「市場規模は1000億円です。この新商品では、シェア5%獲得、売上50億円を狙っています」
新商品を企画しているというその方は、このようにおっしゃいました。
「ターゲットは、どんなお客様なのででしょうか?」
「色々なお客様がいるので、幅広くやりますよ。1000億円市場の5%です。売り込みを頑張れば、何とかなるかなと思っています」
「実際のところ、うまくいっていますか?」
「そこをいわれると厳しいですね。この2年ほど頑張っていますが、なかなか広がりません」
実はバブル期の25年前、私も同じ発想で商品企画を立てていたことがあります。販売活動は大変でしたが、そこそこの売上を達成できました。
しかし現代では、この考え方で新商品開発を進めても成果は出ません。現代のお客様は昔よりもわがまま。ニーズが多様化・細分化していて、お客様の要求レベルも高くなっています。
「市場シェア5%獲得」という目標が問題なのではありません。「シェア5%獲得が目標だから、幅広く販売すればいい」と考えるのが問題なのです。
これは「ターゲットのお客様とそのお客様の課題が、よくわからない」と言っているのと同じだからです。言い換えれば、目的地の地図を持たずに、初めて行く目的地に車を運転して向かっているようなものなのです。
時代は大きく変わってきました。
生産志向の時代:「作れば売れる」→力を持つのは、自社工場
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製品志向の時代:「よき製品が売れる」→力を持つのは、製品開発チーム
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販売志向の時代:「売り込めば売れる」→力を持つのは、自社営業
「市場シェア5%を獲得すれば、50億円」という考え方は、「製品志向」「販売志向の時代」までの発想です。
しかし「販売志向の時代」は既に終わり、時代はさらに変わっています。
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顧客志向の時代:「顧客が欲しいものが売れる」→力を持つのは、顧客
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社会志向の時代:「社会によきものが売れる」→力を持つのは、社会
売ろうとしてもなかなか売れないのが現代。こんな時代に、「どのような顧客が、どんな課題を持ち、どんな商品を必要としているか?」という具体的なシナリオを持たずに、「市場シェア5%を獲得すれば50億円」と考えて、お客様の課題に対する理解が浅いままで幅広いお客様に次々と売り込みを図っても、成功する可能性はほとんどありません。
ターゲットとなるお客様のプロフィールと課題を具体的に考える。
「これまで満たされていなかった、どのようなお客様の課題を解決するのか?」という視点で考え抜く。
そして、本当にターゲットとして想定したお客様がいるのか。
そのお客様は本当に仮説通りの課題を持っているのか。
そして解決策は正しいのか。
これらをリアルなお客様で検証し続けることが必要なのです。
そして、ターゲットとして考えたお客様の期待を大きく超える満足を提供することで、高い価値を生み出すのです。
多くの場合、仮説は大きな修正が必要です。そしてリアルなお客様から得られた学び自体が、自社の大きな差別化要因になるのです。
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