「副業」はサラリーマン起業の最強兵器だ


私は日本IBM社員時代、会社の承認をいただいて執筆活動を始めました。有り難いことに「 100円のコーラを1000円で売る方法」をきっかけに様々な仕事のご依頼をいただくようになり、ご依頼に対応するために退職して独立しました。独立は2013年7月ですので、8年間が経ちました。

あくまで結果論ですが、これは経営学で注目されている「ハイブリッド起業」を実践したものでした。

「ビジネススクールで学べない世界最先端の経営学」(入山章栄著)で、このハイブリッド起業のことが紹介されています。

ハイブリッド起業とは、会社勤務と並行して起業する考え方です。

「副業で起業?甘い考えでスタートアップを始めるな。起業して逃げ場をなくし自分を追い込むんだ」とおっしゃる方も、おられるかもしれません。

しかし著名起業家の中にもハイブリッド起業は大勢います。超有名どころでは、アップルの共同創業者スティーブ・ウォズニアック。アップル創業後、しばらくはHP社の技術者でした。

ハイブリッド起業では、起業リスクを軽減できます。これはリアルオプション戦略で説明できます。リアルオプション理論とは、「不確実性が高いと、小規模な部分投資が効く」のがポイント。

起業はそもそも成功確率が低いもの。会社を辞めて起業し、自分の時間とキャリアの全てを賭けると、リスクは非常に高くなります。特に日本では起業を失敗して会社に就職しようとしても、なかなか就職できないのも現実。家族が犠牲になる可能性もあります。

だから必要なのは、起業リスクを軽減すること。今の会社に勤めつつ副業として小さく事業を始めて失敗確率を下げれば、リスクは下がります。

入山先生はご著書で、スウェーデンで1994年にハイテク産業に就職した20歳〜50歳の男性44,613人について、その後の行動を追跡したデータを統計分析し、検証した研究を紹介しています。

7年後の2001年時点で、この44,613人のうち起業したのは5%弱の2,191人。うち966人が会社を辞めないハイブリッド起業。残り1,225人はフルタイム起業でしたが、このうち2割はハイブリッド起業経由。つまりハイブリッド起業は過半数でした。

また「ハイブリッド起業→フルタイム起業」の移行確率は、「会社勤め→フルタイム起業」の確率よりも38倍高い数字でした。さらにハイブリッド起業家が翌年もハイブリッドを続ける確率は54.9%。36.6%は翌年に起業活動をやめ会社の仕事に専念していました。

つまりハイブリッド起業経由ならばフルタイム起業へ移行できる確率が高く、ダメだった場合に元の仕事に戻れる、ということです。低いリスクで起業に挑戦できるのです。

同じことを、起業家であり投資家の田所雅之氏も著書「起業の科学」でおっしゃっています。起業せずに副業ならば、会社維持費は不要。起業のアイデアも余裕と好奇心を持って考えられます。逆に起業してからアイデアを練ろうとすると、早く形にしようとして近視眼的になったり、凝り固まった考えに固執しがち。スタートアップの強みである突飛さやクレージーさも失ってしまいます。

入山先生は、「ハイブリッド起業の研究はまだ初期段階。一般化は慎重になるべき」と述べています。一方で世界的に見て日本は起業が活発ではなく、開業率も低いのが現実。

昨今国内で増えている副業ブームは、起業の起爆剤になる可能性を秘めています。

このように考えると、「副業は収入の補完手段」と考えるのはちょっともったいないかもしれません。むしろ「副業は将来の起業への準備手段」として考えると、人生100年時代を見据えて様々な展望が開けてくるのではないかと思います。

■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちらへ。

Twitterでも情報発信しています。