ドラッカーが「マネジメント」で述べた、「コンセンサスで意志決定する日本」は、今でも有効か?


「もしドラ」のベースにもなっているドラッカーの『【エッセンシャル版】マネジメント』で、「マネジメントの技能」という章があります。

その中で、p.150-151に「意志決定」について述べた部分があります。

—(以下、引用)—-

日本について見解の一致があるとすれば、それは合意(コンセンサス)によって意志決定を行っているという点であろう。

(中略)

意志決定で重要なことは問題を明らかにすることである。…..この段階でのコンセンサスの形成に努力を惜しまない。この段階にこそ、意志決定の核心があるとする。

(中略)

関係者全員が意志決定の必要を認めたとき、初めて決定が行われる。….その後の日本側の行動は迅速である。

—(以上、引用)—

ドラッカーは組織全体であらかじめ問題を共有する重要性を提起するために、本章で日本のコンセンサス文化を紹介しています。

確かに日本の組織は、全体で問題に関するコンセンサスを形成した後の実行は迅速です。これはコンセンサス形成過程で暗黙知を共有して「あうんの呼吸」で複雑な問題にも対処できる擦り合わせ文化があることも一因でしょう。

一方でまた、本書が1973年に書かれたことも、思い出す必要があるでしょう。

当時は日本企業はまだ高度経済成長のまっただ中。「欧米に追いつけ」と頑張っていた時代。また現代ほど世の中の変化が急ではありませんでした。

現代でもコンセンサスの重要性は失われていませんし、それは日本社会や日本企業の良さでもあります。

 

一方で現代は問題のコンセンサス形成に時間をかけているうちに、問題そのものが変化してしまう時代です。

私も数年前に全社タスクを行っていた時に、全事業部門とコンセンサス形成に時間がかかってしまい、その間に事業環境の変化・組織変更・全社方針変更などあったために、十分な成果を残せなかった経験をしたことがあります。

昨年1年をみて、次々に発生する大きな問題をタイムリーに意志決定できず、問題が肥大化してしまったケースが日本では頻繁に起こりました。

「問題についてまずじっくりコンセンサスの形成をしてから実行」というアプローチでは、間に合わないケースも多いのです。

必要なコンセンサス形成をしつつ、内田和成さんが「論点思考」で述べたように、あえて問題を仮決めし並行して短いサイクルでPDCAを回し、仮説検証をしながら修正を図り、迅速に問題設定と実行を図ることも、現代は必要なのではないかと思います。

 

その観点では、『【エッセンシャル版】マネジメント』p.152に書かれている「まちがった問題に対する正しい答えほど、実りがないだけでなく害を与えるものはない」という点は、現代こそますます重要だと思います。この部分は内田和成さんも「論点思考」でも引用しておられます。

取り組もうとしている問題が、本当に現時点でも正しい問題なのか、マメな検証が必要なのではないでしょうか?