サラリーマン起業は脱サラせず、ゆるく副業で始めよう


「生半可な覚悟で起業に挑戦するなんて論外だ。オレの経験では、自ら退路を断ち、いちばん乗りを目指し、アイデアを絞り込んで本気で取り組まない限り、起業は成功しないね」

このように自分の成功体験を語る起業家は、世の中に少なくありません。

しかし元々、起業とは成功確率が低いもの。

「退路を断って起業するぞ」と脱サラして、失敗して再就職しようとすると、なかなか就職できないのが現実です。日本では脱サラして起業に失敗した人が再就職するのは難しいのが、厳しい現実なのです。

サラリーマンの起業は、いわゆる起業家の起業とは若干事情が異なります。そこでぜひお勧めしたいのが、最近話題の「副業」による起業。

これは私自身の経験でもあります。

30代の頃から独立を考え、週末を使って写真家を目指したりと、色々とあれこれ試行錯誤していました。やっと具体的になったのが40代後半。会社の承認を得て、マーケティングの本を副業で書き始めたときです。

執筆を始めて3年目に『100円のコーラを1000円で売る方法』がベストセラーになりましたが、素人芸人が一発芸で話題になり独立後は全然売れないという話も多いので、「独立はまだ早いな」と思って会社員と執筆の二足のわらじを続けていました。

そのうち講演・研修依頼をいただくようになりました。平日の依頼は勤務中なので丁重に辞退しましたが、週末の依頼は会社と利益相反しない限り、無償で引き受けていました。

ある日、「ぜひ謝礼を払いたい」という会社がありました。 当時、私は人材育成部長として外部に社員研修を発注する立場。その発注額と同額でした。
「IBMを辞めても、私に依頼しますか」と尋ねると、「独立してくれると、お願いしやすくなるので助かる」というご返事。

ちょうど『100円のコーラ』第3弾の刊行直前でした。第2弾の感触から確実に売れると予想できましたし、著書刊行後に講演・研修依頼が急増することも予想できました。

そこでこのタイミングで独立。今年で起業9年目ですが、おかげさまでビジネスは常に順調です。

実はこの方法、「ハイブリッド起業」と名付けられています。

組織心理学者のアダム・グラントの著書『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』(三笠書房)で、成功する起業家は後発で、リスクを徹底的に避け、アイデアの量で勝負していることを、圧倒的な数の事例と研究で実証しています。

また経営学者の入山章栄教授は著書「ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学」で、スウェーデンのハイブリッド起業に関する研究結果を引用して、「会社勤務と並行して起業するハイブリッド起業は、起業リスクを軽減できる。現代の日本は、脱サラして起業に失敗した人が再就職するのは難しい。ハイブリッド起業は、起業の失敗リスクを大きく軽減できる可能性がある」と述べています。

起業で大事なのはリスクを取ることではありません。リスクのバランスを取ることです。ある分野で収入を確保しておくことで、別分野で大胆にオリジナリティを発揮する自由が得られます。中途半端な状態で焦ってビジネスを始めるプレッシャーからも逃れることができます。

一方で時間もかかるので、人生の中での時間を含めたリスクのバランスをどう考えるかも重要です。

このテーマは、2月2日の朝活永井塾でも取り上げます。もしよろしければ、ぜひどうぞ。

   

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