「悪い癖」をやめよう


私、お恥ずかしいことですが悪い癖があります。いつもひと言多いのです。
たとえば何か言われると、必ず「よかれ」と思って

「○○するともっといいですよ」

と必ずひと言付け加えてしまうのです。

この癖、マネジャーとしてはちょっと問題です。「■■をしたい」という部下に、「○○するといいですよ」というと、数%程度はよくなるかもしれませんが、その瞬間に部下のアイデアは私のアイデアで「汚染」されてしまい、部下のやる気は50%下がってしまうかもしれません。

コンサルティングや研修担当の仕事ならば、これはある程度は必要なスキルかもしれません。しかし参加者が「これやりたい」と前向きに考えているのに過度に干渉すると、これはこれで考え物ですよね。

「なくて七癖」といいますが、このように私達は知らぬ間に悪い癖を身につけていて、自分の行動が相手の目にどう映るかを意外と知りません。

経営幹部になるような人たちは、現場社員や中間管理職時代に最適だった仕事のやり方が、経営幹部になると悪い癖に変わってしまうことがあります。

たとえばマネージャーの中には、「自分も意見を出して自由闊達にチームで議論する」という方法で業績を伸ばしてきた人がいます。

この方法は部長レベルでは最適だったかもしれませんが、社長になると組織を停滞させる可能性もあります。
経営トップの言葉の重みは、部長の言葉よりもはるかに重いからです。
意見のつもりでアイデアを出しても、社長の口から出るとそれは瞬間に指示となり、社員は黙って言いなりになります。でも部長時代のやり方が正しいと思い込んでいる本人は、これがわかりません。「成功のパラドックス」ってヤツですね。

米国の大ベストセラー『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』(マーシャル・ゴールドスミス著)では、この原因と対策が詳細に書かれています。

ちなみに本書では、「20の悪い癖」と各々の対策が書かれています。

①極度の負けず嫌い
②何かひとこと価値をつけ加えようとする
③善し悪しの判断をくだす。
④人を傷つける破壊的コメントをする
⑤「いや」「しかし」「でも」で文章を始める
⑥自分がいかに賢いかを話す
⑦腹を立てているときに話す
⑧否定、もしくは「うまくいくわけないよ。その理由はね」と言う
⑨情報を教えない
⑩きちんと他人を認めない
⑪他人の手柄を横どりする
⑫言い訳をする
⑬過去にしがみつく
⑭えこひいきする
⑮すまなかったという気持ちを表わさない
⑯人の話を聞かない
⑰感謝の気持ちを表わさない
⑱八つ当たりする
⑲責任回避する
⑳「私はこうなんだ」と言いすぎる

私はリストを見て、つい「うっ、ゴメンナサイ…」とつぶやいてしまいました。

「イタい。コレって自分のことですか」と思う人は多いのではないでしょうか? でも安心して下さい。ほとんどの人はどれか必ず当てはまります。

過去の成功体験は、立場が変わると「単なる迷信」に変わります。しかし多くの人は自分が迷信に囚われていることがわかりません。「このやり方のおかげで自分は成功した」と考えます。そして組織の上に行けば行くほど、この弊害が様々な面で出てしまうのです。

この本の原題(”What You Get Here Won’t Get You There”「今までのやり方では、この先うまくいきませんよ」)は、まさにこの状況を表現しています。

対策は、過去の成功してきた行動を見直すこと。試しに家族や同僚が嫌がるあなたの悪癖や行動を一つ取り上げ、自問自答してみてください。

それを続けるのは以前に何かいいことがあったからでしょうか?
その行動は現在、プラスの結果を出しているでしょうか?
もしマイナスの結果ならば、単なる迷信を正当化しているだけかもしれません。

ドラッカーはこういいました。

「私が今まで出会ったリーダーの半数は、何をすべきか学ぶ必要はない。彼ら学ぶ必要があるのは、何をやめるべきかだ」

私たちは新しいスキルを身につけようと努力しますが、自分の悪い癖はなかなか気がつかず、直そうとしません。

ある意味、単純なことです。
新しいことを始める必要はありません。
今やっていることを、やめるだけです。単純ですけど、なかなか難しいですよね。

たまには悪い癖を見直して感じがいい人になると、幸せになると思います。(…と、私も自戒をこめて反省を続けたいと思います)

   

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