「吉野家はなまるはしご定期券」の裏にある周到な戦略


先日外出中に、急に「吉野家の牛丼が食べたい」と思ったら、すぐ目の前にあったので、入りました。

牛丼並を食べながら食卓の上にこんなものが貼ってあったので、驚きました。

「吉野家はなまるはしご定期券」

ポイントは、

・毎食80円引きの定期券を、9/22まで300円で発売中
・牛丼の「吉野家」、讃岐うどんの「はなまるうどん」の両方で使える
・9/15-10/23の期間中は使い放題。
・期間中であれば1枚で何人でも、何度でも、何食でも利用可能

吉野家自身も、「吉野家史上最大にお得なキャンペーン」と謳っています。

一見すると「こんな大盤振る舞いして、赤字になるんじゃないの?」と思ってしまいますよね。

そこで興味を持って調べて、驚きました。

「吉野家、おそるべし!」

単なる値引きではないのです。

 

ちなみに「はなまるうどん」(以下「はなまる」)は、現在吉野家傘下にあります。

「はなまる」は、それまで日本になかった讃岐うどんのチェーン店を成功させ、順調に成長しました。しかし大量出店があだとなり店の質が低下、売上が急降下し経営危機に陥り、吉野家の傘下に入り、吉野家から38歳の社長が創業者社長とバトンタッチして、店の質やサービスを徹底的に見直し、現在は吉野家グループの中でも優良企業に生まれ変わっています。

その経緯は、拙著「これ、いったいどうやったら売れるんですか?」の第6章で紹介しました。

たとえば「はなまる」は、「期限切れクーポン大復活祭」と銘打ち、「日本全国どんな店の期限切れクーポンでも、お好きなメニューが50円引き」というキャンペーンを行いました。

きっかけは、「新たに女性客に来て欲しい」と思った社長が、「膨れた女性の財布に何が入っているんだろう?」と思い、周りの女性に聞き回ったところ、店でもらうクーポン券が溜まっていたと知ったことでした。しかもその6割は期限切れ。「何とかできないかな?」と考えて始めたものでした。結果、売上が3%増えて大成功。

他にも「健康志向」を打ちだしていた「はなまる」は、「健康保険証を見せれば50円引き」というキャンペーンも行いました。これも健康意識が高いお客さんを取り込む戦略です。

すべて期間限定でやっているのがミソです。単なる値引きではなく、いずれもその時点で自分たちが「固定客化したい」と狙う顧客を的確に狙った戦略なのです。

ちなみに、この当時のはなまる社長が、現在の吉野家の社長に若くして大抜擢された河村泰貴さんです。

 

今回の「吉野家はなまるはしご定期券」も同じです。

マイライフニュースの記事『吉野家、はなまるうどんとコラボした「はしご定期券」キャンペーンを開始、丼・定食・皿・カレーがいつでも80円引きになる定期券を期間限定発売』によると、「はなまるうどん」では毎年「てんぷら定期券」を販売して好評でした。吉野家でも同じような定期券ができないかを考えましたが、せっかくならお互いにコラボした方が相乗効果が生まれると考え、このキャンペーンが実現しましたそうです。

吉野家一店舗当たり600枚を販売予定で、キャンペーン期間中は2割の利用客増を見込んでいます。

一見大盤振る舞いのキャンペーンも、実は「吉野家」の固定客を「はなまる」へ、そして「はなまる」の固定客を「吉野家」へ、それぞれ誘導して、全体の固定客を増やす仕組みとして周到に考えられたものなのです。

 

 

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