永井孝尚ブログ

ブログ一覧

「100日後に死ぬワニ」は「みんなのブランド」になり、そして批判された

(写真は楽天の100ワニコレクションより)

Twitterで連載さた4コマ漫画「100日後に死ぬワニ」が大人気になり、そして炎上しました。

ワニの何げない日常を描いた4コマ漫画ですが、連載第1回目のコマ下の欄外にはこんな文字が。

「死ぬまで99日」

これが毎日カウントダウンしていきます。大人気になり、3月20日に最終回を迎え、ワニは死んでしまいました。
作者のきくちゆうきさんのフォロワー数はなんと220万人に。多くの人が「泣いた」「感動した」「ありがとう」とコメントしました。

しかし最終回が終わると、「書籍化決定、映画化決定、グッズ・イベント」などが矢継ぎ早に発表され、楽天でも「100ワニコレクション」のショップが開店しました。

すると今度は批判が集まりました。
「広告代理店が関わっていたのではないか?」「全部仕組んでいたのではないか?」と言われ、Twitterのトレンドに「電通案件」というタグもランクイン。ただし実際には電通は関わっていないそうですが。

ここまで批判が拡がったのは、「100日後に死ぬワニ」が、ブランドとしてあまりにも成功してしまったからだと思います。

成功したブランドは企業の手を離れます。

やや古い話ですが有名な事例もあります。1985年、ペプシがシェア争いで急追してきたため、コカ・コーラは従来のコークを一新した「ニューコーク」を発売しました。すると消費者は猛反発。不買運動まで起こりました。結果、ニューコークは3ヶ月で市場から撤収することになりました。

米国ではコカ・コーラは「幸せの象徴」です。米国の消費者は深い愛着を感じていました。ニューコークへの変更は、一方的に「幸せの象徴」を取り上げられる裏切りを意味していたのです。

成功してしまうと、企業の都合でブランドをコントロールできなくなってしまうということです。
しかも現代では消費者の反応はSNSで一気に拡がり、コントロール不能になります。
企業ができるのは、自社の行動をブランドのミッションに一致させることだけです。

「100日後に死ぬワニ」は「100日後、どうなるんだろう?」という読者を惹きつけ、最後に多くの人に感動を与え、大成功したブランドに育ちました。

最も集中が集まるこのタイミングで販促をかけるのは、一見するとマーケティングの王道に思えます。

しかし大きく成功してしまい既に自分の手を離れているブランドの場合、これは悪手になることがあります。その行動が、消費者の心の中にあるブランドと一致したものなのか、一手間かけて考える必要があるのです。

あからさまにグッズの告知をせずに、感動の余韻が収まったタイミングを見計らって、追悼イベント→ショップ開店、という流れで告知するようにすれば、ここまで批判されることはなかったかもしれません。

 

■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちへ。

Facebookページでも、色々な情報がご覧になれます。

 

 

最終回の夜学永井塾・第11回「現代のよい会社とは何か?」を動画配信で行いました

昨日は最終回となる第11回の夜学・永井塾

最近のトップの不祥事を見ると、カリスマリーダーに頼るのも問題がありそうですね。
経営学者ジム・コリンズが、長期低迷後大きく飛躍し繁栄した米国企業11社を調査したところ、カリスマリーダーが飛躍のきっかけになった企業はゼロでした。
むしろ就任時に「彼で大丈夫か?」と心配されるほど謙虚でおとなしいトップが飛躍を実現していました。彼らは「よい企業」を作っていたのです。

また米国のよい企業と日本企業のよい企業には、共通している点もあれば、異なる点もあります。

さらに欧米では「本当のよい企業とは何だろう?」という問題意識があり、CSVやSDGsなどの考え方も生まれています。

そこで最終回の夜学・永井塾では「企業経営論 現代のよい会社とは何か?」というテーマで、下記をテキストに学んでいきました。

「エクセレントカンパニー」(トム・ピータース/ロバート・ウォーターマン著)
「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」(ジム・コリンズ著)
「ビジョナリー・カンパニー2 – 飛躍の法則」(ジム・コリンズ著)
「the four – GAFA」(スコット・ギャロウェイ著)
「日本の優秀企業研究」(新原 浩朗著)

今回は最終回なので会場で行いたかったのですが、コロナウィルスの影響を考えて、動画配信でお送りしました。

11回の夜学・永井塾にお付き合いをいただき、有り難うございました。
朝活・永井塾は続けていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 

青臭く考え、泥臭く仕事をしよう

マイケル・ポーターが2011年に提唱したCSV (Creating Shared Value: 共有価値の創造)という考え方があります。

企業の活動が、地球環境破壊や社会問題(貧困層搾取)など大きな問題を生み出しています。そこで社会課題の解決と企業としての経済的価値の両立を図ろうという考え方が、CSVです。

CSVの流れを受け、2015年国連サミットでSDGs (Sustainable Development Goal: 持続可能な達成目標)が採択されました。「貧困をなくす」「飢餓をゼロにする」「ジェンダー平等を実現」「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」といった17の目標に対して、169のターゲット・244の指標が決められ、2030年達成を目指すものです。

アメリカ先住民の格言に「地球は先祖からの相続品ではなく、子供たちからの借り物である」という考え方があります。
CSVもSDGsもこの考え方を具体化したものです。

一方で、日本ではCSVやSDGsに対する典型的な反応があります。

■一つは「日本では昔から近江商人の『売り手よし、買い手よし、世間よし』という『三方よし』の考え方がある。別に新しい考え方じゃない」

これはCSVやSDGsへの理解不足から来る誤解です。
100年以上前からある「三方よし」の考え方は素晴らしいものですが、世界はさらに進化しています。

まず問われているのは、自社だけでなく、調達先を含むエコシステム全体です。調達先で弱き立場の人を搾取することも問題になります。
そして「世間よし」は現代だけでなく、未来も含みます。

加えて、具体的なコミットメントが求められています。
たとえばマイクロソフトは「カーボン・ネガティブ」を宣言し、1975年の創業以来マイクロソフトが排出したCO2を2050年までに全て回収するとしています。

もはや「三方よし」だけでは、かなりの周回遅れが否めません。

もう一つの典型的な反応は「欧米ではきれい事をいっているけど、金儲けの下心があるんでしょ?」

これもやや甘い見方かもしれません。
底流に流れているのは「社会課題をビジネスにして収益化しよう」という、欧米流のしたたかな問題意識です。

CSVを提唱したマイケル・ポーターは、日本企業に対して日経ビジネス2020年1月9日号の取材で、このように述べています。

「第2次世界大戦後の日本企業の活動は、CSVの典型だ。当時の日本企業は国を再建するためにビジネスを展開していた。しかし現代の日本企業は、新エネルギーやリサイクルには取り組み始めキャッチアップしているCSVの初期段階である。もっと多くの日本のビジネスパーソンがCSVに目を向けるべきだ」

ポーターが指摘しているように、戦後の日本企業の創業者たちは「事業を通じて世に貢献したい」という強い思いがあり、戦略的な考え方をしてました。しかしこの姿勢は、バブル期を通じて日本企業から失われてしまいました。

今から60年以上前の1958年、セオドア・レビットはこう述べていました。

突き詰めていくと、企業の責任は二つだけに絞られる。
誠実さや善意を忘れないなど日頃の礼節を守ることと、利益を追求することである。

私たち日本人は、色々なことを知りすぎて、大人になりすぎているのではないでしょうか?
もっと青臭く考え、泥臭く目の前の仕事に取り組んでみてもいいのではないかな、と思います。

 

■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちへ。

Facebookページでも、色々な情報がご覧になれます。

 

 

この状況が1年続く前提で、今こそ変革を実行せよ

安倍首相が「新型肺炎拡大を防ぐには、この1〜2週間が極めて重要」と会見して小中学校は休校、様々なイベントが中止・延期、企業は急遽在宅勤務に切り換えるなど、厳しい状況が続いています。

安倍首相の2月28日の会見から、10日間が過ぎました。その後、中国の新規感染者数減少というよいニュースもある一方で、国内では自粛モードが続き株価下落、イタリア・イラン・韓国・米国で感染拡大、ついに昨日は安倍首相が「歴史的緊急事態」に指定すると表明するなど、終息の気配は見えません。

多くの人は「本当に3月でこの状況が終息するのか?」と薄々感じ始めているのではないでしょうか?

大前研一さんも、YouTubeのBBTビジネスチャンネルで、こうおっしゃっています。

「日本政府は『自粛しろ』というが、『今から自粛しなくてもいい』とは言わないし、言えない。
 三宅島も3日間の噴火があった時に島民を避難させたが、3年間帰れなかった

意思決定する立場にある多くの方は「どうすればいいのか?」とお考えなのではないかと思います。

 

いま必要なことは、最悪な状況を想定した上で、ポジティブに行動することだと思います。

まず最悪の状況の想定。

今の状況は3月一杯でなく、あえて「来年の年明けまで1年間続く」と想定してみます。(しつこいようですが、あくまで最悪の状況の想定です)

そして、そう考えた上で、どのようにすべきか、です。

セオドア・レビット著「マーケティング論」に、1974年にレビットが執筆した「原材料の不足を逆手に取ったマーケティング」という論文が掲載されています。当時は第1次オイルショックで様々な原材料の供給が切迫する、という危機でした。やや長いですが、引用します。

–(以下、引用)—

すべての買い手が品不足に悩まされ、その状態が長く続くだろうと予想した場合には、メーカーにとっては積年の課題を解決する格好のチャンスだといえる。製品ラインを整理する、利益率の高い製品の販売に注力する、製品や原材料を刷新する、新規顧客を開拓する、といった取り組みをすべき時が訪れたのだ。

…最盛期を過ぎた製品を「安楽死」させようとすれば、根強い反発が避けられない。成長の原動力として企業に貢献した製品ラインを冷酷に見捨てるのは、いったいどういう神経か、というわけだ。そのうえ営業部門も、「お客様はこの製品の存続を望んでいる」などと強く反対する。

…このような時こそ「かつての主力製品」を打ち切るまたとないチャンスである。「原材料が手に入らない」といった説明を、顧客は理解してくれる。

…昔ながらの流儀が通用しなくなると、変革はいとも容易に進む。慢性的な品不足とインフレは、そのような機会をももたらす。…古いやり方が通用しなくなり、ある種の空白が生じたような場合には、新しい発想を取り入れる理想的な環境が整ったといえる。

…好業績の陰で温存されていた、コストのかさむオペレーションや業務手順の数力を、この機に取り除いてしまおう。

…人間の営みには潮時というものがある。うまく満ち潮に乗れば、素晴らしい結果が得られるだろう。

–(以上、引用)—

当時のレビットの洞察は、今の私たちに大きなヒントを与えてくれます。

多くの日本企業は「変革をする」と言ってきました。
しかし様々な抵抗に遭ってなかなか変革を実行できませんでした。

今回の新型肺炎を前向きに捉えれば、今後を見据えて大きな変革を断行する絶好のチャンスです。ちょっと考えただけでも、今までなかなか出来なかったこと色々なことができます。

・働き方改革を一気に進めて、無駄な業務を洗い出して徹底的に削減し、無駄な会議や打合せも全廃する
・在宅勤務に全面的に移行し、仕事とプライベートの両立を図っていく
・まったく新しい管理方法を試行・導入する
・ネットに移行できる業務を全てネットに移行することにより、利便性向上とコスト削減を一気に進める
・日頃は仕事が忙しくスキルアップの時間が取れない社員に、スキル向上の機会を提供する

様々なビジネス活動を停止せざるを得ない今こそ、変革を実行する最高のチャンスではないでしょうか?

 

■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちへ。

Facebookページでも、色々な情報がご覧になれます。

 

 

2020-03-10 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

朝活・永井塾 第37回「顧客体験を見える化する」を動画配信しました

昨日3月4日は、第37回の朝活・永井塾。テーマは「顧客体験を見える化する」でした。

新型肺炎の影響を考えて、今回は動画配信のみにしました。

商品やサービスの酷いトラブルを経験をしたという方、多いのではないでしょうか?
しかし企業側は、そんな状況を全く知らないことも多いのです。これは自社に置き換えると、とても怖いことです。

企業の収益は、顧客体験によって大きく左右されます。
必要なことは、顧客を見える化し、顧客に不快な思いをさせず、常に顧客から学び続けることです。

そこで今回は下記をテキストに使い、いかに顧客を見える化し顧客満足を高めるかを考えていきました。

「顧客体験の教科書」(ジョン・グッドマン著)
「マッピングエクスペリエンス」(ジェームズ・カールバック著)
「真実の瞬間」(ヤン カールソン著)
「サービス・イノベーションの理論と方法」(近藤隆雄著)
「ラブロック&ウィルツのサービス・マーケティング」(クリストファー・ラブロック著)

永井塾ではいつも申し込まれた皆様に動画配信をしています。
今回もこんな感じの動画(1時間)を配信しました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は4月8日(水)。テーマは「全てのビジネスはサービスである 〜 サービス・ドミナント・ロジックの世界」です。

詳しくはメルマガでご案内していますので、参加希望の方はメルマガにご登録いただければ幸いです。ご参加をお待ちしております。