「何でも対応できます」は、「価値ある仕事はできません」と同じ意味


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映画「バットマン」で、バットマンの表の顔・ブルース・ウェインを支える執事アルフレッド・ペニーワース (Alfred Pennyworth)をご存じでしょうか?クリストファー・ノーラン監督のバットマンシリーズでは、マイケル・ケインがアルフレッド役を演じています。

アルフレッドはあらゆる難題に対応できる、まさに「万能の執事」。

ウェイン家のあらゆる雑事をこなす傍らで、バットモービルを製作・保守し、武器を調達、敵の情報を調べ上げ、戦いで傷ついたブルースを治療するなど、バットマンの戦いを裏で支えます。さらにとても美味しい紅茶を入れて、癒やしてくれます。

 

さて、アルフレッドのように、あらゆる難題に対して素晴らしいアウトプットを生み出す人は、あくまで映画の中だけの話。しかしこのようにおっしゃる企業様に出会うことがあります。

「弊社の強みは、お客様のあらゆるご要望に真摯に対応することです」

「お客様のあらゆる課題に、いかようにでも対応できます」

実際にはあらゆることに対応できる筈もありません。そしてその特定分野の一流と比べると、大きく見劣りするアウトプットしか出てこないのが、現実です。

 

ほとんどの場合、「何でもできます」の意味は、こういうことです。

「何でもできます」
=「明確な専門分野を持っていません」
=「自分には、『売り』も『強み』もありません」
=「誰でも出来ることしか、できません」

「自社ならでは」の高い価値を提供できないので、他社との体力勝負になります。こうなるとライバルに勝てる要素は価格だけ。競合して運良く最安値で受注しても、「忙しいけど、稼げない」ということになります。

 

本来企業には、何らかの「強み」や「売り」があります。たとえば、

・顧客スキル:ある業界の顧客企業のプロジェクトを長年やっていれば、その業界のことにはかなり精通しています
・ソリューションスキル:特定ソリューションを担当していれば、その強みも弱みも、他社よりは分かっています
・職種スキル:経理や会計、マーケティング、セールスといった職種でスキルを深めている場合もあるでしょう

これを考え抜くことで、自社の得意科目は何で、苦手科目は何かが、わかってきます。

 

学校では、苦手科目でもテストがあります。しかしビジネスでは、苦手科目は避けられます。苦手科目を求めてくるお客様は辞退し、得意科目に絞って勝負することで、価格勝負や消耗戦を避けて、価値で勝負できるようになります。

しかし、実際に企業の方々とお話しすると、「自社の強み?うーん、何だろう?特にないですね」とお答えになる方が実に多いのが現実です。

つまり時間をかけて自社の得意科目を考えている企業は、実に少ないのです。こうなると消耗戦や価格勝負は避けられません。

 

ほとんどの人は、アルフレッドのようなスーパーマンではありません。

「あなたの強みは?」と訊かれた時は、具体的に即答できるように、いつも考えたいものです。