PRは、広告ではありません


「あ、PRね。広告のことでしょ。でもウチは宣伝しないんだよね」

マーケティングの仕事をしている方でも、こんなことを言う人がいます。

これは大きな勘違い。PRと広告は、全く違います。
「正反対」と言っても過言ではありません。
しかし意外と多くの方が、このことをご存じないようです。

PRはパブリック・リレーション(public relation)の略です。
ひらたく言えば「広報活動」のことです。(実際にはより広い概念ですが)

よく新製品発表などで、記者やメディア関係者を集めて製品説明会を行いますよね。
そして記者たちは新聞・雑誌・Web記事などでその様子を記事にします。
テレビのニュースで流れることもあります。
これは典型的なPRの活動です。

広告とPRを比較すると、こんな違いがあります。

        【広告】   【PR】
伝達手段    広告枠    メディア、SNS
メディア支払い 有り     無料
発信者     企業     メディアや消費者
企業による管理 100%管理可能 全く管理不可
代理店     広告代理店  PR会社
メディア担当者 広告部    記者・編集者
信頼度     低い     比較的高い

このように説明すると、「お。PRって無料なんだな。つまり無料の広告ってことだね。わかった」という人がいたりするのですが、これは大きな勘違いです。

広告とは違って、PRはどんな形で世の中に情報が出るかは管理できません。「まったく無反応」ということは少なくありませんし、伝え方が悪いと大きく誤解された情報が出回り、現場が苦労することもあります。

「だったらメディアに出す情報を事前チェックすればいい」という方もいるのですが、これはまさに「PR=無料の広告」という勘違いです。記者やメディア担当者が客観性を持って報道することが、読者や視聴者に対する信頼感に繋がります。情報発信者に対して第三者のスタンスを維持する必要があるのです。ですのでPRでは基本的に事前チェックはできません。このようなメディアの洗礼を受けた末に世の中に出されるので、PRは信頼度が広告よりも高いのです。

なかには「おカネと手間をかけて発表会をしたのに、どこも取り上げない」と言う人もいます。

記者やメディア担当者は、読者や視聴者にとって価値がある情報を発掘しようとしています。

あなたはニュースを見ていて、「お!これ凄いゾ」と思って見入るのは、どんなニュースでしょうか?
「どこぞの大企業が新商品を発表した…」とかいうニュースは興味ないはずです。「これまでになかった商品」とか「これが欲しかったんだ」「驚いた」「世界最高」といったニュースなら、見ようとするのではないでしょうか?

記者やメディア担当者も同じです。労力をかけて取材をするのは、価値がある情報を世の中に届けたいからです。どこもニュースで取り上げてくれないのは、「ニュースバリューがない」と思われた結果なのです。

実際には、巧みなPR活動で商品を広く世の中に認知させる企業は少なくありません。

その典型がアップル。新商品が出るとこぞってメディアでは詳細を報道します。これは消費者がアップルの新商品情報を求めているからです。

「それ、アップルだからでしょ? 参考にならないよ」という方もおられるかもしれませんね。

しかし資金力に劣る小さな会社や組織だからこそ、ニュースバリューさえあれば、PR活動は実に有効です。

バルミューダの寺尾玄社長は、新商品を出す度に記者会見で商品の思いを語ります。
「子供たちの目を守りたかった。だからBALUMUDA THE LIGHTを作った」
「パンが美味しくなるなら、ご飯も美味しくなるはずだと考えた。だから18ヶ月かけて、BALUMUDA THE GOHANを作った」

鳥取県の平井知事は「ダジャレ知事」で有名です。
「鳥取にはスタバはないですけれども、日本一のスナバ(鳥取砂丘)があります」
「私たちは、カニはあるけど、カネはない。(だから知恵を出している)」

また「日本一の星空の村」として今や全国ブランドの阿智村でプロジェクトリーダーを務める松下さんとお話しした時に、100名以上が記載されているメディア関係者リストを見せていただいたことがあります。松下さんは何か星にまつわる阿智村のニュースがあるたびに、それをメディアで取り上げられやすい形に加工して、プレスリリースにしてこのメディア関係者に送っています。阿智村が「日本一の星空」ブランドを獲得したのは、こんな地道な努力を重ねた結果です。

広告とPRの違いを理解し、PR活動を地道に積み重ねることで、強いブランドが築き上げられるのです。

 

■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちらへ。

Twitterでも情報発信しています。