否定的な書評でも、時には本の売れ行きを高める、という話


ハーバード・ビジネス・レビュー2012.12号に、ペンシルバニア大学ウォートンスクールのジョナ・バーガー助教授が『「悪評も宣伝のうち」は本当か』("Bad Reviews Can Boost Sales. Here’s Why")という論文を寄稿されています。

バーガー助教授は2001年から2003年にかけてニューヨークタイムズ書評欄で取り上げられたハードカバー・ノンフィクション作品250点の書評を全文検索システムで分析しました。

そして書評掲載前4週間と掲載後4週間で販売パターンがどのように変わるかを比較しました。

結果は、…

・好意的な書評の場合、売れ行きは32-52%増加
・著名な作家の作品に対する否定的な書評は、平均15%売れ行きを低下
・しかし比較的無名な作家の作品に対する否定的な書評は、逆に平均45%売れ行きを向上

この結果を、バーガー助教授は以下のように分析しています。

—(以下、引用)—-

我々の分析によれば、書評に取り上げられなければ多くの人がその存在すら知らなかった本が、たとえ最悪の書評であっても、そこで取り上げられたことで多くの人々が知るところとなり、それが売上増加につながったのだ。

…..無名の作家の場合、否定的な書評は当初はマイナスの影響を与えるものの、その負の影響は短期間で消滅するのだ。これは評価の低い無名の製品を提供する企業にとっては朗報である。否定的な評価の記憶が薄れた後でも、こうした製品が長く人々の意識に残っていることを示唆しているからだ。

—(以上、引用)—-

 

本論文は、マスメディアでの悪評が製品にどのような影響を与えるかということを考察することを目的として、今のようにソーシャルメディアが普及していなかった2001-2003年に、マスメディアに取り上げられた書評について調べた調査です。

確かに、当時のマスメディアの力は今よりもずっと強力だったので、このような結果が出てもおかしくはありませんね。

 

今、同様の調査をしたらどうなるのか、またソーシャルメディアでの書評の影響はどのように考えるべきなのか、興味深いところではあります。