昨日(8/22)の日刊工業新聞「企業:小林製薬 アイデア厳選 即製品化」で、小林製薬がいかにプロダクト・アウトではなくマーケット・インで新製品開発を行っているかが紹介されています。
小林製薬は、「熱さまシート」「アイボン」等、他にはないニッチな商品を開発し、それぞれの市場の半分以上のシェアを獲得しています。
小林製薬では、社員からは月に3万7千件の提案が出され、月一回のアイデアプレゼンテーション会議で小林社長自ら採用するかどうか判断し、意思決定の迅速化を図っています。
下記に、製品開発の取り組み方の部分を引用します。
—(以下、引用)—
小林は社員に「まず技術を考えるな」と徹底する。まずどのようなニーズがあり、どのようにアイデアを集めてくるかに注力。アイデア重視を前面に押し出している。マーケティング調査し、製品開発に着手した現場では、同社が「どろどろ開発」と呼ぶ開発手法を採る。開発、製造、マーケティング担当が垣根を越えてそれぞれ意見を出し合い、枠を超えた開発を重視している。
—(以上、引用)—
最初に技術から考えてしまい勝ちですが、あくまでニーズから考えることを徹底しています。
イノベーションを起こす一つのカギは、縦割り組織の弊害を克服し、いかに多くの人の知恵を集めて昇華していくかにあります。「どろどろ開発」は、まさにそれを実現する手法ですね。
—(以下、引用)—
出てきたアイデアを形にしても、顧客に選んでもらわないと意味がない。そこで小林製薬では「覚えやすく、リズム感があり、1秒でわかる」ネーミングをつけている。「熱さまシート」「アイボン」といった製品は、その変わったネーミングで、これまでに市場になかった新カテゴリーを作り上げた。
最初に出した製品は強い。「カテゴリー=商品名」となるからだ。同業他社がその後、類似製品を出したが、現在でも「熱さまシート」はその名前で定着している。ここに新市場を開拓する意義が隠されている。事実、「熱さまシート」は市場で半分以上のシェアを獲得しているという。
—(以上、引用)—
新市場創造と、最初に出す製品名の重要さがよく分かる話です。
新市場は、その市場に何らか名前が付かないと世の中では認知されません。「駅ナカ」も最初は「改札内グルメ」という名前で紹介されたりしましたが、「駅ナカ」という分かりやすい言葉が出来て広く市場に認知されました。詳しくはこちら。
新市場に最初に投入された商品名が分かりやすければ、消費者はその市場名をその商品名で代替して認知します。こうなると消費者は商品名を指名買いしますので、大きな市場シェアを確保できる、という好循環が生まれます。
「まず技術を考えるな」というのは、IT(=情報技術)業界では、長年の課題であり、なかなか実践が難しい課題でもあります。市場も消費者向けと法人向けという違いはありますが、IT業界に籍を置く我々も実現していきたいですね。
(8/23 20:45追記)
続編⇒『追加投資せずに、効果的な新製品開発を行う方法』
山口晃氏のアイデアのあたため方
昨晩NHKのトップランナーという番組(25日の再放送)で、画家の山口晃氏がゲスト