ある日本を代表するメーカーは、海外進出の販路確保のために数千億円を投資し、海外販社を買収しました。
しかし買収で難しいのが、買収後に買収した会社を自社に統合する作業。全く違う企業文化や社内業務、人事施策を持つ会社が一緒になるのはなかなか難しいものです。
このメーカーは数千億円を投じたものの、買収後の統合が上手くいきませんでした。結果、数千億円を投資したにもかかわらず海外進出は頓挫。会社は大きな損失を出しました。
世の中の買収は「成功確率は半分以下」と言われており、そもそもリスクが高いのです。
しかしここで「自社で販路を持とう」ということに固執するのはやめて、マーケティング発想で「自社で売らずに売上を拡大しよう」と考えれば、新たな可能性が見えてきます。
それは、チャネル戦略を考えること。
たとえば通信機器大手シスコシステムズは、優れたチャネル戦略で成長してきました。
創業直後は直販9割でしたが、付加価値再販業者(VAR)と呼ばれる販売パートナー経由で売上の9割をあげるようになりました。
そのシスコは、当初売上が大きな販売パートナーに対して値引率を高く設定していました。売れば売るほどシスコからの卸値が安くなり儲かるわけです。これでシスコは成長しました。
しかし2001年、ITバブルが崩壊して市場が縮小。同じシスコの販売パートナー同士で、売上を伸ばすために値引き合戦をするようになってしまいました。これってパートナー同士は消耗戦ですし、顧客も一見安くなりますがサポートレベルは下がりかねません。長期的に見てシスコも困ります。
そこでシスコは売上で販売パートナーの値引率を高くするのはやめて、新技術スキルを積極的に獲得する販売パートナーの値引率を高くするようにしました。
この結果、3年後には自社も販売パートナーも業績は回復しました。
シスコは、販売パートナーを育てる優れたチャネル戦略を構築し、常に変革し続けることで業績をあげたわけです。
日本から海外へ進出するメーカーの中にも、進出先で現地に合わせた優れたチャネル戦略を構築し、成果を挙げている会社もあります。
マーケティング戦略の中で、つい疎かになりがちなのがチャネル戦略です。
後回しにされがちな理由の一つは、チャネル戦略には利害関係者が多いためです。
たとえばシスコのように販売パートナーに「これから売上での値引きはやめて、新技術スキル獲得での値引きに変えます」と言ったりすると、販売パートナーから…
「儲けが減るじゃないか!」
「変えられると困るんだよ!」
「これまでのお付き合い、何だったのよ!」
というクレームが殺到しがちです。
そこで問われるのが、顧客価値最大化のために、
「それでもやる!」
という、迎合しない断固たるリーダーシップです。
ちなみにシスコが先に書いたチャネル戦略を変革した時は、販売パートナーの半分がパートナーを辞めてしまいました。しかし3年後、残った販売パートナーの運転資本利益率は3倍増。顧客満足度も大きくアップしました。「顧客の価値最大化」に賛同して新技術に投資したパートナーは利益を大きく上げ、顧客もそのことを高く評価したわけです。
後回しにされがちだからこそ、チャネル戦略はやる気次第で一気に差が付くのです。
明日9月8日(水)の朝活永井塾のテーマは、このチャネル戦略についてです。今回も多くの方々と、このテーマについて一緒に考えていきます。
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