ラーメン屋が成功する秘訣は、まず値段を決めること。味は最後


表題は、5/13発売のモーニングに連載されている「エンゼルバンク」に描かれていた話です。

ネタバレになりますので、詳しくは本誌をご覧いただければと思います。

それにしても、ラーメン屋を始める人は、「こういう味のラーメンを作りたい」という思い入れがとっても強いのではないでしょうか?

しかし、思い入れをこめて作った新商品がなかなか売れないように、確かにこの考え方で売れるラーメン屋は、ごくわずかかもしれません。

 

マーケティングの視点でも、この考え方はとても重要です。

例えば、2008年のリーマンショックを契機に、ハイブリッドカーが爆発的に売れています。

これも、ホンダがインサイトを、そしてトヨタがプリウスを、それぞれ戦略的に最初から200万円以下に価格設定し、その価格でペイするように車を作ったのが大きな理由です。

もし同じ時代背景で、「こんな車を作りたい」から出発すると….、確かに味にこだわって売れないラーメンと同じ話になりかねないですね。

日本のハイブリッドカーと同じ有名な事例が、既に100年前に米国で生まれています。

既に何回かご紹介していますが、フォードのT 型フォードです。

ハーバード大学教授だったセオドア・レビットは、1960年に書いた歴史的論文「マーケティング近視眼」で以下のように述べています。

—(以下、引用)—

世間は決まってフォードを生産の天才としてほめるが、これは適切ではない。彼の本当の才能はマーケティングにあった。

フォードの組み立てラインによってコストが切り下げられたので売価が下がり、500ドルの車が何百万台も売れたのだ、といわれている。しかし事実は、フォードが一台500ドルの車なら何百万台も売れると考えたので、それを可能にする組み立てラインを発明したのである。

大量生産は、フォードの低価格の原因ではなく、結果なのだ。

….フォードがその経営哲学を簡潔に述べた文章を紹介しよう。

「当社のポリシーは、価格を引き下げ、事業を拡大し、製品を改良することである。価格の引き下げを第一に挙げたことに注意して欲しい。….まず価格を引き下げる。その後で、その価格で経営が成り立つように懸命に努力している。当社はコストで頭を痛めることはない。新しい価格が決められると、それにつれてコストを下げるからである。….

….まず価格を低いところに決め、その価格で経営が成り立つよう、全員が最も効率よく働かざるをえないようにすることだ。….このように追い込まれた状況の中で、製造方法や販売方法について発見を重ねていくのであって、時間をかけてゆっくり調査研究した結果ではない」

—(以上、引用)—

ラーメン屋に例えると、まず最初に両者とも価格を考え、その次に「生産方法=店の立地条件等」を考え、「車の性能や装備=味」を決めるのは最後、ということですね。

 

「エンゼルバンク」はしっかりした理論に基づいた話が多く、「なるほど、あの理論は、このように説明すると、ハラに落ちるのか!」という新鮮な発見があります。

勉強になります。

ラーメン屋が成功する秘訣は、まず値段を決めること。味は最後」への4件のフィードバック

  1. 永井さんのエントリーはいつもためになりますね。
     
    こんなことを書くと、そりゃあんたがマジョリティじゃないだけだろって言われそうですが、ラーメン店、とりわけ行列ができるような人気店については、やっぱり味ありき、じゃないかと思ったりします。
    もちろん立地は大きいですし、人気店となるために、カウンターだけにして席数を少なくして、わざと列を作らせる的な手法はあると思いますが、値段は優先順位が低いのではないでしょうか。うまいラーメンなら、1000円近くまでは問題なく感じる人が多いように感じますが、どうでしょう。ラーメンで2000円、はまずないでしょうから、そこそこ相場みたいなもんがあって、その範囲内なら、影響は大きくないようにも思います。
    こと人気店に関しては、まず味、加えてラーメンの種類、店の面構え、立地…が大きいというのが個人的な感覚です。

  2. 中村さん、
    おっしゃるように、行列が出来るようなこだわりの店は、味の優先順位が高く、値段が第1ではないのでしょうね。
    問題は、味にこだわりの店を目指しても、全ての店がこのような成功を保証されている訳ではないということなのかもしれませんね。

  3. こん××は。妹尾です。
    ご無沙汰しております。
    自分もこの原作、発売日に読みました。立ち読みですが・・・(毎週の日課・・・すみません、講談社さん)
    事業としての成立性を考慮すると、いかに成功確率を高めるか?という所が一番のキーなんでしょうね。
    本編にも書いてあったと思いますが、味ありきで一握りの成功者となるためにもの凄い競争を乗り越えることに意義を感じるのか?(それってある意味余程の自信家か自己満足が高い人じゃ無ければ無理)、まず事業として成り立たせることが計画を立てるには第一優先なんじゃ無いの?という所なのかな?と。
    ただ本来は原作も本来は踏み込みたかったのでしょうけど、価格ありきだけでは成り立たないことはとある歴史の一ページが証明している部分もありますけどね(笑)(→いや、当事者だった人には笑い事では無かったでしょうけど、当事者の方居られたらすみません)
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%B3%E3%81%A3%E3%81%8F%E3%82%8A%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%B3%E4%B8%80%E7%95%AA

  4. せのおさん、
    ありがとうございました。
    この話は全く知りませんでした。
     
    189円というのはすごいですね。
     
    実際にブルーオーシャン戦略で言うところの「価値曲線」を描くとどうなっていたのか、とても興味があるところですね。

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