「お客様が買う理由」を作るカギは、すぐそこにある


鍵

講演やワークショップで、よくいただく質問があります。

「新規事業に取り組んでいますが、なかなか立ち上がりません。『お客様が買う理由を作ろう』と言われても、ヒントがありません。困っています」

こんな時、私は採用実績と採用したお客様の採用理由をお伺いするのですが、なかなか立ち上がらないケースでは、共通点があります。

ある程度の期間、新規事業に取り組んでいるので採用実績は数件あることが多いのです。しかし採用したお客様がなぜ採用したのか、具体的に把握できていないのです。「実際にお客様には会ったことがない」という場合すらあります。

そこでこんなご提案をします。

「実際に採用したお客様に会って、どのように使っているのかお話しを詳しく聞いてみると、色々なヒントが得られるかもしれませんよ」

そして実際にお客様に会ってみると、お客様は「いやぁ、大きな課題があってね。色々な商品を試してみたんだけど、これを解決できるのはオタクの商品しかなかった。だから採用したんだ」とおっしゃることも多いのです。

つまり、自分たちが想像もしなかった使い方をしているのですね。

 

よくご紹介する事例は、業務用ミラー最大手のコミーが、業務用ミラーを手がけるようになったきっかけです。

40年ほど前、コミーは看板業を営んでいました。ある日、コミーは凸面ミラーを両面に貼り合わせて天井から吊してクルクルと回転させる「回転ミラー」を作り、商品展示会で出展しました。すると1個数万円もする商品にも関わらず、あるスーパーから30個もの注文が来ました。

数ヶ月後、そのスーパーでどのように使われているのかを見に行ったところ、店内の至る所に回転ミラーが吊されていました。なんと万引き防止用に使われていたのです。

万引きで倒産する店もあります。スーパーにとって万引きは死活問題。コミーの回転ミラーは、万引き防止に役立っていました。

これがきっかけで、コミーは業務用ミラーという市場があることを知り、様々な業務用ミラーのメーカーに成長していきました。

 

このコミーのような話は決して例外ではないことを、私は企業のお客様と一緒に新商品開発に関わりながら実感しています。

新商品を採用するお客様は、リスクを取るタイプのお客様です。このようなお客様は、何か大きな課題に直面すると、様々な商品を試した上で、ベストな解決策を見極め、採用します。そしてコミーが当初、回転ミラーが万引き防止用で使えるとは想像もしなかったのと同様、商品を作っている立場ではまったく気がつかなかったヒントを教えてくれることも多いのです。課題を持っているのはお客様だからです。

お客様が買わなかった理由は、高かった、機能が合わなかった、買いにくい、何か気に入らない…、それこそ無数にあります。これらを一つ一つ追いかけるのは大変ですし、買わなかった理由を1つずつ潰していっても、徒労に終わることが少なくありません。

一方で、お客様がお金を出して買った理由は、必ずあります。理由がないのにお金を出す人はいません。何らかの課題を持っているのです。そこを徹底的に掘り下げれば、大きな発見に出会うことも多いのです。

 

「お客様が買う理由」を作るカギとなるお客様の課題は、実際に買ったお客様のところにあるのです。

実際に買ったお客様から、学ぶようにしたいものです。

 

 

 

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