3.11の大震災では、私は午前2時まで会社にいて、やっと動き始めた電車に乗り、3月12日(土)午前4時に自宅に到着しました。
その週末、勤務先の日本IBMからは、「自宅で仕事できる社員は出来るかぎり自宅で仕事をするように」との指示が出されました。
震災直後から、お客様担当のセールスやエンジニアはお客様のトラブル対応で現場に駆けつけていました。
一方で、マーケティング担当者である私の業務は、自宅でもこなすことができます。
結局、私の場合は、震災後は7日間連続して自宅での業務でした。
同様の社員も多くいました。
在宅でも、業務の進め方はオフィスと全く変りはありません。
まず、専用のVPNアクセスソフトで、ネット経由で社内システムに繋げます。
これで社内のメールシステム、イントラネット、業務システム等、オフィスで使用する全てのシステムに接続できます。私の場合、一番安価な低速ADSLで接続しているので、さすがにオフィスのLAN環境と比べるとやや遅いですが、それでも業務上は問題ありません。
基本的に連絡はメールでやり取りします。
場合によっては、Sametimeというチャットソフトで、ネット上で相手を見つけてリアルタイムにチャットで会話して仕事を進めます。
会議でも、電話会議システムで、複数人で話しながら進めます。事前にパワーポイントファイルを送る場合もありますし、SametimeやLotusLiveのウェブ会議を使うこともあります。
会議の生産性は、対面の時とほとんど変わりません。
もちろん、相手がどのような表情をしているかは読み取れませんが、お互いに話をして意思表示をしなければ会議が進まないからこそ、生産的な議論ができます。
この期間、多くの社員が在宅勤務でした。個人的には、この7日間で仕事の生産性は、普段とほとんど変わらない、という印象です。ただ、これはあくまで非常時モードでのこと。その後、通常勤務に戻しています。
しかし、多くの社員が在宅勤務をしても業務を通常通り継続できるのだ、ということを実証できたのは、会社としては大きな意味があったのではないか、と思います。
米国のIBMでは、10年前から会議と言えば電話会議が当り前でした。広大な国内に、社員が散在しているからでしょう。
ちなみに当時の私の仕事相手は、ご主人の仕事の関係でラスベガスに居を構えていました。普段の仕事には全く支障がないとのことでした。
日本IBMでは、段階的に在宅勤務を増やしています。
1999年には、育児・介護が必要な社員に自宅勤務制度を試行。
2000年に「e-Work制度」を正式実施。PCや電話会議を活用して、週に数日、自宅で勤務する形態です。現時点で数千名が利用しています。
昨年からは、常時自宅で勤務する「ホームオフィス制度」も開始しています。
会社によって業務の性質や、ITインフラの状況は違いますので、実際に在宅勤務をやってみて、初めて学べることも多いのです。
大震災後に、在宅勤務導入を検討し始めている企業が多いようです。
在宅勤務はITの活用が大前提です。まずは小規模に試行し、企業としての経験値を貯めることが必要なのかな、と思います。
その際には、日本IBMが10年以上行ってきたように、先行事例として試行錯誤しながら得た経験は、おおいに参考にしていただけるのではないか、と思います。