ビッグデータ時代のいま、ITエンジニアに求められているのは、ITに関する技術だけではなくマーケティング思考力。そのことを感じた記事がありました。
日本経済新聞デジタル版に、日経情報ストラテジー編集部から転載された記事「1ピクセル5億円…顧客呼ぶヤフーのこだわり分析」(会員のみ閲覧可能)が掲載されています。
【事例】ヤフージャパン
対象顧客:スマホサイトの検索利用者(月間 約600億PV)
方法:A/Bテストで検証した結果、検索窓の枠を1ピクセル太くした。
結果:検索広告で5億円増収
【事例】東急百貨店
対象顧客:電子クーポン機能を使う、主要顧客である40代以上の女性
方法:複数枚の電子クーポンを配付しても1枚しか使わない。データ分析の結果、一番上に表示されるクーポンしか認識しないことがわかったので、クーポンを表示する瞬間、微妙に動かし複数枚あることを気づかせるようにした
効果:クーポン利用率は3割増加
【事例】ドリコム
対象顧客:通勤時間帯にゲームを楽しむソーシャルゲームユーザー
方法:数十テラバイトに上るログデータにより、このユーザー群は土日もゲームにはまっていることを把握。「同じ人数同士のチーム戦は最も楽しい」ので、先々のユーザー数を予測し、チーム対戦ゲームで、同じ人数のチーム同士が戦えるように対戦相手を最適化する仕組みを新開発。
効果:購入金額を1割向上
実際、私も小さなサイトをいくつか運営していますが、かなり頻繁にデザインを変えています。
サイトを運営していると、実際のアクセスデータでユーザーの挙動を見ながら、サイトを細かく手直しするのは常識です。
これが企業レベルになると、扱うデータも巨大になる一方で、ビジネス規模も巨大で、かつリアルタイム性を求められます。
ここで必要なのが、マーケティング思考です。
マーケティング思考の原点は、「お客様が買う理由」を創り出すこと。
この「お客様が買う理由」は、次の仮説検証プロセスを通じて作っていきます。
1.自社の強みは何か? (徹底検証)
→2.その強みを必要とする対象顧客、顧客の課題、解決策は何か?(仮説)
→3.対象顧客と顧客の課題の仮説は、正しいか? (検証。×なら2.に戻る)
→4.解決策の仮説は、正しいか? (検証) (検証。×なら2.に戻る)
一見難しいように見えますが、上記事例にもあるように、ネット業界の多くの成功事例ではこれらを普通に行っています。
マーケティング思考と組み合わせることで、ビッグデータの活用はビジネス直結の成果を生み出します。
そのためには、単にビッグデータ活用技術を導入するだけではなく、「お客様が買う理由」を仮説検証するプロセスや思考方法も、一緒に定着させることが必要になります。
ビッグデータ時代には、ITエンジニアも、マーケティング思考が求められるのです。
昨年、当ブログでグロースハッカーの考え方をご紹介しましたが、まさにその考え方とも通じる話ですね。