*** 今回はあえて画像は外しました ***
日本経済新聞夕刊で2023年3月27日〜31日に連載していた「【人間発見】誉田屋源兵衛 十代目 山口源兵衛さん」は、実に読み応えがありました。
連載第1回目は、こんな紹介文から始まります。
「1738年創業、京都市室町に本社を構える誉田屋源兵衛の帯は、日本の美と技巧の粋を尽くす。生みの親は当主の十代目山口源兵衛さん(74)。国内外に熱狂的信奉者を抱える業界の異端児は今、技術承継の難題に対峙する。」
妥協せずに徹底して本物を追求し続けるその姿勢は、読んでいて思わず背筋が伸びます。
たとえば数百年前の安土桃山時代の能衣装は、色遣いも表現もすごく、今の西陣では再現できません。原因はコストダウンです。
源兵衛さんは「なんで今の西陣はでけへんのや、と情けなくなった。」と嘆きます。
そんな源兵衛さんが作る帯や着物は、英国ヴィクトリア&アルバート博物館の永久収蔵品としても提供されていますが、こうも付け加えています。
「ものすごいええもんは博物館の人に見せてへん。持っていかれたら困るからや。若い人らが実物を見たい時、俺の手元になかったらどないすんねん。」
源兵衛さんの悩みは、跡継ぎです。
それも「自分を無視できるような」跡継ぎです。
そんな源兵衛さんは、日本の美意識を世界や若い人に伝えるために、インスタグラムで30秒の動画を作り始めています。kondayagenbeiというIDです。
源兵衛さんは、こうおっしゃっています。
「職人さん以外は、一度見ただけじゃ何言ってるかわからんやろな。けど若い人には、これを見て何かを感じてほしいんや。」
源兵衛さんの「ほな、言うたろか」という言葉で始まる観念的な独白と映像は、必見です。是非ご覧いただきたいので、文字にすると陳腐になってしまうことを承知の上で紹介すると、第一回目はこんな感じです。
ほな言うたろか。
全ての文様には
意味があったんや
この着物はな、
破れ格子や
倒幕の柄や
破るは、
壊すや
変わることが
生きることや
ご興味がある方は、ぜひ日経の連載記事と、インスタグラムの動画をご覧いただければと思います。
誉田屋源兵衛のホームページも素晴らしいですよ。
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