連載4回目です。(前回はこちら)
【ありがちな勘違い】こちらが言うことを察してくれない、なかなか伝わらない
海外の人に、これから英語で説明して、何かを依頼しなければなりません。
準備は万端です。詳しい資料を用意して、順番に英語で説明します。相手は聞いています。そして最後に「だからこれをお願いしたい」と切り出します。
しかし相手は「同意できないね」。
「これをやってくれないと困る」と迫っても、肩をすくめるばかり。
“This is not reasonable.” (妥当じゃないね)と言われることもあります。
こういうことが続くと、「日本人同士ならすぐ察してくれるし、伝わるのになぁ。外国人は察してくれないし、なかなか理解しようとしないからなぁ」とボヤくことになるのです。
【どうしてそうなる?】相手は決して、察してくれない
確かに日本人同士ならば、多くの言葉を要することなく「あうんの呼吸」で言いたいことが伝わります。日本人同士だと価値観の共有度合いが高いので、相手は察してくれるのです。
このため日本人のコミュニケーションは、「言いたいことは全て言わず、節度を保つ」という形になりがちです。
しかしグローバルコミュニケーションでは、日本人が当たり前と思っている価値観は、必ずしも当たり前ではありません。
「あうんの呼吸」は伝わらないし、察してくれることは絶対と言っていいほどあり得ません。
だから伝わらないのです。
【こうしましょう】”Does this make sense?”できめ細かく確認を。
相手が前提条件を理解していないのに、その次を説明しても、相手は納得してくれません。
そこで説明する際には、一つずつ相手の理解を確認しながら進めることが必要になります。その際に使える言葉が、次のフェーズ。
“Does this make sense so far?”
訳すると「ここまでは理解できるか?」となります。
「”Do you understand?”でもいいんじゃないの?」と思われるかもしれません。ただ、これだと相手の理解力があるかどうかを聞くニュアンスが含まれるため、失礼に聞こえ勝ちです。
一方の”make sense”は、「理にかなっている」「筋が通っている」という意味があります。つまり”Does this make sense so far?”は「ここまでの話は、理にかなっていると思いますか?」ということになります。
ロジックで議論をするグローバルコミュニケションでは、こちらの言い方の方が、まさに「筋が通って」いますし、スマートな言い方なのです。
【参考までに】事前にロジック構成を考える
私がある米国人の同僚に、仕事の依頼をされたときのこと。
彼はキッチリとしたロジックを立てて、一つずつ「ここまでは同意か?反対意見は?」(“Do you agree so far? Any objection?”)と確認しながら議論を進めていきました。
「はい」「はい」と続けると、最終結論に合意するように構成されていて、仕事を引き受けざるをえない前提条件とロジック構成を、事前にキッチリと考えていたのですね。
同意できないことがあると、フランクに話し合って双方が納得する落としどころの合意を探っていきます。
このようなやり方は、私たちがグローバルコミュニケーションをする際にも参考になりますよね。
ちなみに、このように相手が理論武装している状況で交渉する場合は、下記を考えることが必要になります。
・前提条件(事実など)が、間違っていないか?
・ロジックは納得できるものか?
・彼の主張は、その前提条件とロジックから導き出されるものなのか?(こじつけではないか?)
これについては、また機会を見つけてご紹介したいと思います。
【追記:2013/12/3 12:30】
本記事は、日本IBM様が改善活動の成果物として公開している「テレコン英会話小冊子」に掲載されているp.13-14の文例を参考に、その背景を掘り下げてご紹介しました。