「新商品の開発プロジェクトでは、どういう人を集めればいいのでしょうか?」
講演会が終わって質疑応答の時間、こんなご質問をいただきました。
皆さんは、どう思われますか?
かく言う私も、会社員だった頃、複数部門の人たちを集めてチームを作って仕事をすることがよくありました。今の仕事を始めてからはお客様のプロジェクトのチームにも入るようになりました。
そこで実感するのは、仕事が出来る人だけを集めても、知識や経験が豊富な人がいても、必ずしも上手くいくとは限らない、ということです。チームの人選はプロジェクトの成功を左右してしまうとても重要な問題です。
しかしツボを押さえれば、成功する可能性がグッと上がります。
そこで私は、このようにお答えしました。
私は、お客様の新商品開発プロジェクトのチーム実習に半年間入ることがよくあります。この実習は、5〜7名程度の1チームで進めます。その際、必ずお客様にお願いしていることがあります。
それは、「『ぜひこの実習に取り組みたい』という希望者だけでやりましょう」ということです。
そして、「絶対に、参加は強制しないでください」とお願いしています。
人が集まるチームは、まるで生き物です。
全員が「心からやりたい」と思って参加しているチームは、次々とアイデアを生み出して、難題も突破し、成長していきます。
しかし仮に一人であっても「やらされ感」を持って参加している人がいると、その人が黙ったまま何も発言しなかったとしても、チームのエネルギーは、まるでスポンジのようにその人に吸収されてしまうのです。
さらに全員が強制参加されたチームは、「いかに手間をかけずに半年間のプロジェクト実習をやり過ごすか?」がチームの暗黙の了解になってしまいます。皆さんも忙しい本来の仕事も持っていますので、これは責められません。
これはその人たちが悪いのではありません。人選が間違っているのです。
「心からやりたい」と考える人たちで進めることが、大切なのです。
「やりたい」と思っているから、アイデアも次々と出てきますし、少々の障害があっても乗り越えることができます。
商品開発プロジェクトの人選も、まったく同じです。
今年4月に出版した「そうだ、星を売ろう」でご紹介した阿智村の挑戦も同じです。温泉で長年発展していた阿智村は、宿泊客が低迷し、「日本一の星空ナイトツアー」を始めました。2012年、初日のお客さんはわずか3名でしたが、2015年は6万人を集めるまでに大きく成長しました。
この「日本一の星空ナイトツアー」も、最初は志を共有する数名で始めました。
プロジェクトの立ち上げ段階は、やることや課題が山積みです。いくらあっても時間は足りません。新商品開発プロジェクトは時間との勝負。反対派を説得する時間はありません。だから必要なことは、反対する人は最初から入れずに、志を共有する少数のメンバーで進めることです。
重要なのは、「意見が異なることはOK」ということです。異なる意見を話し合えば、一人だけでは思いつかなかったような様々なアイデアが生まれて行きます。しかし「これをやりたい」という志は同じであることが必要です。
新商品開発プロジェクトは、高度な知的作業です。そして人は、「やりたいことを、やる」時が、最も知的生産性を発揮するのです。
会社の中でも、複数部門の人が集まってチームを作り、期限を決めて商品開発プロジェクトを進めることが多くなりました。この時も、「これをやりたい」という人たちを集めると、成功する可能性がグッと高まるはずです。
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