昨日のエントリーはグローバル化と個人生活のことを書きましたが、今日は企業のことです。
1月9日の日本経済新聞の記事「YEN漂流私はこう見る コマツ社長野路国夫氏――もう円には頼まない」で、野路社長がコマツの対応についてお話しされています。
—-(以下、引用)—
・欧州向け投資家向け広報で、『株価が四年で六倍になった』と説明したところ、『ユーロ建てでは三倍だ』と切り返された。日本株で運用する海外投資家は『円』で見ていない
・欧州の競合他社は、東欧や中東、ロシアの成長をテコに業績を伸ばしている。コマツも需要が膨らむロシアに新工場を建てる
・アジアに先行投資をしたきっかけは超円高への対応だった。しかし今は違う
・グローバルな生産体制で、需要の変動に対して各地域の工場間でダイナミックに生産量を調整する。この体制構築に8年かかった。
・部品もグローバルに調達。例えば、英国工場ではアジアからユーロ建てで部品を調達するので、ユーロ高が進むほど原価が下がる
・成長著しい市場では、現地統括会社に資金を集め、再投資した方が資金効率が高い
—-(以上、引用)—
グローバル化で先行しているコマツは、まさにグローバルでの全体最適を図ろうとしています。
猛烈な勢いで加速するグローバル化の流れの中で、ユーロが一つのカギになるのではないかと思っています。
大前研一さんはコラム「コソボに見る21世紀の国家の形」の中で、コソボ問題を例に、何故ユーゴスラビアがいくつもの国に分裂・独立し、かつそれぞれの独立国が成功しているかについて述べていますが、ここでもユーロが一つのカギになっています。
—-(以下、引用)—
….、昔のように一定の大きさでないと国が経営できないという観念、そして最大公約数を取ることに伴うさまざまな(人種的、宗教的、政治的)妥協などするくらいだったら、まとまりのいい小単位で独立し、経済政策を充実させて外資を呼び込み、その勢いでEUに加盟しようというゴール(着地点)が見えるのである。これが一種の安堵感となり、いまこうした小国が煩わしい歴史的絆を断って独立、という選択肢につながっているのである。
新しいEU加盟国であるブルガリアやルーマニアを見ていても世界中からカネが流れ込み、いまでは不動産を筆頭に相当なバブル経済となっている。…..ブルガリアはこの1月1日から所得税を10%のフラットタックスにしてしまった。….フラットタックスにすると地下経済が地上に出てくるし、金持ちには多くの可処分所得が残り消費・景気が盛り上がる。
そのほかブルガリアは低所得税にすることによって富裕層が引っ越してくることを狙っている。…所得税が10%なら居住地を移そうという人が出てきてもおかしくない。EUという巨大経済圏の中にあっては、小国には小国の知恵と機敏さが有効だ、ということを皆学んでしまったのだ。
—-(以上、引用)—
旧ユーゴスラビアや東欧諸国というと、私達は「あの紛争の絶えない地域」とか「貧しい国」と思い勝ちですが、実はEU加盟とユーロをテコにして、知恵を絞ってしたたかに成長しているのですね。
また最近は、BRICSや東欧・アジア諸国の次の成長市場として、アフリカも注目されています。
グローバル化というと、日本では対米・対中のことが議論の中心になり勝ちですが、世界全体で見ると、世界中の色々な地域で私達が日本にいると想像もしないことがリアルタイムに進行しています。
しかも、このような動きを日本のマスコミはあまり流しません。
ただ、これは私達のニーズの裏返しなのでしょう。そのような動きをマスコミで流しても、現時点では世の中であまり必要とされていない情報である、ということなのかもしれません。
マスコミに頼ることなく、私達は、様々なメディアで常にこのような世界の動きを把握して理解し、自分にとっての意味を考え続けていく必要があると思います。