その販売代理店は、海外メーカーの家電商品に目を付け、日本国内で大ヒットさせました。この商品は日本で大きな話題になり、一大市場を創り上げました。
その後、その海外メーカーは日本に子会社を作ることになりました。
販売代理店からは、多数の熟練セールスが好条件で新子会社に引き抜かれてしまいました。
そして販売代理店契約が切れたため、販売代理店は自らが育てた大ヒット商品を販売できなくなってしまいました。
販売代理店は「一から出直しだ」と気を取り直し、再び海外でまだ誰も気づかないヒット商品の種を見つけて、日本に紹介して販売をしています。
しかし基本的な取り組み方法はまったく変えていません。
何かこの販売代理店の問題か、わかりますでしょうか?
ビジネスというゲームで勝負の勝敗を決めるのは、「付加価値」です。
この付加価値を左右するのは「希少性」です。
海外メーカーは「商品力」という希少性を持っていました。販売代理店はその希少性に目を付けて、日本国内に紹介して販売し、大成功させました。
しかしこの販売代理店も、実は「希少性」を持っています。
「日本市場を熟知し、新商品を発掘してヒットさせる」という類い希なる能力です。
新商品をヒットさせたのも、この希少な能力を発揮したおかげです。
一方でゲームで勝ち続けるためには、この希少性を活かした戦略が必要です。
海外メーカーから見ると、新商品販売開始の時点で、この販売代理店は大きな付加価値(=希少性)を持っていました。
販売代理店が海外メーカーの視点でゲーム全体を俯瞰できれば、たとえば最初の段階で「日本の販売子会社を共同出資して作り、一緒に販売しましょう」と交渉して、新商品が成功した際の成果を分け合う戦略を取ることで、自社の希少性をより活かせた可能性があります。
ちなみにスターバックスコーヒージャパンは、当初はスターバックスとサザビーが50%ずつ出資して始まりました。
この販売代理店は、ビジネスというゲームを俯瞰する視点がないために、「新商品をヒットさせる」という自社の希少な能力が活かせていないのです。そして同じパターンを繰り返しているようにも見えます。
相手から見た自社の希少性を把握していないために、このように希少性を活かせない企業が多いように思います。
「卑怯じゃないか!倫理的ではない」
「極めて浅い考え方だ。ビジネスは信頼関係だ」
…と反発する人もいるかもしれません。
しかししたたかに考え抜き交渉上手な海外企業から見ると、このような企業は「将棋のルールを知らず将棋を指している素人」に見えるのかもしれません。これが現実でもあります。
もちろん、必ずしも相手の真似をする必要はありません。
しかし、相手の手の内を学ぶことも必要だと思います。
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