極上コーヒーは障がい者の「強み」から生まれた


美味しいハンドドリップ・コーヒーを淹れるコツがあります。

コーヒーの生豆には、実は虫食いや欠けた生豆が混入しています。これらは渋みやえぐみのもと。これを丹念に取り除いて選び抜いた生豆をロースターで焙煎し、焙煎したコーヒー豆を細かく挽いて、適温のお湯を丁寧に注ぐと、極上のコーヒーが出来上がります。実に様々な手順を経ますが、それぞれの段階に独特のワザが必要になります。

5月18日放映のテレビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」を見ていたら、このコーヒーを美味しく淹れる店の特集がありました。東京・神保町にある「Social Good Roasters千代田」というお店です。

ここは店内で豆を焙煎し、一杯ずつハンドドリップで丁寧にコーヒーを淹れています。お値段は一杯500円から。決して安くありませんが、お客さんからは「苦みや渋みを感じない。凄く素直に飲める。香りがいい」と好評です。

実はこの店で働いているほとんどの従業員には発達障害などがある障がい者です。彼らはここで働きながらコーヒー技術を学んでいます。彼らが作るコーヒーが、とても美味しいのです。

ポイントの一つは、冒頭で紹介した生豆の選別。

生豆に混入している虫食いや欠けた豆などを丁寧に取り除くのが、「ハンドソーティング」という工程。一粒ずつ、見た目だけでなく感触を確認しながら、丁寧に取り除いていきます。ついつい投げ出したくなる作業ですが、一つのモノゴトに徹底的に集中できるのは彼らの強み。ジックリと集中しながら高品質な生豆を選び抜いていきます。

そんな彼らは、この店で一流のバリスタを目指しています。

番組を見て、とても感動しました。

「一つのモノゴトに集中して周りのことが目に入らない」という彼らの特性は、この店ではお客様に高い価値を提供できる大きな強みになっているのです。

よく人の「強み」とか「弱み」といわれますが、これは状況次第。そこにあるのは「その人ならではの特性」でしかないのだと改めて思いました。

「弱点を克服しよう」と考えるのではなく、一見すると弱点に見えるかもしれない自分の特性を「強み」に活かせる居場所を多くの人たちが見つけられれば、人々がより幸せに暮らせる社会になっていくのではないか、と思いました。

 

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