アイデアを得るためには、方法論があります。
自宅の本棚を見ていたら、十数年前に読んだジェームズ・W・ヤングの「アイデアのつくり方」という本が目に入りました。100ページ程度の内容で1ページ当りの字数も少なく、久し振りに読みましたが、電車の中で15分で一気に読めました。改めて非常に示唆に富む内容でしたので、ポイントのみご紹介します。
—-(以下、引用)—-
・アイデアの作成は、一定の明確な過程であり、流れ作業である。この技術を修練することが、これを有効に使いこなす秘訣である (p.18)
・アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない (p.28)
・以上がアイデアの作られる全過程ないし方法である。
第一:資料集め-諸君の当面の課題のための資料と一般的知識の貯蔵をたえず豊富にすることから生まれる資料と。
第二:諸君の心の中でこれらの資料に手を加えること。
第三:孵化段階。そこでは諸君は意識の外で何かが自分で組み合わせの仕事をやるのにまかせる。
第四:アイデアの実際上の誕生。<ユーレカ!分かった!みつけた!>という段階。そして
第五:現実の有用性に合致させるために最終的にアイデアを具体化し、展開させる段階。 (p.54-55)
—-(以上、引用)—-
例えば、ニュートンは、本当に田舎道を散歩している最中に木からリンゴが落ちるのを見て、万有引力を発見したのでしょうか?
恐らく、彼は膨大な実験事実を蓄積し(第一の段階)、徹底的に思考を重ねて考えが行き詰まり問題が解けない状態に陥り(第二の段階)、しばらくその問題から離れているうちに無意識の創造過程が働き(第三の段階)、田舎道でリンゴが落ちるのを見た瞬間に「全てのモノはお互いに引合うのだ」というインスピレーションが働き頭の中にあるパーツが全てが繋がった(第四の段階)、ということなのではないでしょうか? その後に、得られた洞察を実際の理論に落とし込む作業を忍耐強く行ったのではないかと思います。
ベンゼン環も、思考を重ねてクタクタになった科学者ケクレが、蛇が自分の尾を噛んでどぐろを巻いている夢を見て、構造を思いついたそうです。
本書の初版は1940年で、もはや古典とも言える本です。私は新たに仕事を始めるにあたっていつも徹底的に資料を集めて、片っ端から読むことから始めているのですが、今から思えば、これは十数年前に本書を読んでからの習性だったようです。