投資1000億円のホンダ新規プロジェクト。「ムリ」と思ったら快諾された理由

会社で大規模な新規事業を立ち上げる際には、経営トップの承認が必要です。
しかしともすると超巨額投資が必要で「こんなの、絶対やめろと言われる」と思われがちです。

しかし、社員の目線と経営トップの目線は、全く違うものです。

そのことを実感した記事がありました。日経産業新聞に2023年9月4日に掲載された「ものづくり記 ホンダ・和光研究所(6) ジェットエンジンの強み生かせ」という記事です。

「空飛ぶクルマ」と言われるeVTOL(電動垂直離着陸機)は、現在、世界中で、キティホーク社などのスタートアップがしのぎを削っている分野です。再来年2025年の大阪万博でも、eVTOLの試験運用を行うと言われています。

ホンダジェットで航空業界に参入したホンダは、このeVTOLに勝機を見いだしています。

その武器がジェットエンジン。ガスタービンを電池への発電用に使うハイブリッド式パワーユニット(ガスタービンHV)を作ろうと考えています。バッテリーだけだとせいぜい飛行距離は100Km。ガスタービンHVでバッテリーを補えば、400Kmの飛行が可能です。

当初、ホンダは自社ガスタービンHVを、eVTOLメーカーに外販する交渉をしていました。交渉が難航する中で、「もしかしたら自分たちで機体も動力もやった方が、いいんじゃないか?」と考え始めました。では、なぜそう考えたか?

航空機で必要な大きな2つの技術が、機体設計とエンジンです。
航空業界では、機体とエンジンは完全に分業されています。
そして意外と知られていませんが、実はホンダは、この2つを単独で手掛ける世界唯一のメーカーなのです。

そして本田技術研究所内で、自社のガスタービン搭載VTOLの開発が始まりました。しかし投資金額は1000億円を超えることがわかりました。
開発メンバーは「絶対にやめろって言われる」という意見が大勢。
当時の本田技術研究所の社長は、現在のホンダ社長の三部敏宏さんでした。

この様子を、記事ではこのように書いています。

—(以下、記事より引用)—

結局、そのまま三部にぶつけることにした。三部の反応は意外なものだった。

「こんなにかかるのはうちだけか?」
「いや、うちだけじゃないです」
「じゃ、(eVTOLの)ベンチャーは死ぬってことか。今日はいい話を聞けた」

現在は雨後のたけのこのように世界中でeVTOLのスタートアップが名乗りを上げているが、その中で本当にTCを取って事業化までたどりつけるのは何社あるだろうか。実際、この後にキティホークは事業化を断念した。高い参入障壁は、それを乗り越えた者への先行者利益を保証する。三部は多くを語らなかったが、暗にそう言いたかったのだろう。

—(以上、記事より引用)—

このエピソードは、会社員が新規事業に取り組む際に、大きな示唆を与えてくれます。

新規事業は、しがらみを持たずに迅速に動けるスタートアップの方が、圧倒的に有利に思えます。しかしスタートアップは、1000億円を超えるような投資を得ることは至難の業です。

大企業であれば、自社の強みが活かせるのであれば、キャッシュフローの範囲内で、大規模な投資を長期間行うことが可能です。

たとえば花王のソフィーナ。1976年に研究を開始し、一時は累積赤字が最高250億円にも達しましたが、2000年に黒字化し、売上700億円です。

東レは1961年に「航空機の構造体で使えるかも」というアイデアで炭素繊維の研究を始めました。製品化は1971年でしたが、当初は「鉄の1/4の軽さで10倍の強度」を訴求して釣り竿やゴルフクラブに展開していました。その技術が自動車で培われ、今では航空機で使われています。炭素繊維も数十年掛けています。

ホンダジェットも数十年の投資が実った例です。

以上のことは、まさに「じゃ、(eVTOLの)ベンチャーは死ぬってことか。今日はいい話を聞けた」という三部さんの言葉に凝縮されています。

三部さんは2021年の社長就任会見で、いきなり「2040年までに、ホンダの世界販売を100%、EVとFCVにする」と発表して、大きな話題になった経営トップです。

大企業には、大企業の戦い方がある。

そして「会社を本気で変えたい」と考える経営トップは、現場社員とは全く違う目線を持っているのです。

   

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意味のない「差別化」をしていませんか?

「これがウチの差別化ポイントです!」

このようにアピールしている会社をよく見かけます。一方で、意味のない差別化をしているケースが実に多いのも現実です。たとえば…

①機能の違いをアピールする

例:「ユニクロのジャケットはフードが外れます。当社のジャケットはフードと一体化しました」
→でも、「フードが外れないからこの商品買おう」という人はあまりいませんよね。

顧客にとって意味のない機能をいくら追加しても、差別化にはなりません。

②ライバルよりも目立たせる

例:ライバルは「90日で成果が出る英語レッスン」ってアピールしているから、当社は「30日で成果が出る英語レッスン」とアピールしよう
→そのうち「1週間で…」「1日で…」「10分で…」なったりします。言ったもん勝ちの世界ですよね。

でも消費者はバカではないので、この手の意味のない数字ごっこには騙されません。

③ライバルと比べた優位性をアピールする

例:「全国ゆるキャラグランプリで、申込み3000件中、うちは10位です!」
→ 2021年時点でゆるキャラは全国に1553体あるそうです。ゆるキャラは地域のイベントを盛り上げる効果がありますが、ゆるキャラ自体は差別化にはなりません。

ライバルと比べて少々優位性があっても、顧客にとって意味がなければ差別化にはなりません。

④技術をアピールする

例「業界では誰も採用していない最先端のWeb3技術を活用して、後継者問題に悩む中小企業と若い起業家を結びつけることができます」
→何かとても有り難いものに思えてしまいますが、その中小企業の経営者と、若い起業家がその技術を使えないと、意味がありません。

課題の見極めの前に解決策を前提に考えてしまうと、最先端技術を使っても、大抵はスジの悪いビジネスになります。(頭脳が優秀な人ほど陥りやすい罠です)

これらの「イタい差別化」に共通しているのは、差別化というものをそもそも勘違いしていることです。

「要は、相手と違えば、差別化だよね」

これは差別化ではありません。

差別化戦略は、1980年頃に経営学者マイケル・ポーターが提唱しました。

本来の差別化は…

「このニーズに応えられるのは当社だけ」という状況を作ること

そのニーズが大きいほど、消費者は喜んで買うようになります。

たとえば、以下は差別化の例です。

ゴディバ →定番のバレンタイン本命チョコ
ブラックサンダー →定番の義理チョコ
エアウィーヴ →「質」の高い睡眠環境

そのお客様の課題やお困りごとに対して、業界でベストの解決策になることが、本当の「差別化」なのです。

御社は、差別化ができているでしょうか?


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タクシーに乗って、DXの本質を知る

先日、タクシーでやや長距離を移動したときのこと。

私は長距離は、なるべく個人タクシーを使うようにしています。
運転が丁寧ですし、道に迷うことがまずないからです。
しかしこの時はラッシュ時で、個人タクシーが掴まりません。
そこでタクシーアプリの「GO」で、日本交通のタクシーを呼びました。

5分程度で来てくれました。運転手は20代の若い男性です。いつも通り道順を伝えると…。

「その道順よりも、こっちの道順の方が3分ほど早く着きますが、いかがしましょう?」

GOでタクシーを呼ぶ際、目的地の住所指定をしたので、行き先はカーナビに自動セットされているのですね。(ちなみにタクシーを呼ぶ時は住所入力は不要で、地図上で建物をクリックするだけです)

お任せしたところ、「こんな道あったの?」と思うほどの抜け道を走り、あっという間に到着しました。

でもこの若い運転手が、抜け道を知っているわけではありません。カーナビの通りに走ったわけですね。

2022年11月18日のテレビ東京・ワールドビジネスサテライトを見ていたら、まさにこのことを紹介していました。

番組に登場した20代の女性運転手は、乗務歴4ヶ月。でも既に売上は営業所の平均です。その秘密が、GOの活用。

これまでタクシー運転手は、空車の時には流しで運転し客を掴まえるのに独特の勘が必要でした。運転には土地勘も必要でした。つまりタクシー業界は、ベテラン運転手が稼げる市場だったわけです。

しかしGOなら、自動的に乗客と車両をマッチングして、行き先も丁寧に教えてくれます。つまり知識がなくても稼げるわけです。しかもタクシー運転手は、比較的時間に拘束されずに自由に働けます。ですので20代でタクシー運転手になる人も増えています。

GOを運営するMOT(モバイルテクノロジーズ)の中島宏社長によると、タクシー会社に入社して数ヶ月で年収600万円稼げる方も出てきているそうです。

このため、GOでは決済システム、配車アプリ、タクシーに乗せるタブレットなどが全て連動しています。この結果、タクシーは利用者にとっても実に使いやすくなりました。

・乗車率 6割(GO開始前)→9割(GO開始後)
・支払い時間 40秒(車内決済)→15秒(GO決済)
・待ち時間 6分半(電話配車)→3.4分(アプリ配車)

この先のビジネスもあります。

GOに登録する全国15,000台のタクシーは、常にドライブレコーダーで道路の状況を撮影して走っています。そこで撮影画像から標識や信号をAIが自動検知し、地図会社と連携して地図データ更新に活用しています。1日で地球10週分の走行距離の情報量。まさにビッグデータです。

さらにこのデータを活用して、自動運転の研究も進めています。

DXの本質は、ケタ違いの利便性と大きな価値を生み出して、業界を変革し、市場を拡大して、新たなビジネスを創造することです。

これまでタクシーは不便が沢山ありました。しかしその不便さは、同じ業界にいる人ほど、ある意味で当たり前でした。その不便を解決したのがGOでした。

GOの前身は、ジャパンタクシーというタクシー会社である日本交通が設立した会社です。10年前に「このままでは日本のタクシー業界は、ぜんぶUberにやられる」という危機感を持った日本交通トップ・川鍋一朗さんが、タクシー配車アプリを始めたのがきっかけです。

このGOの挑戦は、まさにDXの本質です。

あなたの業界では、どのような危機感を持っていますか?
その危機を克服するために、どんな取り組みをしていますでしょうか?

 

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自動化は、DXではありません

ITの世界で、RPAという考え方があります。RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーションの略。パソコン操作を自動化してくれる仕組みです。キーボードやマウスの操作が自動化されます。

たとえばクラウド上からファイルをダウンロードして、データを転記したり集計する作業とかありますよね。これまでこのような作業は、人間がマウスとキーボードを操作して、人手をかけてやっていました。でもRPAを使えば、そんな作業を自動でやってくれます。

この手の作業が膨大にある企業は少なくありません。たとえばメガバンクは、データを大量に処理する事務作業があります。そんな職場では、RPAが絶大な労働コスト削減を実現してくれます。

このように言うと…。

「なるほど、RPAを活用して、我が社もDXを推進するぞ!」

と考える方もおられるのですが、これはRPAとDXの大きな勘違いです。

ちなみにDXは、デジタル・トランスフォーメーションの略です。
デジタルを使って、いまの仕事のやり方を一気に変えてしまうのが,DXです。

RPAとDXは、実は真逆なのです。

3年ほど前に、「書類の押印作業を自動化する」という押印自動化ロボットが展示会で出展されて、「そもそも押印作業を不要にすべきじゃないの?」と話題になりました。この場合、「押印作業をロボットで自動化しよう」と考えるのがRPAで、「そもそも押印作業をなくそう」と考えるのがDXだ、と考えると分かりやすいと思います。

RPAの大前提は、「いまのパソコン定型作業を、自動化する」。たとえば、「①クラウドから顧客情報をダウンロードして→②Excelで開いて→③顧客の情報を転記して→④ファイルしたらクラウドにアップロードする」という現在の作業を、自動で行います。つまり、現在の業務を肯定します。

DXの大前提は、「いまの業務を根本的に変える」。たとえば「そんな作業は廃止しよう。顧客がスマホ入力したデータを、直接クラウドに反映させた方が、コスト削減できるし、顧客もリアルタイムでデータを確認出来るから、サービスレベルも上がるよね」と考えます。つまり、現在の業務を否定します。

既存業務を高速化するよりも、既存業務をなくした方が、全体の業務プロセスはスピードアップすることが多いですよね。DXはそこを狙うわけです。

現場主導で考え、現場の生産性を大きくアップするのがRPA。
経営者主導で考え、会社の業務そのものを変えて、生み出す価値と効率性を変革するのがDX。
このように考えると、分かりやすいと思います。

自動化の意外な盲点ですが、「自動化=DX」ではなく、むしろ真逆なので、注意したいですね。

 

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お客様の声、聞くべきか? 聞かないべきか?


永井経営塾ライブで、獺祭を製造・販売する旭酒造の桜井会長にご登壇いただいたときのこと。桜井会長はこのようにおっしゃいました。

「お客様の声は、聞かないんですよ」

一見、常識外れに聞こえますが、お客様は「辛口がいい」「やっぱり自分は甘口だな」「美味しさよりも安い方がいい」というように色々なことをおっしゃったりします。こういう話を一つ一つ聞くと、酒造りがブレます。だから桜井会長は、あえてお客様の意見を聞かずに、自分たちが「これが最高のお酒」と納得できるお酒造りを追求しているのです。

このようなお話しを紹介すると、こう思う人もおられるかもしれません。

「なるほど。お客様の声は聞かなくてもいいんだな。やはりいい製品づくりに邁進しよう」

実は「お客様の声を聞かずにいい製品づくりに邁進する」という姿勢は、必ずしもあらゆる状況で正しいわけではありません。

日本酒のように、お客様に価値を提供する単体製品で「美味しさ」というシンプルな評価基準がある場合は、「最高の製品づくりを追求する」という姿勢が成功のカギです。

また全く新しい商品を創り出す時は、お客様の声は参考になりません。アステリアの平野社長も、永井経営塾ライブに登壇された時に「お客さんの声は聞かないで、先を見据えて自分たちが必要だと信じた商品を開発しますね」とおっしゃってます。

一方で、パナソニックの樋口泰行専務は日経ビジネスのインタビューでこのように語っています。

「2018年春ごろから、パナソニックはソフトも重視しなければ生き残れないことを社長の津賀一宏に言い続けてきました。…例えばソリューションビジネスでは、顧客から相談を受けた後でコンサルティングをして、システムを構築していくという流れです。ただし国ごとにビジネススタイルが異なるため、ノウハウを一朝一夕に蓄積することは難しい。この感覚は、いい製品さえ作れば、国境を越えて販売していけるというビジネスを経験してきたパナソニックの幹部には理解しづらいのです」(日経ビジネス 2021/10/25号)

現実に多くの製造業がサービス化しています。「製造業のサービス化」という流れです。たとえばGE。長年ジェットエンジンを製造していますが、今やジェットエンジンにセンサーを付けてモニタリングすることで、性能や故障を事前予測し、エンジンの稼働率向上を支援するサービスを提供しています。エンジンの稼働率向上は、顧客である航空会社の収益に直結します。

樋口専務がおっしゃっているのは、このようなソリューションビジネスでは、こちら側ではなかなかわからないお客様の課題把握が、成功のカギになっているということです。

そして残念ながら、お客様の課題について思い違いをしていることも多いのです。そのような場合は、お客様の声をちゃんと聞いて理解する必要があります。

ちなみに「全く新しい商品を開発する時は、お客様の声は聞かないですね」とおっしゃるアステリアの平野社長も、商品を出した後はお客様の声を真剣に聞いています。

ものづくりメーカーでも、今や好むと好まざるとに関わらずソリューションビジネスの分野に足を踏み入れています。しかしものづくりの成功体験が邪魔をして、本来はお客様の話を聞かなければいけないのに、お客様の話を聞こうとしないところに、ものづくりメーカーが陥っている低迷の原因があるのかもしれません。

  

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1999年、IBMはあることをやめて、2000年代に大きく成長した

太陽と新芽2

「永井さんはIBMご出身ですよね。IBM時代に事業変革に関わったご経験で、日本企業にとって参考になるエピソードがあったら教えてください」

研修の質疑応答で、こんなご質問をいただきました。

私はこのようにお答えしました。

 「強力なライバルが、一夜明けるといきなり最重要パートナーになる経験をしました。企業規模の大小や業種を問わず、様々な企業で参考になると思いますので、このお話をします」

 

1998年、私は製品開発マネージャーからマーケティングマネージャーに異動になり、IBMが自社開発していたある業務用アプリケーション製品のマーケティングを担当することになりました。他社の業務用アプリケション製品は、強力なライバルでした。(業務用アプリケーションとは、顧客管理、会計、人事管理のように、業務用に作られたソフトウェアのことです)

 

翌年の1999年11月。IBM本社は、ある宣言をしました。

「業務用アプリケーションの開発・販売をする会社は、IBMにとって重要なパートナーです。ですので、IBMは今後、業務用アプリケーション製品の自社開発は行いません」 (注:これは「デベロッパー憲章」と呼ばれています)

 

自社開発の業務用アプリケーションに携わっていた現場の私たちにとって「今やっていることはやめる」と言われたのですから、このIBM本社の方針転換はまさに晴天の霹靂(へきれき)でした。

 

なぜIBMは、このような宣言をしたのでしょうか?

実は当時、ユーザーがライバルの業務用アプリケーションを使う際には、IBMのハードウェア・システムソフトウェア・サービスと組み合わせて使うことが多かったのです。

その理由は、IBMが持つ本来の強みにありました。

1999年当時、お客様が業務用システムを使う場合は、自前でシステムを用意する必要がありました。システムを用意するためには、複雑なIT系システムをすべて統合することが必要です。(ちなみに現在は、多くの業務用システムがクラウドで提供されているので、ユーザーは自前ですべての業務用システムを用意しなくてもよくなりました)

そのような課題を持っているお客様にとってIBMの強みとは、「他社製業務用アプリケーションに、サービス・ハードウェア・システムソフトウェアを統合して、提供できること」だったのです。

たとえばIBMのサービス部門には、他社業務用アプリケーションを統合できる高いスキルを持つエンジニアが数多くいました。

IBMのハードウェア部門には、他社業務用アプリケーションに最適化した製品群がありました。

しかしIBMが自社開発アプリケーション製品に固執すると、他社製業務用アプリケーションに、IBMのサービス・ハードウェア・システムソフトウェアを提供する機会を失ってしまうことになります。

そこでIBMは、業務用アプリケーションの自前主義を捨てたのです。

 

現場で自社開発の業務用アプリケーションに関わっていた人達は、大変でした。

まず、それまで開発を続けてきた自社開発の業務用アプリケーションを今後どのようにしていくのかを決めなければなりません。私自身も、個別対応策に追われました。

 

さらにライバルだった会社が一夜明けると最重要パートナーになったので、営業の仕組みも大きく変わりました。

これまで自社開発の業務用アプリケーションに関わっていたマーケティングやセールス担当者は、それまでライバルだった他社の業務用アプリケーションと自社ハード・ソフト・サービスを組み合わせて、統合ソリューションとして販売することが仕事になりました。

それまではライバルには極秘だった案件情報も、新たにパートナーとなった相手に定期的に情報共有する仕組みを作り、お互いに協業責任者を置き、一緒に販売する体制も整えました。

 

自社開発アプリケーションをやめた結果、それまでの手強いライバルは、一緒にビジネスを開拓する心強いパートナーに変わりました。しかも、すべての業務用アプリケーションを開発・販売する会社がパートナーになったのです。

2000年代、IBMのハードウェア・システムソフトウェア・サービスといった主力製品/サービスのビジネスは、大きく成長しました。

 

この経験で私が学んだことは、自社の強みと、その強みを活かせるお客様の課題を見極めた上で、強化するモノ、やめるモノ、追加するモノを明確にし、全社でその戦略を共有し、首尾一貫して、徹底的に実行することの大切さでした。

今回のケースを整理すると、次のようになります。

IBMの強み:他社製業務用アプリケーションに、サービス・ハードウェア・システムソフトウェアを統合して、お客様に提供できること

お客様の課題:複雑なIT系システムをすべて統合すること

やめるモノ:自社開発の業務用アプリケーション

強化するモノ:他社の業務用アプリケーションに最適化したハードウェア・システムソフトウェア・サービス

追加するモノ:他社の業務用アプリケーション・パートナーとの協業体制

 

「IBMさんは大企業だからね。ウチは中小企業だから、参考にならないよ」と思われる方がいるかもしれません。

しかし、そうではありません。この基本的な考え方は、企業規模や業種が変わっても重要なのです。

御社がやっていることは、昔は意味があったとしても、もしかしたら今はお客様にとっては意味がないかもしれません。それをやめることによって、新しい事業が生まれる可能性もあるのです。

むしろIBMのような巨大組織でなく、小回りが利く小さな会社こそ、この考え方を迅速に実行できる環境は整っているはずです。

そのためには、常に「現時点で、お客様にとっての自社の強みは何か?」を問い続けることが必要なのです。

 

とは言え、多くの日本企業は、なかなか「やめるモノ」を決められません。決めても、なかなか実際に捨てることが実行できません。しかし「やめるモノ」を実際にやめなければ、新しいことに挑戦しても、中途半端になってしまうことが多いのが現実です。

逆に考えれば、1998年から1999年のIBMのように、戦略的に自社の強みと、その強みを活かせるお客様の課題を見極めて、「やめるモノ」「強化するモノ」を考えて実行することで、日本企業は大きく成長する余地が残されているはずです。

 

 

 

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ユーオス・グループ様で講演しました

2015年3月17日、IBM様のユーザーグループであるユーオスグループ様・関東支部会で講演しました。

UOS20150317

 

日本IBM様のAVルームでお話しするのは、日本IBM社員だった2年前以来です。

IT業界では、「ソリューションセールス」という言葉があります。

本来は、お客様ご自身も気がつかない課題に、自社ならではの強みで応えることが、「ソリューション」。

しかしともすると、「お客様の言いなりになるのがソリューション」と考えてしまっているケースが少なくありません。

そこで今回の講演は、いつもお話しする「お客様が買う理由をいかに作るか?」に沿った上で、IT業界の状況に合わせてお話ししました。

 

皆様からご感想をいただきました。

□現在のビジネスからの離脱を検討している中、非常に参考になりました。

□要望に応えるのが仕事と思っていましたが、考えを改めました。

□弊社が取り組んでいる方向とまったく一致するものでした。進めているアプローチに間違いないと自信が持てました。ありがとうございました。

□顧客中心主義という原点が大切と感じ、発想の転換と深く客先のことを考える重要性を再認識しました。

□わかりやすい話し方とプレゼンでした。管理職に向けた会議やセミナーで参考にしたいと思います。

□弊社が推進している事業と通じることが多く、たいへん共感致しました。ありがとうございました。

□戦略を立てる上で非常に役立つと感じました。ありがとうございました。

□机上の話ではなく、実際の話がメインであり、大変参考になった。

□ちょっとした工夫が成功に役立つと感じました。仮説検証の繰り返しのターゲットを決めようと思いました。

□聴き入ってしまいました。とても面白いお話しでした。必ずしも汎用的である必要はないんだと思いました。必要とするお客様に必要なソリューションを届けたいです。

 

ご参加された皆様、ありがとうございました。

 

一社単独でなく、パートナーシップで強みを追求する…15年前のIBMの事例から

先日の講演で、こんな質問をいただきました。

当社はIT企業です。ご講演では、「自社単独で強みを追求する」というお話しが中心だったように感じます。一方で自社単独ではなく、他社と協業し、弱みを補いながら、強みを強化するような事例があったら、教えていただけますか?

私はこの場では、あるサービス業界でお互いの強みで弱みを補完し合う事例をご紹介しました。

講演が終わり、「もっといい事例があった!」と思い出しました。

実は9年前の2006年4月、当ブログでも書かせていただきました。

それはまさにIT業界で、しかも私もその渦中にいた、IBMの事例です。

1990年代まで、IBMの強みは「上流コンサルから、サービス、ハード・ソフト等、アプリなど、全てを揃えてでソリューションとして統合できること」でした。当時は自前主義でした。

しかし一方で、1990年代からSAPやSiebelといった業務系アプリケーションベンダーが急成長します。

そこでIBMはケースバイケースで、アプリケーションベンダーと協業しつつも、自社アプリケーションを持つ領域では、アプリケーションベンダーと競合していました。

ある意味、方針は首尾一貫していなかったのですね。

当時、私はCRMソリューションを担当しており、SiebelなどのCRMアプリケーションベンダーはライバルでした。

しかし1999年、IBMは全世界で方針転換しました。

その方針とは、

「今後IBMは、ビジネス・アプリケーション分野は業務系に強いアプリケーション・ベンダーとパートナーシップを組み、IBMの製品・サービスと組合わせて、お客様にソリューションをお届けする」

そしてIBM自社開発アプリケーションについては、既存顧客がいるケースを除き、原則中止しました。

この日を境に、ライバルがパートナーに一転します。

それまでCRMソリューションで競合していたSiebelは、突然、パートナーになりました。

お客様から見ても、IBMがハードやミドルウェア、構築サービスを提供し、その上で先進アプリケーションベンダーの製品を使えた方が、メリットが大きいわけですね。

IBMの強み: インフラや構築サービスに強い

アプリケーションベンダーの強み: 業務系アプリに特化して強い

という、両者の強みを発揮できたわけです。

数多くのアプリケーションベンダーにとって、IBMは強力なパートナーになりました。

それから15年以上が経過し、今や時代はすっかり変わり、クラウドやモバイルを前提として、システムを構築する時代になりました。

パートナーシップの組み方も変わっています。

しかしいずれにしても、「お客様から見た強みはどこにあるか?」がカギであることは変わりはありません。

そのためには、当時IBMが自社アプリをあきらめたように、自社で必ずしもお客に対して高い価値を提供できていない部分は、早急に見直していく必要があります。

強みを判断する基準は、やはりあくまで顧客の価値なのです。

クラウドは、巨大化・複雑化したITを、ふたたび変革のドライバーへと変える

現在の企業におけるITは、巨大に複雑になってしまったために、変革のドライバーではなく、ブレーキにさえなりつつあります。

例えば、検討2年、稟議半年、調達半年、そして開発3ヶ月。

開発そのものは3ヶ月でできるのに、開発にたどり着くまでに3年。

ビジネスニーズに応えるべきITが、開発着手時にはニーズを逃していることも、多々発生しています。

「本来あるべきITの姿」を取り戻し、急激に変化する社会に迅速に対応し、グローバル経営へ転換していくためには、ITインフラ、そしてIT部門のあり方そのものを変革していく必要があります。

その過程においてはITインフラの仮想化/標準化/自動化を推し進め、柔軟な共同利用モデルへとシフトさせるクラウド・コンピューティングが、1つの有効なアプローチになります。

では、なぜクラウドが運用の効率化においても有効なアプローチとなり、ビジネス価値の創造や企業競争力の向上を実現できるのでしょうか?

今週から勤務先の日本IBMのトップページで、下記の特集を開始しました。

日本IBMのトップページ

Topcloud201011

クリックすると、こうなります。

「本来あるべきITの奪還」が適者生存での変革のドライバー

Cloud201011

 

クラウドは「稟議キラー」とも言えます。

従来1ヶ月かかっていたIT資産調達を数時間に短縮する日本の事例も紹介されています。

これから企業の中で、本格的にクラウド技術が活用されていきます。

サービス提供期間がわずか1週間だったり、非常に小さな案件だったりするような、従来はIT化をあきらめていた様々な業務も、IT化できるようになります。

IT業務のロングテイル化です。

それでは、クラウド技術は、どのように経営力を強化するのか?

日本IBMのクラウド・エバンジェリストの米持さんが語る内容になっています。

もしよろしければ、是非ご一読を。

 

ちなみに、この「スマートなソフトウェア活用」はシリーズものになっており、これからもしばらく続けていきます。

このシリーズではあえて各製品の機能は紹介せずに、お客様が抱える経営課題をいかにソフトウェア技術が解決するかという視点で、分かりやすく解説する読み物です。

ユーザー事例もふんだんにご紹介しています。お楽しみに。

「スマートなソフトウェア活用」シリーズ

■第1回:概要編 6つの課題とは?(10月18日より)

■第2回:コラボレーション編(11月15日より)

■第3回:運用の効率化編(12月6日より)

 

 

ソフトウェア活用が、企業競争力のカギになる時代

日本企業のIT関連支出全体のうち、ミドルウェアは8%を占める、と言われています。

一方で、グローバルでは、これは14%。

 

数十年のスパンで考えてみると、今まで日本は個別業務にきめ細かく最適化することで差別化していました。

一方、その部分で日本に負けてきた欧米は、ソフトウェアを活用し、標準化して全体最適することで差別化を図るようになりました。

そこでの競争力のカギの一つは、ソフトウェアの新しい活用です。

そこで今週から、ソフトウェアの新しい活用のカタチを、日本IBMのウェブサイトでご提案しています。

下記が日本IBMのトップページですが….

Ibmcomtop

 

上記のバナー部分をクリックいただくと、そのサイトに行きます。

Ibmcomsw

ITを活用して貢献ができる6つのビジネス課題に対して、ソフトウェアを活用して、短期に成果を挙げた事例もご紹介しています。

今回は第1回目。

色々と考えながら、様々な方々のご意見をいただきつつ、作っていきたいと思います。

 

本日、「ITは世の中の様々な問題をいかに解決できるのか?」という講演をします

本日午後、渋谷で講演を行います。

現在、世の中で起こっている様々な問題を、ITがいかに解決でき、その中でソフトウェアがどのような役割を果たしているか、という内容です。

 

ITは、世の中の様々な問題を解決できる大きな可能性があります。

しかし、それは従来のやり方の延長では実現できません。

一昨日、当ブログのエントリー『電力に占める再生エネルギーの割合–欧州は現在20%、日本は20年後の2030年に20%→今こそ日本人はグローバルに出よう、という話』でも書きましたように、産業界全体で、かつグローバル規模で、取り組む必要があります。

本日は、そのあたりを具体的にご紹介できれば、と思っています。

 

講演タイトルは、

「Smarter Planetを実現するIBMソフトウェア」

キーメッセージは、

・IBMが昨年来提唱しているSmarter Planetは、 産業界全体で考えるべき、新しい課題である
・Smarter Planet実現にあたっては、IT業界の役割は大きい
・Smarter Planet実現のために、IBMは大きな投資を継続している
・IBMソフトウェアは、Smarter Planetを強力に推進している

今回ご紹介する事例は、

先進アナリティックス、クラウド、ソーシャルウェア

などを活用したお客様事例です。

今回の講演でお招きするのは日本IBMのビジネスパートナー様数十名、場所は7月30日に日本IBMが渋谷事業所に開設した「IBMイノベーション・センター」です。(→イノベーションセンターについて、詳しくはこちら)

今回はIBMソフトウェアの価値をパートナー様に分かりやすくお伝えする「渋谷早わかりセミナー」というシリーズの第1回目。(概要はこちら。PartnerWorldメンバー専用サイトログオンが必要です)

第2回目以降も、様々な人達が先進ソリューションをご紹介する予定です。

今も40年前もほとんど変わらない、ソリューション・ビジネスの基本中の基本

今月の日本経済新聞「私の履歴書」はオービック創業者で会長の野田順弘さんです。

6月19日と20日の記事は、三菱電機が発売した新型オフコンを、楽観的な案件見積もりで20台も誤って発注してしまった時期の話が描かれています。

特約店になるための条件等、いろいろな事情で、発注はキャンセルできない状況で、期限までに20台を売り切らないと倒産してしまう、という危機に見舞われました。

40年ほど前の話ですね。

これが現在のIT業界でもそのまま通じる素晴らしい話なので、紹介させていただきます。

 

まず、6月18日の記事では、戦略と戦術をまとめています。

戦略目標は、「期限までに20台完売すること」

戦術のポイントは4つ。

ポイント1
(従来扱っていた)会計機を売る場合は「事務の合理化」、つまり人員削減効果がうたい文句だった。だがコンピュータは在庫管理、粗利計算、商品回転率、与信管理と経営に直結する事項まで処理できる。つまり、「経営の合理化」にコンピュータがいかに役立つかを理解してもらうことが重要になる。

経営にいかに役立つかを顧客に理解していただく大切さ、今でも全く同じです。

ポイント2
顧客の「買っても使いこなせるのか」という不安を解消すること。…(中略)….女性社員にコンピュータの操作方法を勉強してもらっていた。「我が社からコンピュータを購入していただければ、専門知識を持った社員を派遣し納得いくまでご指導いたします」と言って安心してもらう。

ポイント3
納入後の故障や不具合に対する保証も欠かせない。保守・点検・修理をしっかりやることで顧客が満足してくれることを会計機ビジネスで学んでいたから、コンピュータを売る場合も、その点がポイントになると思っていた。

ポイント2の研修体制、ポイント3のサポート体制は、キャズム越えの際に必要となる、「ホールプロダクト化」ですね。

市場の多数派であるアーリー・マジョリティに浸透するためには、商品導入に伴うリスク軽減が必要になります。

ポイント4
先方の業種や業態、職務の内容をわかっていないと、営業が的外れになるということだ。それぞれの悩みや課題をコンピュータはこのように解決してくれますと、具体的に訴えなければ話は進まない。

これは現在ITベンダー各社が提唱しているソリューション・セールスそのものです。

ただ、注意しなければいけないのは、「ソリューション」という言葉は、あくまでITベンダー側の言葉であるということです。

顧客は「自分の課題」を主体で考えているのであって、「ソリューション」を主体では考えていないのです。

 

6月19日の記事では、この戦略と戦術を実行している様子が描かれています。

当初はさっぱり効果があがらなかったそうです。

3ヶ月目に入っても売れたのはわずか2台。

頭も体も売ることしか考えていなかった時期を過しているうちに、潮目が変り、徐々にお客さんが興味を示し始めているという報告が上がり始めます。

朝の5時からとか夜中のデモには喜んで対応、外出中の社長を雨の中を夜まで待って商品説明、等の努力を重ねているうちに、9ヶ月後には20台完売しました。

記事では、その時の様子が描かれています。

「お~い、目標を達成したぞ」と事務所の全員に向かって叫ぶと、やがて拍手の輪が広がった。9ヶ月に及ぶ苦闘。歓声は上がらず、喜びに満ちた沈黙に包まれた。

また、この不可能を達成するために考えた戦術が、今日オービックが得意とするソリューションビジネスの原型になったとのことです。

 

私が26年前に日本IBMに入社した際にも、1年半にも及ぶ新入社員研修で、顧客視点でのソリューションビジネスの基本を徹底的にたたき込まれました。

ソリューション・ビジネスの根幹は同じところにあるのですね。

 

■永井孝尚Twitter→  http://twitter.com/takahisanagai
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「IBMのソフトウェア戦略」連載後半を掲載

2週間前にご紹介した連載前編に続いて、後編を、IBMユーザー研究会のサイトに掲載いただきました。

こちらに掲載されています。

15年前、IBMハードウェア事業の中の一部門に過ぎなかったIBMソフトウェア事業は、この15年間でその姿を大きく変貌させて成長し、IBMのビジョンであるSmarter Planet実現のために必要不可欠な存在となっています。

今回の連載では、IBMソフトウェア事業がお客様に価値を提供するために、具体的にどのような活動をグローバルに実施しているかを紹介させていただきました。

もしよろしければ、ご一読いただければ幸いです。

業界共通から出発し、各業界向けに細分化していく、「ソリューション・ライフサイクル」という考え方

ここ10年間の仕事をふり返ると、私が関わってきたのは「ソリューション・マーケティング」でした。

様々なソリューション・マーケティングに携わってきましたが、どれも共通点があるように思います。

 

例えば、クラウドという概念が出てきたのは、数年前でした。

当初は業界共通で適用されていましたが、急速に発展していき、様々なサービスや製品が出てきました。

最近は自治体クラウドや業種特化型クラウド等、業界に特化したクラウドも議論されています。

 

また、1990年代に生まれたCRMという概念も、業界共通ソリューションから出発し、その後各業界向けに特化して発展していっています。

 

一般にソリューションを「ライフサイクル」という観点から考えると、どれも業界共通ソリューションから出発し、その後は顧客セグメント別(≒業界)の個別ニーズへ対応するようになっていくのが一つのパターンのように思います。

恐らくソリューションが概念として生まれた時点では、ソリューション自体が成熟しておらず業務で役立つことを実証することが中心になるので、顧客固有ニーズへの対応が緩くてもそれなりの価値があるのでしょう。

その後、ソリューションの価値が様々な事例で実証されると、参入業者が増えて競争も激しくなり、次のステップとして個別ニーズへの対応が必要になってくる、ということなのかもしれません。

このような視点で捉えると、現在のソリューションがどの段階にあり、今後どのように発展していくのかが、マクロ的に把握できるように思います。

 

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企業でソフトウェアのメリットを十二分に享受するためには、IT実装の考え方を変える必要があるかもしれない

先週、IT部門の管理職の方々とのセミナーで、ますます進化していくソフトウェアが、どのように社会を変えていくのか、といった内容の講演を行いました。

講演後の昼食でお客様数名と懇談した際に、「ここ数年間のソフトウェアの進化と、それが世の中や企業を進化させていること、日本のIT活用に課題があることはよく理解できた。しかし、現在の業務や課題に対して、ソフトウェアをどのように適用すればよいのか、きっかけが掴めない」というお話しを伺いました。

 

確かに、企業向けソフトウェアは日々進化する一方で、業務で解決すべき課題はますます複雑多岐になっています。

業務毎に「あるべき姿」を考え、
現状とのギャップを把握し、
そのギャップを生んでいる課題を特定し、
その課題を生んでいる根本的な原因を究明した上で、
「あるべき姿」を実現するためにITでどのように実装するかを検討する、

というアプローチで取り組んでいる場合も多いと思います。

しかし、この方法による検討は時間がとてもかかります。

また、このアウトプットを元にITの実装を考えても、その要望にピッタリとあてはまるソフトウェアやソリューションがなかなか見つからず、結局、自前開発でさらに時間とコストがかかってしまう、ということになりかねません。

(なお、この場合のコストは、単に開発コストだけではなく、保守・将来の業務連携用の修正費用などの将来のコストも考える必要があります。システムが十分にドキュメンテーションされていない状況で担当者が転職したりすると、最悪、システムは一切手を付けられなくなり、塩漬けになるリスクもあります。目に見えないコストが莫大にかかる可能性があるのです)

 

ここで、考え方を変えてみるのもよいのではないでしょうか?

 

まず、あるべき姿、現状、ギャップ、解決すべき課題は、今まで同様把握します。

一方で、このような検討を通じて挙げられた課題を、全てでないにしても、かなりの部分を解決出来る企業向けソフトウェアは、既に世の中にどんどん出てきています。

そこで、そのような企業向けソフトウェアの活用を前提に、把握している課題がどのように解決され、あるべき姿を実現できるのかを考えていく方法です。(自社開発は最小限に留めます)

言い換えると、ITの活用方法を、帰納的方法(個別課題積み上げ→解決策探索)から、演繹的方法(解決策定義→個別課題解決の検証)に変えていく発想です。

メリットとしては短時間で(かつ多くの場合、最終的には低コストで)解決策を展開できることが挙げられます。

デメリットとしては必ずしも全ての問題を丁寧に解決できないことが挙げられます。特に現場が強い日本では、現場のニーズへの対応が最優先に考えられてきました。

しかし、世の中の変化が非常に速くなった現代、この方法は現実的な解をスピーディに提供してくれる可能性大です。このメリットを享受するためには、時間とコストをかけて現場最適を究めずに、既存のソフトウェアをいかに使いこなすかという逆に発想で、ITの実装を考えていくことも、検討の余地があるのではないでしょうか?

 

海外企業と比較すると、日本の企業ITシステムの多くは自前開発です。

以前は、業務毎に個別最適化して差別化していたため、このことは強みでした。

しかし世の中の変化が激しくなった現代、個別業務毎のIT最適化は、逆に変更柔軟性欠如、コスト高、業務間連携欠如、等の弱みを生じています。これによって、日本企業の競争力を弱めている面も多いのです。

高付加価値のソフトウェアを活用することで、日本企業が再び強さを取り戻す可能性も高いと思います。

そしてそのためには、IT実装の優先順位の考え方を変えていく必要も、あるのではないかと思います。

 

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『低炭素社会を創るソフトウェア』という講演をしました

この土曜日、日本IBMの天城ホームステッドで『低炭素社会を創るソフトウェア』という演題で講演をしました。

「ん?ソフトウェアで低炭素社会実現?」

ピンと来ないかも、ですね。

 

マニュアルの反復作業を、プログラミングという技術を使って自動化できるのは、言うまでもなくソフトウェアが持っている価値の一面です。

この方法論を活用すると、従来の世の中の仕組みを大きく変えることが出来ます。

ただ当然ながら、従来の業務プロセスをそのままIT化しても、効率は若干よくなるものの、格段に高まることはありません。そしてよく見てみると、世の中にはそのようなIT化が結構あったりします。

従来、手作業前提の業務では必要と考えられていた作業ステップを、IT活用によって自動化することで、その作業ステップ自体をなくしたり、業務プロセス自体をより効率的なものに再設計することで、飛躍的な効率化向上を実現できます。

これは、1990年代に生まれた「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング」(BPR)の考え方そのものですが、この考え方自体は今でも有効です。

 

2007年に総務省が出した情報通信白書では、この点について日米企業の比較をしています。

当調査では、日米企業における業務・組織改革の実施状況の調査結果を掲載しています。合理化・見える化は日本は米国と同水準で成果を挙げているものの、組織・プロセスの変更を伴う改革は、日本は米国に大きく見劣りしているという結果が出ています。

この調査からも分るように、日本では、現行の手作業の業務をそのまま変えずにIT化することで、ある程度の合理化と見える化は実現できているものの、現在の仕組みや組織、業務プロセスに手を付けないために、ITが持つ本来の価値を発揮できていないケースが結構あります。

 

低炭素社会を実現していくためには、現在の仕組みそのものをITが持つ価値を活かして見直し、効率化を図って環境負荷を下げていくことが、一つの解決策になります。

では、そこでソフトウェアは何ができるのでしょうか?

 

ソフトウェアによっては、最適化技術を実装しているものもあります。

例えば、米国のあるメーカーでは、全米をカバーする巨大な配送ネットワークを、最適化ソフトウェアを使ってシミュレーションすることで、顧客納期(=サービスレベル)を維持しつつ、コストを3%削減し、かつCO2排出量も大幅削減する配送ネットワークを設計しました。

この顧客は、当初全米で2カ所に配送センターを持っていましたが、全米で最適な地域に2つの配送センターを増設し、センター同士を環境負荷が小さく大量輸送できる鉄道で結ぶことで、全体のCO2排出量削減・コスト削減・サービスレベル維持の全てを両立しています。

つまり、最適化技術を持つソフトウェアを活用することで、CO2排出量を削減しつつ、コスト削減とサービスレベル維持を両立しているのです。

州によって発電技術が異なるので、州によってkWh当りのCO2排出量は異なりますし、配送センター増設に伴う各種CO2排出量も考慮する等、非常に複雑なパラメータが絡み合っているので、人間が手作業でこのような最適解を導き出すのはまず不可能です。

 

さらに、ソフトウェアは見える化もしてくれます。

例えば、資産管理ソフトウェアでビル全体のCO2排出量をリアルタイムに把握することができます。

具体的には、ビルディング内のIT機器や空調装置をはじめとするあらゆる機器の状況を制御コントローラー経由で監視、集めたデータを資産管理ソフトウェアで分析してリアルタイムに見える化し、CO2排出量の異常値を把握して各種機器を制御(例えばスイッチを切断)したり、全体の傾向を判断してPDCAサイクルを回していくことも可能です。

 

さらに、ソフトウェアを活用することで、私達の働き方が大きく変わります。

例えば、最新のコラボレーション技術を活用すると、自宅でもあたかも会社にいるかのように仕事が可能ですし、テレプレゼンス技術で、お互いに出張をしなくても、あたかも実際に会っているかのように会議をすることも出来ます。

実際、私も自宅で仕事をすることがよくあります。これにより、コストと時間を削減しつつ、CO2排出量も削減できます。何よりも、プライベートの時間も充実します。

ちなみにこの仕組みによって、IBMは全世界で年間90億円の出張経費を削減しています。

 

さて、このように考えると、低炭素社会実現のためには、「人材」「業務」「インフラ」の3つの切り口で考えると分りやすいのではないでしょうか?

■「人材」は、コラボレーション技術等を活用して、いかに環境負荷をかけずに働くか、ということです。

■「業務」は、先程の配送ネットワークの例のように、いかに業務自体の環境負荷を下げるか、ということです。

■「インフラ」は、業務を支えるインフラの環境負荷を下げることです。例えばクラウド技術は、使用率が少ないサーバーを集約することで、ITのムダを大きく削減します。また先のビル全体のCO2排出量の把握もその例です。

 

鳩山さんが

「2020年までに1990年比で温室効果ガス排出量を25%削減する」

という方針を出しています。

実は1990年から2008年まで温室効果ガスは8%増えているので、実際には、2020年までの11年間で33%も削減しなければいけません。これって、すごく大変なことです。

 

一般に世の中では、

「CO2排出量を削減するためには、それに見合ったコスト増が必須」

という議論があります。

確かに、「乾ききった雑巾をこれ以上は絞るのは、もう無理だ」という見方もあるでしょう。

しかし視点を変えてみると、ITを活用することで、従来と全く違う発想でCO2排出量の削減が出来る大きな可能性があるのです。

サービスレベルを維持しつつ、コストを削減し、CO2排出量も削減するのは、確かに容易ではありません。

しかし、この困難なチャレンジを克服し、低炭素社会を実現するにあたって、ソフトウェアが果たす役割は非常に大きいのです。

 

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ブロガーズ・ミーティング@IBM「IBMクラウドのすべて」と、Twitter

昨日行われた日本IBMのクラウドのイベントに合わせて、ブロガーズ・ミーティングが行われました。

ブロガーの方々への昼の事前ブリーフィングの後、13:00からこちらにあるように午後半日の講演セッションが続きました。

IBM本社からは、クラウド事業責任者であるMike Hillが来日し講演しました。

Mikeは、この職に就く前はIBMのCIOとしてIBM社内ITインフラの変革を推進した経歴の持ち主です。IBMでは、このITインフラ変革でクラウド技術を培い、得られた経験を活かしてクラウド事業を通じてお客様に提供しています。

講演中は、『「クラウド・ビジネス」入門』を書かれた林さんがTwitterでリアルタイムに講演の様子を中継されていました。

かく言う私も、講演中に会場の様子をTwitterで中継していましたが、その途中で平野さんと、岩永さんもTwitter経由でお誘いし、ブロガー会議に参加頂くことになりました。

リアルタイム・ツールとしてのTwitterの威力を改めて認識した次第です。

 

18:00からのカクテルパーティで歓談の後、18:30から場所を移し、日本IBMのクラウド事業推進部長の三崎さんやソフトウェア事業クラウド・エバンジェリストの米持さん等も参加して、ブロガー会議を行いました。

当初の予定を超えて1時間半、かなり突っ込んだ議論を行いました。

■ITインフラを自社で持つ余裕がない中堅企業に対して、クラウドは長期的に考えてどのような役割を果たすべきか?

■システムインテグレーターの問題

■パブリッククラウドのセンターを日本国内に持つ必要性(日本IBMが7/30に発表したMCCSは、実は国内にセンターがあります)

■通信インフラ容量と信頼性に関する問題

多くのブロガーが参加して下さったおかげで、非常に建設的な議論が出来ました。

クラウド登場により、現在のITのコスト構造と商流は大きく変革する可能性があります。これにより、現在のIT業界の構造も大きく変わります。

逆説的な言い方になりますが、クラウドでより容易にCPUパワーが獲得できるようになると、ユーザーにとってのITの価値は、CPUパワー獲得から、自身の業務課題の解決に大きく加速してシフトしていきます。

ブロガー会議での議論を通じて、

(1)長期的に見て、現在はIT業界が大きく変革する数十年に一度のターニングポイントにさしかかっていること

(2)今後、高付加価値サービスと高付加価値ソフトウェアが重要な位置付けになってくること

が実感できました。

ところで、私はブロガー会議の司会をしていたため後で気がつきましたが、参加者は会議の最中もTwitterで中継していました。後で見て皆さんの感想がよく分かりました。ここでも、Twitterの新しい可能性を感じました。

 

20:00からは場所を移して、当イベント主催者の打上げに、ブロガー一同も合流し、懇親会を行いました。ここでもクラウドの将来について活発な議論を行いました。

ブロガーズ・ミーティングのよいところは、同じIT業界でも、立場を超えて、まるで学生時代からの仲間のようにつきあいを持てることです。

このようなご縁は大切にしたいと改めて思った一日でもありました。

ご参加頂いたブロガーの皆様、本当にありがとうございました。

 

ところで今回のブロガー会議では、Twitterの威力を思い知りました。

それまで2ヶ月間で合計45件だった私のTwitter投稿数は、この一日だけで30件増えました。

現在のTwitterには、ちょうど1990年代前半のパソコン通信、1990年代後半のWWW、あるいは数年前のブログといった、黎明期における新しいメディアだけが持っている独特の勢いと面白さを感じます。

これから活用していきたいと思います。

ちなみに、私のTwitterはこちらです。(写真は、被り物から真面目なものに変えました)

http://twitter.com/takahisanagai

IBMの最新クラウドソリューション、一堂に会す

ちょっとだけ宣伝が入っています。

 

最近、日本IBMではクラウドに関する様々なソリューションを発表しています。

ここ1ヶ月半に限っても、下記のようなプレスリリースを行っています。

■07/30 IT資源を従量制で提供する新たなパブリック・クラウド・サービス

■07/24 リコーと日本IBM、クラウド・コンピューティング分野で協業

■07/14 エンタープライズ・クラウド稼働環境を製品として提供(IBM CloudBurst)

■06/29 LotusLive Connectionsにより、ソーシャル・ネットワーキング・ソフトウェアをクラウドにまで拡張

■06/23 Webサイトの品質向上とコンプライアンス対応を支援するクラウド・サービス

■06/18 企業内クラウド向けアプリケーション・サーバー管理アプライアンス~アプリケーション配布を10倍効率化~ (WebSphere CloudBurst Appliance)

意外に思われるかもしれませんが、実は上記6つのプレスリリースのうち、私が所属するソフトウェア事業部が主管しているものが5つもあります。

クラウド・コンピューティングが、IBMのソフトウェア事業において、オープン・コンピューティングと同様に非常に重要な柱の一つであることが、これからもお分かりいただけるのではないでしょうか?

 

例えば7/14の発表に対して、こんな記事も書かれています。

07/24 伴大作の木漏れ日:クラウドバーストの衝撃

かなり本質的な部分を見てくださった記事だと思います。

 

さて、明日、日本IBMではクラウドの大きなイベントを行います。

この1ヶ月半で日本IBMが発表してきたクラウドソリューションが一望できるイベントとなっています。

オルタナブロガーの方々も参加予定です。

このイベントは、今後、日本でクラウドソリューションが発展していく上で、一つの節目として語り継がれていくイベントになりうると思います。

申込制のため既に締め切っておりますが、ここで紹介されるソリューションは様々なメディアで紹介されていくことでしょう。

クラウドの今後が気になる方々は、是非ご注目いただければと思います。

ちなみに、ご興味がありましたら、日本IBMのクラウドポータルも是非どうぞ。

企業に眠る宝の山「プライベートクラウド」

クラウド・ビジネスの環境は、もの凄い勢いで進んでいます。

この10日間で、日本IBMも最近、二つの大きな発表をしました。

■3月4日発表:クラウド化したLotusで未開拓市場を掘り起こすIBM

3月4日に行ったLotus Spring Forum 2009で紹介しました。1月に米国で発表された、あのLotusLiveの日本での紹介です。

伝統的にIBMのLotusブランドは、5000人以上の大企業で圧倒的に強いのですが、中小規模の企業は必ずしも強くありませんでした。この市場に、下記ソリューションを提供する予定で、正式には今後順次発表予定です。

LotusLive Meeting: フル機能のWeb会議
LotusLive Engage: オフライン会議支援
LotusLive Notes: Notesクライアントベースの電子メール

しかし、これは既存のLotusソフトウェアビジネスを置換えるモノではありません。

記事にもあるように、大企業では、自社導入で最適化した方が業務改善を図ることができます。

他のSaaS型ビジネス同様、SaaS型のLotusLiveは、早くシステムを導入したいというニーズにお応えするものです。

 

上記で、いわうるSaaSと自社導入の違いにある程度触れていました。

その8日後の下記発表では、両者の違いに本格的に踏み込み、IBMとしての考え方を示しました。

■3月12日発表:プライベートクラウドはコスト削減をもたらす「魔法の杖」――IBM

ここで述べている「プライベートクラウド」とは、自社内のシステムをクラウド化するという考え方です。

これに対して、GoogleやSalesforce.comが提供しているクラウドは「パブリッククラウド」と呼ぶことができます。

この記事では、IBM自身が、TAPというプロジェクトで84%ものコスト削減(100かかっていたものを16にしたということ)を図った例が紹介されています。この記事には紹介されていませんが、TAPはそれまでのIT調達時間が5日間かかっていたものを、1時間へ短縮化しています。

一般に社内のサーバー、実はあまり効率的に活用されていません。

中には、使用率が数%から十数%程度に留まるサーバーも結構あるのです。

これらをクラウド化し、全体最適をすることで、非常に大きなコスト削減が可能です。

そして、それは単にサーバーを集めるだけでは実現しません。

プロビジョニングやサーバーのモニタリング、ポータル等のミドルウェア技術を組合わせることで、初めて実現できます。

企業の中には大きなコスト削減を実現するための宝の山が眠っているのです。

そのカギが、プライベートクラウドです。

 

クラウド・ビジネスは、「ドッグイヤー」どころか、「マウスイヤー」をもはるかに凌ぐスピードで進行中であることを実感します。

【宣伝】Notes 8.5 (Mac用)、日本初生公開

宣伝です。

6月4日(水) 17:30から、Apple Store GinzaでLotus Notes8.5(ベータ版)を日本初生公開します。

オルタナティブ ブロガーの丸山さん
のご講演もあります。

下記はセミナー案内からの抜粋です。

待てない人必見!Notes8.5(ベータ版)日本初生公開@アップルストア
大塚商会とIBMだからできる討論セミナー

既に米国では、ベータ版が公開されているLotus Notes 次期バージョン Lotus Notes 8.5!

今回、大塚商会様、アップル様のご協力で、日本で初めて、実機を使用でデモを交えた、Lotus Notes8.5(Mac用 ベータ版)をご紹介する、限定セミナーを開催致します。

また今回のLotus Notes8.5ではLeopardをサポートすることもあって、IBM Lotus Notes/Dominoユーザーのみならず、Macのビジネスユーザーのみなさんにも、最新技術搭載のグループウェアをご覧いただけることになりました。

Lotus Notesにご興味の方、最新バージョンの情報を待ちきれないお客様、情報収集のお客様などどなたでも歓迎です。お知り合いの方を誘われて、お気軽にお越し下さい。

詳しい情報&参加申込はこちらから。

よろしければ是非どうぞ。

冷凍ギョーザ事件は、トレーサビリティ元年となる契機となるか?

最近のニュースは、いわゆる「冷凍ギョーザ事件」のニュースで一色です。

輸入元の冷凍ギョウザは店から撤去され、中国製加工食品や、はては冷凍食品そのものにも影響が出始めています。

原材料の野菜への農薬散布の問題ではなく、製造工程又は流通工程で高濃度の農薬が入ったらしい、ということも分かりつつあります。

一部では、労使問題が原因で、故意に混入したのでは、との指摘もあったりして、色々な番組が様々な視点でこの仮説を検証しています。

ふりかえってみれば、昔は調達や流通は割と単純で、商品に問題が起こった場合の原因は割と特定しやすかったように思います。

しかしフラット化が進んだ現在、調達や流通がグローバル化し、多くの関係者が関わるようになりました。どこの製造・流通過程で誰が関わったのか、輸入元でも非常に把握しにくくなっているのが現状です。

ましてや、消費者は全く分かりません。

 

これを解決する手段の一つが、いわゆるトレーサビリティです。

商品の最小管理単位(SKU: Stock Keeping Unit)一つ一つにユニークな識別番号を割振り、製造工程と流通工程で誰が何をしたか一目瞭然に分かるようにする仕組みです。

仕入・製造・加工・流通のそれぞれの過程を、商品が通過する際に、それぞれの過程を通過したこととその作業責任者のデータをデータベースに記録し、必要な時にアクセスできるようにします。

さらに、消費者にもインターネット等を経由して、このデータに店頭などからアクセスし、今買おうとしている商品がどのように生産されたのか、分かるようにします。

言うまでもなく、この仕組みを構築するには莫大なコストがかかります。

しかしながら、冷凍ギョーザ事件や過去の商品偽装に関する一連の報道を見ていると、トレーサビリティを持たないことにより発生するコスト(不買運動・風評等による企業価値の低下等)と、トレーサビリティの開発・運用コストを比較すると、もはや前者のコストが後者のコストを上回りつつあるのではないか、とも感じます。

 

なぜ、最近になって、このようなことが起こるのでしょうか?

先に述べたように、これは、現在売られている商品の製造・流通過程が消費者にとって全く見えないことから起こっています。

「情報の非対称性」という言葉がありますが、かつては企業側が消費者と比べて圧倒的に多くの情報量を持つことで、企業側は消費者よりも優位に立つことが出来ました。

一連の偽装事件や毒入りギョーザ事件を見ていると、この「情報の非対称性」はいまだに存在しているように見えます。

ただ異なるのは、昔の多くの消費者は「情報の非対称性」の存在そのものをあまり意識できなかったのに対して、現在の多くの消費者は「情報の非対称性」の存在と、その背後に隠された情報と隠された行動に気付き、企業にその解決を迫っている点です。

そしてその消費者の要望に応えられない企業に対して、リスクを避けようとする消費者は「商品を買わない」という力を行使します。その結果、最悪の場合は、そのような企業は市場から退場させられることになります。

従って、一つの考え方として、トレーサビリティを、『「情報の非対称性」を徹底的に解消することによって、逆に企業が消費者の信頼を得るための手段』として位置づけると、その価値がより分かり易くなるように思います。

しかしながら、トレーサビリティはあくまで「手段」であり、解決策ではありません。

トレーサビリティを実現するためには徹底的な情報開示が求められます。それに応えられる企業文化や従業員の姿勢は大前提になります。

どの企業でもできることではありません。また、企業の性格からして、必ずしも必要がない企業もあるでしょう。

しかし時代は確実に顧客中心の世界に移行していきます。

そして、消費者ビジネスにおいて、中心となる消費者が情報の非対称性の解消を企業に求めるのであれば、消費者に対して商品を届けるビジネスを行っている企業にとって、トレーサビリティは避けて通れないものである、とも言えそうです。

このように考えていくと、「冷凍ギョウザ事件」は、トレーサビリティの重要性が世の中に広く認知され、今年が「トレーサビリティ元年」になる契機となるかもしれません。

80年前のソリューション・ビジネス

まだコンピュータというものが姿かたちもなく、パンチカードでデータを記録していた、80年前の頃の話です。

先日ご紹介したケビン・メイニー著の「貫徹の志 トーマス・ワトソン・シニア―IBMを発明した男」を読んでいますが、この時代から、お客様が意識していない問題をワトソンがいかに着目し、周囲の反対をモノともせずに執念深く取り組み、克服していったかが描かれています。

これはまさに先進ソリューションの取り組みの一面をあらわしています。

以下、抜粋しながら紹介します。

統計機械は類似製品がなく、産業界に取り入れられてから日が浅かったため、1920年代には新しいアイディアを試みる余地が多く残されていた。このような理由から、ワトソンは、いち早く「データ処理」という呼称を使い、この分野への関心を深めていった。

この状況は、現在のIT業界と酷似しています。特にインターネットが本格的に普及を始めた10年前からは、消費者まで含んで様々なアイディアを試みる可能性が広がっています。

ワトソンは、統計機械を銀行に納めたいと考えていた。銀行では窓口係が取引内容を紙に手書きしており、事務担当者はそれを判読して記録しなければならなかった。それなら顧客接点での処理をオートメーション化すればよいではないか。ワトソンは各窓口に機械を設置して、取引内容をパンチカードに打ち込めるような仕組みを提案した。

このアイディアでもワトソンは市場や技術の面で時代を先取りしていた。ある銀行の頭取からは、窓口担当者が取引を入力するのは時間がかかりすぎると言われ、IBM社内の技術者は、納得のいくコストで銀行向けシステムを開発できる自信がないようだった。それでもワトソンはひるまなかった。

お客様自身が認識していない業務上の課題に取り組んでいたということですが、この姿勢は現在のIT業界も大いに見習うべきと思います。

お客様がビジネスの出発点であることは今も80年前も変わっていませんが、そのお客様のビジネス上の課題を分析し、我々であればこのように解決できる、という視点と、その提案をお客様がご理解いただけるようにお伝えする重要さは、現在でも全く変わっていません。

ともすれば、我々は解決策をお客様に求めますが、これは必ずしも正しくはないように思います。我々は、お客様にビジネス上の問題点を求め、その解決策は我々が考えるべきなのではないでしょうか?

…..「だれ一人として賛成してくれないが、それでも私は自分が正しいと考えている。その気になりさえすれば、すぐにでも銀行向けの事業に参入できるはずだ。ぜひそうしなくてはならない」と語っている。IBMが銀行向けシステムを完成させたのは、それから10年近い歳月が経過した後だった。

この執念深さこそ、まさにワトソンの真骨頂ですね。

最先端のソリューション・ビジネスのあるべき姿の原型を、垣間見たような気がします。

ちなみに、銀行向けシステムは1934年に商用化、しかし主要銀行は導入への動きが鈍くあまり普及しなかったそうです。

当初は懐疑的なお客様にもひるまずに開発を続けたものの、市場で本格普及するためのカズムを超える仕組みが作れなかった、という反面教師的な材料も、同時に提供してくれている題材なのかもしれませんね。

ニュー・ミドルマンと、ソリューション・ビジネス

昨日の田坂広志さんの講演の話の続きです。

田坂さんの語る言葉は、同じ話が繰り返し形を変えて出てくることが多いのですが、そのたびに常に新しい問題意識が喚起されます。

昨日も様々なお話がありましたが、その中でニュー・ミドルマンの話がありました。

ネット革命が本格化してきた1996年頃のシリコンバレーでは、以下の言葉が言われていました。

"Middleman will die."

インターネット普及で中抜き現象が起こり、中間業者(ミドルマン)は全て死に絶えるであろう、ということです。

そのわずか3年後、1999年頃のシリコンバレーで、田坂さんは以下の言葉を聞いたそうです。

"Middleman never dies."

古い中間業者が淘汰され、「ニュー・ミドルマン」と言うべき新しい中間業者が生まれてきた、ということです。

ただ、古い中間業者とニュー・ミドルマンは、決定的に異なる点があります。前者は企業側を見ていて「販売代理」をしているのに対し、後者は顧客側を見ていて「購買代理」をしている、という点です。

業界によって状況は異なりますが、将来的には全ての業種は購買代理型ビジネスに変わってきます。それが早いか遅いかの違いはあれ、購買支援のサービスを提供しない企業は、お客様からいずれバイパスされることになります。

また、購買代理型ビジネスではゲートウェイ戦略が最強の戦略になります。このような中で商品を提供する企業はどうすべきでしょうか?

田坂さんは、「ライフスタイルの提案が必要」とし、新技術・新商品から、商品・サービスを組み合わせることで「高付加価値化」への進化を図らなければならない、そのためには「商品知識」ではなく、「顧客知識」が重要である、と説いています。

 

さて、IT業界は購買代理型ビジネスに進化しているのでしょうか?

急速にそのようになっている部分もありますが、全てシフトしているかというと、必ずしもそうではないように思います。

「商品知識ではなく顧客知識が重要」、これはまさにソリューション・ビジネスです。しかし、「ソリューション・ビジネス」という言葉がキーワードになること自体、それがIT業界では新しい概念で今まで当たり前には提供できていなかった証かもしれません。

そう言えば、私が初めて「ソリューション」という言葉を聞いたのは1980年代、米国IBMが今までお客様毎に構築していたアプリケーションまでを含めたシステムを汎用化する概念をまとめていた頃、海の向こう側から聞こえてきました。それ以来、常にソリューションと関わってきたように思います。

一方で、お客様毎の真の問題を解決できるソリューションを提供できるベンダーは、長い目で見れば必ず伸びていきますし(「逆は必ずしも真ではない」のがまた面白いところではありますが)、市場はそのように顧客の問題を解決しようとする企業を永続できるように選別する仕組みを持っています。

そもそも、経済行為自体が、相手が困っている課題を解決することで対価を与えられるものですので、ソリューション・ビジネスは経済の基本そのものです。

従って我々は、お客様を理解し続ける努力を、常に継続していく必要がある、と言うことですね。(こう書くと、あまりにも当たり前の結論ですが)

ブロガーズ・ミーティング @ ジャストシステム

昨日午後、ジャストシステムで行われたブロガーズ・ミーティングに参加しました。

最新のATOK及びxfyの紹介とデモが中心でした。

ATOKというと、「カナ漢字変換」を連想してしまいますが、この認識は改める必要がありそうです。単なるカナ漢字変換ではなく、ユーザーの意思を読み取るプロセッサーへと進化しようとしています。

詳しくは吉川さんのブログの「ATOKは何でも知っている!~ブロガーズ・ミーティング@ジャストシステム」に詳しく書かれていますので、ご一読を。

ユーザーの意思を読み取るまでに進化したATOKの技術が、ネット上で各種サービスと結びつくことで新しいビジネスモデルを構築できれば、様々な可能性が生まれそうです。

もう一つのxfy。
昨年、弊社で発表した世界唯一のハイブリッドXMLデータベース"DB2 9 (Viper)"をサポートしていただいています。

xfyは、標準的なXMLボキャブラリやユーザー定義ボキャブラリを使用して、XMLベースのアプリケーションを開発できるものです。私は、世の中にあるあらゆるXML文書に対して、アプリケーション・レベルでユーザーのフロントエンドで統合しようとする試みである、と理解しました。

確かに、基幹システムでXMLデータをDBやミドルウェアでの扱いについては、ITベンダーは様々な製品を提供していますが、XMLを扱うアプリケーション部分は、業界別・用途別アプリケーションに委ねられてきた面があります。ここに、ジャストシステムの技術を投入して統合していくというビジョンは面白いと思います。

今後の課題は、「どのように各業界の中で普及を図っていくか? ⇒業界毎に深く入っていく方法」「そのためのエコシステムをどのように作っていくか? ⇒各業界で活発にxfyを活用したくなる仕掛け作り」の2点であると感じました。

最後には、浮川社長、浮川専務も参加され、夕食会。経営陣自らが持っている「誰にもできない技術」にかける思いの強さに、感銘しました。

ATOKもxfyも、尖がっている技術的発想を、骨太なビジネスモデルに結びつけることで、日本だけではなく世界に大きく飛躍する可能性を秘めていると感じました。

今回のミーティングは、オルタナティブ・ブログ「ばっくどろっぷ非常勤日記」の竹村譲さんがセットしていただきました。 プロフィールにもある通り、竹村さんはジャストシステム社が推進する「xfyプロジェクト」に参画中とのことです。

竹村さんには今回初めてお会いしましたが、「ゼロハリ」のお名前でPC Waveの記事を書かれていた頃から私にとって雲の上の方でした。改めて、ブログを始めてから、世界が広がったように感じます。

本格的普及期に入ったCRM

昨日(8/6)の日本経済新聞を改めて読み直すと、CRM (Customer Relationship Marketing)が本格的な普及期に入ったと実感します。

—(以下、引用)—-

記事名 「売り手の新発想(3)売ってからが商売(消費をつかむ)」

  • パソコンメーカーの例:コールセンターによるサポート強化で、再購入率を3.4%から59%へ改善
  • 「新規顧客の開拓経費は既存客の再購入にかける経費の八倍かかる」との調査(顧客21,000人の購買状況と利行費用の分析)
  • 美容サロンの例:せっかく新規客を開拓しても「一年後の離脱率は約二五%が現実」。声なき声を反映できずに顧客を逃がす例が少なくない中、満足度調査ではなく「不」満足調査を実施。売上は3年で倍増。新規顧客開拓は一切行わず、売上8割を6000名の固定客が占める
  • 街の電器店の例:昭和40年代に開発された8000戸の団地の4割を占める3300戸を顧客として抱える。高齢化した住民が大事にするのは価格勝負の量販店ではなく、すぐに駆けつけてくれる安心感
  • 紳士服大手の例:20年以上トップを続け毎年2億円以上を売り続ける営業マンの「宝は自分を指名して二回以上来店してくれた千五百人の顧客台帳」

記事名 「苦情・相談が急増、金融機関、顧客の声活用専門部署」

  • 金融機関の間で、苦情を法令順守の徹底に生かしたり、商品開発やサービス向上に役立てる取り組みが広がってきた。「苦情は耳の痛い話ではなく宝の山」
  • 保険会社の例:「お客さまの声統括部」を新設。苦情の原因の分析や業務改善策を経営会議に提言、四半期ごとに公表して規律
  • 銀行の例:「品質管理部」を立ち上げ。顧客の要望や苦情を集約。担当部署や経営陣に伝えて改善を促す

—(以上、引用)—-

私自身、CRMビジネスに関わり始めてから10年近く経過していますが、

  1. 新規顧客獲得はコストがかかる。既存顧客維持が収益に貢献
  2. 「個」客への対応がますます重要になる
  3. 顧客の声の活用が重要

というのは、1990年代後半から言われて続けてきたことです。

顧客の問題解決がビジネスの出発点であることは、時代がどのように変わっても、ビジネスの基本だと思います。

2002-2003年頃には「CRMは下火になった」とも言われた時期もありましたが、実際には消費者が洗練化され、「物量戦」と「安売り」だけの勝負では収益を確保できない現在、顧客の心を掴むためのCRMはますます重要になってきています。

最近の記事は、CRMがやっと本格的普及期に入ったことを示しているように思います。

一方で、CRMという「記号」は、既にかなり消費し尽くされています。

実際、上記の記事でもCRMという言葉は出てきません。しかしながら、CRMという概念を代替するような適切な言葉は、なかなか見当たりません。

ともすると「3文字言葉は、ITを売るためのバズワードに過ぎない」というご指摘もありますが、先日もこちらで書きましたように、「消費される物になるためには、物は記号にならなくてはならない」ということも事実であり、一般には理解しにくいITのビジネスでの活動を分かり易く伝える効能があることも確かです。

強いて言うと、現在代替しうる言葉は、「顧客中心主義」でしょうか? しかしながら、この言葉も単に「お客様は神様である」という精神論に陥ってしまいビジネスモデルの議論に発展しない危険性もあります。

今後、CRMという言葉を使い続けるかどうか、ということも、IT業界の課題かもしれません。

1999年、IBMのソリューション戦略の転換

現在IBMはソリューションに力を入れていますが、ソリューション・ビジネスが現在の形になった大きな節目は1999年でした。今回はそのことを書きます。

1990年代、IBMはアプリケーションに積極的に自社開発していました。自己紹介で書きましたように、当時は私もアプリケーション製品の企画・プリセールス・開発等を担当し、お客様のSIプロジェクトにどっぷり入ったりしていました。

当初からIBMはソリューション・ビジネスを展開していましたが、1990年代後半からさらに力を入れ始めました。私はこの頃からソリューション・ビジネスのマーケティングチームに入りました。

IBMのバリュー・プロポジションは、「サービスやコンサルテーション等の上流からハード・ソフト等、全てを揃えて、エンド・トゥ・エンドでソリューションとして統合できる強み」です。

統合ソリューション構築にはビジネス・アプリケーションの組込みが必須ですが、IBM自身が自社開発アプリケーションを持つことで、案件毎にビジネス・アプリケーションに強いベンダー様と競合する場面が増えました。また、お客様も特定のビジネス・アプリケーションを指定することが多くなりました。

そこで1999年、IBMは全世界で方針転換をしました。

「今後IBMは、ビジネス・アプリケーション分野は業務系に強いアプリケーション・ベンダー様とパートナーシップを組み、IBMの製品・サービスと組合わせて、お客様にソリューションをお届けする」

つまり、アプリケーションは自前主義に拘らずに、それまで競合していた会社とパートナーシップを組む、というものです。

ソリューション・ビジネスでは、IBMのビジネスの大部分はハードウェア、ミドルウェア、コンサルテーション、関連サービスから生まれます。ビジネス・アプリケーションはソリューションの核で極めて重要な部分ですが、この市場は競合が激しく、かつ全業種に渡って幅広いアプリケーションをカバーする必要があります。

ビジネス・アプリケーション・ベンダー様との競合を解消し、協業することで、より幅広いソリューションを提供できるようになりました。

現在、ビジネス・アプリケーション・ベンダー様は、IBMにとって、統合ソリューションをお客様に提供する上で極めて重要なパートナーとなっています。

一方で、多くのビジネス・アプリケーション・ベンダー様にとっても、IBMは、自社製品を補完するサービスやプラットホームを提供してお客様との関係を構築する重要なパートナーと考えていただけるようになりました。

それまでビジネス・アプリケーションを開発していたIBMのソフトウェア開発部門は、よりIBMの強みを発揮できるミドルウェア市場にフォーカスしています。

「ソリューション市場」というエコシステム全体を考えた場合、それぞれの強みに応じて棲み分けを行うという戦略転換は現実的だったように思います。

尚、それまでIBMが開発・販売していた自社アプリケーション製品は保守を継続しました。また現在でも、お客様の業種によってはご要望に応じてアプリケーションを開発・販売している場合もあります。例えば、ホームページビルダーは2005年12月にはバージョン10を出荷しました。

お客様のご要望に応えるために立てている戦略ですので、この辺りは結構柔軟なようです。