人類13,000年の歴史から再考する、現代社会におけるイノベーション


ジャレド・ダイアモンド著「銃・病原菌・鉄」、上巻・下巻を読了しました。

「原始的社会の人々の方が、現代文明に生きる我々よりも、知的な理由」に書きましたように、この本は人類史1万3千年を俯瞰し、民族の分布が現在のように至った理由を、東アジア・太平洋域・オセアニア・新旧大陸の衝突・アフリカ大陸それぞれについて、様々な要因を検証しながら分析していった大作で、非常に読み応えがあります。

本書では、最初に、ニューギニア人のヤリという人から受けた次の問題提起

「あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか」

を挙げて、この理由を一つずつ検証し、下巻の最後にその理由を次の4点に集約させています。

1.栽培化や家畜化の候補となりうる動植物種の分布状況が大陸によって異なっていた

食糧生産の実践が余剰作物の蓄積を可能にし、これが非生産者階級の専門職を養うゆとりを生み出し、人口の緻密な大規模集団の形成を可能にしました。

この栽培化や家畜化が可能な動植物種の分布が、ユーラシア大陸の特定地域に偏っていました。

2.伝播や拡散の速度が大陸ごとに大きく異なった

ユーラシア大陸は横に長くて生態環境や地形上の障害が他大陸よりも少なく、作物や家畜が伝播しやすい一方で、アフリカ大陸やアメリカ大陸は縦に長いこともあり地形や生態環境上の障害が大きく、伝播に時間がかかりました。 

例えば、同一緯度で繁殖する穀物はユーラシア大陸では横(つまり東西の方向)に拡がりました。しかし、アメリカ大陸やアフリカ大陸では同一緯度の拡がりが少ないために横への伝播は少なく、また気候が異なる同一緯度の縦方向(つまり南北の方向)への伝播は困難でした。

3.異なる大陸間での作物や家畜の伝播が異なった

ユーラシア大陸からサハラ近辺地域への伝播は容易でしたが、南北アメリカ大陸には低緯度地域は大きな海洋で隔てられ、高緯度地域は狩猟に適さない問題があり、南北アメリカの社会の発展に寄与したものがありませんでした。

4.大陸の大きさや総人口が異なった

面積が大きく人口の多い大陸では、何かを発明する人間の数が相対的に多く、競合する社会の数も相対的に多くありました。新しい技術を取り入れないと競合する社会に負けてしまうため、技術の受け入れを促す強い社会的圧力もありました。

 

民族の分布が現在のようになったのは、置かれた環境の違いが理由であり、そもそも民族の優劣は全く存在しない、という点は興味深い指摘ですね。

我々は、現代は非常に変化が激しい時代にあると思っていますが、本書を読んで、この数千年間も、私達人類の祖先は同じく激しい変化の時代を生き抜いてきたことがよく分かりました。

また、イノベーションを続けること、そしてイノベーションを促進するために多様性を持つことが、社会や企業、個人にとっていかに重要なことなのかも、再確認できました。

過去、多様性を持たずに消滅してしまった社会や民族が、いかに多いことか。

多様性を持ちイノベーションを続けるためには、、まず集団そのものが多様性を持った個人から成り立っていること、その集団が他の多様性がある集団と活発に交流していること、競合が激しい環境にあって常に進歩を図ろうとしていること、等が必要なのでしょうね。

現代社会にも通じる箴言を得られたように思います。