永井孝尚ブログ

ブログ一覧

「どうしても他人のことが気になってしまうんです」

「自分は、どうしても他人のことばかり気になってしまうんです。永井さんっていつもマイペースですね。他人のこととか気にならないんですか?」

最近、こんなことを聞かれました。

実は私、20歳を過ぎるまでいつも他人のことばかりクヨクヨ考えていました。大学生時代、友人にこんなことを言われたこともあります。

「他人はお前のことなんて、そんなに考えてないからさ。気にしない方がいいよ」

そう言われても、私は「あの人が言ったのはこんな裏があるんじゃないか?」「この人はこう思っているんじゃないか?」と気になっていました。ですので、この質問をされた方のお気持ち、よくわかります。

しかし私は社会人になってからは、他人のことはあまり気にならなくなりました。 現在の私は、他人がどう思っているかはそれなりに気になりますが、ほとんど引きずらなくなりました。

恐らくそのきっかけは、社会人になってから急に「まずこれやって、次にあれやらなきゃ」というようにやるべきことが増えたからです。

「他人のことが気になる」という行動は、過去を振り返る行動です。
一方で「まずこれやって、次にあれやらなきゃ」というのは、未来を考える行動です。

「過去を振り返る」という行動自体は学びと改善の作業なので、必要なことです。しかし脳内のほとんどがこれで占められたり、他人のことばかり考えるようになると、これはこれで困りものですよね。

「どうしても他人のことが気になってしまう」という人は、感覚的な表現ですが、脳内の2/3以上が過去を振り返る作業で占められているのではないでしょうか? しかし今やるべきことは、すっかり忘れ去ってしまいがちです。

一方で「まずこれやって、次にあれやらなきゃ」という人は、脳内のほとんどが「今これをやろう」「次にあれをやろう」というように未来のことを考える作業で占められています。

自分の脳が集中する方向性を「過去」から「未来」に切り替えることが必要です。

そこでオススメは、毎朝「やるべきことリスト」を作ることです。
重要な順番でリストに書き出して、上から順番に片づける度に、見直すのです。

「あの人のことが気になる」と思ったら、すぐにそのリストを見れば「こんなことを考えているヒマはないぞ。いまはこれやらなきゃ」というようになります。

大事なことは、リストは必ず毎朝、書き出すことです。
書き出すことで、目と身体でやることをしっかり思い出すことができます。
そして書き出すうちに、「あれもある」「これもある」と芋づる式にやることが出てきます。

毎朝これをやっていれば、「他人のことをクヨクヨ考えるヒマなんてない」ということを毎朝、しっかりと自分に意識付けすることができます。

思い返せば、私は新入社員時代からこれを毎朝やっていました。この積み重ねで、いつの間にか他人のことをあまりクヨクヨ考えないようになったのだと思います。

ぜひお試しを。

 

■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちらへ。

Twitterでも情報発信しています。

デパ地下で体験した「俺の」戦略

写真は「俺のEC」より

近所のデパ地下の特設コーナーに、「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」が出店していました。お店のメニューが8種類ほど冷凍食品で売られています。

早速購入し、その晩、家で食べてみて驚きました。「俺のフレンチ」で食べるのと全く同じクオリティなのです。

「でも特設コーナー、5月末まで。この後どうしよう? もしかしたらECサイトがあるかも…」

検索したら「俺のEC」というサイトがありました。しかもメニューは数十種類。

そこで考えました。「これって次世代店舗戦略そのものだ…」

最近、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)に特化したネット直販企業が様々な分野で台頭しています。

D2Cは問屋・小売店を通さないので、流通コストは最小限。消費者と直接繋がり、消費者も深く理解できます。一見万能。ただ致命的なジレンマがあります。

リアル顧客の接点がないので、体験を提供できません。体験の提供という点で、リアル店舗は圧倒的に優位です。

そこでD2C企業は、リアル店舗を展開し始めています。米国で男性用スーツを提供するD2C企業IndochinoのCEOは、こう言っています。

「街に出店するたびに、その地域の認知度や売上がオンラインだけの場合と比べて4倍に伸びた」

消費者認知が広がり、売上が伸びるのです。

私もデパ地下で「俺のフレンチ」体験をしなければ、「俺のEC」を検索しませんでした。リアル店舗で体験した結果、「ECで買おう」と考えたわけです。

「俺のEC」では「俺のサブスク」もあります。毎月、食パン15個(月額4,298円税込)、またはスープ8食(月額3,218円税込)を配送します。抜かりないですね。

当初、「俺の」はリアル店舗の客を高回転で入れ替え、薄利多売で高収益を狙う戦略が大当たりしました。

しかしコロナ禍で、店に人が来なくなりました。

そこで「一流シェフによる美味しい料理を、リーズナブル価格で楽しめる」という自社の強みを活かして、リアル店舗に依存しない戦略を進めているのでしょう。これを実現するには、冷凍食品でも味が劣化しない調理法の模索など、裏では様々な工夫をしているのではないかと思います。

そこで「一流シェフの美味しい料理を、リーズナブル価格で…」という強みを活かし、「…自宅で楽しめる」という新戦略を進めているのだと思います。

この戦略実現には、冷凍食品でも味が劣化しない調理法など、裏では様々な工夫をしていると想像します。

デパ地下の「俺の」体験で、色々と学ぶことができました。おかげで体重も少し増えてしまいました。

 

■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちらへ。

Twitterでも情報発信しています。

30秒で描いた絵に100万円請求したピカソから学ぶべきこと

20世紀最大の芸術家ピカソにこんな逸話があります。

あるご婦人がレストランでピカソに近づいて「ナプキンに何か描いてくださらない?」と頼み、ピカソは絵を描きました。

気に入った彼女は「いくらでも払うわ」
ピカソは「1万ドル(130万円)ですね」

驚いた女性はこう言いました。「あなた、30秒で描いたんじゃない」

ピカソはこう答えました。「ここまで描くのに40年間かけたんですよ」

これは経営者であり著述家のマーク・マコーミックが1984年の著書で紹介した逸話です。「実はフィクションでは?」とも言われていますが、これは労働の意味について考えさせてくれる逸話でもあります。

労働には、単純労働と複雑な労働があります。高いスキルを要する複雑な労働は、単純な労働よりもずっと高い価値を持ちます。

ここで参考になるのが、カール・マルクスの「資本論」です。マルクスは「資本論」第1巻第5章で、このように書いています。

「社会的平均労働にたいして、より高度な、より複雑な労働と見なされる労働は、より高い養成費を含み、その生産により多くの労働時間を要する、したがって単純な労働力よりもより高い価値をもつ労働力の発現である」

天賦の才能を持つピカソが40年間かけてスキルを高めてきた結果が、この30秒の絵にこめられています。 ピカソがご婦人に請求したのは、30秒への対価でなく、40年間への対価だったのです。

さらにマルクスは、先の文章の後にこのように続けています。

「宝石細工労働者が、彼自身の労働力の価値を置換えるにすぎない労働部分は、彼が剰余価値を創造する追加的な労働部分から、質的には決して区別されない」

これもわかりにくい文章なので、解説します。

マルクスによると、低スキルの労働者は、組織の歯車に徹して自分の労働力を提供し、その労働力から生み出された利益(余剰価値)を資本家に搾取されています。そして「この状況って、たとえ高スキルを持つ労働者でも変わりませんよね」と言っています。

マルクス的に言うと「たとえピカソでも、もしどこかの組織に属していれば、誰かに搾取されていますよ」ということです。実際のピカソは、自由人に生きました。ちなみに共産党員だったそうです。

私個人はマルクス思想は「ややモノ中心で考えすぎの極論」と思っていて、ある程度の距離を持って眺めています。しかし一方で、このマルクスの考え方は、現代に生きる私たちにヒントを与えてくれます。

会社員は、会社の中で様々な仕事を経験することで、自分のスキルや経験値を高めることができます。こうしてスキルを高め続けていくと、会社の看板に頼らなくても仕事ができるレベルに達する時がやってきます。ピカソのように30秒で100万円…まではいかないにしても、自分のスキルに対してそれなりの対価を得られるようになります。さらに現代では、ほんの20〜30年前と比べても、個人が独立する敷居は格段に低くなっています。

会社員を続けるか、あるいは独立するかを判断する際に、これらマルクスの指摘は一つの判断軸を提供してくれると思います。

※当コラムは私の政治的信条とは関係はありません。

 

■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちらへ。

Twitterでも情報発信しています。

生産性向上では成長せず、売上は下がる


こんな発言をよく見かけます。

「我が社は徹底的な生産性向上を追求して、成長する」
「日本は生産性向上を徹底して、成長しなければいけない」

確かに生産性向上は大切です。効率を上げることは、ビジネスの必須課題です。

しかし生産性向上だけでは、成長はしません。むしろ縮小します。これは簡単な計算でわかります。

売上1億円を達成するために、コスト5000万円かけていたとします。
営業利益は1億円-5000万円=5000万円。ですので営業利益率は50%ですよね。

ここで生産性向上を頑張って、コストを3000万円に下げたとします。しかし当然ながら、ライバルも生産性向上に励んでいます。そこで多くの場合、値下げしなければなりません。

でも値下げしても、営業利益率(=儲け)は維持したいですよね。そこで営業利益50%を維持する、と仮定しましょう。

 売上 = コスト + 営業利益
 営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上

ですよね。

コスト3000万円で営業利益率50%を達成する場合の売上は、この式にあてはめて考えると6000万円になります。(計算式は省略します)

つまり生産性向上を頑張ったのに、売上は1億円→6000万円に下がってしまいました。

実はこれが、日本の「失われた30年」の正体です。生産性向上は必要です。でも生産性向上だけでは、売上は下がるのです。しかしこんな反論がありそうです。

「でも日本って、生産性向上でずっと成長してきたんじゃないの?」

その通りです。ただし、それは高度成長期までの話。市場が成長していて、日本の生産性がまだ低かったので、ライバルよりも頑張って生産性向上すれば、成長して新たに生まれた市場をゴッソリ獲得できました。しかし現代では市場は成長していません。

問題は、もはや市場が成長していないのに、高度成長期に生まれたこの成功パターンを続けていることです。

生産性向上は常に行っていく必要がありますが、それだけではダメなのです。

いま必要なのは、新しい価値を生み出すこと。つまり価値創造です。

いまのやり方を改善するのは必要なことですが、長い目で見ると、それだけではジリ貧に陥ります。

いまのやり方をむしろ忘れて、全く新しい商品やサービスを生み出すチャンスはないか?

お客様は本当は何を熱望していて、喜んでお金を払おうと考えているのか?

低成長時代のいまこそ、「ウォンツ(潜在的ニーズ)の発掘」が必要なのです。

 

■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちらへ。

Twitterでも情報発信しています。

強みを活かして業界常識を否定し、シェア倍増したプリンター会社

ビジネスプリンター業界の鉄則は、「販売後の補修や保守管理で稼ぐ」。いわゆる「ジレットモデル」(髭剃りのように、本体を低価格で売って替え刃で儲けるモデル)です。

この市場で、OKIのプリンターのシェアは4%程度に甘んじていました。OKIのプリンターはLED方式。ビジネスプリンターの主流であるレーザー方式よりも部品が少なくシンプルな構造、かつコンパクトでした。しかしこの強みが活かせず、大手と価格勝負に陥っていたのです。

そこでOKIの国内営業部長はこう考えました。

「部品数が少なく、構造がシンプルなら、故障は少ないはず。保守モデル自体がナンセンスだ」

そこでOKIは、常識の真逆を行く大胆な方針を打ち出しました。

「5年間無償保証」

結果、4%だったシェアは、2013年には10%と倍増しました。

この営業部長が、2022年4月1日に取締役を経ずに執行役員から12人抜きでOKIの新社長に就任した森孝廣氏です。(詳細は、今週発売の日経ビジネス2022年4月18日号(p.92)に掲載されていますので、ぜひご覧下さい)

この話は、自分たちが持つ強みを徹底的に見直した上で、業界の常識を「そもそもそれって違うんじゃないの?」と疑うことが、大きなチャンスをもたらしてくれるということを教えてくれます。

現在の常識は、神様が決めたことではありません。過去にどこかの会社にいる誰かが「自分たちの強みを活かせば、こんなおいしい商売ができる」と考え、それが顧客に受け容れられた結果、出来上がったモノです。

だから業界の常識は、私たちが自分に有利なように自由に上書きしてもまったく問題はないのです。それが顧客のお困りごとを解決できれば、新しい常識として定着します。いまの常識は上書きされるためにあります。そして、世の中はこうして常に進歩していきます。

御社で生かし切れていない、他社にはない強みは、何でしょうか?
その強みで、業界の常識はどのように変えられるでしょうか?

 

■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちらへ。

Twitterでも情報発信しています。