以前、ある温泉旅館に泊まった時のこと。
旅の疲れもあって早く温泉に入りたかったのですが、仲居さんが何度も部屋に出入りして、お茶を出してくれたり宿泊の説明をしてくれます。恐らくこれがこの旅館流の「おもてなし」なのだと思いますが、「早くして欲しい」というのも野暮なので言い出せず、察して欲しいなぁと思ったりします。
京都で200年続く老舗旅館「柊屋」で60年間も仲居を務められた田口八重さんは、ご著書「おこしやす」で次のように書いておられます。
—(以下、引用)—
お客さまはおひとりおひとり、お顔立ちが違うように、お気持ちだって違うのです。それぞれに合ったおもてなしをしなければいけません。お仕着せのサービスでは喜んでくださらないということです。お目にかかった瞬間に、お客様の気持ちを察して、こうしてほしいと望む対応をしていくのです。
これが私がおもてなしをしてきた人生で、体験から掴んだモットーなのです。
—(以上、引用)—
また、石田三成がある小寺の小坊主だった時のこと。
鷹狩りをしていた秀吉がその小寺に立ち寄り、お茶を所望しました。
三成は、まず冷たいお茶を持ってきました。
一気に飲み干した秀吉が二杯目を求めると、三成は生暖かいお茶を出しました。
二杯目も飲み歩々してそしてもう一度求めると、熱いお茶を出しました。
三成は汗をかいた秀吉の状態を考え対応したのです。
三成の気配りに感心した秀吉は、三成を召し抱えることにしました。
田口八重さんと三成の逸話は、「本来のおもてなし」とは、相手の状況を踏まえた対応であることを教えてくれます。
しきたり通りの対応は「本来のおもてなし」の対極にあります。
そもそも今やものづくり企業と言えども、サービスなしでは成り立ちません。マーケティングの巨人と言われたセオドア・レビットも、こう述べていました。
「サービス業というものは存在しない。サービスの要素がほかの業界と比べて多いか少ないかの違いであり、すべての業界でサービスが行われている」
御社のサービスは、お客様へ「本来のおもてなし」を提供しているでしょうか?
■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちらへ。
■Facebookページでも、色々な情報がご覧になれます。