福利厚生アピールで人材募集。いいの?



こんなお話しを聞きました。

中小企業には、なかなか人材が集まりません。
そこで合同で採用面接会をすることがあります。
しかしそれでも応募者がゼロで、悩んでいる社長さんがいました。

あるコンサルタントが、こんなアドバイスをしました。

「福利厚生をアピールするといいですよ」

そこで社長さんは「当社は福利厚生が充実。夫婦で1泊付の人間ドックも受けられます」とアピール。すると面接希望者が殺到し、社長さんのお悩みが一気に解決しました。

さて、あなたはこの話を聞いて、どのように思われるでしょうか。

まず私は「とても現実的な方法だな」と思いました。
人手不足で悲鳴を上げている社長さんは、かなり助かるでしょう。
一方で「これでいいのだろうか?」とも思いました。

従業員の採用は、言うまでもなく会社にとって大きな投資です。この会社の問題は、会社のビジョンや業務内容よりも、表面的な福利厚生で判断する人材を集めていることです。確かに働く人にとって福利厚生は重要ですから、そうして会社を選ぶのは大事なことでしょう。

一方で、会社にとってこの方法が有効か否かはケースバイケース。「従業員に何を期待するか」で変わってきます。

仕事が単純作業のルーチンワークで、「このやり方でやってください」と指示すれば誰でもその通りできるような仕事であれば、「福利厚生が充実していますよ」とアピールして人手をかき集める方法も有効でしょう。実際に、そのような仕事は、まだまだあります。

しかしもし仕事が様々な創意工夫を必要とする創造的な仕事であれば、意欲的で自律的に動ける人材が必要です。そこで必要になるのが、福利厚生だけを求めるのではなく、会社が目指す方向に心から共感する人材です。

でもこのように言うと、この社長さんからこのように言われそうですね。

「確かにウチも創意工夫が必要な仕事だ。でもそれは理想論だね。まずは会社を動かさなければいけない。そのためにはまずは人が必要なんだ。それにいくら募集しても、うちのような会社に、目指す方向に共感するような人材なんて来ないよ」

もしそうだとしたらば、求職者から見て会社の目指す方向が明確でなかったり、仮に目指す方向が明確でもその方向に共感する人がいなかったり、情報発信が不足していることの方が、問題なのかもしれません。

これは企業経営者だけでなく、会社のマネジャーでも同じです。

自分の課や部が人手不足で新しい人材が必要な場合、自分の部門で何を目指すのかを明確にして、そのために必要な人材を社内から探して、「ここで仕事をしてみたい」と思っていただくことです。そんな人材が集まる部門が、強い部門になるのです。

 

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