スマホの「フィード」が、私たちの認知に影響を与えていく


スマホは便利ですね。待ち時間などで手持ち無沙汰にしているとついスマホを見ています。

スマホでSNSを眺めていると、様々な情報が次々流れていきます。私たちは人差し指でスクロールし続けるだけ。自分がフォローしている情報(つまり自分が関心ある情報)だけ表示されるので、楽しいわけですね。自分の投稿への反応も気になりますよね。

そんなわけで、気がつくと1時間SNSを見続けたりします。

先日、永井経営塾ゲストライブに、最新メディアにお詳しい藤村厚夫さんをお招きし、色々とお話しを伺いました。藤村さんはITmedia会長を務められた後、SmartNews創業時にシニア・ヴァイス・プレジデントに就任してメディア事業開発を担当され、2018年より同社フェローを務めておられます。

藤村さんは、最新メディアで現在最も注目している動きの一つが、この冒頭の状況だとおっしゃっています。この仕組みを「フィード」と呼びます。

これは、人類は初めて経験する究極のメディア体験です。

❶様々な情報(文字・写真・音声・動画)が融合されている

❷見る側のエネルギー消費がほぼゼロ。暇があればずっと見ている

❸自分の興味関心にあった情報にカスタマイズされている

❷を補足すると、人間は情報入手の際には、通常ある程度手間をかけます。ネット検索でも、「①キーワードを入力」→「②検索をクリック」→「③検索結果から必要なものを探しクリック」という手間がかかります。しかしフィードは、人差し指を縦になぞるだけ。面倒な操作は不要。頭をほとんど使わず、次々と情報が得られます。

❸を補足すると、フィードされる情報を見た人は「世の中はこうなっているのか!」と刷り込まれていきます、しかしそれは自分用に濾過された情報。自分の知らない世界は、完全に遮断されています。

最近、安倍元首相の国葬について色々と議論されています。賛成派も反対派も、こんな感覚なのではないでしょうか?

「私の周りは、私と同じ意見の人が多いんだよね」

これはSNSでは同じ意見の人をフォローする傾向があるからです。つまり、自分用にカスタマイズしてフィードされた情報を見た結果を見ています。トランプもこの仕組みを巧みに活用して大統領に選ばれました。

フィードの問題は、多様な意見に接しなくなることです。

私たちは他の人から「あの人に、こんなことを言われちゃったよ。心外だなぁ。落ち込むなぁ。でも確かにあの意見ももっともかもな。ちょっと考えてみるか」というような経験を通じて、自分の知見を広げていきます。

しかしフィードでは、そのような情報は自動的に除外してしまいます。これはSNSのビジネスモデルも関係しています。

多くのSNSでは、広告が基本的なビジネスモデルです。フィード上に、自然な形でできるだけ多くの広告を出せば、売上は拡大します。

ユーザーに「心外だなぁ。落ち込むなぁ」なんて思わせずに、「そうそう。自分もそう思っていたんだ。いいこと言うじゃん」と心地よくワクワクしてもらった方が、SNS上に長時間滞在してくれます。

そうすればユーザーも情報を発信するので、SNSが賑やかになります。こうしてSNSビジネスが繁盛するわけです。(注:広告モデルではないSNSもあるので、全てのSNSがこうなっているわけではありません)

結果、世の中の見え方が変わってしまうわけです。

これはSNSを非難しているのではありません。SNSとはそういうものなのです。

現代の私たちは、このようなメディア・リテラシー(言い換えれば「自分の見ている情報は、こんな形でバイアスを受けている」ということを認識する能力)を身に付けていくことも必要なのでしょう。

 

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