにはAIIBはよいコンセプトだと思う。
米国はアジア開発銀行(ADB)を主導している。AIIBとAIDは、もう一つの米中対決なのかもしれない。両国の狭間に入ってしまうので、いかにASEANが独自性を持つかというゲームなのかもしれない。ADB、 AIIBいずれであっても、ASEANにキチンと投資してくれるのであれば歓迎したい。

【所感】

まずパイリンさんのマーケティングへの深い造詣に感服しました。必死にメモを取り、後日、動画と講演資料も見直しました。

アジアで、しかも公営企業が、大きなマーケティング戦略をもって、このようにグリーンプロジェクトに統合的な取り組みをなさっていることに感銘しました。

一方の日本は要素技術はあるものの、このように全体を統合した取り組みはなかなか見られないのが現実ではないでしょうか。むしろ対抗しようとするのではなく、このようなプロジェクトには積極的に参画し、協業していくことが必要だと思います。

ASEAN統合本番が迫っていて、アジア各国の企業が大きな期待を寄せていることも印象的でした。

SMインベストメントのコソン副会長のお話と併せて、アジアのダイナミックな経済活動の一端に触れることができた、貴重なお話しでした。

 

明日も、ASEANにある他企業トップの講演をご紹介します。

 

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議(5)2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO 「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

世界経営者会議(7)2日目: SMインベストメント テレシタ・シー・コソン副会長 平均年齢23才と若いフィリピンは、なぜ急成長しお金を持っているのか?

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO

「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

世界経営者会議レポートの続きです。二日目に、チャロン・ポカパン(CP)グループのタニン・チャラワノン会長兼CEOが登壇しました。

中国出身のチャラワノンさんは、1969年以来45年間、タイ最大の財閥であるチャロン・ポカパン(CP)グループを率いてこられた華僑です。チャラワノンさんのお話しは、日本経済新聞・井口アジア編集総局長との対談で進められました。

 

【対談より】

団結し、安定することが必要だ。分権し、リーダーを決め、委ねるのだ。必要なのはスピード。民主的な話し合いだと時間がかかりすぎてしまう。だからリーダーが主導権を持つことが必要だ。私の場合も、二人の兄が「お前がリーダーをやれ。私たちがサポートするから」と、リーダーシップを私に委ねてくれた。

7割正しく3割間違いであれば、進めるべきだ。たくさんやれば、成功するからだ。

私が唯一許さないのは、間違った時に人のせいにすることだ。間違いを自分のこととして、なぜミスに繋がったのかを考えることが大切だ。失敗は成功の母である。ミスしてもそこから学べば、一歩先に行ける。だからミスをしても私はサポートする。

ライバルと競争して一位になることは大切だが、利益が出ないのならば意味がない。自分たちがトップになれると判断した上で、参入するのが我々のやり方だ。一位になれる見込みがあるかで、事業を選ぶのだ。場合によっては一位になれる人とWin-Winの関係を結ぶ。

権限委譲する際には、範囲を明確にする。「自分が社長なのだ」と考えさせるようにし、処遇も与えた上で、意思決定させる。

CPグループの経営哲学は、国家、国民、CPグループのメリットを考える「三方良しの原則」だ。まず国家、そして国民、最後にCPグループだ。その国の国民がサポートしてくれることが最優先だ。国民に利益をもたらさないと成功するわけがない。国と国民が利益が上がれば、CPグループも利益が出る。まず与え、貧しい国が豊かになっていくことで、利益が生まれる。その1%を得るだけでも莫大な利益だ。「先に与えて、後で得る」のだ。儲けたいのならば、その国にとってよいことをすることである。

(「中国でビジネスをする日本企業へのアドバイスは?」という質問に対して)
中国企業は、世界中に投資するのが上手い。日本の起業家は、発展途上国が何を必要としているかを理解することだ。いかなる発展途上国であっても、日本の力は活きるはずだ。第二次世界大戦後、日本は全てを失ったが、発展した。このモデルをもって、発展途上国に利益をもたらすことを考えるべきだ。日本は技術を持っているし、市場を提供して世界で売るのを手伝うことも出来るし、資金もある。

(「中国経済については、どう考えているか?」という質問に対して)
中国の経済成長は減速しているが、それは必然だ。大きくなりすぎたのだ。今、成長の第二段階に入っている。今日の中国の改革がもう一歩進めば、大きなチャンスが生まれる。変化がなければ、チャンスはない。たとえば中国の土地は、現在全て国が所有している。売買されていない。さらに5億人の農民が、これから豊かになっていくし、都市部の貧しい人たちが豊かになりつつある。これまでのような高成長は不可能だが、中国国民13億人が購買力を付け始めている。成長率6%でも大変なものだ。中国市場のチャンスは無限である。東南アジア全体も同じような状況だ。

(「CPグループはタイで一日33万羽ものの鶏を生産している。生産性の秘密は何か?」という質問に対して)
CPグループは世界の変化を捉えている。モノを作る人にとってもチャンスである。たとえば鶏の生産では、今まで500名で生産していたのを、現在は十数名で生産している。最新機械を導入し、一人で20万羽を養うことができる。こういう時代になったのだ。
当社ではポイントを見極めて投資をしている。個人的には、間もなくインターネットは飽和すると見ている。誰もがネットで買うようになったその時が、飽和点だ。そうすると、モノを作る実体経済の変化や輸送ロジスティックスが重要になる。オンラインで配送できないモノ(実体)は、運ばなければならないからだ。だから今、人を物流に回している。陸運・海運・輸送装置・物流が重要になる。ストライキしないロボットを使わない手はない。モノは必要である。将来は、必ずその方向に進むと見ている。

【所感】

華僑の経営者のお話を聞く機会はあまりなかったのですが、このような形でお話しを伺い、大きな視野とロジカルな思考に感銘を受けました。

「7割正しければ実行する。沢山チャレンジする。但し、失敗したら必ず学ぶ」は、私も講演や研修などでお話ししていることで、とても共感しました。

また、「インターネットは飽和する」というお話しも説得力がありました。確かに、かつての「実体経済 > インターネット経済」の時代は、インターネットは実体経済を徐々に代替していくことで成長してきました。しかし代替可能な部分を全て代替すれば、「実体経済=インターネット経済」となり、実体経済そのものの成長が問われることになります。こうなると今度はCPグループのように、昔からある商材を扱う伝統的な産業が最新技術を取り込み、成長していく時代にシフトしていくのでしょう。

また中国市場についても、新たな視点を得られました。

日本国内ではともすると「中国の成長は既に限界。魅力的な市場ではなくなった」と言われています。海外からの投資縮小も報道されています。しかしチャラワノンさんが中国出身であることを割り引いて考えたとしても、中国市場のビジネスポテンシャルは課題を抱えつつ膨大であることに変わりはありません。

習近平主席も中国国内で汚職撲滅など様々な改革をしたたかに進めていますし、一方で懸念だった日中外交も雪解けの様相が見えてきました。

今回の世界経営者会議では、他にも中国やアジアの経営者が多く講演しました。

彼らの話からも中国ビジネスの現実がよくわかりましたし、アジア各国の企業が中国のビジネスチャンスを現実的に捉えていることも伝わってきました。

そこから見える姿は、国内メディアで伝えられる中国像とはまた違ったものでした。

 

後ほどの世界経営者会議のご報告でも、ご紹介していきたいと思います。

 

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議(5)2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO 「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

 

第16回 世界経営者会議 募集開始

日本経済新聞が主催する「第16回 世界経営者会議」の募集が始まりました。今年は11月11日から12日にかけて、東京・帝国ホテルで開催されます。

「世界経営者会議」という名前ですが、世界のトップ経営者による講演と質疑応答で構成されています。私は昨年、初めて参加しました。

参加費64,800円とちょっとお高いですが、私にとってそれだけの価値がある内容でした。

メディアだけではなかなか伝わらない世界の経営の現場で起こっている最新状況を知ることができ、実に勉強になりました。ここで学んだことは、その後の著書や講演・研修などの活動でも役立ちました。

昨年の様子は、当ブログでもご紹介しました。

2013/10/22 …その1: 1日目:「グローバル化」「透明性」「相互信頼」「日本経営の復活」「イノベーション」

2013/10/23 …その2: 1日目: HUBLOT会長の話に、とても共感しました

2013/10/24 …その3: 2日目: GE・イメルト会長、明確なビジョンと戦略

2013/10/27 …その4: 2日目: 富士フイルム・古森重隆会長。写真フィルム市場崩壊の危機に、いかに事業再構築を果たしたか?

2013/10/28 …その5: 2日目: ロンバー・オディエ、アサヒグループ、アルグレア・インベストメント、旭化成

 

今回のテーマは『競争を勝ち抜く「革新力」とは』

定員500名で抽選になります。詳細はこちら

 

厳しい消費者が集まる日本は、グローバル企業から見ると魅力的な市場

2014/9/4、英ダイソンが世界に先駆けて日本でロボット掃除機を2015年春に先行販売すると発表しました。

2014/9/5に日本経済新聞に掲載された記事『ロボ掃除機 ダイソン参入 まず激戦日本に 「ルンバ」は値下げで対抗』によると、下記の通りです。

—(以下、引用)—

…2015年春に世界に先駆けて日本で売り出す。今秋から日本の消費者と商品改良に取り組み、性能に磨きをかける。

…ダイソンが日本で先行発売するのも消費者の目が厳しい市場で商品を磨き上げるためだ。9月から日本の消費者のモニターを募集し、発売前に準備期間を設けて商品の最終調整をする計画だ。日本市場で磨いた商品で世界市場に挑む。

 記者会見した創業者のジェームズ・ダイソン氏は「日本の消費者は技術を重視する。ロボット分野でも世界トップクラスの地域だ」と語った。

…国内総代理店セールス・オンデマンドの室崎肇社長は「品ぞろえの半分は日本独自仕様だ。排気フィルターの採用など日本の消費者の意見がグローバル商品の開発に生かされている」と話す。

—(以上、引用)—

ダイソンだけではありません。

数ヶ月前に当ブログで書いたエントリーでご紹介した通り、東洋経済オンラインに2014/4/1に掲載された記事『自動掃除機で独走状態、「ルンバ」強さの秘密 アイロボットCEOの描く「10年戦略」とは』でも、アイロボットのコリン・アングルCEOの次の言葉が紹介されています。

—(以下、引用)—

アングル氏は、「日本の顧客を幸せにできれば、世界中の顧客を幸せにすることができる」と言う。開発テストでは、畳の上をはだしで歩いて、細かい粒状のゴミが感じられないかをチェックした。

—(以上、引用)—
 

また、2014/9/6の日本経済新聞の記事「3M、革新は日本から 100%子会社で始動 医療・防災 課題バネに個性派商品」では、米スリーエム(3M)が住友スリーエムを全額出資に切り替えて、日本市場を重視する戦略を進めることが紹介されています。

—(以下、引用)—

….あえて人口減に直面する日本市場に挑み、発想力を鍛える。

….「新興国経済が減速する中で先進国は重要。日本発のイノベーションを世界に広げたい」(インゲ・チューリン会長兼最高経営責任者)との思いがある。…

 「高齢化は大きなビジネスチャンス。電力問題もそう。世界全体で電力不足になる可能性もある」。チューリン氏は課題先進国である日本市場の重要性を強調する。

 ….活気ある研究風土はそのままに、競争激しい日本で発想力を鍛える狙いがある。

—(以上、引用)—

スリーエムもまた、課題先進国・日本が発想力を鍛える場であると捉えています。

 

ネスレ日本も、日本独自のビジネスモデル「ネスカフェ・アンバサダー」を作り上げました。全世界でのネスレグループ展開の可能性もあります。→リンク

 

このように多くのグローバル企業が、消費者の目が厳しい日本市場に注目しています。

なぜか?

それは現在のビジネスでは、顧客の課題をいち早く見つけ、他社に先駆けて解決策を提供することが、差別化の大きなカギだからです。

グローバル企業は、厳しい消費者がいる日本市場で課題と解決先を検証し、それをグローバルに展開するというサイクルを回すことで、常に商品の高付加価値を維持できるのです。

 

一方で日本企業は、国内でこの厳しい顧客の課題に正対し解決策を作り上げているという点で、世界のライバルを先行しています。

解決策を、いかにグローバル展開するか?

日本で培った強みをアジア各国のユーザーにきめ細かく対応することで展開し、12年で売上を3倍に成長させたユニ・チャームなど、事例もたくさん出ています。

自社の強みは日本市場で徹底的に磨き上げて、その強みを世界各地の要望に細かく合わせて提供することがカギなのかな、と思います。

 

田中将大投手の謝罪声明に、全米が「すばらしい」と称賛。日本人大リーガーが米国で拡げる日本文化

25年ほど前、20代中頃だった私は、一人で米国に出張しました。

米国の出張では、空港でレンタカーを借りて移動するのが一般的でした。しかしこの時、私のミスで駐車場にスモールライトを付けたまま一晩置いてしまい、レンタカーのバッテリーがあがってしまいました。そのためにホテルからオフィスまでの移動も大変でした。

なんとかオフィスに到着し、米国人の同僚たちに「レンタカーのバッテリーがあがってしまって大変だった。スモールライトを切り忘れた自分のミスだったんだけど」と言ったのですが、皆から意外な反応が返ってきました。

「レンタカー会社が悪い。クレームすべきだ。そもそも一晩でバッテリーがあがるのがおかしい」

同僚たちは皆、紳士的な人たちばかりだったのですが、「日本人とはメンタリティがかなり違う」「これが米国が訴訟社会と言われるゆえんなのか」と実感しました。

 

実は下記の記事を見て、上記のことを思いだしました。

田中将大の謝罪声明に全米が「すばらしい」と称賛

前期12勝4敗と大活躍してヤンキースに多大な貢献をした田中投手は声明で、「この時期に力になれなくなってしまったことを、ヤンキースの球団関係者、チームメイト、そしてファンの皆さんにお詫びしたい」と真摯に謝罪。

記事はこのように続けています。

—(以下、引用)—

アメリカでは怪我で離脱を余儀なくされた選手が謝ることはまずない。…謝罪は自身の非を認めることにつながるからだ。…

この異例の謝罪に現地ファンは「選手が怪我をしたからといって謝る必要などない」「早く良くなることを祈っている」「Class Act(一流の選手の振舞い)」とSNSや記事のコメント欄で投稿。他球団のファンまでもが「田中はすばらしい投手」「復帰してうちのチームと対戦する日を楽しみにしている」と多くのエールを寄せた。

日本文化についての議論も活性化した。「なぜ謝るのかわからない」と文化の差異に悩むアメリカのファンが問えば、「こうしたことは日本ではよくあること」と日本通のファンが説明した。

中には、「松井秀喜がケガをした時もそうだった」「ブルージェイズの川崎宗則もよく謝るけれど謙虚さのあらわれ」「イチローは人格者」といった日本人メジャーリーガーを称えた声も。日本人や日本の文化を理解し、称賛するやり取りがあちこちで起きた。

—(以上、引用)—-

 

心理学者であり文化庁長官を務められた河合隼雄さんは、「人は本当に自信がないと謙虚にはなれない」とおっしゃっています。

また、「イノベーションのジレンマ」を書いた米国人のクレイトン・クリステンセン教授も、「自信がないと謙虚になる余裕が生まれない」「傲慢な人は、自信がない」と述べています。

真摯に仕事に挑戦し、ファンであるお客様やともに戦うの同僚のことを真剣に考える田中投手の姿勢が、自然と「申し訳ない」という謝罪の言葉を生んだのでしょう。

米国社会では意外性を感じられながら好意的に受け止められ、日本人にとって当たり前に感じる田中投手のこの言葉は、実は普遍的なものなのかもしれません。

 

「訴訟社会」と言われながらも、移民で成立してる人工国家・米国は、一方で多様性を尊重する側面も持っています。

田中投手の真摯な言葉に共感し議論が起こる米国を見ていると、米国人が大好きなスポーツ・ベースボールの世界での日本人大リーガーの言動は、日本文化のよさを米国に拡げる契機になるかもしれない、と思いました。

 

また一方で、米国人の「怪我をしたからといって謝る必要はない」という考え方からも、私たち日本人は学べることは多いと思います。

お互いにお互いの文化を理解し合い、「なぜそう考えるのか?」と思いを巡らし、考え方を尊重し合うことが、人類の成熟と、世界の争いの撲滅に繋がっていくのではないかと思います。

 

イタリアのバールに影響を受けたスターバックスと、日本の喫茶店に影響を受けたサードウェイブ

スターバックスは、イタリアのバールで本場の深煎りエスプレッソを体験したハワード・シュルツが「こんなコーヒーを米国人にも味わって欲しい」と考えて、1980年代に広がりました。

 

一方で最近、米国でコーヒーの「サードウェイブ」と呼ばれる動きがあります。

Blue Bottleは、そのサードウェイブの先駆けとなる存在です。「コーヒー業界のApple」とも呼ばれ、テクノロジー系企業に出資する多くのベンチャーキャピタルがこの会社に出資しています。

「Blue Bottle Coffee 日本上陸、変化するサンフランシスコのスタートアップ文化」によると、Blue Bottle創業者のJames Freemanは、次のように語っています。

—(以下、引用)—

「日本の喫茶店はとても好きで、とてもたくさんのインスパイアがあり、よく訪れています。コーヒーに対する真剣さ、何に対しても均等に気が遣われていて、抜け目がない。Blue Bottleもこうした姿勢でコーヒーを提供できるようにしたいと思って取り組んできました。そのことは、Blue Bottleの素早い成長を助けてくれました。」

—(以上、引用)—

このサードウェイブの源流には、実は日本の古き良き喫茶文化があったのですね。

リンク元の記事では、James Freemanが影響を受けた喫茶店として、銀座のカフェ・ド・ランブル、渋谷の茶亭羽當、表参道の大坊珈琲店が挙げられています。大坊珈琲店は残念ながら閉店しましたが、カフェ・ド・ランブル、茶亭羽當は私もよく行きます。美味しいコーヒーを飲ませてくれます。

 

1980年代にスターバックスがイタリアのバールに影響を受けて大きく広がり、その30年後の現代、今度はサードウェイブが日本の喫茶店に影響を受けて広がり始めているのは、とても興味深いことですね。

 

ちなみに茶亭羽當でいただいたコロンビアです。

Photo  

 

かつて「反戦」だった日本国民は、次第に戦争に「熱狂」し、そして戦争を始めた

Twitterで佐々木俊尚さんが(米国と戦争を始めたのは)「国民が大喜びで戦争を求めたからです」と発言されたことで、多くの方々がコメントされています。

佐々木俊尚さん sasakitoshinaoの「国民が大喜びで戦争を求めたからです。」

やり取りを見ていて、とても多くの人たちが「戦争は軍部の独走。国民が強制されて戦争が始まった」と考えていることに、危うさを感じました。

戦争を体験していない現代の私たちは、日本が戦争を始めた状況を知ることで多くのことを学ぶことができます。その方法はいくつかあります。

NHK番組「日本人はなぜ戦争へと向かったのか 第3回 ”熱狂”はこうして作られた」(2011/2/27放映)はそんな参考になる情報の一つです。上記Togetterの中でも紹介されています。

NHKオンデマンドで配信していますが、Dailymotionというサイトでも動画が掲載されていましたので、ご紹介します。

日本人はなぜ戦争へと向かったのか 第3回「”熱狂”はこうして作られた… 投稿者 kotetsu1111

素晴らしい番組ですが、放映2週間後に大震災が発生し、話題が広がらなかったのが残念です。

大正デモクラシーの時代、メディアも日本国民も反戦でした。しかし盧溝橋事件、日華事変を経て、次第に社会は戦争に熱狂する空気に覆われていきます。

それでも1941年年頭の世論調査では、「日米開戦は避けられる」という意見は60%。

その11ヶ月後の1941年12月、英米との交渉に弱腰な政府に業を煮やし、首相官邸に「東条内閣は腰抜けだ。日米開戦すべし!」という強硬な投書が3,000通殺到します。

1941年12月8日、日本は米国に宣戦布告しました。

日本経済新聞に2014/1/12に掲載された記事『熱風の日本史 大戦果、日本中が熱狂 第20回 12月8日の「青空」(昭和) 「世界は一新」「ペルリへの復讐」』に、当時の様子が描かれています。

—(以下、引用)—

 皇居前広場には続々と人が集まり、喜びの声をあげた。東京のビルの屋上からは「屠れ!米英われらの敵だ」「進め!一億火の玉だ」の垂れ幕が下がった。日本中が「万歳!」の歓呼で沸き返った。

 この日の日本人の興奮と歓喜は、作家・詩人など知識人の文章に表されている。

【伊藤整「身体の奥底から一挙に自分が新しいものになったような感動を受けた。(略)ああこれでいい、これで大丈夫だ、もう決まったのだ、と安堵の念の沸くのを覚えた」(「十二月八日の記録」)

高村光太郎「世界は一新せられた。時代はたった今大きく区切られた。昨日は遠い昔のようである。(略)私は不覚にも落涙した」(「十二月八日の記」)

火野葦平「神々が東亜の空へ進軍してゆく姿がまざまざと頭のなかに浮かんで来た。(略)私はラジオの前で涙ぐんで、しばらく動くことも出来なかった」(「全九州文化協議会報告文」)

長与善郎「生きているうちにまだこんな嬉しい、こんな痛快な、こんなめでたい目に遭えるとは思わなかった」(「今時戦争とその文化的意義」)

 太宰治】 「日本も、けさから、ちがう日本になったのだ。(略)目色、毛色が違うという事が、之程までに敵愾心を起こさせるものか。滅茶苦茶に、ぶん殴りたい」(「十二月八日」)

—(以上、引用)—

このNHK番組では、2011年時点で「あなたは、日本が再び戦争をする日が、来ると思いますか?」と聞いた世論調査が紹介されています。

「来る」17.7% 「来ない」65.8% 「わからない・無回答」16.6%

しかし、1941年年頭の世論調査でも「日米開戦は避けられる」という意見が60%と大多数だったのにも関わらず、1941年12月には「戦争すべし」との空気が蔓延し、1941年12月8日の開戦当時は国全体が熱狂していたのです。

私たちが「国民は戦争を強制された被害者だった」という意識を持ったまま、「当時、国民は熱狂していた」という現実を直視しないとどうなるでしょうか?

一般的に問題を問題として認識しない人は、同じ過ちを繰り返す可能性があります。

感情的に「戦争反対」を叫ぶ意見は、ともすると何かのきっかけで「戦争賛美」に切り替わってしまうリスクもはらんでいます。

私たち一人一人が、戦争に至った当時の熱狂を事実として認識することが必要なのではないかと思います。

確かにメディアの責任も大きいでしょう。しかしメディアは聴衆の意向を汲み取り、聴衆が見たい・聞きたい情報を提供する宿命にあります。言い換えれば、メディアは聴衆の願望の鏡なのかもしれません。

聴衆である私たち自身が、メディア情報に踊らされないことが必要です。

幸い当時と違って現代では、ネットで比較的容易にオリジナルの一次情報を検証できますし、意識すればSNSで偏らない多様な意見に触れることも可能です。

一方で、単純化された強い意見やメッセージがSNSで一気に拡散され祭り状態になり、空気に沿わないマイナーな意見が封殺されてしまう現代の一部の風潮には、危うさも感じます。

人はともすると「単純で明快な答え」を求めがちです。しかし単純な答えに至るには様々なことを考える必要があります。多様な意見を封殺せずに尊重し、一人一人が自分自身で考え続けることもまた、必要なのではないか、と思います。

成熟した大人の社会とは、多様な意見を尊重する社会なのだと思います。

NHK番組の最後で、元・朝日新聞記者の武野武治さん(放映当時96歳)の言葉が紹介されています。武野さんは満州事変をきっかけに新聞記者を目指し、終戦の日に報道の戦争責任を感じて辞表を出し、その後、反戦の立場でフリーのジャーナリストをなさった方です。

スクリーンショット 2015-08-09 午後0.11.48

—(以下、引用)—

戦争を始めさせては、だめだということだ。
始めさせてはだめだと。
始めてしまってから「あぁこりゃひどい」「こんなことになるなら」と言って止めさせようたって、止まないんです。戦争は。
やらせないためには何が必要なのか。
いちばん簡単なことは、現実に世界で何が起こっているのか。
アメリカが中国があるいはロシアが、その他の国々が何を思って、何をやっているかっていう現実ですね。
これを正直にお互いに知らせあうということですよ。

—(以上、引用)—

私たちも、世界全体の状況を考えた上で、日本がいかにあるべきか、そして戦争をいかに避けるべきなのかを、感情的にならず、性急な単純化もせずに、考え続け、そして自分でできることは行動し続けることが必要なのだと思います。

このNHK番組と日経記事は、メディアの立場で、メディアの戦争責任を反省したものです。

戦争関係の本では、「日本軍は強かった」、「大変な悲劇で悲惨だった」、「軍部に問題があった」、「陰謀だった」といった論調の本がよく売れていて、逆に「我々も問題があった」という内省的な本はあまり売れないそうです。その結果、書店でもそんな本が多く並べられています。

だから「国民が大喜びで戦争を求めた」という佐々木さんの発言に、多くの人たちが「そんなことはない!」と反応してしまうのかもしれません。

そんな中で、このNHK番組と日経記事は、客観的な取材を重ね、勇気を持って作られた、とても貴重なコンテンツです。

現代の私たちが学べることはとても多いと考え、紹介させていただきました。

平和国家・日本を心から願う私たち一人一人が、再び過ちをおかさないためにも、是非理解し共有してきたいことだと思います。

「みんな、ちょっと無責任」の積み重ねが、大きな災いをもたらす

ちょっと古い記事ですが、あのセウォル号事故について、韓国の方が書いたこんな記事を読みました。

沈没事故で露呈したのは、韓国社会にはびこる裏切りの連鎖だ

言動ではなく態度や挙動に注目し、船長や船員たちがどのように考え行動したかを考察した記事ですが、意外と的を射た意見のような気がします。

「みんな、ちょっと無責任」の積み重ねが、このような事故を起こしたということですね。

 

翻って、対策を怠り重大な原発事故を起こしたことが象徴するように、「みんな、ちょっと無責任」が積み重なっているのは日本も同じではないかと思います。

「このくらいは、適当にやっていいだろう」

その小さな積み重ねが、大きな災いをもたらします。

  

記事を拝読し、改めて「対岸の火事ではない」「私たち自身がもっと成熟していくことが必要だ」と思った次第です。

 

あれから25年。そして15年 … 私にとっての天安門事件

今から25年前の1989年。日本がバブル景気に沸いていた頃。

当時27歳だった私は日本IBMで、製品企画担当者として、アジア各国の製品企画責任者と仕事をしていました。

当時のIBMでは、日本IBMの一部門だったAPTO (Asia Pacific Technical Operations)がアジア太平洋地区の製品責任を持っていました。そこで私は毎年2回、中国・台湾・韓国・タイの製品企画責任者を日本に招き、APTOの製品マネージャーからIBMの製品計画を紹介してもらった上で、どのように各国語対応するかを皆で検討していました。

4月に2日間のワークショップを行い、各国責任者は自国へ帰っていきました。

その年の5月。中国・北京にある天安門前に、学生たちが集会している様子が連日報道されていました。

今と違って当時の中国は、人口が多いものの経済規模は小さく発展途上国。共産党一党支配に対し、集まった若い学生たちは民主化を訴えていました。大きな熱量を感じました。

「中国は変わるのではないか?」と思っていたその矢先、1989年6月4日に「天安門事件」が発生。多くの学生たちが亡くなりました。

その数日後。中国の製品企画責任者から、東京のオフィスに電話がありました。彼は言葉を選びながら、

「こういう状況になった」
「マネジメントとして、現状ではこの地域に投資判断はできない」
「当初の要望は取り下げる」

数ヶ月後、彼はオーストラリアに移住しました。

 

それから10年後の1999年。今から15年前。

37歳になった私は、マーケティングマネージャーとして、香港で行われた展示会で、担当製品のデモと製品説明を行うために、中国に返還されてから2年後の香港にいました。

オフの日、香港IBMのセールス担当者が、香港の様々な場所を車で案内してくれました。

車の中で、それとなく天安門事件の話になりました。車の中で二人きりでしたが、彼は「天安門」という言葉でなく、「あの出来事」という代名詞を使って、言葉を選びながら話している様子が印象的でした。

翌日、街の書店を回ってみました。天安門事件を扱っているらしい写真集が店頭にあります。写真集は、学生の集会、争乱の様子が続きます。写真集の最後のページは、中国の政権責任者が登場して、民衆から歓迎を受けている様子で終わっていました。

中国における天安門事件の現実は、こういうことなのか、と感じました。

 

中国はその後、経済的に大きな躍進を遂げ、ついに日本のGDPを追い抜きました。

 

明日で、あれから25年が経とうとしているのですね。

 

ランダル・ストロス著「Yコンビネータ」…起業家精神とは何かを学べる本

「Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール」(ランダル・ストロス著)を読了しました。

「Yコンビネーター」(以下、YCと略す)とは、シリコンバレーの起業家養成スクール。本書はこのYCの3ヶ月間の活動に密着したノンフィクションです。

合格率3%を突破した、スタンフォード、MIT、UCバークレーなどの在校生や卒業生からなる64チームが、3ヶ月間かけて、自分たちの事業を立ち上げるために、「デモ・デー」と言われる数百人の投資家へのプレゼンを目指して、寝食を忘れて働き続けます。

各チームの事業は、「デモ・デー」では投資されるかどうかが決まります。

つまりYCは単なるスクールではありません。YCではシーズン毎に3ヶ月間、このようにリアルなお金を投資し、参加者はアドバイスを受けながら、自分の人生をかけて事業立ち上げに挑みます。

YCは基本的に、スタートアップの事業立ち上げのために、少数株と交換で、シード資金を投資として提供する「エンジェル投資」です。ただ実際に成功するのは100件のうち数件というのが現実。投資時点ではどの事業が成功するかはわかりません。そこで定期的に多数のスタートアップに同時に投資し、かつ徹底的にアドバイスをする仕組みになっているのです。

このYCからは、あのドロップボックスも生まれています。

 

本書を読んで、現代のシリコンバレーにおける起業がどのように行われているのか、その一端を知ることができました。

いくつか抜粋します。

—(以下、引用)—

10年前にはソフトウェアスタートアップがベンチャーキャピタルから資金を得るためには、創業者には業界での長い経験が求められるのが普通だった。また起業には高価なサーバーやデータベースソフトの購入、人材の採用のために数百万ドルを必要とした。現在のYC傘下の起業家たちには情熱とプログラミング能力以外何も必要ではない。

—(以上、引用)—

クラウド登場によりサーバーを所有する必要がなくなり、さらにシステムやソフトウェアも進化したことで、多くの場合、投資額は自分たちの人件費がまかなえれば事業が立ち上がる環境になり、起業の状況も変わってきています。

 

また投資案件を決める基準も、興味深く思いました。

YCでは、創業者たちが成功に必要な資質を備えていると思えるならば、アイデアに弱点があっても大目に許しています。

そして思考の試行錯誤が必要なので、立ち上げるビジネスは途中で変わってもOK。提供しようとするサービスやプロダクトの内容も、頻繁に変わります。

 

起業に適した年齢は、「学部学生よりは多少成熟しているものの、まだ家のローンや子育ての重荷を背負っていない」こと。つまり25歳前後。このことについても書かれています。

—(以下、引用)—

スタートアップを始めてもたぶん失敗するだろう。ほとんどのスタートアップは失敗する。それがベンチャー・ビジネスの本質だ。しかし失敗を受け入れる余裕があるなら、失敗の確率が90%ある事業に取り組んでも判断ミスにはならない。40歳になって養わなければならない家族がある状態での失敗は深刻な事態になる。しかしきみたちは22歳だ。失敗してもそれがどうした?22歳で在学中にスタートアップに挑戦して失敗したとしても、23歳の一文無しになるだけだ。そして得難い経験を積み、ずっと賢くなっていくだろう。これが私が呼びかけている学生向けプログラムの概要だ。

—(以上、引用)—

なぜ25歳なのかについても書かれています。

—(以下、引用)—

25歳はスタミナ、貧乏、根なし草性、同僚、無知といった起業に必要なあらゆる利点を備えている。

—(以上、引用)—

新卒一括採用などの仕組みもある日本と直接の比較はできませんが、米国のスタートアップの考え方がよくわかる一文だと思いました。

 

—(以下、引用)—

「まず一般的に言って、失敗を隠すな。きみたちがどんな失敗をしたって金を返せとは言わん。」

….

「期日までに仕事ができないと上司に『おい、遅れているぞ』と叱られる。そのままいつまでも仕事が終わらなければ最後にはクビにされるかもしれない。しかしわれわれはきみたちをクビにはしない。しかし市場がきみたちをクビにする。」

—(以上、引用)—

このあたりは、リスクマネーとはどのようなものなのかがわかる部分です。

 

—(以下、引用)—

「実は過去にイライラして口うるさくしたことがないではない。しかし何の訳にも立たなかった。まずい仕事をする人間はいつまでたってもまずい仕事をし続ける。泳ぎを覚えられるか、それともおぼれるか、だ。われわれはきみたちを手助けする。きみたちが望むならわれわれは喜んで手助けする。しかしきみたちがどこか見当はずれな方向にさまよい出てしまっても、われわれはきみたちの襟首をつかんで引っ張り戻したりはしない。これまで成功したスタートアップはみな一切脇目をしないチームだった。寝る、食う、運動する以外はプログラミングしどうしだった。」

—(以上、引用)—

ベンチャーの世界では、何が正しいかわかりません。「これは確実、大丈夫」と思ったアイデアが大失敗し、「これはダメでしょ」と思ったアイデアが思わぬ成功を収めます。だから失敗も多い半面、成功した場合は大きな見返りが得られます。変化が激しい環境では、口うるさく「こうあるべき」と言っても実は間違っているかも知れません。事実に対する謙虚さが求められるのですね。

 

—(以下、引用)—

アメリカの有権者は「アメリカ国民は全体として世界でもっとも起業家精神に富んでいる」と言う。グレアムはそれに強く反論する。彼の意見では、他の国で欠けているのは起業家精神ではなく、多くの創業者が集中する場所だという。そういう場所では多くの人々が起業家として成功する姿を目の前で見られるので起業へのモチベー

藤沢久美著「なぜ、川崎モデルは成功したのか?」…日本ならではのオープンイノベーションの姿が、ここにある

藤沢久美著「なぜ、川崎モデルは成功したのか?」を読了しました。

 

この本と出会えて「よかった」と思いました。元気になるからです。

 

そもそも「川崎モデル」とは何でしょうか?本書のオビには、次のように書かれています。

—(以下、オビから引用)—

川崎市から始まる 政府・省庁も注目 新・中小企業支援。

異色公務員集団が大企業や金融機関を巻き込みものづくりの町・川崎市を元気にする!
話題のオープン・イノベーションの最前線!

戦略は、「密着」「おせっかい」「キャラバン隊」

—(以上、引用)—-

本書では川崎モデルの様々な事例が紹介されています。たとえば、ある企業のケース。

墓石業を営むある会社は、川崎市からデザインコンペにエントリーすることを勧められました。そこでこの会社はガラス墓石の開発を検討しました。

そのことを知った川崎市のキャラバン隊の担当者は、ガラス工芸を手がける市内の事業者を紹介。ガラスを使った新たな墓石「シルエット」が誕生し、デザインコンペで優秀賞を受賞しました。(キャラバン隊とは、実際に企業に出向き、支援施策の情報を提供したり、連携先を紹介したりと、色々と世話をする川崎市のチームのことです)

さらにキャラバン隊は販売のために、市内のガラス工芸作家を集めて「メモリアルガラス研究会」を発足し、「かわさきガラスのお墓」が誕生、国の地域資源の認定を受け、この墓石の販売は拡大しています。

本書では、次のように書いています。

「社外の異分野の人々との協働の場を作り、これまでの常識を覆す新たな商品を生み出した。まさにオープンイノベーションだ」(p.210-211)

 

「役所がこんなことまでするのか!?」と驚かれる方もいるのではないでしょうか?この原動力が、熱い想いを持った、川崎市の公務員の方々です。

本書では、藤沢さんの優しい視線で、この川崎モデルに取り組まれてきた人たちの様子が丁寧に描かれています。

 

実はこの川崎モデル、最初から川崎市が組織全体で始めたものではありません。

1990年代中頃、中小企業についてまったくの門外漢だった若手中堅職員が、川崎市の中小企業が置かれた厳しい現実を知り、まず勉強会を立ち上げました。その熱い想いに共鳴した数名の職員が中小企業経営者の訪問や勉強会を繰り返して、徐々に育てていったものです。

現在の川崎市では考えられないことですが、当初は組織としての反対もありました。

たとえば、ものづくり企業の共同体である「ものづくり共和国」のために補助金を申請しようとすると、「共和国は会社ではないので、申請はまかりならん」。

川崎市のサイトからリンクを張ろうとすると「一企業だけにリンクを張るのは不公平なのでまかりならん」。

しかし今では、中小企業の支援をしているコーディネータは、川崎市だけでなく、国や都道府県の補助金までみつけて、申請支援をすることもあります。

もし「自分たちのミッションは、川崎市の中小企業の支援施策の活用推進だ」と考えると、ちょっとあり得ない行動かもしれません。

しかし「自分たちのミッションは、産業育成によるよりよき社会の実現だ」と考えると、至極まっとうな行動です。

自分たちのミッションを考え抜いて、メンバーで共有しているのです。

 

一人一人の熱い想いが大きな動きを生み出し、「川崎モデル」を作り上げている様子を、本書では様々な事例を通じて、活き活きと描いています。たとえば、このように書かれた一節があります。

「『官民連携』という言葉はどこでも耳にするが、連携の肝は人の交流。そして現場で一緒に本気で汗を流すこと。そして学びあうことだと、川崎市と関わる金融機関の皆さんが体験を通じて教えてくれた」(p.193-194)

コーディネーターには成功報酬はありませんが、中小企業支援のためなら徹夜も厭わないし、面倒な作業にも嫌な顔一つせずに取り組みます。その理由は、まさに「志」。コーディネーターのある一人は、このように語っています。

「喜んでもらえるのがうれしくて、喜んでもらえるために、いろいろとしてしまう」(p.72)

「働くとは、どういう意味なのか」ということを考えるきっかけをいただき、元気にさせてくれます。

 

「この本と出会えてよかった」と思った理由は、先の「読むと元気になる」ことに加えて、もう一つあります。

それは本書がアイデアの宝庫であること。現場で格闘してきた人たちならではの、ビジネスの知恵が散りばめられています。是非ご紹介したいのですが、ネタバレになってしまうので、当ブログでは割愛させていただきます。

  

本書には、日本ならではのオープンイノベーションの姿が描かれています。折りを見て、読み返していきたい本だと思いました。

 

藤沢さんは「社長Talk」という社長とのインタビューを、2006年7月14日の第一回放送以来毎週欠かさず続けておられます。→これまでのアーカイブ

また「藤沢久美の社長Talk News」というメルマガも、このたび配信200回を超えました。→登録はこちら

藤沢さんが積み重ねてこられた、この膨大な日々の蓄積があってこそ生まれた骨太な本なのだと実感します。

 

国内メディアではなかなか見えない、中国に関する2つの海外メディア (日本語)

国内メディアでは、日中関係が膠着している様子が報道されています。ただ、国内メディアでは報道されていない情報も多いようです。

私は中国関係で何かあった際には、中国人自身が発信している2つの日本語メディアを参考にしています。

日本のマスメディアを通していない情報ですので、バランスを持って中国のメディア情報に接する上でとても参考になります。

大紀元日本

中国大陸以外で生活する中国人向けに、もともとニューヨークで創刊されたもの。中国共産党の内政や外交問題を報道し続けています。中国共産党に対する報道姿勢は批判的です。(法輪功迫害問題など)

たとえば、2013/11/27に掲載されたコラム「相手にしないことは上策」では、中国が東シナ海に防空識別圏を設定したことに関連して、次のように述べています。

—(以下、引用)—

これまで日本は中国政府にとって、非常に都合のいい存在であり、国内で解決できない危機に臨むたびに尖閣諸島、教科書、靖国神社問題を持ち出し、国民の共産党政権への怒りを日本に転嫁していた。この策略はまた、しばしば奏功した。日本はいつも真剣に中国共産党(中共)の遊び相手となり、中共にとって日本ほど都合のいいカードはない。

しかし、今回は….日本は官民一致で中共の設定した防空識別圏を無視することにした。これはまさしく日米同盟の絶妙な共同演出だ。今回の対応は日本社会に非常に大事なメッセージを伝えている。今まで中共が虚勢を張るというやり口をしばしば使い日本を利用してきたが、実際のところ中共は張子の虎に過ぎない。

—(以上、引用)—

 

一方で、中国共産党中央委員会の機関紙『人民日報』の日本語サイトもあります。

人民網日本語版

こちらは中国共産党の意図が正確に反映されています。

たとえば、2014/4/14に掲載されたコラム「中日関係修復、日本は中国より焦って当然」では、次のように書かれています。

—(以下、引用)—

 日本が中国より焦っているのはなぜか?

 第1に、…中国側の一連の強力な反撃措置によって日本は自らを苦しい状況に追い込んでおり、実行支配や国際世論などの面で何ら得をしていない。

 第2に、日本は一貫して同盟国の米国が日本の後ろ盾になることを望んできたが、結局のところ得られたのは口先の支持だけだった。….

 第3に、中日関係悪化が日本経済にもたらす悪影響が明らかになってきている。….中日関係を正常な軌道に戻すことは、日本経済界の一貫した期待であり、日本の長期的な経済的利益にも合致する。

….中日関係修復の問題において、日本はずっと「二枚舌」であり、言行不一致が常態となっている。だが各方面から圧力がかかるに伴い、中日関係悪化のもたらす「身を切るような痛み」を日増しに感じ、できるだけ早い中日関係修復に向けて一歩を踏み出す意向を徐々に示している。

—(以上、引用)—-

 

同じ事象でも、まさに正反対の意見になっています。

 

時々、両方のサイトをチェックしてみると、中国に関する視点が広がりますし、世の中には様々な意見があることを理解する一つの気づきが得られるのではないかと思います。
 

また両方のサイトを見ると、国や企業としては、世界に向けた広報活動はとても大切であり、地道に続けることが必要であることがわかりますね。 

 

本音と建て前を使い分けられない時代になってきた?

日本経済新聞のサイトに、論説副委員長 飯野克彦さんが書かれた「調査捕鯨のオウンゴール 建前を貫く覚悟が大切」という記事が掲載されています。

 

水産庁長官が、

「ミンク(鯨)というのは、お刺し身なんかにしたときに非常に香りとか味がいいということで、重宝されている」

「ミンク鯨を安定的に供給していくためにはやはり南氷洋(南極海)での調査捕鯨が必要だった」

と国内の小委員会で発言した内容が議事録に掲載され、これがオランダ・ハーグにある国際司法裁判所で、日本の調査捕鯨をめぐる判決の中で引用されました。

本記事は、以下の言葉で締め括られています。

「少なくとも指導的な立場にある人は、公の場では建前を貫く覚悟が求められる。」

 

この記事を拝読し、色々と考えさせられました。

世の中は難しいもので、いろいろなしがらみがあって、本音と建前が乖離してしまうケースは少なからずあります。

日本人同士であれば、先の水産庁長官の発言のように、「それは建て前だよ。本音はxxxxだからさ。まぁ、そこのところはさ。察してよ」と言っても、何となくあうんの呼吸で通じます。

しかし海外ではこれが通じません。不本意なことですが、「不誠実である」と見なされてしまいます。

しかも最近は情報公開が進み、公の場での情報は、国内に留まらず、世界中から容易にアクセスされてしまいます。

「日本語だから大丈夫」と思いがちですが、その気になって調べれば、言語はまったく障壁になりません。Google翻訳などのサイトを使えば、すぐに中身は理解できます。

たとえば韓国語で書かれた私の著書の書評は、ハングルを知らない私でも、簡単に読めてしまいます。(→リンク)

グローバルコミュニケーションに慣れている諸外国では、比較的本音と建て前の距離は近いですし、もし乖離している場合は、当記事にあるように建前を崩さないように徹底的にガードを固めます。

 

現代のビジネスでは、「信頼」はますます大切になってきています。

私も、「考えていること、言っていること、やっていることがそれぞれ一貫していることが大切」と考えて、できるだけ「本音でのコミュニケーション」を心がけています。

実際には、日本のビジネスパーソンは相手の立場に立って考えられる誠実な人たちが多いにも関わらず、「不誠実である」と思われるのはとても残念なことですね。

「本音の建て前は使い分けられる」という発想から、「本音と建て前は一致させる」、「もしわけざるを得ない場合は徹底的に建て前を貫く」という発想に切り替えることで、日本のビジネスパーソンの信頼感はさらに高まっていくのではないかと思います。

 

供給過剰が終焉し、需要が上回った。だから今こそ、価値創造が大切

本日2014/4/8の日本経済新聞のコラム「一目均衡」で、編集委員の西條都夫が「供給過剰時代の終焉」というコラムを書いておられます。

内容をサマリーすると、1990年代初頭のバブル崩壊後に、雇用・設備・債務の「3つの過剰」が流行語になったのを皮切りに、過去四半世紀の日本の課題は「供給過剰」にどう対処するかでした。それがここに来て、状況が大きく変わっている、という話です。

「雇用」は、幅広い業種で人手不足が深刻。

「設備」も、再編やリストラによる調整が進行。鉄鋼業界は大手2社に集約され、4年前には月産100万台を超えていたテレビの国内生産も5万台程度まで急激に縮小。

「債務」も、むしろ日本企業の「現金ため込み体質」が批判されようになりました。

 

先日の当ブログで、「需要をいかに科学して「お客様が買う理由」を作り上げるか?」というエントリーを書きました。

このエントリーでCCC社長・増田宗昭さんの「今は需要と供給は逆転、供給が圧倒的に大きい。今の日本に一番欠けているのは、需要を科学し、需要力を上げること」とおっしゃった発言を引用させていただきました。

供給が需要を下回ったのであれば、「それじゃぁ、問題解決じゃん。よかったぁ!」と思いがちです。

しかし、当コラムでは、西條さんは次のように締め括っておられます。

—(以下、引用)—

企業経営者にとっては別の課題が浮上する。過剰を削り、身を縮めることが経営の主軸だった時代が終わり、新しい価値の創造がこれまで以上に求められることになる。

—(以上、引用)—

 

需要が供給を上回ったのに、なぜ「新しい価値の創造」が必要なのでしょうか?

その一つのヒントが、本日2014/4/8の日経記事「アマゾン、酒類を直販 6000品目スーパー並みに安く 」に書かれています。

即日配送で8割、翌日配送なら9割の地域をカバーできるアマゾンの流通網は、酒類小売店にとって脅威です。アマゾンは次々と事業領域を広げ、顧客需要を吸収し、成長し続けています。

このアマゾンに代表されるように、高い価値を提供する業者(特に海外のライバル)が次々と現れているので、供給不足の状況になっても、顧客は、従来業者ではなく、より高い価値を提供する新しいライバルへと、容易に流れてしまうのです。

消費者でもある自分自身の行動を振り返ってみると、よくわかるかも知れませんね。

「需要が供給を上回り始めた」ということは、「より高い価値を提供するライバルが成長するスピードが速まる=市場シェアを奪われる」ということでもあるのです。

 

過去の歴史を考えてみると、人類は常に新しい価値を創造し、進化し続けてきました。

たとえば、馬車で移動するのが当たり前だった時代がありました。しかし「需要が供給を上回っている」と考えて馬車のビジネスに安住していたら、蒸気機関車や自動車のイノベーションは生まれなかったでしょう。

 

需要が供給を上回るようになった今こそ、「新しい価値の創造」を考えることは、ますます大切になっていると思います。

 

あえて「空気」に、「水」を差す

漱石の「草枕」は、こんな冒頭から始まります。

「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。」

漱石も述べたように、昔から日本社会では、「ロジックで筋を通す」のはなかなか難しいことです。

 

ともすると、事実に基づいたロジックではなく、何となくその場の空気で決まるケースも多いですね。

たとえば

「確かにこれは筋ではないかも知れないよなぁ」
「でも、こんな状況だと言えないよなぁ」
「まぁ、取りあえずこうしておいた方が角が立たないんじゃない?」
「そうだよねぇ」

と、何となく全体の空気で決まったりします。

ロジックよりも、人間関係に波を立てないことを優先するためです。

あとで「どうしてそうなったの?」と聞いても、「いやぁ、そんな雰囲気だったし」とちゃんと説明できないことも多いのです。

 

色々な状況がありますので、このように判断するのが一概にすべて間違っている、ということはないでしょう。

しかし、これを安易に行ってしまい、たとえば本来は非はないにも関わらず謝罪してしまったり、あるいはコミュニティ外の状況を考慮せず組織の論理で判断したりして、逆に後々に大きな問題になることもまた、多いように思います。

 

冷泉昭彦氏は著書『「関係の空気」「場の空気」』で、『「水」が差されることで、「空気」が消える』と述べておられます。

現代では、出来上がった「空気」に「水」を差すと、閉じたコミュニティでは非難されたり、ネット上では炎上したりすることもあります。

それでもなお、こんな世の中だからこそ、常にロジックにこだわって筋を通し、時には不条理な「空気」に「水を差す」ことが必要な時代なのではないか、と感じています。

 

再び日本企業が世界の変革をリードし始めている…日経記事「日本企業を再評価 来日したハーバード大教授18人」から

日本経済新聞のサイトに、下記の記事が掲載されています。(有料会員限定記事です)

「日本企業を再評価 来日したハーバード大教授18人」

本記事では、ハーバードビジネススクール(HBS)教授の次の言葉が紹介されています。

ノーリア学長「日本は島国根性で停滞状況にあるといわれるが、日本を実際に訪れればそれは誤りだと分かる」

ラインハート教授「日本は世界の未来を象徴する国だ」「日本は高齢化、人口過密、資源不足、食糧問題などにいち早く直面してその解決策を模索してきた」

バーンスタイン助教授「前回に日本に来たときよりも、起業家活動が活発になっている」「HBSがミッションとして掲げているのは、世界に変革をもたらすリーダーの育成。いまの日本の企業には、そうしたリーダーが出てきている手応えを感じた」

HBSのマイケル・ポーター教授も、2011年に「クリエーティング・シェアード・バリュー(CSV)」と呼ぶ概念を打ち出し、社会と企業の共栄共存を目指すことが、これからの企業に求められると唱えています。これは松下幸之助に代表される日本の企業経営者が、昔から提唱していたことでもあります。

 

記事では動画も掲載されています。多くの日本人の経営者が、英語で堂々と自社の戦略を語っておられるのが印象的でした。

バブル崩壊後の20年間、停滞のニュースばかりが伝えられてきた日本ですが、2011年の東日本大震災や、2013年のアベノミックスが契機となり、再び世界の注目が集まり始めています。

ご興味ある方は、本記事のご一読をお勧めいたします。
 

 

ハイアール専門系列店が、お客さんが自分の実店舗で商品を買わずにネット店舗で買っても、全く気にしない理由

日経ビジネス2014.3.17号の特集はハイアールです。

ハイアールというと、「中国で成長中の家電メーカー」と思いがちですが、本特集、特にp.33を読んで、私は見方が大きく変わりました。

ここでは、中国のある地方にあるハイアール専門系列店の店長の言葉が紹介されています。

「店なんて完全にショールームになっちゃっていいのよ。客がネットで買えば伝票を書く必要もないし」

私たちの感覚で考えると、「店で商品を見るだけで、ネットで買われたりすると、商売あがったりだ」と思いがちです。

しかしハイアールは、強力な物流機能とネットサイトも持っており、お互いに連携しています。そして受注してから1時間程度で家まで商品を届けられることもあるそうです。

—(以下、引用)—

…中国にはハイアールよりも速く商品を届けられる企業は存在しないのだ。

その力の前には、中国のEC(電子商取引)最大手アリババグループさえも兜を脱ぐ。ハイアールは昨年アリババと提携し、アリババがネットで売った商品の配送を請け負い始めた。実店舗を持つ多くの企業がアマゾンのサイトに出店、同社の物流網で商品を届ける日本や諸外国とは、完全に立場が逆だ。

—(以下、引用)

もはや「家電メーカー」という枠を大きく超えているということですね。

記事では「『パナソニック+ヤマダ電機+ヤマト運輸+楽天』。ハイアールの機能を日本流に言うならそんな具合だろう」と述べられています。

 

本誌では、ハイアールを18ページに渡って特集しています。

ハイアールも、日本の様々な企業から学び、試行錯誤した結果、今の姿があります。

躍進するハイアールから、逆に日本企業が学べる点は多いのではないかと思います。

ご興味がある方は、本特集、ご一読をお勧めします。

 

孫さんのBloomberg TVインタビュー(英語)が素晴らしい

思わず見入ってしまいました。

Bloomberg TVに、ソフトバンク社長・孫正義さんの30分インタビュー番組が掲載されています。肩書きはSprint CEO。米国ではそのように認識されているのですね。

→番組へのリンク

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英語で、しかも海千山千の熟練インタビュアーを相手に、明快に持論を展開されています。

「モバイルLTEでは、米国は世界16カ国中15位。16位はフィリピンだ。米国はこれでいいのか?」

「米国を責めているのではない。自分も解決する責任を持っているということだ。」

「上位2社は価格を下げずに潤沢なキャッシュフローを楽しんでいる。価格を下げる必要がないからだ。我々は最新技術を持っているが、SprintもT-Mobileもモスキート級だ。個別では上位2社とは戦えない。だから私は、T-Mobile買収で上位2社と戦えるヘビー級になり、価格勝負したい。」

「そうだ。ナンバーワンになりたい。そうすると米国の皆さんも最新技術が使えるようになるし、通信料金も下がる。皆さんに役立ちたいんだ」

という、相手が興味を持つ導入部分から話に入っています。

さらに、

「前からモバイルインターネットの将来を確信していた。そこでiPhone発売の2年前に、スティーブ(ジョブス)にiPodに携帯をくっつけた絵を見せて『これを作ってくれ。日本で俺が売るから』と言ったんだ。スティーブは『マサ、そんなこと言ってきたのはお前が初めてだ。でもさ、お前、携帯事業やってないじゃん』。それで2兆円出してVodafoneを買った」

という話で笑わせたり。

ビル・ゲイツの話も出てくきます。

「ソフトバンクは、情報革命のインフラを作る。あらゆる人たちのイノベーションの花を咲かせるためのインフラを提供する。我々は一つの製品、ビジネスモデル、ブランドに依存しない。ソフトバンクグループ自体が、シリコンバレーのような生態系になる」

という話もあります。

当然ながらインタビュアーも、孫さんの日本での言動をチェックしており、巧みに突っ込んできます。

しかし孫さんが話しているのは、すべて日本で話している内容と同じです。

「原発については?」

「反対だ。3年前の大震災で日本は大変な目にあった。電力がないとネットワークは使えない。だから太陽光発電や風力発電に投資している」

という孫さんの答えに対して、

「安倍首相について、同意できないことは?」

という厳しい質問もありました。しかし、

「変なことを言うと日本に帰ってから大騒ぎになるんだから。勘弁してよ」

と満面の笑顔でかわしながらも、安倍首相に対してもちゃんと言うべきことは言っています。

 

このように日本の経営者が明確に発言する場面は、最近なかなか見ることがありません。

・首尾一貫した明確なビジョン

・自分のすべての行動を、明快に説明できる。(=アカウンタビリティ)

・あらゆる個人をリスペクトする誠実さ

これらすべてが備わって、はじめて出来ることです。

 

30分の番組ですが、色々と勉強になります。グローバルコミュニケーションの題材としても参考になります。お勧めです。

 

思うに数十年前は、ソニーの盛田さんなども、こんな感じで日本を代表して発言しておられたのでしょうね。

 

 

韓国版「100円のコーラを1000円で売る方法2」に、アジア中小企業協議会長の書評が

先日当ブログでもご紹介した、韓国版「100円のコーラを1000円で売る方法2」の翻訳者である林載徳(リムジャエドゥック)さんから、韓国のアジア中小企業協議会長が書評を書いていただいていることを教えていただきました。

このサイトですが、こんな感じです。

Photo  

ハングル文字で書かれていますが、便利な世の中になったもので、Google翻訳を使うと何が書いているかおおよそのことが分かります。翻訳サイトはこちら

若干文章を直すと、こんな感じです。

—(以下、意訳版)—-

[5.低成長への課題に対して]小さな組織が、どのように大きな組織に勝つか?|永井孝尚

「10以上の解決策がある報告書は、ゴミである」-ギムギチャンカトリック大経営学部教授·アジア中小企業協議会長

「小さな組織が、どのように大きな組織に勝つか」

それには、戦略とゴミ箱を用意することだ。まず不要なものを捨てることから始めるのだ。 この本は、強者の同質化戦略に対抗する弱者の差別化戦略が、いかに素晴らしいかを示している。「根回し重視型経営」ではなく、「企画型経営」が推奨されているのもその理由からだ。 「根回し重視型」は、一糸乱れずに目標に邁進することができるが、デジタル時代では戦略的対応が遅れてしまう。 一方、「企画型」の企画力とは、企画立案力のことではなく、「実行」する力、すなわち、組織を動かす力である、としている。

優れた企画のためには、すべての問題と論点を網羅的に考えるという過ちから脱する必要がある。最も重要な論点を2〜3個に絞った後に、その対策を考えることが必要なのだ。米国では、解決策が10以上あるコンサルティングの報告書は、ゴミレポートであると言われている。実行する力が弱まるからだ。また、作った商品が売れないので販売強化策を繰り返しても、売上が伸びない「悪魔のループ」が生まれることもある。そして結局、差別化ができず、収益を生み出さない。この本で「網羅的思考」に陥っていないか、振り返ってみてはいかがだろうか?

—(以上、意訳版)—-

ちなみに、以前ご紹介しましたように、「100円のコーラを1000円で売る方法」(第1巻)の韓国版書評も、こちらで見ることができます。

各国での書評がすぐに見ることができるのは、有り難いですね。

韓国版「100円のコーラ」シリーズの翻訳者とご対面!

先日ご紹介しましたように、「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズは、第1巻と第2巻が韓国語版で出版されています。

昨日、その翻訳を担当された林載徳(リムジャエドゥック)さんと、中経出版のオフィスでお目にかかる機会をいただきました。

実はリムさんは韓国の半導体メーカーであるSKハイニックス社の経営戦略部門に勤めるシニアマネージャー。現役の会社員なのですね。韓国でこのように会社員が翻訳をすることはあまりないそうです。

日本にも数年間出張された経験もあり日本語も堪能。半導体に関する本の他、日本の経営書も何冊か翻訳されています。

「コーラ2」のテーマは仮説検証思考と弱者の戦略なのですが、韓国版では「弱者の戦略」にフォーカスを当てて、中小企業向けの位置づけでプロモーションされています。

「コーラ2」韓国版は、既に増刷も決まり、ビジネス書のベストセラーランキングにも顔を出しており、サムソンの関連会社でも社員教育の一環で読んでいただいているそうです。

 

日本語版「コーラ2」に私がサインし、リムさんにお渡ししているところです。今回の来日はプライベートでのご旅行だそうです。

Lim  

リムさんからも、韓国版にサインもいただきました。ハングル文字です。

1  

このお二人は、右がコーラシリーズの編集を担当いただいた中経出版の谷内さん、左が中経出版で翻訳版の窓口を担当されている張さん。張さんは台湾ご出身で日本に帰化される予定です。

2  

色々な方々のおかげで、「100円のコーラ」シリーズが世界に広がっています。

大変有り難いことですね。

日曜日の午前、日本経済新聞を読み、アジアのことを考えてみる

日曜日の日本経済新聞は、読み応えがあります。

たとえば本日2014/1/26の日経。現在大きな問題となっている日韓・日中関係についても、下記の特集はとても参考になります。

■『熱風の日本史第22回 脱亜、尊敬から蔑視へ(明治) 「文明と野蛮の戦い」で正当化』
…明治維新前から日清戦争まで、日本人の中国人観がどのように「尊敬」から「蔑視」に変わっていったかがわかります

■『シリーズ検証 半導体興亡史 4 サムスン覇権の20年 技と戒め 日本に学ぶフラッシュメモリ、稼ぎ頭に育成』
…サムスンがいかに日本から学び成長していったか、現代の課題が何かがわかります

■『風見鶏 込めた善意と千年の恨み』
…日韓の間のすれ違いについて改めて検証しています

 

日曜日の日経は、他にも文芸・美術・科学などについて多くのページを割いています。

ちょっとした雑誌並みの読み応えがあります。

時間がある日曜日の午前は、じっくり時間をかけて日経を読み込んでみるのもいいかもしれません。

“Think global, act local”よりも、”Think locally, act regionally, leverage globally”

この言葉は、スターバックス社外向け資料の「成長戦略」を説明したページにあった言葉です。

“Starbucks Coffee 2012 Biennial Investor Conference” (2012年隔年投資家会議)の資料p.199にありました。

“Think locally, act regionally, leverage globally”

直訳すると、「現地で考え、地域にあわせて行動し、グローバルの仕組みを活用せよ」という意味です。必ずしもスターバックス独自の考え方ではないようです。

 

よくいわれる言葉に、“Think global, act local”というものもあります。直訳すると「グローバル規模で考えて、現地にあわせて行動せよ」という意味ですね。

 

しかし目の前にいる顧客や仕事の同僚は、各地域・各地元に根ざしています。

たとえば日本にいる顧客や仲間は、フランス・中国・タンザニアのそれとは異なります。地元のコミュニティに所属し、そこでの価値観に根ざして生活しているわけです。

このように考えると、グローバル化社会の本質は、「画一性」ではなく「多様性」の尊重である、ということもできます。

一方で、各地域はグローバルで繋がり、色々な仕組みをグローバル規模で連動できるようになりました。

たとえば日本の自宅から、世界のどこかにあるサーバー上で稼働するAppleのサイトにアクセスし、画面上でMacBook Airをクリックして注文すると、注文が中国に飛んで、運送業者を経由して税関を通り、数日後に自宅に届きます。

このように、世界規模で連動する仕組みは既に基盤となり私たちの生活を支えています。

 

このような時代、確かに”Think locally, act regionally, leverage globally”という言葉の方がしっくり来るように感じました。

川島良彰著「私はコーヒーで世界を変えることにした」…今日からの仕事に、元気がもらえます

川島良彰著「私はコーヒーで世界を変えることにした」を読了しました。

川島さんは「コーヒー界のインディージョーンズ」と言われるコーヒーハンター。

1956年、静岡県にあるコーヒー焙煎卸業の店に生まれ、コーヒーの香りとともに育ち、子どもの頃から「中南米でコーヒーの仕事をしたい」という強い想いを持って高校卒業後、エルサルバドルに留学しコーヒーを学び、様々なことを経験されます。

エルサルバドルの内戦中も残ってコーヒーの研究を続けていましたが、内戦が激化してやむを得ず一時期米国・ロサンゼルスに滞在中、UCC上島珈琲の創業者・上島忠雄氏に直々にスカウトされUCC上島珈琲に入社。当時25歳。

上島忠雄氏の「海外にコーヒー農園を持つ」という生涯の夢を託され、ジャマイカでゼロから農園を立ち上げます。

その後も、ハワイ、インドネシア等でコーヒー農園を次々と開発。

さらに「絶滅した」と言われるコーヒー種をマダガスカル島で発見、「コーヒーハンター」と呼ばれるようになります。

51歳でUCC上島珈琲を退職。

今は会社を創業し、コーヒーで世界を変えるために、様々な活動をなさっています。

 

私たちが何気なく毎日飲んでいるコーヒーは、実は南北問題を象徴する商品です。

世界トップ10の生産国は発展途上国ですが、一方で世界トップ10の消費国のうちブラジル・エチオピア以外は全て自国で生産できない先進工業国です。そしてトップ10消費国のうち、アジアでは唯一日本が入っています。

このようなコーヒーの世界で、本書にも書いているように、川島さんは、気候・人種・宗教・文化・言葉がまったく異なる様々な国でのコーヒー農園開発を通じて生産国の現状を知り、コーヒー栽培の知識があり、コーヒー屋で生まれてコーヒーを感覚的に理解し、さらに消費国の事情にも精通している、世界でおそらく唯一のコーヒー屋です。

このような仕事をなさってきた川島さんの生き方に感銘を受けると同時に、川島さんを社員として26年間守り、育ててきたUCC上島珈琲の度量の深さも、凄いと思いました。

「現代の日本にも、こんなスケールが大きい日本人がいたんだ!」というのが率直な感想でした。

コーヒー好きでない方も、本書を読むと、とても元気が出てくると同時に、仕事とは何かを深く考えるきっかけを得られると思います。

そしてもしかすると、読み終わるとコーヒーのことが好きになっているかもしれません。(笑)

 

 

2013年の振り返り(3): 今年は講演を31回実施、のべ2,000名以上に参加いただきました。有り難うございました

2013年は、これまでで一番多くの講演を行いました。

合計31回実施。

のべ2,000名以上の皆様に参加いただきました。

これだけ沢山の皆様が、私の講演に貴重なお時間を預けて下さったわけで、大変有り難いことです。

 

数字で把握するために、まとめてみました。

■総合満足度(NSI*): 87.8
(全31回中、アンケート実施分19回の平均値)

* NSI: Net Satisfaction Indexの略。アンケートの5段階評価で、「とてもいい」=100点、「いい」=75点、「まあまあ」=50点、「よくない」=25点、「とてもよくない」=0点に換算し、加重平均を取ったスコア。講演の顧客満足度を把握するために使用します

講演では、主催者様にお願いして、できる限りアンケートを採るようにしています。

通常のセミナーでは「NSI 75以上で合格」と言われます。しかし私は参加される方が心から満足いただく目安として、毎回、NSI 90を超えることを目指しています。

このために、事前に参加者の課題を把握して毎回資料を作りかえ、講演前はリハーサルを動画で録ってチェックしています。

しかしながらアンケートを採った19回の講演のうち、11回はNSI 90をクリアしたものの、残念ながら90以下が8回ありました。

これら8回について、本番講演の動画をチェックしたりアンケートでいただいた意見を見ながら振り返ると、下記が原因になっていました。

・参加された一部の方との期待値と講演内容にギャップがあった

・講演での説明内容に改善の余地があった

・ある講演で講演時間がオーバーしてしまった

・ご質問への回答が不十分だった(疲労などにより)

毎回振り返り、日々、講演品質の改善を図るようにしています。

先日の講演では、念願のNSI 100(参加者20名)を実現できました。なんとか続けていきたいですね。
 

■実施時期別:1−3月:5回、4−6月:4回、7−9月:12回、10−12月:10回

やはり7月の独立後、実施回数が急増しています。特に9月と10月に多くの講演を行いました。

このうち半分強が「永井孝尚オフィシャルサイト」経由でのご依頼です。やはりオフィシャルサイトを整備することは大切ですね。

 

■実施テーマ別

・「改めて顧客中心主義について考えよう」 24回
・「ビジネスパーソンの出版戦略」 6回
・「グローバルコミュニケーション」 1回

「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズを読んだ方々からのご依頼もあり、有り難いことにマーケティング関連がダントツに多いですね。

一方で、「ビジネスパーソンの出版戦略」やグローバルコミュニケーションも増やしていきたいところです。

 

上記講演以外にも、研修・ワークショップ・大学院での講義などもありました。これらも併せると、2013年は皆さまの前で1時間以上お話しする機会が50回以上あったことになります。

振り返れば、若い頃の自分は人前で話をするのが大の苦手。トラウマもありました。

当時の私を知る方々は、私がこのような仕事をしていること自体、想像も出来ないことかもしれません。

しかし講演や研修は、皆様のかけがえのない人生の時間をお預かりする、大切な仕事です。

これからも日々反省し、より高い価値をご提供できるように、精進していきたいと思います。

 

「日本企業は、海外では『過剰品質』なのではなく、実は『低品質』なのだ」という認識が必要なのかもしれない

日経ビジネスオンラインの次の記事を拝読しました。

「日本企業がグローバル化できない本当の理由って何ですか?」
早稲田大学ビジネススクールの淺羽茂教授に聞く

記事では、淺羽さんがよく使う例として、日本のゼネコンが競って開発してきた、超高層建築向けの耐震性の高い高強度コンクリートを紹介しています。

上海やドバイでは多くの超高層ビルが建設されましたが、高強度コンクリートは全く採用されませんでした。材料を絶妙な配合で混ぜたり、精緻な施工管理ができる人材・材料が、海外では調達できなかったためです。

上海やドバイの超高層ビルは、性能で劣っても、調達しやすく簡単に配合できるコンクリートを使いました。

記事で淺羽さんは次のように述べておられます。

「こう考えると、日本の高強度コンクリートは過剰品質ではなく、非常に低品質だった。低品質で、なおかつ価格が高いから売れなかったのだと見るべきなのです」

 

「なるほど!」と思いました。

 

私たちが「高品質」と言う場合、往々にして技術面だけを意識しているケースが多いのではないでしょうか? そして提供する技術が顧客ニーズを上回っているケースを、「過剰品質」と呼ぶ傾向があります。

しかし「過剰品質」なのに採用されないのは、他の課題(このケースでは、調達しやすさや配合しやすさ)に応えられていないからです。

つまり、「顧客の課題」を考慮していない孤高の「高品質」なのであり、「過剰品質」なのが現実なのです。

日本市場向けの高品質商品は、「顧客の課題」から品質を捉えると、実は海外市場では「過剰品質」ではなく、「低品質」なのだ、という認識が必要なのですね。

 

記事では、先日当ブログでもご紹介したユニクロのバングラデシュでの取り組みも紹介されています。

本来、グローバル化を推し進める際には、現地のきめ細かな顧客の課題を理解して先取りし、応えていくことで、品質を高めることが必要なのです。

記事を拝読し、「顧客の課題が出発点」というのは、グローバル市場においても大切なことなのだ、という当たり前のことを再認識しました。
 

 

あのIBMが開発した「真のグローバル企業を目指せ!海外戦略ゲーム」が、なかなか面白い件

巷で、「あのIBMが開発した」と言われるこんなネットゲームが話題になっています。

Ibmgame_4 

「おお!ついにIBMもゲーム進出か? IBMを退職して半年近く経つけど、世の中の流れは早いものだ」

と思いながら早速試して見ましたが、あの懐かしい「人生ゲーム」を彷彿とさせたりして、シンプルでなかなか面白いですね。

ゲームをしながらIBMが提唱するGIE(グローバル・インテグレーテッド・エンタープライズ)の考え方を理解出来るようになっています。

意志決定の場面で、IBMが提供するGIEサービスのパンフレットもダウンロードできる仕組みです。

最後に採点されて、上位得点者はランキングされます。(私は残念ながらランキング外でした)

 

ちなみに、「GIE」とは、「国際企業」→「多国籍企業」の次の段階として、IBMが提唱する企業の姿です。

「国際企業」は、本国から海外の各地へ製品やサービスを供給するモデル。

「多国籍企業」は、さらに一歩進んで、海外の各国に、本社と同等機能(地域本社、営業、開発、生産、マーケティング、等)を展開するモデルです。

しかし一方で多国籍企業は、本国本社と機能重複があり、コスト面、意志決定の速さの面などで弊害も出てきました。

そこへインターネットやグローバルサプライチェーンの仕組みが登場し、必ずしも各国に本国と重複する部門を置く必要がなくなりました。

そこで「世界全体で一つの企業として経営していこう」という考え方でIBMが提唱しているのが、「GIE(グローバル・インテグレーテッド・エンタープライズ)」です。「グローバルで統合された一つの企業」という意味ですね。

GIEは、パルミサーノ前CEOが就任した2004年から、IBM自身が全世界のIBM社内で展開しており、ここで得られた経験を、様々な経営支援サービスとして提供しています。

 

このような背景を理解して、改めてこのゲームを見ると、マーケティング・プロモーション活動(デマンド・ジェネレーション)の一環として、よく出来ている仕組みだな、と思いました。

それにしても、お金もかかったでしょうね。

まさに「GIE」を実践している企業の中で、このように日本にローカライズしたプロモーションにお金を付けるのはかなり大変なことです。関係者の皆様のご努力には頭が下がります。