当初の戦略的狙いと異なる結果になった場合、どうするか?


5年以上前に当ブログで、竹内薫著「99.9%は仮説 思い込みで判断しないための考え方」という本をご紹介しました。

本書は、「飛行機がなぜ飛ぶのか根本的な原理は実は必ずしも分かっていない。経験則に拠っている」という話から始まり、科学の基本のほとんど全ては仮説であり、必ずしも根本的な原理が明快に分かっている訳ではない、ということを分かり易く書いています。

本書のp.135に、科学哲学者のカール・ポパー(1902-1994)の言葉として、下記の記述があります。

…ポパーはそれら(科学と、疑似科学・宗教)を区別する方法として、「反認可能性」をあげたわけなんです。「科学は、常に反証できるものである」とはっきり定義したのです。

 ひらたくいえば、理論に反する実験や観察がでてきたらその理論はダメだということを潔く認める、それが科学だっていうんです。

 それに対して、たとえば疑似科学や宗教とかいわれるものは反証可能ではない。ポパーはそう考えました。

 たとえば、ある現象が起きたとしましょう。そして、「これは理論に一致しないじゃありませんか」といっても、「いやいや、実はそれでもかまわないんですよ」というように常に言い訳をしちゃうんですね。

 

科学同様、仮説検証プロセスは、ビジネスの基本です。

そこで、ポパーの言葉をビジネスの世界に置き換えると、

戦略意図に反する結果がでてきたら、その戦略は修正が必要であることを潔く認める。それがビジネスだ

と考えられるのではないでしょうか?

逆に、疑似科学や宗教のように、ビジネスで当初の意図と異なる結果が出たとしても無視したりかまわないと考えていたとしたら、….戦略は進化しないことになります。

 

たとえば、

「新製品発売6ヶ月後に予定していた売上に達成していない。当初の戦略がおかしいのではないか?」

「確かにまだ売上は上がっていません。でも引き合いは順調です。問題ありません」

よく見られるやりとりです。

ただ、引き合いが順調なのになぜ当初の売上が達成できないのか?当初の戦略のどこがうまく効果を上げていないのか?本来、考えなければいけないのはそのような課題です。「問題ありません」と言い切ってしまうと、そのような課題は見えず、当初の戦略を進化させる機会を逸することになります。

 

ビジネスの基本である仮説検証を実行する際に求められるのも、ポパーの考え方になのでしょう。