先週、日本経済新聞に『ニッチトップ強さの秘密』という記事が連載されました。
市場を絞りに絞り、顧客ニーズに徹底的に対応し、そこでダントツのシェアを獲得する。
「ニッチトップ」は、これをとても的確に表現した言葉だと思います。
9月4日には、『ニッチトップ強さの秘密(5)「夜光塗料」の根本特殊化学』という記事が掲載されていました。
—(以下、引用)—-
….この夜光塗料で、根本特殊化学(東京・杉並)は世界シェア8割の「ニッチトップ企業」だ。時計向けではほぼ100%のシェアを持つ。
(中略)
….90年前後に転機が訪れる。放射性物質を含むそれまでの塗料を廃止する動きが時計メーカーに広がった。
夜光塗料は当時の売上高の4分の1を占めた収益の柱。技術的に研究し尽くされてはいたが、代替品を開発しなければ会社の未来はない。「社運をかけて研究に取り組んだ」(根本郁芳会長)3000回以上の実験を重ね、放射性物質を含まない物質を主体に新塗料を開発。できあがってみると従来より明るさが10倍、発光時間も10倍高まり、あっという間に世界の市場を手中に収めてしまった。
—(以上、引用)—-
これ以上の進歩が見込めない分野であっても、さらに突き詰めてみると大きなブレークスルーができる典型的な例だと思います。
この背景にあるのは、技術と顧客知識の蓄積ではないでしょうか?改めて自分の会社を見直してみると、自分たちは当り前に思っていても、実は自社しか持っていない資産というものが結構あるのではないかと思います。
それをいかに活用するか、です。
—(以下、引用)—-
(中略)
それでも存亡の危機を味わっているだけに、現経営陣は創業者の「どんな事業も30年と続かないよ」という言葉を肝に銘じている。自ら実践したように、ひとつの技術で市場の構図は大きく塗り替わる。業績が悪い時でも売上高の8%を研究開発につぎこみ、次の一手を狙い続けるのはそのためだ。この比率は中小製造業で一般的な2%程度を大幅に上回る。
根本特殊化学が今、開発を進めているのは現行よりさらに10倍明るく発光時間も長い新塗料。時間は短いが、発光ダイオード(LED)の1割程度の明るさまで出せるようになった。その先にあるのは、日中の光を蓄えて夜間に発光する電気不要の「エコ照明」だ。
松沢隆嗣社長は「夜光塗料が街灯に代わる世界を実現したい」と話す。照明に用途が広がれば「ニッチ」ではなくなる。
—(以上、引用)—-
ニッチトップが、技術的なブレークスルーで大きなビジネスに育つ可能性もあります。
たとえば、インターネット検索。1990年代後半はインターネット・ビジネスの一分野でしたが、今や大きな市場に育ちました。
このように技術的ブレークスルーで世界市場を獲得するには、技術力に加えて、自社のバリュープロポジションを効果的に訴求するためのマーケティング戦略も必要になります。
グローバル化が進展する現代、ニッチトップ企業にとって、自社独自技術を活用しグローバル展開を見据えたマーケティング戦略の構築力・実践力は、今後、ますます重要になってくると思います。