「マーフィーの法則」をご存じの方が多いと思います。
例えば、次のようなものです。
「落としたトーストがバターを塗った面を下にして着地する確率は、カーペットの値段に比例する」
「洗車しはじめると雨が降る」
「マーフィーの法則」のエッセンスは、「不都合を生じる可能性があるものは、いずれ必ず不都合を生じる」ということに尽きます。
実際の仕事でも、「よし、うまく行くぞ」と思った途端にトラブルが起ったり、仕事のキーマンが仕事の山場で急病になったり、と、マーフィーの法則ばかりです。
「段取りした通りに、仕事はうまく行く」と思っていると….必ず足をすくわれます。
「信じるものは、足、すくわれる」
という言葉は、憶えておいてもよいかもしれません。
マーフィーの法則に対抗するためには、常にコンティンジェンシー(contingency)を考えておくことが必要です。
コンティンジェンシーとは、「不測の事態」とか「不慮の出来事」という意味。
例えば、あるプロジェクトで鈴木さんからのアウトプットが必要だったとします。しかし何らかの理由で期限直前になって鈴木さんが仕事を完了できない可能性もあります。
この場合、それが判明した期限直前の時点で対応方法を考えても間に合いません。
予め鈴木さんが仕事を完了しない場合の代替案を考えておくことが必要なのです。例えば、その部分は既に佐藤さんが完成させた成果を流用し、全体への影響を最小限に留める、といった方法です。
さらに、予測できない突発的なトラブルが発生する可能性もあります。
十数年前、私が製品開発の企画を担当していた時、非常にタイトなスケジュールで開発を続けていたある製品で、トラブルに見舞われたことがあります。その製品開発事業部の責任者に状況を報告した際、次のような話を聞いたことが、今でも鮮明に覚えています。
私が製品開発マネージャーだった時は、私が担当する製品は、必ず開発スケジュールに間に合わせた。約束したスケジュールを前倒しして出荷したこともあった。ポイントは、スケジュールを立てる際に、20%程度の余裕を見ること。そしてこの余裕はトラブルがある時のみに使い、通常は使わないこと。製品開発でトラブルがあっても余裕をもって対応できるし、開発がうまく行けば、約束した期日よりも早く仕上げられる。お客様の満足度も上がる。
この考え方は、私たちが段取りを考える場合にも有効です。
段取りを考える場合、仕事に求められる締切り期限を考慮した上で、タイトな作業スケジュールはできるだけ避け、20%程度の余裕を持って段取りを考えてスケジュールを立てるようにします。
トラブルが発生しない場合は、この20%の時間分早く余裕をもって仕上げられます。この時間分、別の仕事をすることで、さらに多くの仕事ができます。
最近はなかなか余裕があるスケジュールを立てるのは難しくなってきています。仕事の生産性もあわせて向上させていくことも必要になります。
私たちビジネスマンは、「マーフィーの法則」からは逃れられません。
だからこそ、コンティンジェンシーを常に考え、対策を立てておくことが必要なのです。