グローバル化と為替リスク:個人の場合


私は大学を卒業した1984年3月に、友人達とヨーロッパ旅行をしました。

この当時、1ドルは250円位しました。

今から考えると、円はとんでもなく安かったのですね。

1ポンドは確か280円位だったように記憶しています。(ネットで調べてみても確認できませんでしたので、間違っているかもしれませんが)

社会人の仲間入りのこの年、ロンドンのバーバリー本店で、なけなしのお金をはたいて、トレンチコートを購入しましたが、非常に高かったことをよく憶えています。でも、日本で買うよりもずっと安かったので、バーバリ本店には日本人が結構いました。

その後、プラザ合意が1985年9月。

円は強くなり、1987年には1ドルは120円台になり、1995年にはさらに1ドル80円まで進み、1ポンドも130円程度になりました。

欧米の商品は非常に安くなり、海外旅行ブームが起きました。

かく言う私も、国内旅行よりも海外旅行の方が安いので、よく海外に出かけては写真を撮っていました。

1月8日の日本経済新聞の記事「YEN漂流 「老後は海外」夢かすむ――北畑次官の誤算」という記事で、経済産業省の北畑事務次官の話が出ています。

北畑さんは、1986年に退職後に物価の安いスペインなどで優雅な老後を過ごすよう勧めた「シルバーコロンビア計画」を発案された方です。

22年前の1986年には、

—(以下、引用)—

「二千万円の退職金と月額二十万円の年金があれば夫婦で退職後の人生を海外でのんびり暮らせる」

スペインの一戸建て住宅(200平方メートル)は700-1000万円、生活費が一カ月に10万-15万円ですむと試算した。

—(以上、引用)—

という状況でした。

その後、2002年にユーロ流通が始まりました。スペインの物価はじりじり上昇、ユーロも強くなり、今や、

—(以下、引用)—

「外食すれば軽く40ユーロ(6400円)。ゴルフ代も上がる一方。年金の範囲内で暮らす計画はユーロ高で崩れた」

今も現地に残る夫婦の一カ月の生活費は1760ユーロ(28万円強)。シルバーコロンビア計画で想定した額の倍以上だ。「優雅な生活」からはほど遠くなってきた。

—(以上、引用)—

という状況になってしまいました。

オーストラリアやタイに移住した人達も、同様に苦労をされているようです。

以前、「南国で暮らす」で書きましたように、日本では海外移住がちょっとしたブームです。

言うまでもなく、これは円が現地通過と比べて圧倒的に強いことが前提です。

しかし、今年から始まった日本経済新聞の特集「YEN漂流」でも連載されているように、この流れは大きく変わりつつあるように思います。

個人レベルで考えると、短期レンジで旅行を考えたり、ショッピングする場合の為替リスクの管理は、単に買うのを控えたり旅行計画を見直せばよいので、それほど難しくはないと思います。

しかし海外移住は、10-20年間という長期レンジで考えるべきものですし、そもそも日本の年金は円で出ます。この長期間の為替レートの変動は、数倍とか、通貨によっては10倍にもなる可能性もあり得ます。個人にとっては非常に大きなリスクです。

ビジネスの世界ではグローバル化はどんどん進み、企業は様々な手段で為替リスクを相殺しようとします。

翻って、個人レベルで長期間の為替リスクをいかにマネージするか、….これは今後、より大きな問題になってくるのではないでしょうか?