「歯の白さ」のマーケティング


ある日、妻に言われました。

「歯が黄ばんでいるよ。歯医者さんでホワイトニングしたら?」

あなたはご自分で、自分の歯がどんな色かをご存じでしょうか?
私は全く意識していませんでした。
洗面所で身支度する時も、口は基本的に閉じたまま。

早速洗面所で自分の歯を見ると、意外と黄ばんでいます。ちょうど湯飲みが茶渋で色が付くのと同じで、長年歯を使っていると食べ物の色で染まるようですね。

そこで早速、歯医者さんにホワイトニングをしてもらうことにしました。

ホワイトニングの当日、まず説明を受けます。

「1回目で、ある程度白くなります。でも2〜3回行うと、より白くなります」

と言われながら、診察台にあるディスプレイで、3人の実例写真(1回目、2回目、3回目)で見せていただきました。歯がもともと白い人。やや黄色い人。茶色い人の3人です。私は茶色い人のケースと同じ状態でした。

どの人も、1回目でそこそこ白くなっています。しかし3回目になると「芸能人?」と思えるほど白くなっています。

説明後に、まず承諾書にサイン。そして実際のホワイトニングです。

施術前に自分の歯の写真を撮り、90分の施術後にまた歯の写真を撮って、ビフォーvs.アフターの比較をします。

結果は事前の説明の通り、そこそこ白くなりました。しかしもっと白くしたいので、早速2回目の予定を入れました。

帰宅して妻にホワイトニングした歯を見せると、「すごく白くなった。もうこれでいいんじゃないの?」と驚かれましたが、「もっと白くなるので、3回目もやることにした」と答えると、「へぇ〜」。

このホワイトニング・ビジネス、なかなかよくできています。カギは「事前説明」です。

人の期待値は主観なので、人によって様々です。だから期待値を事前にセットする必要があります。

事前説明をしないと、こうなりがちです。
「1回で真っ白になると思っていたのに、そうでもないじゃん」
「2回目も必要なの? またお金取るの?」

事前説明した上で、施術前に承諾書にサインをさせることで、こうなります。
「ほぼ事前の説明通りだね」
「2回目と3回目をすると、もっと白くなるのか。予算があればやろうかな」

事前説明ではさらにこんな話もありました。

「一度ホワイトニングをしても、歯は徐々にまた色が付いてきます。歯の白さを保ちたければ、定期的なホワイトニングがオススメです」

つまり事前説明により「消費者の期待値」のマネジメントをすることで、
①顧客満足度向上を図りつつ、
②2回目・3回目の予約に繋げて売上拡大を図り、
③さらにリピートオーダーに繋げているのですね。

恐らくホワイトニングの技術や施術道具を販売する会社が、この「事前説明の徹底」というマーケティング手法とセットで、歯科医に売り込んでいるのでしょうね。

ポイントは「1回だけでは白くならない」「白さはホワイトニング後、徐々に失われる」というデメリットを正直に伝えて、そのデメリットをビジネスに繋げている点です。

正直に伝えることで、デメリットを転じて、売上拡大に繋げる。

このやり方は、私たちのビジネスでも参考になるなぁ、と実感しました。

 

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