「部下のやる気が出ない」という発想は、そもそも間違い


こんなお悩みを抱える経営者やマネージャー、少なくありません。

「ウチの社員、やる気がなかなか出ないんだよね」
「起業家の発想で事業に取り組んで欲しいんだが。結局オレが指示しないと何もしない」

しかしこの発想は、そもそも間違いなのです。

 

「やる気」とは、外部から与えられるものではありません。
自分の内部から沸き上がってくるものです。

外部から与えられるモチベーションを「外発的動機付け」といいます。
自分の内側から沸き上がるモチベーションを「内発的動機付け」といいます。

腹ペコのオットセイが飼育係が持つ魚を目当てに、前ビレで拍手したり観衆に手を振ったり、という曲芸をやるのが、外発的動機付けです。餌が目当てなので、餌がなくなると曲芸をやめます。

一方で猿にパズルを与えると、何も報酬を与えないのに、熱心に楽しそうにパズル解きに取り組みます。心理学者のバリー・ハーロウはこの「自ら学びやる」という現象を内発的動機付けと名付けました。

 

では外発的動機付け(=報酬)で内発的動機付けがどう変わるのでしょうか?心理学者のデシは学生を2グループに分けて、パズル解きの実験をしました。

報酬を与えたグループ(=外発的動機付けチーム)は、実験が終わるとパズル解きをやめました。
報酬を与えなかったグループ(=内発的動機付けチーム)は、実験が終わってもパズル解きが「面白い」と思って続けました。

前者のチームは外発的動機付けのおかげで、パズル解きの面白さ(=内発的動機付け)を感じなくなってしまったのです。

 

人は誰からも指図されず自分で行動を選べる時、活き活きと行動します。
人は「自律性を持ちたい」と思っているからです。

自律性とは、自分の行動を自分で決めることです。
外発的動機付けは自律性を弱めます。「誰かに統制されている」という感覚になり、「自分でこの行動を選んだ」という感覚が弱まり、内発的動機付けも弱まるのです。

 

デシはさらに追加実験を二つ行いました。

「パズルが解けないと罰する」という脅し文句を使ってみると効果があり、パズル解きは順調に進みました。しかしパズルを楽しむ感覚はすっかり消滅しました。(人に圧力をかけるという点で仕事の目標押しつけ・締切設定・監視も「脅し」の一種です)

さらに二人一組でパズル解きを行い、相手と競争させてみたところ、内発的動機付けが弱まってしまいました。

報酬・脅し・目標設定・監視・競争で、内発的動機付けは弱まったり、消滅してしまう、ということです。

人は自らが行動を選択することで、その行動に意味を感じて納得します。

選択の機会が、内発的動機付けを高めるのです。

世の中の新規事業を立ち上げる人たちは例外なく、「自分でこれをやりたい」という強い想い(=内発的動機付け)を持って事業を立ち上げています。

「ボスに言われたからこれをやらなければ…」と新事業を立ち上げて成功した人は、私は寡聞にして知りません。

私もクライアント企業様をご支援する際には、様々な方法で参加メンバーの内発的動機付けを引き出す工夫をしています。

 

「オレは部下をオットセイだと思っていないし、餌で釣っていない」

こう思う方もいるかもしれません。

しかし悪気はまったくないのにいつの間にか部下の内発的動機付けを殺しているマネージャーや経営者は、決して少なくありません。

 

あなたは部下の内発的動機付けを、本当に尊重し育んでいるでしょうか?

 

 

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