ルンバ大成功の裏にあった、14の新規事業失敗の意味。日本の電機メーカーは「ルンバという製品」でなく、「アイロボット社の考え方」を学ぶべき


iRobotロゴ

おそうじロボット「ルンバ」は、現在、アイロボット社の主力商品です。

この結果だけを見ると、

「なるほど。ロボット技術を活かして、自働おそうじロボットか。アイロボット社も、いいところに目を付けた。ラッキーだな」

と思いがちですよね。

 

しかし実際には、アイロボット社は偶然「おそうじロボット」を作ったのではありません。

2014年には全世界で売上5.57億ドル (約668億円) / 利益0.38億ドル (46億円)を稼ぎ出すアイロボット社は、自社の強みであるロボット技術を「儲かるビジネス」になかなか繋げられずに、苦しんだ時期があるのです。

2015年3月4日付のITmedia Life Styleの記事『困難に直面しても「楽しかった」――「ルンバ」登場までの軌跡』では、2014年に明治大学で講演したコリン・アングルCEOが儲からなかった時期について語っている様子を紹介しています。

この記事に掲載されたチャートによると、アイロボット社は下記14件の新規事業を計画しては止めることを繰り返していました。

Failed Business Models over time

1. Sell Movie Rights to and then perform to a Robotic mission to the moon
2. Sell Research Robots to Universities and Hobbyists
3. Earn Royalties on Robotic Toys
4. Develop and license technology for nano-robots to clean plaques from blood vessels
5. Sell Robots to the oil industry to stimulate production in wells
6. Sell Nuclear Power Plant Inspection Robots
7. Sell Educational Robots to Museums
8. License Technology for Industrial Floor Cleaning robots
9. Develop and Sell Smart Home solutions to supermarkets
10. Create and sell “Robot Wars” style location based entertainments experiences
11. Sell Landmine clearance robots
12. Develop and License a Robot Operating system
13. Sell Robots you can control over the internet to data centers
14. Develop and sell planetary rovers to the Ballistic Missiles

上記を日本語に訳してみました。

過去失敗したビジネスモデル

1. 映画化権利を反した上で、月面へのロボットミッションを遂行する
2. 研究段階のロボットを大学や愛好家に売る
3. おもちゃのロボットのロイヤルティで稼ぐ
4. 血管で血小板をきれいにする極小ロボットを開発し技術をライセンス供与する
5. 油田の生産工場のために石油業界にロボットを売る
6. 原子力発電所の検査用ロボットを売る
7. 博物館に教育ロボットを売る
8. 工場のフロアを掃除するロボットの技術をライセンス供与する
9. スーパーマーケットへスマートホーム·ソリューションを開発し販売する
10. 「ロボット戦争」スタイルの位置情報付きエンターテイメント体験を売る
11. 地雷除去ロボットを売る
12. ロボット用のオペレーティングシステムを開発しライセンスする
13. インターネット経由でデータセンターを管理できるロボットを売る
14. 惑星探査機を開発して売る

1/2/4/7/10/13/14などは、「こんなプロジェクトまで考えていたのか!」と驚きますね。

一方で、6の技術は福島第一原発に提供されましたし、11.の地雷除去ロボットもいいところまでいっています。

 

改めて思ったのは、アイロボット社がおそうじロボット「ルンバ」を成功させたのは、単なる幸運ではなかったということ。

ルンバ成功の過程で生み出されたのが、この14の新規事業の失敗。しかし実際には失敗とも言い切れず、継続してビジネスに繋がりかけているプロジェクトもあります。

アイロボットは自社の技術的な強みを活かして、いかに顧客を絞り込んで、その顧客の課題を解決することで、ビジネスに繋げるか、アイロボット社は考え抜いてきたのです。

つまり「ものづくり思考」ではなく、「マーケティング思考」なのです。

 

日本の電機業界も、「ルンバという製品」を学ぶのではなく、「アイロボット社の考え方」を学ぶべきではないでしょうか?