私はとても多くのビジネスパーソンの方々から、何度もこんな話を聞いてきました。
「市場が衰退しているので、厳しいです」
マーケティングの大家・セオドア・レビットによると、これは単なる「マーケティング努力の不足」。
厳しい言い方になりますが、要は市場への責任転嫁です。
クリーニング業界は、まさに長期衰退が続く市場です。
1993年から2018年の25年間で、58%縮小して市場規模は3425億円になっている、というデータもあります。
いまどき洋服は家で柔軟剤で洗えますし、Yシャツ着る人も減りました。洋服も安くなりました。
「業界が衰退している。もうムリ」と言いたくなりますよね。
でも実は、ドライクリーニングはかつて一大成長産業でした。ウール衣料の全盛期、ドライクリーニングは衣料を痛めず簡単に洗う唯一の方法だったからです。同様に、あらゆる産業は例外なく成長産業でした。現在低迷する百貨店・アパレル・家電も、当初は成長産業でした。
しかし商品は放置すると必ず陳腐化します。
原因は市場の衰退ではありません。
マーケティングの失敗です。
クリーニング店も、いくらでも打ち手はあります。現実に「着た洋服を気持ちよく着られる状態に戻したい」というニーズは、増えているからです。私はボタンが外れた時、近所のビッグママでボタン付けをお願いしています。洋服のお直し業者は成長しています。
コインラインドリーの国内店舗数も、15年間で2倍に増え続けています。
クリーニング店は「自分たちはドライクリーニング業だ」と製品中心で考えず、「洋服を気持ちよく着られる状態にする衣料再生業だ」と顧客中心で考え、手を打てば、再び成長します。
実際、顧客の新たなニーズを掴み、挑戦しているクリーニング店は結構あります。
・冬物衣料の保管サービスは急増しています。衣類をクリーニングして、倉庫で保管します。
・介護施設や病院の入所者や患者から肌着などの私物を回収し、選択して返却するサービスもあります。独り身の人が多いのに対応したサービスです。
・家庭で洗うのが難しいマットレス洗いの技術を開発して展開するクリーニング業者もあります。
ちなみに先に紹介した洋服お直しのビッグママも、顧客中心の考え方を徹底しています。
先日、ボタン付けをお願いに行った時、ビッグママでこんなメニューを見つけました。
「通園グッズ作成を承ります。通園バッグは7200円から」
幼稚園や保育所では、入園する際に「バッグは手作り」と指定しているそうです。でも裁縫経験がない人は男女問わず多いのが現実。そこで衣料の端切れを使い、いかにもお母さん手作り風にバッグを作ってくれるそうです。
顧客の悩みを掘り起こせば成長の種は必ず見つかるのです。
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