戦略で相手の面子を考え始めると、プロジェクトは失敗する


事業戦略で何よりも重要なのは、首尾一貫性です。

・事業では何を狙うのか?
・そのために顧客のどんな課題に応えるのか?
・その課題への解決策は何か?
・解決策を実現する商品やサービスをどのように提供するのか?
・顧客にどのように伝えるのか?
・顧客にどのチャネルを使って販売するのか?
・価格はどうするのか?

戦略ではこれらが首尾一貫していることが必須です。

筋の悪い戦略は、狙いが明確でなかったり複数あったりします。そして課題も明確でなく、各要素もバラバラ。こんな戦略は、まず失敗します。

往々にして筋の悪い戦略は、戦略を決める段階で、メンバーの面子を考え始めることで生まれます。全員の意見を取り込んで戦略を立てるのは最悪。狙いが複数あったり、曖昧になったり、本来は必要がない要素が入ったりします。

「一生懸命考えた仲間の面子を立てたい」という気持ち、痛いほど分かります。
しかし面子を立てて筋の悪い戦略になり、失敗するのは本末転倒です。

そもそも戦略を考える各メンバーは、「いい戦略を作るには、自分の案は喜んで捨てる」ということを腹から納得することが必要です。

そしてリーダーは「全員の案を平等に取り入れる」という安易な道は選ばず、チームで納得いくまで議論して考え抜き、複数案を元に最も優れた一つの案を生み出すことです。

ここで行うべきは、弁証法の「止揚」という考え方です。
ちょっと難しい言葉ですが、そのキモは決して難しいことではありません。

A案と反対のB案があった場合、妥協案を作るのではなく、徹底的に議論をすることで、より優れたC案を作り出すという考え方です。

たとえばこんな案があったとします。

A案:店舗をリニューアルして、新商品をガンガン売るべきだ
B案:今どき消費者はスマホで買う。店舗では売れない

これだとA案とB案は真っ正面から衝突してします。
そこで私たちは、ついこんな妥協案を考えがちです。

妥協案:店舗をリニューアルして新商品を販促するとともに、並行してスマホでも売る

これだと事業の戦力が分散されてしまいます。これが「筋が悪い戦略」です。

そこで妥協するのではなく、メンバーでA案とB案について率直に議論します。

「店はもう古いよ。新商品を店に置いても、結局店では買わずにスマホで買う人多いでしょ」
「でも、スマホだけでも限界あるよね。商品の実物を触らないと、お客さんは買わないし。店は必要なんじゃない?」
「あ、それなら店で売ることに拘らなければいいんじゃないの?」
「確かに。店はショールーム化すればいいのかもしれないよね」

現実にはこんなに簡単ではないでしょうけれども、本音でこんな議論ができれば、より優れたC案が出来ます

C案:店は商品を見せるショールームに徹して売らない。販売はスマホで行う

実際にこれを実現しているのが、電気自動車のテスラです。
テスラは1000万円以上の車もありますが、本を買う感覚でスマホで買えます。
実物はテスラの店舗で確認できます。

戦略で相手の面子を考えて、妥協案で安易に決めると、筋の悪い戦略が生まれ、プロジェクトは失敗します。
徹底的に議論をして考え抜きましょう。

 

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