コロナ禍で上の人間が保守的になり、意見が通らない


講演で「コロナ禍の今こそイノベーションの最大のチャンス」という話をしました。
すると、こんなご質問をいただきました。

「うちの会社でも、最近になって新しい動きが色々な部署で始まっています。
ただ上の人ほど保守的な考えになっているようで、真正面から意見をぶつけても通りません。
そんな保守的な人間を説得する良い方法はあるのでしょうか?」

現場の担当者からすると悩ましいことですよね。

まず「上の人」が保守的なのは、過去の成功体験で「これが正しい」と信じ込んでいるからです。

一般的に言えば、その成功体験が有効ならば「保守的に考え、下の人の過去を否定する考えを却下すること」は、実は組織を守る上で合理的な行動です。問題は成功体験の賞味期限が既に切れているのに、考え方を変えられない「上の人」が多いことです。

「上の人」が、成功体験の賞味期限切れしているのに考えを変えない理由は、ただ一つです。
人間が成功体験を忘れられないからです。
こんな状況で、「下の人間」が真っ向から意見をぶつけて「その成功体験は間違ってます」と言うとどうなるか?
よくて無視、最悪逆ギレで、討ち死にです。

対処法があります。
事実をもって、「上の人」が「自分の成功体験は見直さないとヤバそうだ」と思わせることです。

たとえば「営業の商談の基本はやっぱり対面だ。Zoomを使ってきたけどさ。対面に切り替えるぞ」という上司のヤマダ営業部長がいたら、「ヤマダ部長、A社スズキ部長が部長に是非会いたいとおっしゃています。スズキ部長が『是非Zoomで』とおっしゃるので、私がすべて準備します」と言って同席していただく。そしてお客様のスズキ部長が「いやぁ、オンライン商談って話がテキパキ進むし、短時間で済むし、こちらも大助かりですよ」と言っているのを、その場で上司のヤマダ部長に聴いていただく。

このようにお客様の現場に連れて行き、「上の人」の常識がお客様の常識とかけ離れていることを実体験させるのは、有効な方法です。

あるいはテレワークを定着させようとしているのに、「上の人」が「やはり会社員はオフィスで働くのが基本でしょ」というのであれば、テレワークで仕事の生産性が上がった人の声をまとめたり、テレワークを実体験した人達の生の声を聴ける座談会を開催して「上の人」をゲストに招くのも、いいやり方です。

また「上の人」は『自分は常に大きな視点でモノゴトを見て判断している』と思っています。そこで社員全員に「2ヶ月間テレワークをした結果のアンケート調査」を行い、集計結果を見せる方法も有効です。今や大人数のアンケートでもGoogle Formsなどを使えば集計は実に簡単です。

「上の人」と同じ高さ視点で「上の人」が何を考えているかを想定し、事実をもって説得することです。

「上の人」もそれなりに仕事ができるから上にいるわけで、事実に納得すれば意外と成功体験は上書きでき、保守的な「上の人」でも説得できる可能性が高くなります。

くれぐれも「分からないヤツは論破してやる」とは思わないことです。相手もお立場がありますので。

コロナ禍の今こそイノベーションの最大のチャンスです。
一方で会社は組織で動いていますので、上の人を味方に出来るかどうかが、チャンスをモノにできるかどうかの分かれ目です。

ご健闘をお祈りしております。

 

■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちへ。

Facebookページでも、色々な情報がご覧になれます。